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各社本気のサステナブルビューティ、リユース、廃棄食品活用、そしてゴミのゼロ化へ

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環境の汚染と破壊をくいとめ、持続可能な地球を未来に引き継ぐサステナブル志向は、単なるトレンドではなく、とくに若い消費者の強い意志となっている。これを受け、美容業界では大手メーカーがけん引するかたちで、廃棄食品の活用やゴミを出さないといった具体的な施策が次々と打ち出されている。もはや、対応が遅れたブランドは顧客にそっぽを向かれることにもなりかねない事態だ。各社の試みを紹介する。

毎年、800万トンものプラスチックゴミが海に流れ込むなか、いまだ91%のプラスチックがリサイクルされずに投棄されている。二酸化炭素濃度と炭素排出量、海面は上昇しつづけ、動物の数と熱帯雨林は減少している。将来に暗い影を投げかけるこうしたレポートに消費者は日々触れている。

米国と英国の消費者1,000人以上を対象にしたFuterraのサーベイで、88%がサステナブルな暮らしを実現するブランドを好むと回答したのは驚くにはあたらない。グローバルコンシューマーを対象にしたニールセンの調査でも、81%の回答者が、企業は環境を改善する何らかのアクションを取るべきだとしている。

また、コンサルティング企業Kantarが2018年に行った調査では、消費者の42%がもっと多くのメーカーが容器や包装をリサイクルすべきだとし、21%がプラスチックを不使用とすることに賛成。消費者は、原料から生産、流通、包装に至るまで、商品を製造する全ての過程においてサステナブルに配慮することを望んでいるとユーロモニターは分析している。

こうした数字からも、サステナブルなブランドが、かつてないほど強く希求されているのは明らかだ。

リユースできる容器で循環型の消費へ

美容業界においては、年間で1,200億個のパッケージ(容器・包装)が作られ、そのうちの95%が1回使用されただけで捨てられるというショッキングな統計が出ており(出典:Beauty Kitchen)、サステナブルなパッケージの実現は無視できない課題だ。

「リターン、リフィル、リピート」を合言葉に、容器を回収し再利用するプログラムを進めるのは、英国のナチュラル・スキンケアブランドBeauty Kitchenだ。空き容器の回収場所は同ブランドの販売店であるHolland & Barrett の店舗が受け持ち、ブランドに送り返す仕組みをとるほか、英国内なら着払いで郵送するのも可能だ。また、ロンドン・コベントガーデンのブーツの店内にセルフで詰め替えができるリフィル・ステーションも設けている。

ロレアル傘下のキールズやメイベリン・ニューヨークも使用済みのスキンケアとメイクアップ化粧品容器の回収を店舗で受け付けている。これはリサイクル企業のテラサイクルと提携しての事業で、埋め立て破棄や焼却はせず、回収した全ての素材を資材として再利用できるようにリサイクルするものだ。

テラサイクルは、パーソナルケア製品や日用品、飲料などを詰め替え容器で定期的に宅配するサブスクリプションサービスのLoop の運営も2019年5月より開始した。美容業界からはユニリーバがRENやダヴ、P&Gがジレット、バイヤスドルフがニベアメンなどのブランドで参加。ユニリーバは、全世界に10億人のカスタマーを持つキーブランドであるダヴ、Rexona、Axe製品用として、Loopのためのデオドランド材の詰め替え容器Minim を制作した。

約8年間の使用に耐えるMinim 1つにつき、100個分のパッケージの代替えになるとインパクトの大きさを強調し、現在の「買って、使って、捨てる」消費文化に終止符を打つ最初のステップとして、Loopの意義を認めている。

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詰め替え容器Minim
出典:Minim公式サイト

ニューヨークとペンシルバニア、パリでスタートしたLoopは、今後、ほかの国や地域への展開を予定しており、こうしたリユースを基本とする循環型のショッピングシステムが広がっていく機運は、消費者にとって希望が持てるものだ。だが一方で、システムを定着させスムーズに運用するためには、オペレーションからロジスティックまで再構築が必要で、そこには多額のコストが発生する。中小のブランドが参加できるようになり、社会全体に浸透するまでにはまだ時間がかかりそうだ。

プラスチックの完全リサイクル化を目指す

プラスチック容器をガラス製やステンレス製の代替え素材に変えていくことを、多くの消費者は支持している。しかし一方で、軽くて強く、成形がしやすく、しかも安価なプラスチックは、メーカーにとってもユーザーにとっても利便性が高いのも事実だ。サステナブルな製品を評価しながらも、価格や使い勝手を考えると、結局既存のプラスチック容器の製品を購入してしまう顧客は少なくない。そこで求められるのが、プラスチックの完全リサイクル化だ。つまり、これ以上、バージン(未使用)プラスチックを製造しないための取り組みである。

