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中国PROYAなど、ジェンダーギャップへの強いメッセージが女性たちの心を動かす

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3月8日の国際女性デー。すでに社会的な記念日として定着している中国では、国際女性デーが美容業界における商戦の1つになっている。Eコマースを中心に毎年、各社がキャンペーンを展開しているが、2021年はメッセージ性のあるプロモーションの数々が話題になった。

ジェンダー平等を訴える「PROYA」

国際女性デーは1908年に米国で起きた女性労働者による女性の平等な権利を求める社会運動に端を発しているとされ、社会主義国である中国とは親和性が高い。法律によって、働く女性は同日は半休と定められるほど身近な存在になっており、各地で開かれる関連イベントは政治色が強いものも多い。

美容業界でも「女性のお祭りの日」として熱い視線を注ぎ、毎年2月ごろからブランド各社がプロモーションに力を入れ始める。SNS型EC「RED(小紅書)」に特化したデータ分析企業 千瓜数据によると、2021年2月18日から3月9日までの間、国際女性デーに関する単語にブランドを絡めたユーザー投稿の数は、ジャンル別ではコスメが圧倒的1位で、16万以上の書き込みがあったという。

そういった状況もあり、美容ブランドにおける国際女性デーのプロモーションは単に販促というだけでなく、女性を応援するメッセージ性を込めたものが多く見受けられる。2021年もこうした社会全体に訴えるようなプロモーションが登場し、話題になった。その1つが中国ブランド「PROYA(珀莱雅)」が女性紙「CHINA WOMEN’S NEWS(中国婦女報)」と共同で発信したメッセージだ。

両者はラップグループのW8VES(万悟)の于貞(ユー・ジェン)を起用した動画を制作。W8VESは2020年に中国動画プラットフォーム「bilibili(嗶哩嗶哩)」の番組から誕生したグループで、Z世代に人気の新しいスターだ。

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PROYAのプロモーション動画。
映っている女性は于貞
出典:PROYA Weibo公式アカウント

「IT'S GENDER NOT BORDER!」と書かれたTシャツを着て普段よりもシンプルなメイクをした于貞が「あなたはどのような状況で、物事を性別によって評価する?」と問いかけるところから動画は始まる。「私たちは女性に問う。家庭と仕事のバランスをどうやって保つのか。しかし、同じ問いを男性にはしない」とジェンダー差別を指摘し、さらには10人のKOL(キー・オピニオン・リーダー)が声で出演。最後は「ジェンダーは境界線(ボーダー)ではなく、偏見こそがそれだ」というメッセージで締めくくられる。

この動画は中国SNSのWeiboでPROYA、中国婦女報、于貞の3アカウントから投稿されたが、累計再生回数が900万回に届く勢いだ。さらに于貞はbilibiliにも同じ投稿をしたが、こちらの再生回数は118万回を超え、普段の投稿より二桁上回るほど多かった。

動画に合わせてWeiboではハッシュタグ「#性别不是边界线 偏见才是#(ジェンダーは境界線ではなく、偏見こそがそれだ)」が設定されたが、閲覧数は1億5,000万を超えた。女性からは「これこそが有意義なキャンペーン。男だろうと女だろうと、自立して自由、勇敢で正直であることを望む」「自分がしたいようにするのがいちばん。着たいものを着て、好きなタイプの化粧をする」「『呪術廻戦』とか『仮面ライダー』を見ていると、必ず弾幕で『女性がこれを見るの?』と聞いてくる人がいる。女性が見るものじゃないって誰が決めたの?」など、動画のメッセージに賛同する意見が殺到した。

男性からは「現在の中国は(男女平等が)ずいぶんよくなっている。多くの職場では女性が多いし、管理職の多くが女性。ただし一部の職位や職場では女性をないがしろにしている」と部分的に同意するコメントの一方で、「強烈に賛同する。(男女平等を求めるなら)女性は受け取る結納を減らすか、いちばんいいのは受け取らないこと」という揶揄も見受けられ、意見が割れた。

このプロモーションの一環として、PROYAは抗酸化・抗糖化エッセンスの限定ギフトセットを販売。抗酸化・抗糖化の「抗」と性差別に「抗う」をかけているようだ。さらに同限定ギフトには、于貞が動画で着ていたデザインのTシャツが付けられた。

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PROYA限定ギフト商品
出典:网易NetEase

プロモーションが売上に貢献したのか、PROYAの2021年第1四半期の営業収入は、前年同期比48.9%増の9億500万元(約152億円)と大きく伸びた。同社はスキンケアからメイク、ヘアケアまで幅広いラインナップを揃えているが、スキンケアの営業収入が7億4,900万元(約126億円)と最も大きく、2,300万個以上の商品を販売した。

