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マニラFaBは2回目を開催、急成長をみせるフィリピンのEC関連スタートアップ

◆ English version: Philippines startup ecosystem is “Bang for Buck”, watch out: FaB Manila emerging
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起業家と投資家をつなぐFaBコミュニティの一員として、成長目覚ましいフィリピン経済の起爆剤となるスタートアップの育成と支援を目指す。それが、マニラに拠点をおくFaB Manilaである。フィリピンのスタートアップ事情と、急成長するEC関連ビジネスを手がける起業家たちの思いを現地からレポートする。

2019年10月5日、マニラで開催されたFaB Philippinesのミートアップには約30名の参加者が集い、他国に比べるとやや小規模な会となった。だが、その熱量と意気込みは決してどこにもひけをとらないのは、FaB Manila支部をスタートして3ヶ月あまりで、すでに2回目となるミートアップを開催していることからもわかる。

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第2回のミートアップには、伸び盛りの地元スタートアップのCEOらが登壇し、フレンドリーで、親しい友が久しぶりに集まったかのような温かみのある雰囲気のなかで、活気に満ちたトークが繰り広げられた。お互いの話に熱心に耳を傾け、うなずき、称賛の言葉を惜しまないパネルディスカッションでは、同時にフィリピンのビューティ&ファッション業界の現状を冷静に分析しながらその将来を語るもので、コミュニティのメンバーの思い入れが伝わってくる。

その姿はもしかしたら、FaBコミュニティが、BeautyTech MeetUpの名前でサンフランシスコに誕生したときの熱い思いに通じるものがあるのかもしれない。前身の BeautyTech MeetUpは、元ランコムCEOであるオディール・ロウジョル氏が、テクノロジーをテコにビューティやファッションの分野でイノベーションを進めることを目指す起業家や創業者、女性投資家を組織し、定期的にミーティングを開くことで知識や情報を共有して、エンパワメントやメンターとしての活動につなげる目的でスタートした。

コミュニティとして協力しあいエンパワメントしようとする精神は、まさに今回のミートアップ主催者のミンリー・マカプゲイ(Minrie Macapugay)氏が、フィリピンにFaB Manilaを立ち上げた理由である。それは、恐れ知らずな行動ともいえるだろう。マニラのスタートアップのエコシステムは、サンフランシスコやパリ、ニューヨークや東京の規模にはるかに及ばず、ファッションやビューティ分野におけるテクノロジーの進展も遅れているのは事実だからだ。

だが、若く、粘り強く、エネルギッシュなマカプゲイ氏は、自身がエンジニアであり、スタートアップの創業者でもあることから、FaB Manilaが同地で活動する起業家やイノベーターがアイディアを交換する出会いのハブとなり、フィリピンの業界全体に次の変革と発展をもたらす存在として機能すると確信している。

「マニラにはすでにテックを活用したサービスを提供するスタートアップがいろいろあるとはいえ、ファッションやビューティ分野はこれからだ。だからこそ、人々にテックがビジネスを成長させるということを(このミートアップのような活動を通じて)知ってもらうべきであり、それが業界を活性化し次世代のスタートアップを輩出することにつながる」とマカプゲイ氏は話す。

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左からディエゴ・ブエナフロー氏、
スティーブ・スィー氏、
アビー・ヴィクトリノ氏、
ロン・バーティオン氏、
ミンリー・マカプゲイ氏

マニラのスタートアップを取り巻く環境

マカプゲイ氏が描くこうした展望には根拠がないわけではない。2019 Global Startup Ecosystem Reportによれば、マニラは世界で最も注目すべきActivation Phase Ecosystems(活性化段階のエコシステム)のひとつに数えられている。同様に“出資する価値がある”グローバルエコシステムのトップ10、Activation Ecosystem for Connectedness(連携性のある活性的エコシステム)のトップ5に、それぞれランクインしている。

さらには、起業家が競争力のあるチームを作ることを可能にする「経験豊富なテック人材」がいることや、「革新的な起業家カルチャーを育む」法制が議会を通過したことを受けて、スタートアップへの支援が進んでいるとも認められている。