サステナビリティ度を測る国際環境評価団体CDPより、世界で唯一3年連続AAA評価を受けたロレアルをはじめ、プラスチック使用量を2025年までに1/2に縮小し、年間60万トン相当のプラスチックパッケージの収集と処理を支援するとするユニリーバほか、エスティ ローダー、P&Gなど、グローバルな大手化粧品メーカーはこぞって、ESG戦略の一環として、明確な目標数値を掲げてプラスチックの削減とリサイクルの推進をすでに進めている。

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花王グループ ESG戦略発表会にて
撮影:公文紫都

日本企業では花王が、2019年9月のESG戦略発表会の席上で、プラスチックボトルレス化の加速や、プラスチック製アイキャッチシールの全廃、使用済みプラスチック容器のリサイクル技術を構築し、高品質・低価格な再生プラスチックを活用するリサイクルイノベーションの概要を明らかにした。また、ライオンは、旭化成とともに「マテリアルリサイクルプロセスの研究開発プロジェクト」に着手した。これは使用済みプラスチックを資源として再利用する技術開発により、資源循環社会システムを構築することを狙いとしている。

コーヒーかすなど捨てていた食品を利用

そして、ここ数年、注目されているのが、食品廃棄物を素材原料として再利用するコスメ製品である。

オーガニック&ヴィーガンのリップバームをラインナップするFRUU が主に使用するのは、形や大きさが規格外だったり、生産調整のため出荷できなかったフルーツだ。ココナッツオイルやマンゴバターに、オーガニック認定を受けた小規模農家から直送される新鮮な食材からの抽出成分を配合し、天然素材98%〜100%を実現している。このほか、ザ・ボディショップも、見た目が悪いためスーパーマーケットに卸せなかった人参やバナナを原料にしたクレンジングや期間限定のヘアケア・コレクションを揃える。

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FRUU
出典:Vegannews

BYBI Beauty のフェイシャルオイルBlueberry Boosterはコールドプレスしたブルーベリーシードオイル100%で、スマートフォンなどのブルーライトによる肌ダメージの緩和をうたう。原材料のブルーベリーのタネは、工場でジュースを製造する過程で除去されたもので、通常はそのまま捨てられてしまうものだ。前述のBeauty Kitchenも、ジュースにする際に出るストロベリーとラズベリーとブラックカラントの絞りかすから作った、Raw Inventions Berry British Sustainable Beauty Oilをリユースできるボトル入りで提案している。

ドリップコーヒーを淹れた後のコーヒーかすを活用して、フェイススクラブにしたのがUpCircleだ。使用するコーヒーかすはロンドンのカフェから回収している。同ブランドには、チャイシロップを作った残りもののスパイスを配合したチャイ石鹸もある。

リサイクル企業のスタートアップRevive Eco によると、コーヒーかすは美容業界を変える“ゲームチェンジャー”になりうるという。それは、コーヒーかすから抽出したオイルが、森林減少や生物多様性の喪失を生むなど環境面への悪影響を指摘されてきたパーム油に取って代わり、化粧品原料となれる品質と機能性を備えているからだ。

飲食産業に携わった経験があり、日々大量のコーヒーかすがゴミ箱に捨てられていることに心を痛めていたRevive Ecoの創業者が、再利用の方法を模索してたどり着いた産業用オイル化は、まだ緒についたばかりだが、回収と製造システムを安定させ規模を拡大できれば、産業構造を塗り替える十分なポテンシャルを持っている。

また、休耕田で栽培したオーガニック米を原料にプレミアムクオリティのバイオエタノールを生産し、事業化に成功している日本企業のファーメンステーションでは、エタノールを絞ったあとの残りかすである米もろみ粕に、ヒアルロン酸保持効果や抗酸化作用を持つ保湿成分があることを突き止めた。

この研究成果をもとにプレミアムエタノールと米もろみ粕を使用した石鹸など、自社オリジナルの化粧品ブランドFERMENSTATION を立ち上げている。同社代表取締役の酒井里奈氏は「“噛むと甘くなるもの”ならエタノールの原料になる」と話し、シードル製造過程で出るリンゴの絞りかす由来のエタノールを使用した商品化の事例をあげ、ごはんやパンなどの食べ残しの活用の可能性をあわせて示唆する。

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FERMENSTATION
出典:ファーメンステーション公式サイト

廃棄物ゼロを実現するには

サステナブルビューティを完成させるには、最終的にゴミをゼロにしなければならない。その発想から生まれたブランドが、ニュージーランド発のエティークだ。同社の製品は、ボディウオッシュやフェイシャルクレンジング、シャンプーやコンディショナーまで、100%サステナブルな固形バーとして提案される。包装はリサイクル可能な紙製で、フェアトレードの天然原料のみを使用。ハリウッドスターなどセレブファンも多く、2019年7月に英国の小売店に初上陸した際は、48時間で売り切れ、ウェイティングリストには5万人以上が名前を連ねるなど、消費者の関心の高さを見せつけたという。

