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P&G、コティ、資生堂。2018年下半期デジタル施策総まとめ

◆ English version: What did the Top 6 cosmetics makers do in the second half of 2018?
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化粧品売上規模1位~6位企業の2018年下半期のデジタル施策の後編は6社のうち4位~6位企業のP&G、コティ、資生堂について紹介したい。各社とも消費の中心となるミレニアル世代を取り込むための施策を実施しながら、成長著しい中国市場の強化を行った。

※ランキングは、BeautyPackaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIESより

「2018年上半期デジタル施策総まとめ」で紹介したように、2018年のキーワードは、ナチュラル、情報開示による透明性など、特に世界の消費を大きく動かしているミレニアル世代の価値観に大きく影響されている。そのため、各社とも、人種、国境、性別を含むダイバーシティを強く意識している。

P&G、コティは、社会課題に対してデジタルキャンペーンを打ち、消費者から支持を集めた。また、化粧品における動物実験を実施していないことを明確に打ち出し、動物実験廃止を求める団体の支持を表明するなどの動きも出ている。

一方では中国市場の獲得に向け、各社が動きを加速した1年でもあった。P&Gは、2017年に広州を拠点とするデジタルイノベーションセンターを立ち上げたが、2018年は中国のミレニアルを取り込むために、Digital Shelf(デジタル・シェルフ)を使って、パーソナライズされたマルチメディアコンテンツを消費者に提供することで、消費者が自分の肌の状態をよりよく理解できるようにした。また、パーソナライズを好む中国の若者に、より親密なバーチャル・ビューティー・アドバイザリー・サービスを提供することなどを発表している。

コティはアリババと提携し、主要都市のショッピングモールにインタラクティブな自動販売機を設置。アリババのTmall Innovation Centerと協働で中国市場向け商品を開発する

資生堂は、2019年1月1日付で「中国事業創新投資室」を上海に設立し、中国国内外での中国人消費者の動向を捉えた既存事業のイノベーション開発・実行と、化粧品領域および新規事業領域での事業開発を一層加速させることを発表した。

2018年の下半期は、どの企業も成長のための抜本的な戦略の見直しを迫られた時期でもあった。P&Gは、製造コストの上昇や売上高伸び率の低迷打破のために値上げ戦略を実施。コティはCEOの交代があり、懸念となっているコンシューマー向けビジネスのターンアラウンドが急務だ。そして資生堂は、3月に発表した新3カ年計画に沿って、ブランドの廃止や、中国での体制強化などを発表した。

4位 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
デジタルでは自社主導のマーケティング・キャンペーンに注力

上半期に、ネットでの広告価値毀損問題からブランドを守るために、ユニリーバと同じくマス向けのデジタル広告への支出割合を下げることを発表したP&Gは、下半期も上半期と同様自社主導のキャンペーンにフォーカスした。中でも、Oaly(オレイ)の#FaceAnythingキャンペーンがヒット。9人の多様なバックグラウンドのインフルエンサーを起用して、8月にローンチ。ヴォーグの9月号で紙媒体展開をし、デジタルと紙をつなぐマイクロサイトも好評だった。女性が見た目だけでなく、感じ方、ふるまい方すべてに相反する期待を常に感じていることに対して、終わりのない内面的な戦いを終わらせ、自らの役割を果たそうというテーマや、起用したインフルエンサーのストーリーが多くの共感を集め、インスタグラムのエンゲージメント率が8%以上に達成したという記事も出た

グローバルトップ6社の他企業と同じく、P&Gも米国でもっとも公正な企業のトップ企業としてフォーブスとJUST Capitalに認められるなど、公正な企業であり続けることにも力を注いでいる。

P&Gのデジタルでの主な動き

■ 8月中旬 Olayが#FaceAnythingキャンペーンをローンチ。

■ 10月3日 ジレットオンデマンドをカナダでローンチ

■ 10月10日 パンテーンがインスタグラムで14日間の#BadHairDayキャンペーンを展開。

■ 10月17日 ボストンのスタートアップで3D印刷システムを設計・製造しているFormlabsと提携し、シェービング体験をパーソナライズする新しいコンセプトのパイロット・プログラムを開始

P&Gの事業開発の主な動き

■ 11月30日 4月19日に買収を発表した独製薬大手メルクの一般用医薬品など消費者向けヘルスケア事業買収完了。

■ 12月12日 有色人種向けの健康・美容ソリューションを提供するWalker and Companyを買収。同社は独立完全子会社として運営され、創業者でCEOのTristan Walkerが引き続きリーダーを務める。

