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小紅書は勢いを維持できるのか。SNS型ECは競合の雲集や蜜芽なども成長加速

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SNSを活用したソーシャルコマースがマーケティング手法として当たり前になっている中国では、SNS機能を取り入れたECアプリが増えている。その急先鋒として注目を集めているのが「RED(小紅書)」だが、ほかにもさまざまな「SNS型EC」が存在する。REDの成り立ちと、その後に台頭してきた競合アプリについて紹介する。

REDを運営するのは行吟信息科技(上海)で、創業者である毛文超氏(現CEO)と瞿芳氏が2013年6月に「小紅書出境購物攻略(海外買い物攻略)」というPDF文書をネット上で公開したしたことにはじまる。その後、PCユーザーをメインターゲットに、旅行の渡航先など海外でのショッピング情報を提供するプラットフォームとして成功した。現地のインタビュー記事によると、毛氏が戦略を立案し、瞿氏が組織の管理を担っていたという。

約2年後、プラットフォームはアプリへ移行したが、サービスの柱はまだ海外ショッピング情報の提供にすぎなかった。しかし、これだけではユーザーは帰国するとアプリを利用しなくなってしまう。ユーザーをつなぎとめておくためには、いつでも買い物に関する役立つ情報が手に入るようにすることが必要だと毛氏は考えた。そこでユーザーが購入した商品の写真や価格などを投稿できるようにし、ユーザー同士が交流できるようにした。つまり、SNSの要素を取り入れたのだ。もともとは文章と画像による投稿が主だったが、最近では動画も増えている。さらに2014年末からはEC機能「福利社」を実装し、まずは自社で仕入れた製品の販売を開始。現在の礎ができあがった。

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天下を獲ったかに見えたREDに訪れた試練

その後REDは、メーカーやブランドなどにもプラットフォームを開放し、モールとしての機能を備えるようになる。2015年には、河南省鄭州市と広東省深セン市に保税倉庫を開設。2018年6月には、アリババグループがリードするシリーズDラウンドで3億ドル(約320億円)を調達するなど、急成長を遂げた。

同社ウェブサイトによると、2019年5月時点でのユーザー数は2.5億。79%を「90后(1990年代生まれ)」世代が占め、月間アクティブユーザー数(MAU)は8,500万を超える。男女比率は女性が圧倒的に多く、中国リサーチサービス「艾媒網(iiMedia)」によると、2019年3月時点では79.2%が女性となっている。そのため、扱われる商品はコスメやファッション、ベビー用品などが中心だ。

一般ユーザーと店舗のアカウントは分けられているが、ユーザーが推薦する商品を購入したいときは、その多くに店舗のページがリンクされているので簡単にできる。日本企業のアカウントも少なくない。資生堂やコーセーなどの大手メーカーブランドに加え、マツモトキヨシや丸屋免税店といった小売店もアカウントを開設して販売を行っている。

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出典:REDのブランドアカウント(左より資生堂とPerfect Diary)

SNSとECは親和性が高いものの、投稿が商品の売上げに直結するだけに、書き込みには“ヤラセ”ではないかという疑惑の目も向けられる。そうした批判をかわそうとREDは5月から新たに規約を追加。フォロワー数5,000以上などのインフルエンサーだけがブランドと提携できることとした。つまり、信用性を高めるために、REDが質を保証する、条件を満たしたインフルエンサーだけが正式に該当ブランドの商品を宣伝できるようにしたのだ。並行して、REDは現在、1日に平均4,000以上の投稿を削除するなど監視も強化しているという。

しかし、このような努力にもかかわらず、REDに試練が訪れた。7月29日にアンドロイドOSのストアから、8月3日にはApp Storeから同アプリが公開停止となってしまったのだ。原因は明らかにされていないが、現地報道によると、ヤラセ投稿だけでなく、ニセモノが販売されていたり、医師免許を持たない闇業者による医薬品の宣伝、中国では広告が禁止されているタバコが紹介されていることなどが理由として指摘されている。2か月以上経った現在も復活してはおらず、競合も虎視眈々とREDに続く地位を狙っている。

3大競合アプリ、後発のYUNJIはナスダックに上場

では中国では現在、REDの競合アプリにはどんなものがあるのだろうか。主な3つを順に紹介していこう。

● YUNJI(雲集)

雲集共享科技が運営するYUNJIは、肖尚略CEOが2015年にローンチ。アリババグループが提唱する「S2b2C」のビジネスモデルを取り入れたプラットフォームだ。「S」はサプライヤーを指し、メーカーや卸業者を意味する。「b」はほとんどが個人で展開しているような小規模業者であり、イメージはCtoCに近い。

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出典:YUNJIのアプリより

中国のEC「Pinduoduo(拼多多)」などと同じく、低価格を売りとしている。YUNJIでは、メニューから「代言」をタップすると、ユーザーの投稿がタイムラインで表示される。ほとんどの投稿が動画付きで、女性ユーザーが多いため、美容、ファッション、食品といったジャンルで活況が目立つ。

同社はシステム開発にも力を入れており、独自に開発した「神舟系統」というシステムは、1日1,200万もの受注を処理できるという。2017年の中国EC業界の一大イベント「双11(ダブルイレブン)」では、販売総額が10億元(約150億円)を突破。出店が許される有料会員数は、2019年第2四半期時で1,070万に達する。また、2018年には健康食品の自社ブランド「Unibeauty(尤妮美)」をローンチ。立ち上げから約1年半ですでに売上げは8,000万元(約12億円)を超えている。

