新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

中国「言安堂」スキンケアの専門情報とコミュニティ、ECで新たな価値提供へ

◆ English version: Chinese membership-based platform Yanantang, a hit with Key Opinion Consumers for its expert skin care tips and products that catering to Asian skin
◆ New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

スキンケアのニーズが大きい中国の化粧品市場に、スキンケア分野に特化した情報提供をするサービスが登場して話題になっている。オウンドメディアとECをあわせもつ会員制プラットフォーム「言安堂」だ。その特徴を紹介するとともに、今後について展望してみたい。

スキンケア製品の安全性や成分への関心を高める中国消費者

東莞証券のレポートによると、2019年の中国化粧品市場は4,777億2,000万元(約7兆7,000億円)だったが、うち5割以上の2,444億1,500万元(約3兆9,000億円)はスキンケア関連だ。2020年は中国でも新型コロナウイルス感染症の感染拡大に見舞われたが、マスクを着用する機会が増えたことやステイホーム生活のストレスからくる肌荒れなどの悩みもあり、スキンケアへの関心がさらに高まったとみられる。

なかでも安全性や成分への関心が高く、中国メディア第一財経とアリババグループの共同調査機関・CBNDataのレポートによると、2020年2月以降、インターネットでは化粧品成分に関する検索数が増えている。とくに若い世代にその傾向が顕著で、「90后(1990年以降生まれ)」や「95后」による検索数は、「80后」や「85后」の倍以上だ。そうしたなかで、最近注目を集めているサービスが「言安堂」だ。

言安堂の創業者はユニリーバの研究開発出身

言安堂は、復旦大学発ベンチャーの「言安堂是黛芮生物科技(上海)」によって2016年にローンチされた。創業者の趙国慶CEOはユニリーバで研究開発に携わったのちに、米ODM/OEM企業Dermaceutical Productsの中国法人・輝達生物医薬(蘇州)の総経理を務めた。その後、復旦大学のMBAで学び、言安堂を立ち上げた。同社は2018年、上海市大学生科技創業基金会が主催するイベントでエンジェルファンド賞の優秀プロジェクトに選ばれている。

画像2

WeChatでの展開がメインの言安堂
出典:言安堂WeChat公式アカウント

言安堂はWeChatの購読アカウントをオウンドメディアとして活用し、スキンケアに関する情報発信から事業を開始した。化粧品を設計・開発するフォーミュレーターや美容皮膚科医師などの専門家が、海外のデータ等も引用しながら成分の解説や化粧品選びなどについて記事を執筆している。なかには、肌質をDNAレベルで解説する専門性の高い記事もある。

同アカウントでは、毎年化粧品のカテゴリーごとに賞を決める「成分党大賞」を発表している。「成分党」とは読んで字のごとく「化粧品の成分にこだわる」ことを指し、中国で最近よく使われる言葉だ。

成分党大賞は、その年に売上が良かった商品や話題となった商品、新商品など500点以上をリストアップし、同社の研究部門である「言安堂肌肤(皮膚)管理研究院」が中心となって160点に絞る。それらをブランド理念、消費者のクチコミ、使用感、商品力、環境への配慮という5項目で、20名の専門家と消費者の代表が5段階評価し、高評価をつけた5~10点程度の商品を選出している。

海外ブランドと中国ブランドが分け隔てなく選ばれているが、日本ブランドは、2020年度ではクレンジング部門と美容液部門が強かった。クレンジング部門では、カネボウ化粧品 フリープラスの「マイルドソープa」とクレ・ド・ポー ボーテの「クレームデマキアント」が選出され、美容液部門では、資生堂 ハク(HAKU)の「メラノフォーカスV」とドクターシーラボの「スーパーホワイト377VC」が選出されている。

画像3

「成分党大賞」に選ばれた
日本ブランドのスキンケア商品
出典:言安堂WeChat公式アカウント

ECを運営しながら自社ブランド「diary」も立ち上げ

ただし、情報発信だけでは大きな収益は得にくい。同社が収益源としているのはECだ。オウンドメディアを立ち上げてすぐにECサイトとして「言安堂優選」を開設し、国内外の厳選商品300点以上を販売する。タオバオ(淘宝)に出店しているほか、WeChatのミニプログラムでも販売。ミニプログラムは、同社のWebサイトからもアクセスすることができる。

言安堂優選は中国の通常のECよりもカテゴリー分けが細かく、たとえば美容液だけでも「保湿・スージング」「オイルコントロール・にきび対策」「美白・ブライトニング」「リフトアップ・シワ対策」に分けられている。商品の説明には、フォーミュレーターによる成分解説が記載されているものもある。日本ブランドでは、フリープラスやユースキン、ラフラ(RAFRA)、ハーバー(HABA)、ラボラボ(LaboLabo)などが取り扱われており、グローバルのメジャーブランドは少ない。

