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美容リテールDX最先端、非接触ソリューションで売上増、行動データも取得【WeCosmoprof 2021】

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Cosmoprofの名を冠する5つの国際美容展示会が合同でオンライン開催した2021年のコスモプロフ。美容業界のグローバルトレンドや新製品を紹介する恒例のウェビナー「COSMO TALK」から、注目のセッションを取り上げて2回にわたりレポートする。1回目のテーマは非接触ビューティとフィジタルな体験だ。

パンデミック後も加速する「非接触ビューティ」ソリューション、7つのテーマ

「Cosmoprof(コスモプロフ)」は、毎年ボローニャ、ラスベガス、ムンバイ、香港、バンコクで開催される国際美容展示会だ。今年はパンデミックの影響で、この5つの展示会の合同開催となり、世界の美容関連企業をつなぐB2Bオンラインイベント「WeCosmoprof International(ウィコスモプロフ インターナショナル)」として、2021年6月7日〜18日まで10日間にわたってデジタル開催された。

40カ国から698企業が出展、最適なビジネスパートナーをみつけるマッチングプラットフォームCosmoprof My Matchを通じて、5万2,200以上のB2Bオンラインミーティングのリクエストがあった。また、20を超えるウェビナーに80名以上が登壇した。調査会社や新進のスタートアップが美容業界の動向について講演する「COSMO TALK」では、サステナブル、ウエルネス、顧客の心をつかむ購入体験、急伸する中国市場のトレンド、インクルージョンなどがテーマのセッションが行われた。今回はCOSMO TALKのなかでもとくに注目を集めた「非接触ビューティ(Cosntactless Beauty)」と題したセッションを中心にレポートする。

美容業界におけるEコマースはパンデミックを機に加速したが、「実際に商品を見たり、触れたりすることなく購入する」というハードルを越えるため、あるいは選択商品のミスマッチを防ぐために、商品選びの助けとなるデジタルソリューションが求められている。また環境配慮の視点からも、返品あるいは未使用の廃棄を防ぐ必要があるとして、同セッションのなかで、調査会社Coresight Researchの創業者デボラ・ウェインスウィグ(Deborah Weinswig)氏は、コロナ禍で美容業界の成長に寄与した革新的な7つの非接触ソリューションを例にあげた。

1. バーチャルトライオン

スマートフォンアプリでメイクアップやヘアカラーなどの色味をAR/AI技術で試すバーチャルトライオンは、好きな時間にどこからでも利用でき、自分に似合う商品を効率的に発見できる。購入前に使用イメージをつかめるため、返品や廃棄の削減にも有効だ。世界300ブランド以上にアプリを提供しているPerfect Corp.によると、バーチャルトライオンを利用すると、コンバージョン率(CVR)が2.5倍、エンゲージメントは300%、Web滞在時間は100%以上増加するといい、デジタル体験が購買行動に影響を及ぼすことが示された。

2. QRコード

QRコードの利用も、商品情報の提供や、消費者をさまざまな体験に誘導するツールとして急増している。実店舗の陳列棚に表示しユーザーがスキャンすれば、自身のモバイル上でさまざまな操作ができるため、不特定多数が触るであろう商品やタッチパネル画面に触れることなく商品の詳細情報を得られ、シームレスに購入まで進むことが可能となる。

店内でQRコードを採用する米国のウルタ・ビューティでは、2020年には1,100万人の顧客がQRコードをスキャンし、専用アプリやウェブサイトでは1億回以上のメイクアップシェードのトライオンが行われたという。中国では化粧品小売店の店頭のQRコードからWeChatのロイヤリティプログラムやオンラインでの特別体験に誘導するなど、リアル店舗に足を運ぶことで得られるフィジタル(フィジカル+デジタル)なストア体験としても活用されている。

3. テスター / サンプリング

テスターやサンプリングでは、安全性とサステナブルを考慮した方法が模索されており、仏企業Meiyumeは、手をかざすと適量の美容液が滴下する、モーションセンサーを使ったディスペンサーを開発した。顧客が自らセンサーに近づいて試すため、店舗スタッフとの適度な距離も保つことができ、消費者・従業員双方の安全を考えたテスターデバイスといえ、購入前に商品の香りやテクスチャーを試したい消費者ニーズに応える。

フレグランスでは、iD SCENTから、香りが長続きする特殊な紙に香水を染み込ませたテスター「SCENTOUCH」が登場している。使用する紙は100%リサイクル可能で、Eサンプリング、雑誌の差し込み広告にも有効だ。