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エティーク 
出典:エティーク公式サイト

同じく固形化することで容器をなくし、原材料や価格、使用法など商品情報はアプリを通してデジタルで確認することで、包装やタグも取り去ったのは LUSHである。プラスチックフリーをコンセプトに、無包装でむきだしの製品だけを取り揃えた店舗“ネイキッドショップ”を、ミラノやベルリンに続き、アジア初となる香港にもオープンした

ビューティ市場においては、液体ソープの成長が前年比4.4%減なのに対し、固形バーのカテゴリーはここ数年で初めて2.5%増と上向きになっており、ブームの予感を感じさせる。

生分解性やリサイクル可能な代替え品へシフト

このほかにも、廃棄物ゼロを目標に掲げるブランドは枚挙にいとまがない。

アヴェダは、自社のスキンケア製品とヘアスタイリング製品のPET容器の85%は100%使用済みリサイクル材からできているとする。あわせて米国では、リサイクルの対象にならないボトルやジャーを独自回収し、埋め立て廃棄をなくす完全リサイクルプロセスの確立を目指している。

オーガニックコスメの老舗ブランドのニールズヤード レメディーズは、2025年までに、全てのパッケージを有機物か、リサイクルまたはリユース可能なものに転換していくことを発表。日本でも、トレードマークのガラスのブルーボトルを回収し、トレイや箸置きなどオリジナル製品に再生する活動をしている。

海にインスパイアされたナチュラルフレグランス・スキンケアブランドのHaeckels は、さらに一歩進んで、菌糸体と再生紙に花の種を巻き込んだシードペーパーからなる100%生分解性パッケージを採用したパフュームキャンドルを発売。HPに掲載されている、外装の箱から植物の芽がぐんぐん伸びてくる動画が印象的だ。

仏ロレアルが包装メーカーAlbeaと共同でカートン(紙)ベースの化粧品チューブを開発したというニュースもあり、パッケージを最後は土に還る素材に切り替え、環境フットプリントの改善を推進する動きは、化粧品業界のさまざまなレベルで確実に進行している。

ビジネスの観点からのサステナブル

サステナブルに向けた取り組みは、消費者からの注目と賛同が集められ、ブランド側にとってはマーケティングとしての意味も大きい。しかも、サステナブル戦略を明確にした商品は売上げにもつながっているようだ。

ユニリーバの傘下のREN Clean Skincareシリーズは、ブランド名に「クリーン」と掲げているように、化学香料、化学色素、石油成分、シリコーン、乳化剤などの成分を含まないコンセプトで、2021年までに廃棄物ゼロとすることを宣言している。

2019年夏に投入された新しいUVケア商品であるClean Screen Mineral SPF30は、再生プラスチック50%(現在の技術においては、中身の品質安定性を担保するためには最大限の含有量)のチューブ容器入りで、キャップは再生プラスチック100%という仕様だ。同製品は、サステナブルパッケージに刷新する前の同等レベルの商品の5倍の売上げを短期間で成し遂げ、サステナブルに配慮したことが、消費者心理をつかんだとブランドのマネジメントはみている。

イタリアのナチュラルヘアケアブランドのダヴィネスも、サステナブル・ブランドであることを打ち出し、環境・社会に配慮した事業を行うとともに、透明性や説明責任の基準を満たした企業に与えられるB Corp認証を取得したことで、売上げを前年比13.5%増に伸ばしている。

こうした状況を受け、市場の専門家は、ブランドは消費者に対して、自分たちが何をしているのかをわかりやすく伝えていくことが重要だとする。最初に必要なのは、ブランドが目指しているサステナビリティのゴールを明確かつ具体的に定めること。そして、今現在、どこまで達成しているのか、できていない部分はどこなのか、進捗状況をきちんと説明することが大切だ。消費者は透明性の高い企業をより評価し信用するからである。

同じ意味から、環境に配慮しているふりをしてごまかす、いわゆる“グリーンウォッシング”は避けるべきだ。消費者は企業が思う以上に嘘を見抜く目を持っている。最後に、消費者を啓蒙していく姿勢も忘れてはならない。リサイクル可能なボトルも、ユーザーがリサイクル回収箱に入れてくれないことには無駄になってしまう。

サステナブルビューティは、一人ひとりの消費者とコミュニティ、そして企業がともに連携し、次の世代に残すべき環境を自分ごととして考え、行動に移すことから生まれるのだ。


Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Mert Guller via Unsplash

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