PROYAは上海証券取引所に上場しているが、現在の時価総額は367億元(約6,166億円)を超える。

P&G傘下の2ブランドは働く女性の美を応援

外資系ブランドも同様のプロモーションを行っている。P&GはWWD China、山一国際女性映画祭と共同で「パンテーン」と「OLAY」の動画を制作。P&Gはグローバルなスローガンとして「レスポンシブル・ビューティー」を掲げており、中国でもそれを具現化した形だ。

パンテーンの動画は「彼女のようにきらきら輝く」というタイトルで、新進気鋭の監督・劉斯逸をはじめ、女性のみのスタッフで制作された。登場する3人の女性は、それぞれプログラマー、カメラマン、企業のマネージャーで、男社会に同質化することで仕事をこなしているという設定だ。彼女たちはハイヒールを脱ぎ捨て、口紅を拭い去り、女性性を強調しない鎧をまとうことで生きてきた。

しかし、成功と美は二者択一ではなく、女性は自分の心に従って輝くべきであるというメッセージを訴えている。中国では、フェミニンな女性には仕事の能力がないとする偏見が根強いからだという。この動画も話題になり、Weiboでの再生回数は370万回を超えた。

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3人のさまざまな職業の女性が登場する
パンテーンのプロモーション動画
出典:パンテーン Weibo公式アカウント

動画に合わせ、Weiboハッシュタグ「#职场女性打扮伪自由#(職場の女性の服装は偽の自由)」を展開。パンテーンの中国語名「潘婷」の「婷」の字の女偏を取り除き、輝いている女性を探し出すという設定から輝く女性のストーリーを募集し、プレゼントを贈呈するキャンペーンを行ったところ、閲覧数は1億8,000万を超えた。

ただし、女性たちの反応はPROYAとはやや異なる。「メイクが精緻であれば、仕事も丁寧なはず。私は自分に自信がある女」「仕事についてはいろいろと教えてください。しかし、私の格好については口出ししないでください。私は今どきの女」などと同調する女性がいるかたわら、「職場はもともと自由な場所ではない」「私だってきれいにしていたいけど、起きる時間が早すぎて無理」などと否定的なコメントも少なくなかった。

一方OLAYは、「人がなんと言おうと恐れない、私は美しい」と題した動画をやはり新進気鋭の女性監督、韓雪が制作した。「容貌への不安」をテーマに3人の女性がかつて抱えていたコンプレックスを吐露。それを克服したことで幸せを手に入れたという物語で、すべての女性が自信を持って自分だけの美しさを表現できるように後押しした。

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OLAYのプロモーション動画
出典:OLAY Weibo公式アカウント

OLAYでも動画に合わせ、ハッシュタグ「#无惧人言 我就是美#(人がなんと言おうと恐れない、私は美しい)」を設定。自身の物語の投稿を呼びかけ、抽選で5名に商品をプレゼントするキャンペーンを行ったところ、閲覧数は2,400万を超えた。投稿内容をみると、「私は自分に満足している。なぜなら外部の評価を気にしないから」「自分に合っていることが最も美しいことであり、人の意見を気にする必要はない」など同調する意見が多く、中国人女性の自己肯定感の高さが感じられた。

下着ブランド「NEIWAI」は女性のありのままを肯定

アパレルブランドもメッセージ性を込めたプロモーションを展開している。下着ブランド「NEIWAI(内外)」は、2020年に「NO BODY IS NOBODY」というキャッチフレーズでプロモーションを実施。女性にとって体型は重要ではないことを訴えたが、今年はさらに力を入れて動画を制作した。

さまざまな年齢や身体的特徴を持った女性が登場し、下着姿でありのままの自分を見せる。自分と他人を比較せず、女性が勇敢に自分自身を受け入れられるよう鼓舞する内容だ。ハッシュタグ「#NO BODY IS NOBODY#」の閲覧数は1,700万を超え、ユーザーから「『ぽっちゃり』が自分の名前になって久しいけど、自分に自信が持てるようになってから自分の体と和解できた」などと共感を呼んだ。

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さまざまな年代や体型の女性たちが
下着姿で登場するNEIWAIのプロモーション
出典:SocialBeta

国際女性デーの時期には女性を応援するプロモーションが少なくないなかで、最も反響が大きかったのはやはりPROYAだった。同社は2013年に、中国企業で初めて国連女性機関(UN Women)とパートナーシップを締結しており、早くから女性の社会進出を応援してきた。2014年度「女性発展貢献賞」も受賞しており、中国の女性にとってPROYAは、長年、女性が抱える課題に取り組んできた企業のイメージができているのかもしれない。日本と比べて女性の社会進出が進んでいる中国だが、それでも若い世代を中心に性差別を感じる人が少なくなく、それがPROYAの動画への共感を生んだようだ。

拡大を続ける中国の化粧品市場だが、こうした動きをみると、中国でもブランドが発するメッセージに、商品の機能やブランドストーリーだけでなく、SDGsを含めた社会問題への配慮が求められるフェーズに入ってきたとも考えられる。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: PROYA公式サイト

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