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ノインプロデュースのコンビニ限定コスメ「sopo」、大ヒットの背景と2021年の展望

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伊藤忠商事との提携から半年、ノイン株式会社は新ブランド「sopo(ソポ)」をコンビニ大手のファミリーマートと手を組みスタートさせた。滑り出しは順調で、人気アイテムは品切れの店舗が出るほどだ。sopoはどのようにして誕生し、なぜユーザーの心を掴んだのか。そして今後のノインの事業戦略にどのようにからむのか。ノイン株式会社 代表取締役CEO 渡部賢氏に話を聞いた。

「コンビニの課題解決」に勝機を見出した理由

sopo」が扱うのは「3 in 1 アイブロウ」(2色、各1,250円税抜)、「カラーアイライナー」(5色、各900円税抜)、「カラーマスカラ」(5色、各850円税抜)の3アイテム。ファミリーマート専売のブランドで全国1万6,600店舗に順次専用コーナーが設けられている。コロナ禍でコスメ業界全体の売上が2割減で推移するなか、2020年11月10日のsopo発売初週のファミリーマートが扱うメイクカテゴリー売上は、前年比140%を記録。それから1ヵ月もたたないうちに、追加生産の対応に追われているという。

プロジェクトのスタートは2020年2月にさかのぼる。4月に提携発表した伊藤忠商事を介してファミリーマートとコンタクトをとったのがはじまりだったという。

渡部氏はその時のことを次のように振り返る。

「調べてみると、コンビニ業界は出店戦略が一段落しており、1人あたりの来店頻度や購買体験を見直さなければならない段階にあるとわかった。そこで、コンビニ業界の課題に対してノインが、どのように貢献できるかを考えた」(渡部氏)

ひとつはいわゆる10~20代のZ世代の送客である。ノインが展開するコスメECサイトNOINのユーザーは、クレジットカードを持たずコンビニ決済を利用するケースが多い。

もうひとつは新しい商品購入体験による単価向上だ。これまでコンビニのコスメ棚といえば「旅先や緊急時に買い求める場」だったものを、sopoの登場で「自らコスメを買いに行く場」「試したかったものを得られる場」へと再設計することでコスメ棚の活性化につなげることができれば、顧客の購入単価をあげられるのではと考えた。

そして最後は、都市部と地方での物流ギャップの問題だ。「地方では、百貨店をはじめとする小売りが次々と減少しており、化粧品を購入できる場所が減っている。さらに、メーカーサイドは、売上の良い店舗にのみ商品を配荷する傾向にあるため、必然的に人口や売上規模が小さい地方では商品が手に入りにくくなっている」(渡部氏)

どこにでもあるコンビニにこそ、コスメを求める潜在的需要がある。それは流通の事情から取り残された地方ユーザーにとっても意義が大きい。コンビニでしか買えない新ブランドを一緒に立ち上げようとファミリーマートに提案したと渡部氏は明かす。

ノイン側にとってもコンビニと手を組むことには大きく2つの意味があった。ノインの持つデータの価値を証明するとともに、これまでEC中心だったタッチポイントをオフラインにも展開できるからだ。

ECサイトNOINのデータを駆使した商品開発

提携が決まり、早速、商品棚の入れ替え時期にあたる秋の発売に向けて短期間で開発する多忙な日々が始まった。

商品開発の武器となったのは、ECサイトNOINに蓄積されたユーザーの行動データである。たとえば、コロナ禍でマスクの着用が常態化し、口元アイテムの売れ行きが鈍っていたというデータから、sopoで初回に取り扱う商品は目元アイテムに絞ることにした。それだけはでない。いま市場に出回っている目元アイテムの多くは2,000円前後の価格帯で容量が多く、使い切るまでに時間がかかり、かつ、何本も試せない状況があることがうかがえた。

そこでsopoでは「ひとくちだけ、試してみたい色がある」というコンセプトを掲げ、使い切りサイズで手ごろに買える価格設定にした。さらに、流行りの抜け感あるメイクに欠かせない眉マスカラをアイブロウにプラスし、日本では未発売の形状である3 in 1タイプを採用することにした。

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「カラーアイライナー」の色展開。
トレンドカラーの「バーガンディ」も

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「カラーマスカラ」の色展開。
シルバーのラメが入った
「ダイヤモンド」が一番人気という

定番色なし、アイテムと売り場の再デザインが起爆剤に

マスカラとアイライナーは全5色。ブラックなどの定番色をあえて外した色展開で勝負にでた。それには理由がある。

「ある日、デパートの美容部員の方から『50~60代の方もカラーライナーやカラーマスカラを購入するんですよ』と聞いた。その理由を尋ねると『着物や帯の色にあわせてアイライナーやマスカラを選んでいる』ということで、若い世代だけでなく幅広い年代で色ものを試したいというニーズがあることを知り、カラーだけでいけると感じた。sopoでは、今は“カラーマスカラ”という言葉を使っているが、将来的には“マスカラやアイライナーに色がついていて当たり前”というようにしていきたいと思った」(渡部氏)