4. ライブストリーミング

中国ではソーシャルコマースが活況を呈しており、ライブストリーミングはEコマース急成長の原動力となっている。リアルタイムでインタラクティブにコミュニケーションがとれることから、消費者はライブ配信中に質問でき、その場で疑問や不安を解消できる。ブランド側はニーズやインサイトをダイレクトに得ながら、顧客とより深い信頼関係を築くことができ、単なる販売チャネルを超えて、ファンコミュニティの形成に役立つ存在となっている。

セレブリティやエキスパート、KOLなどが、臨場感とエンターテイメント性をもたせながら進行することが多いが、マイクロ(1万人以上)またはナノ(1,000〜1万人のフォロワー)インフルエンサーの方がエンゲージメントのレベルが高く、そのレコメンドを信頼する人の割合も多いため、費用対効果の面からも、マイクロまたはナノインフルエンサーはブランドにとって重要な存在になりつつあるという。中国では今後、ライブ配信による情報提供とショッピングがスタンダードになっていくと考えられ、インフルエンサー・マーケティングコースを備えた教育機関も登場している。

Yiwu industrial and commercial collegeの
インフルエンサー・マーケティングコース

5. バーチャル・コンサルティング

Zoom、WhatsApp、FaceTimeといった一般的なビデオ会話ツールから、Heroなどの専用ツールを活用したバーチャル・コンサルテーションは、1対1で、まるで店内で接客を受けているかのようなハイタッチ(人との触れ合いが感じられる)サービスだ。会話中にバーチャルトライオン機能を活用して似合う色をみつけるなど、美容部員が顧客の自己発見や問題解決に寄りそうことができる。このようなパーソナライズされた特別体験は、エンゲージメントやCVRを高めるとされる。

6. チュートリアル / マスタークラス

さらに、ブランドやインンフルエンサーは、動画コンテンツでチュートリアルやマスタークラスを展開している。プロのメイクアップアーティストや著名人とつながり、新商品の紹介や使用方法のコツが学べるとあって、有料でも参加者が多く、その高揚感からCVRも上がる。ウェインスウィグ氏は、ライブストリーミングとあわせたチュートリアルは、大きなビジネスチャンスになるだろうと話した。一例では、クリニークのマスタークラス「Skin School」において、ライブストリーミングのチュートリアルセッション中の商品購入を可能にした。

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出典:クリニーク公式サイト

7. ライブチャット

一方、販売員と文字で相談できるライブチャットは、リアルタイムでパーソナライズなアドバイスを得られることから、チャット中に購入に至るパターンが多くみられるという。2021年2月にエスティ ローダーが北米で実施した美容部員とのライブチャットではCVRは市場平均の4倍近くまで上がり、ホリデーシーズンに実施したビデオチャットでは通常よりも購入金額がアップしたという。こういった1 on 1の対話は、新規顧客やロイヤルユーザーなど、さまざまなプロフィールのユーザーから商品に関するフィードバックやインサイトを得られるメリットもあり、ブランドにとって貴重な機会となる。

ニュートロジーナのAI肌分析アプリがもたらす顧客体験

「非接触ビューティ」セッションでは、いち早くデジタルツールを取り入れた企業の例として、ジョンソン&ジョンソン傘下のニュートロジーナが紹介された。同社は2018年にAI肌分析アプリ「Neutrogena Skin360」を発表、2020年のCESではその改良版を発表して話題を呼んだ。このアプリでは180度の自撮り写真をとるだけで、肌の状態を即座に分析し、ユーザーが目指す肌に必要なケアのレコメンドが提供される。また、天候など外的要因のほか、睡眠、運動、ストレスなどライフスタイルに関する質問への回答を加味して、ホリスティックにアプローチし、時間の経過とともに肌状態の進捗をトラックできる。

AI肌分析アプリ
「Neutrogena Skin360」

ニュートロジーナは、メイクアップ製品ではYouCamのARバーチャールトライオンアプリを導入した。パンデミックで実店舗でのタッチアップやテスター使用ができなくなったことから、消費者のアプリ利用が加速しており、バーチャルトライオンは商品選びに不可欠なツールになりつつある。マーケティング・バイスプレジデントであり、ニュートロジーナのジェネラルマネージャーのケリー・サリヴァン(Kerry Sullivan)氏はその重要性を指摘し、「シームレスなトライオン体験は、実店舗はもちろん、オムニチャネルでも利用でき、すでに必須のツールだ」と強調した。

店舗内の双方向ディスプレイで売上増、顧客データも取得

また、フィジタル(Physical+Digitalをかけあわせた造語)なショッピング体験を提案する企業も登場している。米国企業Perch interactiveは、陳列された商品に触れたり、手に取ると、その商品情報を即座に備え付けのデジタル画面に表示するサービスを提供する。ブランドは消費者に伝えたい情報を瞬時に表示でき、消費者はタイムリーに自分が知りたい情報を得られる。QRコードを表示して、アプリ上で商品の色やデザインをパーソナライズしたり、決済するといった消費者側の利便性の向上はもちろん、企業側は消費者の購買行動をデータ分析することで、百貨店や小売店にブランド価値や利益の上がる陳列棚を提案することも可能だ。

