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シュワルツコフの美容室向けIoT、5分で髪内部の状態を分析。世界に先駆け日本から

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ヘンケルの美容室向けブランド、シュワルツコフ プロフェッショナルは、世界初、髪の内部を測定できるデジタルデバイス「サロンラボ スマートアナライザー」を開発、全世界に先駆けて、まずは日本全国の美容室に導入をはかり、ヘアケアのパーソナライゼーションを進めていくとする。その背景を探る。

サロンラボ スマートアナライザーは、世界で初めて髪の内部の測定を実現し、一人ひとりの髪の健康状態を可視化して提示する機能を搭載したハンディサイズのデバイスだ。本国ドイツにあるラボで2年の歳月をかけて開発され、12月から世界に先駆けて日本の美容室で本格的に導入される。

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サロンラボ スマートアナライザーと
スマートアプリ
提供:ヘンケルジャパン

研究所を経由して数日間かけて分析するのではなく、美容室で美容師自身が操作して顧客の髪内部の測定をし、その場で診断結果が得られる。これまで美容師の経験値に頼って行っていたカウンセリングに、データ分析というエビデンスを与えて、提案されるケアやおすすめの製品の信頼度を高めた。加えて、このカウンセリングのポイントは、ただ一方的に分析結果を提示するのではなく、測定データを見ながら、個々の要望に添ってより細やかにパーソナライズしたケアを見つけていくところにある。

「人が介在するデジタルツールによって、美容師とお客様とのコミュニケーションを促し、サロンに対する顧客ロイヤリティとリピート率を向上させ、自社製品の販売拡大につなげていくのが狙いだ」と話すのが、ヘンケルジャパン株式会社 ビューティケア代表 事業本部長の後藤秀夫氏だ。

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ヘンケルジャパン株式会社
ビューティケア代表
事業本部長 後藤秀夫氏

IoTでドイツのラボと美容室を直結

このテクノロジーは、IoTによってリアルタイムでドイツの研究所と美容室を直結することを実現している。店舗で使用するiPadのアプリを通して、測定データをドイツのサーバーの約3万人の髪のビッグデータと瞬時に照合して分析・診断をするのだ。
 
最初に顧客は、髪の長さや細さ、お手入れ習慣などの問診に回答。その後、美容師がアナライザーで左右と後頭部の3カ所で毛束を挟み込んで測定する。アナライザーに内蔵した近赤外線センサーが、毛髪内部のシステイン酸量(ダメージ)を読み取る。測定されたデータは独自開発のアルゴリズムによって分析・処理され、問診での回答と統合されて、iPadに診断結果として表示される。この間にかかる時間は5分程度。結果にもとづいて、サロンでのトリートメントメニューや、その際に最適なヘアケア製品、さらにはホームケアもレコメンドされるという流れだ。

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iPad画面に表示される測定結果
※ベータ版のため表示のデザインは
順次アップグレードされていく予定
提供:ヘンケルジャパン

提示される製品は、6月に発売の、最新の毛髪補修テクノロジーを搭載した「ファイバークリニクス 」で、リペア、モイスチャー、スムースなど髪悩み別に5種類をラインナップする。インサロン・トリートメントの場合は、スマートアナライザーが提案したアイテムと、美容師が顧客の現在の髪の状況を目視で確認し選んだアイテムを組み合わせ、配合をカスタマイズすることができる。また、アプリには測定結果や受けたケアを記録し蓄積することができるので、髪の変化を追いつつ、そのつど最適なケアが提案できるという仕組みだ。

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ファイバークリニクス
提供:ヘンケルジャパン

CESで2018年のInnovation Awardを受賞

サロンラボ スマートアナライザーの開発は、ドイツで58人の美容師を協力者に迎えてスタートし、約2千本の毛束と3万人の髪のプロファイルをもとにアルゴリズムをプログラム化した。デザインや操作性を高めるために、さまざまなプロトタイプを作って試行錯誤を繰り返したが、「近赤外線センサーをコンパクト化できたことが大きなジャンプとなった」と後藤氏は振り返る。

最終的には、手にフィットしやすい大きさと軽さ、人間工学的グリップを実現しスマートなデザインとなった。ドライヤー音やBGMなどが混在する美容室での計測環境を考慮し、作業の終了時にはバイブレーションやランプ表示で知らせる機能を搭載するなど、操作性も追求されている。2018年度のCESではInnovation Awardを受賞し世界的に注目を集めた。

顧客とサロンとヘンケルの3方のメリットを追求

一般的にいって、美容室で髪の悩みを聞かれたときに客観的に答えられる人は少ないだろう。「パサついてまとまらない」「ふんわりさせたい」など、自分の感覚にもとづいて表現される髪質を、データによって可視化するのがサロンラボ スマートアナライザーだ。

今回、筆者も測定・診断を体験し、説得力が高いと実感した。自身では乾燥タイプの髪だと感じていたが、ダメージレベルは良好で、スムースタイプのトリートメントが提案された。その後、美容師のカウンセリングによって改善のポイントは髪のまとまりにあり、ごわつきをしなやかにするヘアケアによって髪通りをよくできるとのレコメンドは納得できた。

図1

測定データをもとに美容師が
カウンセリング

つまり、本人と美容師の感覚だけではない、データ分析だけでもない、双方を取り入れたカウンセリングと提案によるパーソナライゼーションなのだ。もちろん、データを提示されても本人がなりたい髪の質感と食い違う場合もある。そんなときに必要になるのが、顧客の気持ちを受け止めたうえでのアドバイスだ。本人の希望を引き出し、経験値や観察眼をミックスしてカスタマイズした提案をする。データはそのアプローチの助けになると後藤氏は話す。「美容師の方のなかには製品やサービスを勧めるのが苦手という人も多いが、データ分析によって製品が提示されると、自信を持って提案ができる。また、分析結果をお客様と一緒に見ることで会話や共感も生まれてくる」。

実際にテスト導入した店舗では、「顧客との距離が縮まった」との声も多く、顧客とパートナーシップを築くためのステップとなっている。また、約5分で診断ができ、短時間で信頼性の高いカウンセリングを実現する点も、即効性が求められる時代性にマッチしている。

「美容室の数は年々増え、2018年には24万7,578店舗(※1)と過去最高を記録する一方で、客足の減少を訴える経営者は65%を超える(※2)。クーポンやアプリを利用するお客様は特定のサロンに定着しない傾向にあり、サロンは他店との差別化やリピーター獲得が課題となっている」(後藤氏)。

※1 厚生労働省 平成29年度衛生行政報告書
※2 厚生労働省 美容業の実態と経営改善の方策 経営上の問題点別施策数の場合

そんな現状を背景に、美容室では、デジタルデバイスの導入によって他店との違いを打ち出すことができ、データは顧客管理のツールとなる。また、継続使用を促すことで、顧客の囲い込みが可能となる。一方、顧客側には、美容室で自身の髪の内部を診断する体験を楽しみ、自分用にカスタマイズされたヘアケアを受けるというメリットをもたらす。

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パーソナライズした
インサロン・トリートメントを実現
提供:ヘンケルジャパン

サロンラボ スマートアナライザーは、ファイバークリニクスを導入している店舗へ向けたツールで、単体での販売はしていない。ヘンケル側も、自社のヘアケア製品をドライブさせるだけではなく、膨大な個人データの収集によって分析の精度が上げられ、新たな製品づくりやサービスの向上にも役立てられる。美容室、顧客、メーカーと3方のメリットが成立するわけだ。

日本での評価をベンチマークに欧米へとロールアウト

同ブランドは120カ国以上で展開しているが、サロンラボ スマートアナライザーは、世界に先駆けて最初に日本で導入される。すでに7月から一部のサロンでテスト導入されており、12月からは全国500店舗で展開される。ヘンケルジャパンは、来年もさらに導入店舗を増やす方針だ。

日本で先行導入された理由については、日本のヘアケア市場は米国についで2番目の大きさであること、さらに後藤氏は、「日本はインサロンのサービスが充実していて、その質は世界トップレベル。デジタルを取り入れて活用するスピードも早く、何より消費者の評価基準が厳しい」と説明する。

日本で認められれば、グローバルでもそれがベンチマークになるという本社の判断があってのことだという。日本のユーザーの評価やリクエストを受けてさらなる改良を加え、来夏以降には欧州や米国へとロールアウトしていく予定だ。

Text: 大西 美貴(Miki Onishi)
Top image: Tyler Olson via shutterstock

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