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Kireiiは化粧品の選び方を変える成分検索プラットフォーム、デジタルハリウッド大学院がMOU締結で支援

化粧品類の成分検索プラットフォーム「Kireii(キレイイ)」がPOC(概念実証)を経て、2024年4月にリニューアルオープンした。成分に重点を置いて化粧品の検索や比較が可能な同プラットフォームを運営し、「世の中に出回るすべての化粧品のデータベース化をめざす」美容系スタートアップ、株式会社Kireii 代表取締役 堀井麻友美氏と、同社と産学共同研究MOU(覚書)を締結したデジタルハリウッド株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 吉村毅氏に、Kireiiの仕組みと今後の展望を聞いた。


成分指定で商品を検索できるほか、似た成分組成のアイテムを探すことも可能に

「Kireii」は、さまざまな化粧品ブランドの商品を成分から検索できるコンシューマー向けのWebサービスだ。ユーザーは、特定の成分を含む、あるいは含まない商品を検索することができるほか、好き、もしくは苦手な成分や商品を登録し、さらに価格帯など重視したい項目も設定することで、パーソナライズされた商品レコメンドを受けることができる。

Kireii

成分名から商品を検索できる機能では、ユーザーが気に入っている商品、もしくは自分には合わないと感じた商品をKireiiで検索し、その商品のページを開き、任意の成分をクリックすると、その成分がハイライトされ、その成分を含む、あるいは含まないさまざまなブランドの商品が一覧で表示される。たとえば「グリセリン」「パンテノール」「ヒアルロン酸Na」という3つの成分をクリックした場合、それらの成分をすべて含む、あるいは含まない商品が一覧表示される。

指定した成分からの検索イメージ

この機能では複数の商品を成分の観点から比較することもでき、下の画像のように複数の美容液を並べ、共通する成分をハイライト表示させることなども可能だ。これにより、ほぼ同じ成分組成でより価格が安い商品を探すといった使い方もできる。

複数の商品の共通成分をハイライト表示させて比較可能

商品のレコメンド機能では、ユーザーが自分に合うと感じる、あるいは合わないと感じる成分や商品を登録することで、Kireiiプラットフォームの商品データベースのなかから、それらと共通する/しない成分データが自動的に分析され、おすすめの商品がパーソナライズされて表示される。

成分の知識がなく、商品だけを登録してもこのレコメンド機能は作動する。商品の登録は、ユーザー登録をしたうえで、個別の商品詳細ページにある「お気に入りマーク」や「低評価マーク」をタップすると、その商品が好きな商品や苦手な商品として記録されていく仕組みだ。ユーザーが化粧品を選ぶときに重視する事柄(価格帯、成分、ブランドなど)や、性別、生年月日、自分の肌について気になっていることなどの情報もあわせて登録することで、さらにレコメンドの精度が高まる。

個別の商品詳細ページ(編集部撮影)
使用したことのある商品を合うものと合わないものに分けて登録(編集部撮影)

成分名から商品を検索する機能は、ある程度化粧品成分に関する知識があり、積極的に成分から検索したいユーザーに向けたものといえる。商品のレコメンド機能では、化粧品成分に関する知識がなくても、使ったことのある商品を登録すればよく、こちらは幅広いユーザーに利便性が高い。Kireii社は前者の仕組みで国内特許を取得、後者で国際特許を出願中という。

登録した商品の成分情報をもとに合う可能性の高い商品がレコメンドされる(編集部撮影)

アレルギーに悩む人々の化粧品選びのサポートにも

堀井氏がKireiiを発案したきっかけは、妹や友人など身近な人たちが大人になってから突然アレルギーを発症し、特定の成分を含む食品や化粧品で体調不良に苦しむ様子を目の当たりにしたことだったという。気になった堀井氏が調べたところ、近年では日本人の約2人に1人が何らかのアレルギーを持ち、アレルギー疾患により医療機関を受診する人の数は年々増加傾向にあるという厚生労働省の調査結果があることも分かった。

「妹の場合は色素の一種であるカルミンにアレルギーを発症した。多くの種類のパッチテストを行い、最終的にアレルゲンはカルミンだと特定することができたが、皮膚科に何度も通院が必要で、パッチテストではその間の入浴ができず、かゆみにも耐えなくてはならないなど、負担が大きいと感じた。そこで、合わない成分や商品をユーザーが自分で登録できるシステムを作れないかと考えた」と堀井氏は振り返る。

そうしたシステムがあれば、ユーザーにとってアレルゲンである可能性の高い成分をリスト化でき、ユーザーがある程度自分で相性のよくない成分に目星をつけることができたり、それを医師に伝えることで、アレルゲンを特定する期間や労力を減らすことが可能ではないかと考えたという。

株式会社Kireii 代表取締役 堀井麻友美氏
プロフィール/東京理科大学大学院 総合化学研究科総合化学専攻修了、NRIグループをへてECサイト、ポータルサイト、メディアサイトでサイト運営やデータ分析などに従事。妹がアレルギーを発症したことをきっかけに化粧品類を成分ベースで検索できるWebサービス「Kireii(キレイイ)」を考案し、2022年に株式会社Kireiiを設立。2024年5月現在、デジタルハリウッド大学大学院に在学中