カバーガールのNYタイムズスクエア店で同社の技術をメイクのバーチャルトライオンに導入したところ、すべてのSKUで40%売上が増加、同店を訪れた25%の顧客がバーチャルトライオンを体験し、20%がEメールまたは携帯番号を登録したという。また、Perchの技術を導入すると平均87%売り上げが増加(メイクアップカテゴリーでは37%、スキンケアでは188%)し、一般的なデジタルサイネージよりも売上が10倍となった。

タッチフリー技術や非接触でも「触覚」の再現などのイノベーション

さらに先進的な非接触ツールの開発も進んでいる。AI搭載のハンドトラッキング技術を持つUltraleapは、画面にタッチせずにジェスチャーで指示ができるタッチフリーの技術を提案している。同社によると、街中や駅、店舗などで使用されているデジタルタッチスクリーンは便利だが、80%の人が公共のタッチスクリーンは衛生的ではないと感じているという。その解決策となるのが、画面に触らずに手の動きでコマンドできるタッチフリーの技術だ。

米国と英国の500名以上にフードコートでの注文や決済方法の好みについて調査したところ、34%がスクリーンに触らずジェスチャーで決済したいと回答し、ニーズの高さがうかがわれる(そのほか、26%カウンター、22%モバイルアプリ、19%タッチスクリーンと回答)。現在、非接触ソリューションとして、グーグルなどから音声(ボイス)で起動するサービスが提供されているが、周囲の人々の目を気にせずに利用できる点では、タッチフリーの技術のほうが汎用性はありそうだ。

さらに、同社のハンドトラッキング技術にハプティックス技術(接触によって生じる身体的感覚を再現するデジタル技術)を融合すると、画面や物に触れていないのに、空中で触った感覚を創り出すことができる。具体的には、同社のデバイスから超音波を発信して手のひらを圧迫することで、バーチャルでものに触った感覚を作り出す。たとえば、画面をタッチしたり、凹凸のあるボタンを押したような感覚を得られる。視覚や聴覚への刺激と合わせて利用すれば、エンターテイメント性のある没入体験も創造可能だ。物理的な空間とデジタル世界の間のギャップを埋めるテクノロジーといえる。

感覚は人によって感じ方が異なるため、肌のなめらかさなどテクスチャーを表現することは現時点では非常に難しいというが、ハプティックス技術を応用して、将来的には化粧品のテクスチャーやテキスタイルの質感などを認識できる技術が期待される。

サステナブルなデバイスで香水の非接触トライアルなど

COSMO TALKの別セッション「デジタル&フィジタル(Digital and “Phygital”)」では、店舗体験やセルフケア体験を変えるデジタルデバイスが紹介された。

遠隔では伝えにくい香りを届けるソリューションとして、ブラジル企業NOARは、20種のフレグランスを100プッシュ分入れられるタブレット型のデバイス「MultiScent 20」を提案。ユーザーがデバイスに表示されたQRコードをスキャンし、モバイルアプリ上の商品カタログから好きなフレグランスを選択すると、その香りがデバイスから噴射される仕組みだ。リアル店舗での非接触ツールとして展開可能で、従来型のフレグランスのサンプリングやテスターで使用される紙やプラスチックなどの廃棄物も減らせるとする。

また、スイスのRÉDUITは、化粧水やヘアケア製品をミスト状に噴出させる小型の非接触デバイスを開発。磁気ミストを超音波拡散させることで、手で塗布するよりも成分を深く皮膚に浸透させるという。デバイスはカプセル型のレフィルを詰め替えることでスキンケアにもヘアケアにも使用できる。1回のケアに必要な化粧品の分量を大幅に減らす一方で、より高い効果を実現。あわせて繰り返し使用できるデバイス型の容器でサステナブルな設計としている。

パンデミックをきっかけに、衛生面の安全性や環境を配慮した非接触ツールやデジタルサービスが浸透しつつある。今後は5Gの普及により、今までにない五感に訴えるデジタル体験や、実店舗でのリアルな没入体験の創造もさらに加速するだろう。触覚、嗅覚など遠隔では伝えづらいと思われていた領域も、先端技術によってデジタル化され、身の回りで利用できる日も遠くなさそうだ。

次回はWeCosmoprof InternationalのCOSMO TALKセッションで紹介された、美容業界のサステナブルについてレポートする。

Text: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: Perch interactive公式サイト

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