あるようでなかったコンセプトと色展開で、あえて“ひっかかり”のある商品をつくったのは、コンビニで新しいユーザー体験を提供することに腐心した結果でもあった。

従来のコンビニコスメの目的は緊急需要、そこから欲しいから買いに行きたい商品としての“再発明”と、コンビニのコスメ棚という売り場の“再定義”は簡単そうで難しく、また、これまでコスメ業界からは重視されなかったコンビニという販路に注目を集めるきっかけにもなった。

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「什器も店頭でいかに目を引くか
”違和感の創出”にこだわった」
(渡部氏)

品質と機能性への徹底したこだわり

だが、どんなに戦略が正しくても、モノが悪ければ消費者の心は動かせない。

実際のモノ作りは最終的にOEMに任せるとしても、ブランドをプロデュースするにあたって、モノの良し悪しを知っている必要がある。そこでノインは商品に対する「目利き」力を高めるため、地道な調査やヒアリングに多大なリソースを割いた。日本で手に入るカラーのマスカラ、アイライナーはほぼすべて、アイブロウは膨大な数があるためすべてではないが、トレンドの商品は手元に集めたという。渡部氏も商品一つひとつを手に取って発色や使い心地を試し、カラーの最終決定は渡部氏自身が行った。

それと同時に、ノインでは自分たちが目指す商品を希望する納期で作れるOEMを探し回り、最終的にはアイライナーとマスカラを日本の大手OEMに、そして、3 in 1 アイブロウは日本では作れないことがわかり、ブルームを通じて韓国のOEM企業に委託した。サンプルは納得するまで作り直し、「タイトなスケジュールのなか、何度も何度も試作品を作り直し、満足のいくレベルに到達するまで工場の担当者と打ち合わせを重ねた」(渡部氏)という。その圧倒的な熱量と執念からなる商品力こそが、sopoのヒットの本当の意味での原動力ともいえるだろう。

外箱は文字を極力減らし、シンプルかつミニマルなデザイン、紙のパッケージのなかにはNOINで使えるクーポンにリンクするQRコードをつけて、自社ECプラットフォームへ送客できるようにした。什器にもアプリDLを促すQRコードを設置するなど、オフラインとオンラインをつなぐひと工夫をしている。

商品設計時点から始まるマーケティング

発売に向けたマーケティングはギフティングを中心に話題醸成を図っていった。コンセプト、機能性など商品の質だけでなく商品設計の時点からブランドの情報がどのように伝播するかを含めて検討しており、これが奏功した。

「世の中を眺めていると、商品を誰に“良い”と言ってもらえるかが、とても大切になっている。新しいブランドであっても、美容感度が高く、多くのユーザーからその情報発信を信頼されている方々(いわゆるインフルエンサー)に“素晴らしい”と思ってもらうことができれば、それがSNSなどを通じてしっかり伝播し、まだ無名のブランドであっても信用してもらうことができる」(渡部氏)

「我々がsopoを手掛けたのは、メーカーになりたかったからではない。sopoを成功させることで、ノインが持つデータの価値、ノインのプラットフォーマーとしての存在意義を証明したかったからだ」と渡部氏はいう。ノインは今回、その言葉を見事に体現した。sopoによる将来的な海外展開の可能性も示されたほか、sopoのヒットによって、さまざまな小売から新たなプロジェクトが持ちかけられているという。

コスメプラットフォーマーとして飛躍の1年に

sopoのローンチ準備が佳境に入った10月初旬、ノインは大丸松坂屋百貨店が展開するコスメセレクトショップ「Amuse Beauté(アミューズ ボーテ)」のオンラインショップとのコラボレーションを発表した。NOIN上に「Amuse Beauté」のタブを設置し、これまで取り扱っていなかったCelvoke(セルヴォーク)やジルスチュアート、ADDICTIONといったブランドのアイテムが購入できるようになった。

これもまた前述したプラットフォーマー化に向けた取り組みのひとつである。

「我々は、メーカーになることや、ECビジネス自体を目的としているのではなく、ユーザーととことん向き合ったうえで、日本の化粧品業界に欠かせないプラットフォーマーになることを目指している。これから我々が向き合うべきはメーカーと小売の店頭だ。コロナ禍による生活様式の変化とDX(デジタルトランスフォーメーション)という大きな流れのなかで、メーカーも課題意識を持っている。ただ、どこから手をつければ良いのか考えあぐねているケースが多い現状で、我々のテクノロジーや手法がその課題解決に繋がる瞬間が来ると思っている」(渡部氏)

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ノイン株式会社
代表取締役CEO 渡部賢氏

百貨店だけでなく、小売りのDXの根幹から参画するプロジェクトもいくつか進んでいる。2020年、オンラインからオフラインへとチャネルを広げたノインは、今後コンビニ業態以外の小売と連携してオフラインの接点拡大を図っていく考えだと渡部氏は語る。

「2021年、ノインはブランドやメーカーとエンドユーザーである顧客、小売とお客様の接点やインフラとして近しい部分で関わり始める。そういう戦略に舵を切る年になる」

Text: 清水 美奈(Mina Shimizu)
Top image & 画像提供: ノイン株式会社

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