また、堀井氏は妹や友人の悩みをきっかけに、従来の化粧品クチコミサイトのランキング形式による商品紹介だけでは、アレルギーに悩む人のニーズを満たせないと感じたという。彼らにとっては、ランキング上位だからといって自分に合うとは限らず、同時に自分の肌に合うかもしれない「無名の良品」は見つけにくいからだ。その観点から、成分から求めている商品を探しやすいサービスプラットフォームとしてKireiiを構想した。

堀井氏はまた、東京理科大学大学院で物理・化学的アプローチによる水の研究により修士号を得た経験をもつ。そのため、自身の仕事への向き合い方のベースにあるのは、研究者として培ったデータ分析の力だと考えており、それゆえ「成分」に関心があるとする。ある成分が単体で存在したり、何種類かの成分が混在したりするなど、化粧品に含まれる成分の状態は多岐にわたる。ある化粧品を完成したひとつの”かたまり”として捉えるのではなく、その化粧品を形作っている各成分を起点にする視点を消費者が持つことができると良いのではないかと堀井氏は考えた。

堀井氏は東京理科大学大学院修了後、ITやWeb関連の企業で従事。だが、前述のように妹のアレルギー発症に直面したのに加え、自身ががんを患い、抗がん剤治療中の副作用で化粧品類の使用に不安を抱いた経験も重なった。その後、スキルアップを目的にエンジニア養成学校であるG’s ACADEMY(ジーズアカデミー)に通い、Kireiiプラットフォームのプロトタイプを作成して、2022年に株式会社Kireiiを起業。そして、デジタルハリウッド大学大学院に入学した。

「ジーズアカデミーでプログラミングを学んだことでKireiiプラットフォームのプロトタイプを作ることができた。しかし、ビジネスに関しては知識が不足していると感じた」として、事業運営に役立つ実践的な知識や人脈を得ようと、デジタルハリウッド大学大学院で学ぶことに決めたという。そして、在学中の2023年9月に同大学院と産学共同研究でのMOUを現役学生として初めて締結した。

デジタルハリウッド大学大学院がマーケティングやビジネスモデル構築を支援

デジタルハリウッド大学大学院では、現役院生が社長である企業とMOUを締結するケースはKireii社がはじめてだという。過去にはファッションメタバース「FASSKER」を展開する韓国FNSホールディングスとMOUを締結している

堀井氏の担当教員であり、デジタルハリウッド株式会社 代表取締役社長 兼 CEO でもある吉村毅氏は、MOU締結の経緯を「学生が世界に羽ばたいていくためのメリットやサポートを提供するのが我々の使命だ。今回はKireii社とは、マーケティングリサーチ、および営業活動を含めた広い意味でのマーケティングで提携することを目的に、院生であっても、企業のオーナーであることを尊重してMOU締結とした」と話し、デジタルハリウッド大学大学院としては、Kireiiプラットフォームのマーケティング周りやビジネスモデル構築を支援するインキュベーション的な役割を担うとする。

デジタルハリウッド株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 吉村毅氏
プロフィール/早稲田大学 社会科学部卒業、リクルート、CCC 取締役をへてカルチュア・パプリッシャーズ(現カルチュア・エンタテインメント)CEOとして、海外映画の権利輸入、配給、宣伝の総合プロデュースを行う。2014年より現職、デジタルハリウッド大学大学院の教員としても学生スタートアップ企画のブラッシュアップ、海外進出などの分野で学生指導を行う
画像提供:デジタルハリウッド株式会社

現状、Kireiiの収益モデルとして堀井氏が構想しているのは、医療機関や法人を対象に、化粧品類に関連する情報やユーザーの統計データを、サブスクリプション利用できるなどの化粧品シンクタンクサービスだ。

世の中にあるすべての化粧品、パーソナルケアの成分のデータベース化をめざす

Kireiiプラットフォームの最終的な目標は、シャンプーなどヘアケアアイテムやフレグランスなども含む、世の中に出回っているすべての化粧品類の成分を商品ごとにデータベース化することだ。今は化粧品ブランド公式サイトの情報や、商品パッケージの裏面の記載などから、自分たちの手作業で商品のデータをひとつひとつ入力しているところで、その数は2024年5月現在で3,000ほどだが、今後はメーカーが登録・管理できる仕組みや、Kireiiプラットフォームのユーザーがみずから商品データを入力できる仕組みも整えていくという。

また、化粧品における成分の含有量については、現状ではブランドの方針として明記している場合以外は、全成分中での記述されている順番で多い少ないを推測するしか方法がない。この点についても将来的に、Kireiiプラットフォーム上で成分の分量などのより詳細な情報を表示させる/させないをブランドと直接契約することにより、ブランド側で選択可能にするかたちを構想している。

そのほかにも、成分の観点から複数の商品の「使いあわせ」のよしあしを調べられるようにしたり、Kireiiプラットフォーム上で人気の成分を使った商品を企画して販売するなどのアイディアも持つ。今後の展開によっては資金調達も行いながら、開発を進めていきたいとする。

Kireiiがめざすプラットフォームが完成すれば、媒体記事、クチコミやランキング、インフルエンサーや専門家のおすすめといった化粧品選びのための従来の情報に加えて、新たな選択肢となりそうだ。とくに成分に関心が高いユーザーにとっては、化粧品の選び方が画期的に変わる。それは「化粧品選びの民主化」を起こす可能性を秘めている。

Text: 大塚愛(Megumi Otsuka)
Top image: Kireii
画像提供: 株式会社Kireii

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