同ECは他社製品の販売にとどまらない。2017年には自社ブランド「diary(言之有物)」を立ち上げた。ミニプログラムや後述する企業アカウントの会員など15万以上のユーザーデータをもとに、米国OEM企業のL'Onvieと共同開発された同ブランドは、アジア女性の肌トラブルを解決することに主眼を置き、消費者から直接声を聞きながら開発が進められた。美容液や美容オイルなど十数アイテムを展開。有効成分の配合にこだわった商品を200元(約3,200円)程度の手頃な価格で提供している。

画像4

言安堂の自社ブランド「diary(言之有物)」
出典:言安堂公式サイト

現地の報道によると、フェイシャルマスクは18カ月で100万個が売れ、年間GMV(流通総額)は6,000万元(9億7,000万円)を超えるという。diaryは言安堂優選内で販売しているだけでなく、2020年には「Tmall(天猫)」に単独出店した。ゆくゆくは言安堂以外のショップでも販売していきたいとしている。

グループチャットの活用でユーザーロイヤリティを醸成

WeChatでは購読アカウントだけでなく、企業アカウント「言安堂会員倶楽部」も運営している。こちらでも時々情報発信をしているが、どちらかというと、言安堂優選で販売している商品のプロモーションが多い。

むしろ言安堂会員倶楽部は、情報発信よりも会員サービスに重きを置いている。選択式の質問に答えることで自分の肌質や髪質がわかる肌診断と髪診断が実装されているほか、言安堂皮膚管理研究院がカリキュラムを作成し、成分の解説やスキンケアの方法を教えるオンライン講座も提供している。

画像1

言安堂会員倶楽部の肌診断
出典:言安堂WeChat公式アカウント

こうした講座では、理解度を確認するための試験も用意しており、合格した等級によってユーザーは試供品やクーポン券などのさまざまな特典を受けることができる。講座は一般ユーザーだけでなく、美容部員やKOLなど会員以外も受けられる。

さらにWeChatでは「社群」を活用している。これはLINEのグループチャットのような機能で、先ごろニューヨーク証券取引所に上場した新興ブランド「Perfect Diary(完美日記)」と同様の、いわばコミュニティ戦略だ。

WeChatの購読アカウントや企業アカウントでは1日1本しか情報を配信できないが、社群にはその制限がなく、ユーザーへのアプローチがしやすい。ただし1つの社群ですべてのユーザーを受け入れることはできないため、合計280もの社群を運営。すべての参加者を合わせると5万6,000人以上に達する。

社群では、ユーザーが1対1でカウンセリングを受けたり、専門医の診断を受けたりすることもできる。言安堂はデータ収集に加え、ユーザーの肌の悩みに答えるなどの相互交流を活発にすることで、顧客ロイヤリティを高めているのだ。

同社はまた、KOL(キー・オピニオン・リーダー)よりもKOC(キー・オピニオン・コンシューマー)を重視してきた。KOCの口コミによって、フォロワーや会員を増やし、ECでの売上につなげてきたのだ。中国メディアの報道によると、WeChatのフォロワーのコンバージョン率(CVR)は10%という。通常のWeChatのミニプログラムのCVRが平均5%強ともいわれるなか、倍近い数字だ。

現在ではWeChatだけでなく、WeiboやRED(小紅書)などにもアカウントを開設している。これらを含む総フォロワー数は200万を超え、言安堂会員倶楽部の会員数だけでも20万以上になるという。

資金調達で言安堂が目指す「規模の拡大」

言安堂は2021年に入り、プレシリーズAラウンドで1,000万元(約1億6,000万円)を調達した。同社はこの資金調達によって、規模のさらなる拡大を目指している。

趙氏は自身のWeiboのアカウントで、「引き続き言安堂のプラットフォーム化を推進し、さらにオープンにし、より多くのブランドやチャネルと提携して美容業界の精緻な研究開発と広告宣伝に寄与したい」と投稿している。また、フォロワー数を1,000万、会員数を100万に引き上げることを目標に掲げている。

一方で、自社ブランドの目標には触れていない。ブランドとしての成功よりも、ユーザーとブランドを繋ぐプラットフォームとしての成功に重きを置いているようだ。ユーザーは言安堂を通じて自分に最適な商品が見つけられ、商品を供給しているブランドにとっては、消費者が何を求めているかがわかる。この仲立ちをすることが、言安堂の目指すポジションである。趙氏は、言安堂を発展させ、WeChatに依存しない、美容特化の独立したプラットフォームの立ち上げを構想しているともみてとれる。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: metamorworks via Shutterstock


ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
16
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp