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「セノリティック科学」「プレエイジング」化粧品原料市場のキーワード【海外トレンド 2024年4月-5月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、2024年4月、仏パリで開催された化粧品&パーソナルケア製品原料にフォーカスした国際見本市「in-cosmetics Global 2024」の出展企業から成分トレンドの今をレポートする。


研究開発が鍵、大手原料メーカーからスタートアップまで、in-cosmetics Globalにみる化粧品原料の最新トレンド

出典:in-cosmetics公式サイト

★注目ポイント
バイオテクノロジーに注目が集まっていることをひとつの例に、原料開発の最前線の現場においては、サステナブルでクリーン&グリーンな技術の使用はすでに前提となりつつある。加えて重要なのが、その原料が科学的に検証された確かな効果を備えて目にみえる結果を提供できることだ。その背景には、グローバルで広がる、自然の摂理に則った心と体の包括的なウエルネスを確実に手にしたいと希求する消費者意識の高まりがある。

2024年4月16日〜18日、化粧品・日用品の原材料(成分)や香料サプライヤーの出展を中心とした国際見本市「in-cosmetics Global 2024」が仏パリで開催された。in-cosmeticsはヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジアの各都市でビジネスショーを主催し、最近では120カ国以上からの出展者が1万人以上の来場者と出会い、市場の動向や業界のイノベーションを知り、商談やネットワーキングする機会となっている。

同展示会ではあわせて、イノベーション部門やグリーン部門、サイエンス部門などの部門別に、出展製品のなかからとくに優れた製品を選抜し表彰する「in-cosmetics Globalアワード」を発表し授賞式を開催している。また、同アワードの冠スポンサーは、ジョンソン・エンド・ジョンソンから独立した大手グローバルコンシューマーヘルス企業のKenvueが務めている。

植物由来やサステナブルを強調する原料が受賞

今回のin-cosmetics Global 2024の主要部門の金賞受賞製品をみていこう。

イノベーションゾーン最優秀成分賞(アクティブ原料:皮膚などに直接的にアプローチする原料)

金賞:ETERWELL™ YOUTH
製造社:dsm-firmenich
エピロビウムフレイスケリ(アルペンヤナギ)から抽出した植物エキスを主体とする「ETERWELL™ YOUTH」は、体内からの老化細胞の排除を試みるセノリティック科学(Senolytic Science)にもとづき、老化細胞を選択的に除去することで小ジワなど早期老化の根本的な原因に対処し、自然な皮膚の再生プロセスを促進するとされている。

イノベーションゾーン最優秀成分賞(機能性原料:生体機能に関与する原料)

金賞:ECOHANCE® Remo XP
製造社:Evonik
ドイツを本拠地にワールドワイドで展開する化学メーカーEvonikの「ECOHANCE® Remo XP」はエコフレンドリーな親水性エモリエント(皮膚柔軟剤)かつ多機能増粘剤で、PEG(ポリエチレングリコール)および硫酸塩フリーの界面活性剤の効率的な増粘化に寄与する。木材加工産業からの工業残留物をアップサイクルして製造されており100%自然由来の成分とする。

グリーン原料賞

金賞:SpruceSugar™
製造社:Boreal Bioproducts
森林をはじめとするサステナブルな原料リソースの提供をミッションに掲げるフィンランド発のバイオテクノロジー企業Boreal Bioproducts。オーガニックでヴィーガン、非遺伝子組み換えをうたう「SpruceSugar™」は自然由来かつ非食品由来の多糖化合物で、その機能は界面活性化、使用感の向上、SPFブースト、バイオアクティブなど多岐にわたり、スキンケア、サンケア、ヘアケアなど幅広い製品に使用が可能。

Kenvue トラステッド・サイエンス賞

金賞:Hydrasensyl® Glucan Green
製造社:BASF
Hydrasensyl® Glucan Green」は、ヒアルロン酸とコラーゲンの有益な特性を融合させたもので、その一次構造はヒアルロン酸に似ており、2つのグルコース誘導体からなる二糖単位の長い鎖で構成されている。この構造により、皮膚で大量の水を結合することができ、同時に、多糖鎖が絡み合ってロープのような高い弾力性を備える。水分補給に加え、皮膚をなめらかにする効果、すばやく紅斑(肌の赤み)を和らげる効果が臨床的に確認されている。

「自然由来」「サステナブルで高機能」「エイジングケア」が注目ポイント

上記のようなin-cosmetics Globalアワードの受賞製品や、展示会の様子や注目企業をレポートするさまざまな報道記事からは、化粧品原料の最新トレンドが浮かび上がる。なかでも、サステナブルでありつつ、機能性の面でも高い効果を発揮する製品を求める消費者意識に応えて、化粧品原料業界がR&Dに注力し、テックイノベーションを競いあっている状況は明らかだ。

化学合成成分から自然由来成分へシフト、サステナビリティと機能性双方を実現

欧米を中心に、エシカルで持続可能な原料調達が化粧品メーカーのマストの取り組みになりつつあるなか、自然由来の原料オプションの提案がますます増加している。アワードを受賞した製品もその多くが植物由来やアップサイクル原料で、化学的に合成した成分から自然由来成分へのシフトが急速に進んでいることがみえてくる。

たとえば、仏Mibelle Biochemistryが2024年4月にローンチした「PinoPlex™ 」は、フランスの森林で手摘みで集められた松ぼっくりをベースにした保湿剤だ。松ぼっくりの表面を覆うマツカサ(鱗片)は種子を遠くに飛ばすため、雨の日は閉じ晴れの日は開くという性質がある。この水分量に応じて開閉する松ぼっくりのメカニズムを応用することで、毛髪のキューティクルを封印し水分を保持することで髪の輝きと強度を高める設計としている。

また、創業2年以内のスタートアップを対象にしたin-cosmetics Globalアワードのライジングスター部門を受賞したデンマーク発B Corp企業Kaffe Bueno は、コーヒーの副産物をアップサイクルし、パーソナルケア製品や栄養サプリ、農薬などに使用できる自然由来100%の多機能成分を提供している。

一方、米Grant Industriesの「Granpowder BBP-700」は、酵母パウダーとアミノ酸誘導体を融合した生分解性の球状微粒子パウダーで、製品の使い心地を良くするためや光拡散効果のために配合されるマイクロプラスチックの代替品をうたう。

若い世代から始めるエイジングケアのニーズに対応

米国発のグローバル化学メーカーAshlandの「Perfectyl™ biofuntional」は、オレゴン州の山地で持続可能な方法で採取されたハーブのカモミールから、自社の特許技術を用いて抽出した成分で、GABA(ギャバ:γ-アミノ酪酸)と花酸が豊富な組成をもつ。GABAは皮膚の色素沈着や筋肉弛緩に関連するとされ、ボトックスの新しい天然代替溶液ともいわれる神経伝達物質で、Perfectyl™は注射を必要とせず、顔の表情弛緩剤としての効果やシミ、毛穴の収縮効果が得られるとする。

Perfectyl™はまた、米ニューヨークやカリフォルニアにおいて、若いミレニアム世代やZ世代の間で大きなトレンドになりつつある“プレエイジング”、すなわち、老化のサインが現れるか否かの極めて初期の段階で対処をするエイジングケア需要に応えるものだ。

2024年4月にクラランスによる買収が完了した、カナダに本社を置くLucas Meyer Cosmeticsが開発の「Corneopeptyl™」もこうしたニーズにアプローチする原料製品だ。環境や人体に配慮した化学合成プロセスであるグリーンケミストリーによつて作成した、角膜層の角化細胞の過剰な浸透性を抑制する働きがあるLCE6Aタンパク質の生体模倣ペプチドであるCorneopeptyl™は、皮膚表面に作用し肌のバリア機能を高める効果があり、シミやシワなどエイジングサインの緩和に効果があるとされる。

若々しく健康で長生きをするためのウエルネス

in-cosmetics Global 2024ではまた、セミナーやセッションなど業界関係者や専門家を招いての登壇イベントも開かれた。なかでも、心と体の包括的なウエルネス(ホリスティック・ウエルネス)への消費者の関心の高まりと、ビューティ業界がそれにどう応えていくかというテーマが複数の登壇者に取り上げられ、ホットな話題となったという。

美容業界誌「CosmeticsDesign Asia」編集者のアマンダ・リム(Amanda Lim)氏が「Beauty sleep: Circadian rhythm skincare(ビューティスリープ: 体内リズム・スキンケア)」と題した講演で、睡眠科学とスキンケアの関係性について語った。また、美容業界向けコンサルティング企業のBEAUTYSTREAMSのセミナー「Health-Span Beauty: The impact of longevity on our industry(ヘルススパン・ビューティ:長寿が私たちの産業に与える影響)」では、他国に比べ平均寿命が長い、日本やイタリア、コスタリカ、ギリシャなどに着目。ブルーゾーンと呼ばれるこうした国々の美容法や製品処方、原料などへの注目が高まっていることが示された。

そのほか、ミンテルのビューティ&パーソナルケア部門のディレクター、アンドリュー・マクドゥーガル(Andrew McDougall)氏はプレゼンテーション「NeuroGlow -where cutting-edge science meets holistic wellness(ニューログロウ:最先端科学とホリスティック・ウエルネスの融合)」のなかで、ビューティ市場における急速なイノベーションの進化に焦点をあて、ホリスティック・ウエルネスを求める消費者トレンドに対し、製品処方の領域からよりよく応える方法について解説した。

日本でいうところの健康寿命と同じような意味合いで、“美しく健やかな状態を維持しながら長生きすること”=長寿(longevity)がグローバルでのトレンドワードになっていることが改めて感じられる。

in-cosmetics Global 2024に出展された長寿をテーマにした成分開発としては、前述のdsm-firmenichのETERWELL™ YOUTHのほか、フランスのバイオテクノロジー企業Greentechの「TIMELYS®」もある。Timelys®は伝統的な中国医学(漢方)でも使用されるアダプトゲン(不安や肉体疲労などのストレスへの抵抗力を高める天然ハーブ)であるスーパーベリーのチョウセンゴミシ(Schisandra chinensis)の抽出物で、酸化ストレスと炎症を軽減する長寿遺伝子SIRT6と、オートファジー(細胞リサイクルプロセス)を活性化するFOXO3に作用するという。これらの遺伝子はいずれも、100歳以上生きる人々に強く発現していることが科学的にわかっている。

Text: そごうあやこ(Ayako Sogo)
Top image: in-Cosmetics Facebook公式アカウント


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