P&Gの倫理性へのアクション

■ 9月26日 男女共同参画のための行動を促すために、初めての#SheIsSqualSummitを共催し、メディア・広告業界に声をかけていくことを強調。

■ 10月11日 ハーバルエッセンスが、マスヘアケアブランドで初の視覚障害者も使用しやすいユニバーサル・デザインのボトルを導入

■ 12月12日 ハーバルエッセンスが、マスヘアケアブランドとして初のEWG VERIFIEDを取得

5位 コティ 
テクノロジー活用だけでなく多様性へのアプローチも

コティの2018年下半期の最大の話題は、CEOの交代だろう。2016年にP&Gから買収したCOVERGIRLなどの41ブランドの統合に苦戦してきたが、サプライチェーン問題が起き、早期に統合をするのが難しくなった。フレグランスやプロフェッショナル事業部は好調だが、COVERGIRL、CLAIROLRIMMELなどのコンシューマー事業が計画以上に業績が悪く、株価が2018年に50%以上下落したことなどを受け、11月にペインCEOが退任。後任にグローバルコーヒー大手のCEOで消費財の営業・経理分野が得意なピエール・ロービー氏が就任した。コティは、ドラッグストアで販売している安価なコンシューマー向け化粧品からグッチの香水のようなラグジュアリーまで幅広く取り扱っており、これまでは買収による売上と市場の拡大を行ってきた。競合の多くがプレステージ・ブランドの拡大に注力するなか、コティの売上の40%以上がマス向け商品だ。今後どのようにターンアラウンドを模索し、成長戦略を描いていくのか、市場が見守っている。

コティのデジタルでの主な動き

■ 9月14日 グッチのビューティー専用インスタグラム@gucccibeautyを開設し、西洋画だけでなく日本画などクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミッケーレがインスピレーションを得る世界中のアート作品を投稿

■ 10月23日 RIMMEL(リンメル)が主導して、否定的なサイバーいじめを撲滅するための#IWILLNOTBEDELETEDイニシアティブを発表。否定的なコメントや報復を恐れてソーシャルメディアで自分自身を完全に表現できないと感じる社会的な問題に取り組むことを目的としており、Cybersmileとの長期パートナーシップを通じて、AIツールであるCybersmile Assistantを活用。いじめの影響を受けている人に対して支援する地元のリソースやヘルプラインの紹介や、調査の実施、この問題についてのディスカッションが可能なオンラインスペースなどを提供していくとする。

■ 11月27日 COVERGIRLがニューヨークのタイムズスクエアにARやAII技術を活用した初の旗艦店をオープン

■ 12月6日 Google Assistant用のClairol Color Expertを発表。自宅などでカラーリングする際、もっとも適切な色をアドバイス。

■ 12月18日 アルゼンチンのブエノスアイレスにある提携ショップで香水のVR体験を開始。デジタルと現実の世界を融合させ、豊かで複雑な香りの世界を顧客にナビゲートし、それぞれの好みにあったコティ傘下のラグジュアリー香水ブランドを提案する。

コティの倫理面での主な動き

■ 11月5日 化粧品の動物実験を終わらせるために活動しているCruelty Free Internationalとの戦略的パートナーシップを発表。ファーストステップとして、COVERGIRLのために、Cruelty Free InternationalのLeaping Bunny認証を取得し、COVERGIRLの製品と原料がコティまたはそのサプライヤーによって動物実験されていないことを証明した

6位 資生堂 
中国市場での存在感を高められるか

資生堂は3月に、新3カ年計画でグローバルビューティーカンパニーへの成長を加速させると発表した。下半期もその内容に沿って、ブランド事業の集中と選択としてディシラを終了。また中国での体制強化を行っているほか、若者セグメント獲得に向けたオープンイノベーションへの取り組み、COSMETIC PRESSの第2弾としてマスカラをリリース。トレンドをすぐに製品・サービスにするプロジェクトを継続中だ。さらに米国でのアーリーステージのスタートアップに投資をするベンチャーファンドに出資をすることで、資生堂も有力なスタートアップへのアクセスを優位にしようと動いている。

資生堂の事業開発の動き

■ 7月17日 若年層のトレンドをすぐ形にする期間限定アイテム開発プロジェクト「COSMETIC PRESS(コスメティック プレス)」第2弾ブラシの中にブラシを収納したマスカラ「Sハイパートワイスマスカラ」新発売

■ 8月31日 化粧品ブランド「ディシラ」の終了を発表

■ 9月26日 米国での成長が期待できるアーリーステージのスタートアップへの投資を中心に行うベンチャーファンド「ドリーマーズ・ファンド」に出資することを基本合意

■ 11月28日 著しく伸長する中国市場での持続的な成長を確実にするために、中国地域本社体制を強化

■ 12月17日 2019年1月1日付で「中国事業創新投資室」を上海に設立し、中国国内外での中国人消費者の動向を捉えた既存事業のイノベーション開発・実行と、化粧品領域および新規事業領域での事業開発を一層加速させることを発表。

<まとめ>
グローバル売上トップ6社の2018年は、「デジタル」「ナチュラル」「ミレニアル」「グローバルマーケット」「ダイバーシティ」「倫理」「透明性」が共通したキーワードだったが、4~6位企業は、「中国市場の獲得」が共通のキーワードとなった。中国市場の中でもミレニアル世代をどう獲得するかが成功のカギになる。2019年1月のアップルショック以降、スターバックスなど中国での成長を減速する見通しを示す企業が出ている。中国では富裕層向け市場の減速が顕著となっており、化粧品大手の中国市場の獲得は長期戦になる可能性が高い。そのような環境の中で、P&Gのようにデジタルの力を活用するのは、ソリューションの1つであろう。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top image: humphery via Shutterstock

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