近隣の東南アジアの国々に遅れをとっているともいわれがちなフィリピンだが、数字から考えると成長の途上にあるとの見方ができる。調査機関Startup Blink のランキングによれば、フィリピンのスタートアップ・エコシステムは16位上昇して世界100カ国中54位になった。また、過去3年足らずの間にスタートアップに対してなされた投資は1億ドルを超え、これはシンガポールやインドネシアを追い抜く額である。

こうした指標が、いずれも簡単に達成できる偉業ではないことも考慮すべきだろう。各国の起業家が多かれ少なかれ直面するさまざまな課題に加えて、フィリピンでは、政治腐敗、経済の不安定、広がる貧富の格差、物理的かつ経済的なインフラの不備といった新興市場経済の厳しい現実に取り組まなければならない。どれひとつをとっても、起業をあきらめてしまう十分な理由になりうるのだ。言い換えるなら、これらの困難を越えてなお、フィリピンは経済成長を果たしているということだ。

ボットによるカスタマーサービスの自動応答

フィリピンの人々はそもそも、とても社交的であることはよく知られている。この気質はデジタルの世界でも同じで、7,600万人のアクティブネットユーザーのうち、7,500万人がFacebookの利用者である。また、ソーシャルメディアを利用している時間は1日あたり4時間12分で、世界平均の約2時間を大きく上回り、4年連続で1位を記録している。

フィリピンのファッション&ビューティテック市場では、AIでパーソナライズ化した美容液も、スマートメイクアップ3Dプリンターもいまだ登場していないが、目下のところ、企業が力を入れているのは、活況のソーシャルメディア上での顧客とのエンゲージメント、そして購買に至るまでの体験をいかにパーソナライズするかという点だ。

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出典:Chatbot PH 公式サイト

パネリストのひとり、Chatbot PH の創業者兼CEOのロン・バーティオン(Ron Baetiong)氏は会話型コマースの重要性を説く。同社はブランドのウェブサイト上のFAQ(よくある質問)に対する自動応答をサポートするサービスを提供している。「(料金・価格が)これいくら?」という意味のタガログ語の略語「hm po」という言葉は、ソーシャルネットワークの企業アカウントの購入ページやコメント欄でしばしば見かけるが、限られたスタッフと資金で運営するスタートアップにとって、その対応は少なからぬ負担だ。こうした質問への回答作業をAIが肩代りする。

ただし、ボットが答えにつまり動揺するケースもあるとバーティオン氏は指摘。「店の場所はどこですか?とか、いくらですか?という質問には簡単に答えられるが、たとえば “この服のデザインは、私のウエストラインをきれいに見せてくれると思う?”と聞かれたら、ボットは対応ができない。少なくとも今の段階では」と説明する。

オンライン・ファッションスタイリスト・サービスのStyleGenie の創業者兼CEOのアビー・ヴィクトリノ(Abbie Victorino)氏にとって、顧客との信頼関係を築く最初のステップとして“会話”は重要な意味を持つ。StyleGenieではサイトを訪れたユーザーのことを知りプロファイルをつくるために、“クイズ”という形式で好みのスタイルなどパーソナルな情報を引き出している。

「ユーザーが使いやすい仕様にするのはもちろんのこと、私たちのブランドを信頼して、心を開いてもらうために、生身の人間のスタイリストと話しているかのように感じられる工夫をしている」とする。クイズへの答えからユーザーが望んでいるスタイルを割り出し、ふさわしい服をセレクトして、1回限り、あるいは毎月定額のサブスクリプション形式で顧客の自宅に配送する同社にとって、顧客との絆をつくることはビジネスの要となる。

あわせてヴィクトリノ氏は、顧客のニーズや求めているものを根本から理解するために、ソーシャルネットワークが無料で提供している世論調査やサーベイなどのツールを活用することを、若いスタートアップに勧めている。

