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BOTANISTを生みだしたI-neを支える、アイディア第一の社風とデータドリブン経営

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株式会社I-ne(アイエヌイー)が2015年に発売した「BOTANIST(ボタニスト)」は、ボタニカルシャンプーという新たなジャンルを確立し、わずか数年で同社を代表するブランドへと成長。そして、2020年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たした。“人の美に関わるすべての領域に対してテクノロジーを通して必要なモノやサービスを提供する”というBeauty Tech Companyを標榜し、データドリブンな経営をすすめるI - neの成長戦略について、同社 代表取締役社長 大西洋平氏に話を聞いた。

データドリブンなブランド開発

I-neはモバイル通販に特化したデジタルマーケティング企業として誕生した。2007年、大西氏が学生時代のことである。この事実を知れば、なぜBOTANISTがインフルエンサーマーケティングの黎明期から、SNSを起点に爆発的なヒットを巻き起こせたのかが容易に理解できる。

改めて同社の強みをたずねると、大西氏は次の4点を挙げた。

① トレンド予測と社内からの活発なアイディア

I-neはBOTANIST以外にも、美容家電ブランド「SALONIA」など多数のブランドを展開している。同社では、ヒットするブランドをつくるうえで“アイディア”が最も重要だと考えており、アイディア出しがしやすい企業文化や仕組みづくりを積極的に行っている。その仕組みのひとつが、ブランド開発の際に使用する独自開発の最先端AI予測システム「インサイトスコープ"KIYOKO(キヨコ)"」だ。

KIYOKOは、世界中のニュースサイトやクチコミサイト、SNSなど約2,000万を超える媒体から、流行のキーワードを抽出・解析することで、消費者の潜在的ニーズを読み取るとともに、今後のトレンド予測ができるシステムである。KIYOKOから得た着想をもとに新ブランドの企画開発をすることもあれば、逆に、社内から出てきたアイディアがトレンド予測とフィットするかをKIYOKOで確認しているという。

② D2Cプラットフォーム

I-neでは、自社ECサイト「&Habit」や各種SNS会員を合わせると、3,300万人の会員基盤を保有している(重複も含む)。この会員基盤をトライアル顧客として、新ブランドのテストマーケティングや、ブームの起爆剤に活用しているのが、同社のユニークな点だ。この基盤があるからこそ、広告費や市場調査にかかる時間やコストを抑えられ、新商品開発におけるマーケティングコストを下げることにつながっている。

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出典: &Habit

③オフライン流通店舗網

I-neは商品の企画開発は自社で行っているものの、生産機能は外部に委託しているファブレス企業だ。そんな同社が構築したオフラインの流通網(ドラッグストア、量販店、バラエティショップ、コンビニエンスストア等)は、国内6万店舗にのぼる。

創業当初からオンラインを主戦場にしてきたI-neでは、このオンラインからオフラインへの流れを活かした商品開発やマーケティングが強みとなっており、2019年のオフライン売上構成比率は7割を占める。

④ブランドマネジメントシステム「IPTOS(イプトス)」

IPTOSとは、I-neが独自に開発したブランドマネジメントシステムだ。「Idea(アイディア)→Plan(企画)→Test(検証)→Online/Offline(EC/一部小売)→Scale(スケール)」という各プロセスの頭文字を取ってIPTOSと名づけられた。

I-neでは社員全員でアイディア出しを行い、そのなかから新ブランドのコンセプトを企画し、小ロットで商品を開発して、すぐに自社ECサイトで販売を行う。そこで得られた顧客からのフィードバックもとに商品を改良したうえで、ほかのECモールやオフラインの店舗網に流通させていく。その際、過去の経験をもとにフェーズごとのKPIが細かく設定されており、それぞれ基準を満たさなければ、次のステップに進めない仕組みだ。

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発売前に市場調査を重ねる従来の商品開発のやり方では、商品の発売までに2〜3年の時間を要してしまう。今はトレンドの移り変わりが非常に早いため、これまでと同じやり方では、開発当初のトレンドとズレが生じてしまい、商品が売れずに大量の在庫を抱えることになりかねない。このIPTOSにもとづいたブランド開発を用いることで、開発期間を約1年と大幅に短縮できる。さらに開発事例を重ねるごとにデータが蓄積されることでヒットの再現性が高まり、リスクの抑制にもつながっていく。