短期間に急成長を遂げた同社は、5月に米ナスダックに上場。時価総額は約15億ドル(約1,603億円)に達する。同社が8月22日に発表した2019年第2四半期の監査前の財務報告によると、総収入は前年同期比5.9%減の30.6億元(約460億円)で、純利益は3.4%減の8,450万元(約12.7億円)だった。第1四半期との累計ではプラスなので、中国の景気減速を受け、急ブレーキがかかった形だ。ただ流通総額(GMV)は前年同期比46.4%増の82億元(約1,230億円)と好調だったので、規模は拡大している。低価格が特徴のため、不況に強いといえるだろう。

mia.com(蜜芽宝貝)

蜜緹(上海)網絡科技が運営するmia.comは、劉楠CEOが2011年にアリババグループ傘下のタオバオ(淘宝)に出店した「mia時尚(ファッション)」にはじまる。現地報道によると、当時は日本の花王と提携し、同社製紙おむつの代理販売をしていたという。2013年にシリーズAラウンドで資金調達に成功し、2014年2月に自前のECサイトmia.comをローンチ、ベビー用品の輸入販売を開始した。同年6月にはアプリ版をリリースし、越境ECを軸に展開してきた。

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mia.comのアプリより

2015年には、バイドゥがリードするシリーズDラウンドで1.5億ドル(約160.5億円)を調達。2018年にはユーザー数が5,000万を突破した。2019年からはベビー用品以外の分野にも進出し、美容、アパレル、デジタル家電、食品などが商品カテゴリーに加わっている。扱うブランドは3,000以上で、品目数は2万を超えるという。モールタイプのプラットフォームではないため、法人アカウントは存在せず、基本は個人のアカウントのみ。子どもがいるユーザーのコメントや投稿には、アカウント名とともに子どもの性別と年齢が記載されるのも特徴のひとつだ。同社はベビー用品の「兔頭媽媽甄選」やスキンケア用品の「法蔓蘭」など、複数の自社ブランドも展開している。

Xiangwushuo(享物説)

上海享物説網絡科技が運営する享物説は、孙碩CEOが2017年にローンチ。最初は中古品を扱うフリマアプリとしてスタートしたが、2018年からはBtoCにも範囲を広げ、新品も取り扱うようになった。

同アプリの特徴は、決済に独自のポイント「小紅花」を使用することだ。ユーザーは、アプリ上でポイントを購入し、それで商品を買う。これまで紹介したアプリは、ECをメインにSNSの機能を加えた感じだが、同アプリはSNS色がより強く、メニュー画面に商品カテゴリーが存在しない。メニューから「互送」を選択すると、中古品に関する投稿がタイムラインで表示され、「品牌(ブランド)」を選択すると、企業が販売する商品が表示される。また、「享物(モノを楽しむ)」を選択すると、ユーザーがおすすめの商品などがタイムラインで表示される。ただし、それは必ずしも同アプリで販売されている商品ではなく、タオバオなどのリンク先が記載される仕組みとなっている。

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Xiangwushuoのアプリより

同アプリは立ち上げから間もないにも関わらず、次々と資金調達に成功。同社のウェブサイトによると、ユーザー数は2019年2月時点で8,000万を超える。ユーザーは18歳から35歳の女性が中心だという。同社はまた2018年に中国大手の中信銀行と提携し、ダブルネームのクレジットカードを発行。同アプリ以外の場でもクレジットカードを利用することで小紅花を獲得できるようになった。同社は、「ポイント経済圏」の構築を目指しているとも推測できる。

ストア排除でもユーザーの忠誠度が高いRED

こうしてみると、SNS型ECのサービスが多様化していることがわかるが、やはりREDの存在は抜きん出ている。とくに美容分野においてはそれが顕著だ。同アプリには影響力のあるインフルエンサーが多数存在し、「Perfect Diary(完美日記)」のような新興化粧品ブランドが勢いをつけるきっかけになっており、同ブランドのRED公式アカウントのフォロワー数は170万を超えている。

創業者の瞿氏は9月に開催された起業家フォーラムの席上、中国の国産ブランドを念頭におき、3~5年で新消費、新ブランドの黄金時代がくると発言。REDは新ブランドが消費者と接触する重要なプラットフォームになると断言している。

競合は多くても、REDはユーザーからの信頼が厚く、アプリストアからの撤去も、実際のところほとんど影響がないようだ。同社は8月1日にWeiboの公式アカウントで「徹底的に調査して改善する」と声明を発表した。それに対して4,000以上のコメントが付いたが、多くは同アプリを支持する内容だった。

REDがここにきて叩かれているというのは、それだけ存在が大きくなった証しでもある。同社は米ナスダックでの上場を目指しているとされるが、上場後に多数のニセモノが流通しているのが発覚すれば、米国から知的財産権軽視と責められかねない。ストアからの締め出しは、それを防ぎたい中国政府の思惑もあったのかもしれない。過去には、李克強首相が鄭州にあるREDの保税倉庫を視察に訪れたこともあり、同社と政府との関係は悪くないはずだ。適切に問題を処理すれば、REDは再び上昇気流にのるに違いない。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: AnemStyle via shuterstock


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