ライブストリーミングによる販売

同じセッションには、フィリピンを代表するECディストリビューター企業Great Deals Corp の創業者兼CEOで、周囲から「Eコマースの神」とあがめられるスティーブ・スィー(Steve Sy)氏も登壇。ECサイトを訪れる顧客はもはや商品の写真が並んでいるだけでは満足せず、昔ながらの売り手との対話がある販売を求めているとして、それを叶えるのがライブストリーミングだと話す。

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出典:Great Deals Corp 公式サイト

アプリやFacebook、あるいはLazadaやShopeeといったプラットフォームを通して、ライブストリーミングならその場で質問もでき、気に入ったら即座に“カートに入れる”をクリックすればいい。

「なんといっても優れているのは、売り手が全てのコメントにすぐさま答えてくれるところだ。リアルなインタラクティブが生まれる」とスィー氏。しかも、さまざまなプロモーションやキャンペーンも簡単にできる。たとえば「今から5分間だけ、ギフトをつけるよ」と一言発するだけの手間なのだ。

代引きと個人取引きの社会

Emarketer のGlobal E-commerce 2019によると、フィリピンのECリテールの売上高はなんと前年比31%増の伸びを示し、世界で第3位となっている。そのなかでファッションの占める割合は17%で、これはグローバルなトレンドと呼応する数字だ。

しかし「こうした調査には含まれない、隠れた大きな小売りがある。それがソーシャルコマースだ」と語るのは、Ellana cosmetics のCEOで、FaB Manilaの共同創設者でもあるディエゴ・ブエナフロー(Diego Buenaflor)氏である。「ViberやWhatsApp、Messenger、あるいはInstagramのダイレクトメッセージを通して行われる個人対個人の売買の規模は計りしれない。しかもフィリピンの人々は、(ECよりも)1対1のパーソナルな取引きをより好む傾向にある」からだ。

Ellana Cosmeticsはフィリピンを代表するミネラル化粧品ブランドの1つで、東南アジアの女性の肌に合う自然派コスメをラインナップしている。

ブエナフロー氏はまた、Eコマースのゲームチェンジャーは、日本の代引きにあたる「COD(cash on delivery)」で、同社の売上げの8割を占めていると明かす。これは前述のように銀行口座を持たない人々が、いかにメッセージアプリやFacebook、Instagramなどを通じてソーシャルコマースを利用しているのかを示している。2019年現在、フィリピンでの銀行口座の所有率は人口の35%で、そのうちクレジットカードを持っているのは2%というのが現状なのだ。

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左からシエラ・フュエンテス氏 、
マイキー・フェデリーゾ氏、
ミンリー・マカプゲイ氏

小さなオペレーションから始める

会場から、どうすればビジネスを成功させられるのかという質問があがったのに答えて、オーガニックのパーソナルケア製品のセレクトECであるLinea Organica のマネージング&マーケティングダイレクターのマイキー・フェデリーゾ(Mikee Federizo)氏は「私の父は、自分自身が泳ぐ海をつくるのは自分だと教えてくれた。私たちの例でいうなら、Linea Organicaは単にビューティビジネスの一員ではなく、もっと広い視点でオーガニック産業の一員であると考えている」と話し、企業としての視点と立ち位置をどこに定めるかの大切さを説く。

一方、サステナブルなファッションアイテムを手頃な価格で販売するD2C、ForthCo.Ph の創業者兼CEOのシエラ・フュエンテス(Shiela Fuentes)氏のアドバイスは、小さなビジネスからスタートするのを恐れてはいけないということだ。

また、オーガニックなライフスタイルを送るためのヒントを求められたフュエンテス氏は、たとえ完璧にはいかなくても、膨大な数の人々が廃棄物ゼロを意識したライフスタイルを送るほうが、ごくわずかな人々が100%ゴミを出さない生活を実践するよりもインパクトをもたらせるとして、できるところからサステナブルな暮らしをはじめるのが大切だと示唆した。


Text: クリスティン・ロケ(Christine Roque)
翻訳:そごうあやこ (Ayako Sogo)原文

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