差別化ポイントは「アイディア」にある

IPTOSの中で、大西氏が特に大切にしているのがアイディアだ。社員がどこの部署に所属しているかは関係なく月に一度、そしてOEM工場でも定期的に、アイディア出しをする仕組みを整えている。これらをトータルすると、年間で集まるアイディア数は、数千にも及ぶという。

AIシステムのKIYOKOがアイディア創出を支えるシステムであることからしても、大西氏がいかにこの「アイディアを生み出す」ことに注力しているかがうかがえる。そのこだわりについて、大西氏は「商品の差別化を図れるものはアイディアしかない。プロダクトアイディア、プロモーションアイディア、コミュニケーションアイディアの3つのどれかで抜きん出るしか、勝つ方法はない」と語る。

全社員がアイディア出しをする仕組みを作った理由は、それだけではない。「アイディアを出さなければと思うことで、自然と店頭のお客様や他社製品にも目が向く。友人にも『最近、どんなアイテム使ってるの?』と聞くかもしれない。そのように全社員がアイディアを大切にする文化を創りたい。『I-neの強みはアイディア』と胸を張れる会社にしていきたい」(大西氏)

大西洋平(I-ne)1

株式会社I-ne
代表取締役社長 大西洋平氏

世界を制するのは哲学のあるブランド

I-neは、BOTANISTの本格的な世界進出に向けて、14カ国でテストマーケティングを行ってきた。2019年はグローバルで10億円を売り上げ、その約7割を中国が占めているという。そこで、中国にまずは軸足を置き、香港、台湾を含む中華圏を中心に展開することに決め、アドバイザーとしてHenkel Asia Pacific Ltd.で社長を務めたミシェル・チェン(Michelle Cheung)氏を招聘した。

「今の中国には、Made in Japan、中価格帯、自然派という3つの要素を兼ね備えたヘアケアブランドはほかになく、いいポジショニングができている。そこにミシェルの人脈やノウハウを掛け合わせることで、中国市場での販売拡大を狙っていきたい」(大西氏)

そのほか、I-neは、韓国のジェンダーニュートラルブランド「LAKA(ラカ)」など、海外ブランドの正規輸入販売も行っている。日本という特殊なマーケットに参入するうえで、デジタルマーケティングとブランディングの両方に知見を持ち、オフラインの流通網も保有しているという点から多くの引き合いがくるという。

世界の時流にフィットしたブランドづくりで海外へ

I-neは、今後どういったブランドを生み出していくのだろうか。大西氏は、「これから先は、社会課題の解決に紐づくようなブランド以外はやらないと決めている」と話す。それは、「ユーザーのためにいい商品をつくるのは、もはや当たり前のこと。これからは社会課題の解決とブランドのミッションがしっかりと紐づき、ブランドが成長すればするほど、社会の課題の解決に貢献しなければ、存在する意味がないと考えているからだ」という。

グローバルで拡大しているクリーン・ビューティへの取り組みも始めている。その一例として、BOTANISTから2020年8月に発売されたスキンケアライン「EVER」では、北海道に生息するエゾノチチコグサという希少植物のエキスが使用されている。EVERでは植物から直接エキスを抽出するのではなく、エゾノチチコグサの植物幹細胞を培養して抽出した成分を使用することで、植物を傷つけないサステイナブルな製法を採用している。また、パッケージの素材には、 可能な限り再生可能なガラスや環境に配慮したバイオマス樹脂を使用している。

「世界でESG投資の考え方が加速しているなかで、哲学のあるブランドを複数持ち、それらを世界へとスケールしていきたい」(大西氏)

独自のAI予測システムを活用しながら、化粧品、美容家電、ドリンクなど分野を超えてヒット商品を次々と開発する独自路線をとる美容企業として、世界市場を目指したいと展望を語る。

Text: 野本纏花(Madoka Nomoto)
画像提供:株式会社I-ne

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