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美容室を毎日行く場所へ。MEZONはサロン業界のゲームチェンジャーとなるか

◆English version: Get Salon savvy with the MEZON app
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気軽に毎日美容サロンに行く。ユーザーの行動がそのように変われば、サロン側も新しいビジネスを生み出せるかもしれない。顧客とサロン双方にWin-Winのビジネスモデルを構想するアプリ、MEZONを運営するJocyのスタート地点は、創業者の「実感」からだった。

「美容室を毎日通える場所へ」。そんなコンセプトで立ち上げられたのが、美容室をネットワークし、月額定額制で、シャンプー・ブローやヘアトリートメントに通えるサービスを提供するアプリ、MEZONだ。

これまで1〜2ヶ月に1回程度だった顧客のサロン通いが毎日になれば、提携店舗は「ヘアサロン」だけにとらわれない新たな収益源を生み出せる可能性がある。ビジネスの新規性とサロン業界へのインパクトを探るべく、運営元の株式会社Jocy代表取締役、鈴木みずほ氏に話を聞いた。

日本でもシャンプー・ブローへ毎日でもサロンに行く習慣を

MEZONは、独自の品質基準をクリアしたサロンだけをネットワークした月額定額制サービスアプリだ。ユーザーは毎月好きなときに、クオリティが担保されたサロンをスマホアプリから選択し、シャンプー・ブローなどのヘアケアを受けられる。月に2〜4回通えるプラン(月額9,800円〜20,000円)とシャンプー・ブロー通い放題35,000円、そして2018年10月に、平日限定シャンプー・ブロー通い放題21,800円がリリースされた。(※料金は税別)

米国では、シャンプー・ブローのためだけにサロンに行く文化が存在する。友人同士でのディナー、パーティ、デート、こうした日常のシチュエーションで頻繁に利用しやすいブロー専門店の登場が相次いでいる。なかでも成功例として注目を浴びるのが、創業から6年足らずで売り上げを80億円近くまで伸ばしたL.A.発のブロー専門店「Drybar」だ。オープンから8年ほど経った現在でも人気が衰えることはなく、ニューヨーク、フロリダ、ノースカロライナなど全米に広がる勢いで店舗数を拡大。どの店舗に行っても高品質のサービスを受けられ、とくにニーズの高いニューヨークなど都市部では順番を待つ女性客で溢れかえる。

日本でも徐々にブロー専門店が登場してはいるが、まだイベント前や自分へのご褒美という「特別感」が強く、日常的に利用するという習慣が根づくには時間がかかりそうだ。

「通い放題プラン」がもたらす利用者の行動変容をねらう

こういったセット、ブローのみの専門店の一方で、月額定額制で美容サロンにリーズナブルに行けるサービスが「頻繁に美容室に行く」ためのハードルを下げると期待されており、国内でもオンライン予約プラットフォーム「サロンパスポート」が登場。メニューによって定額パスポートの使用回数が異なるが、サロンの空き時間を利用することで、ヘアサロン、ネイルやまつ毛エクステなどのサービスがリーズナブルに受けられる仕組みだ。

だが、ブロー専門店にしても、美容サロンにしても、利用者の行動を毎日のように行くというところまで変えるには、定額制から一歩踏み出し、「通い放題」プランがもっとも効果を発揮するはずだ。MEZONが目指すのもそこである。現状はシャンプーとブロー、ヘアトリートメントを中心としつつも、前髪カットとパーマもメニューに含まれており、よりリーズナブルな平日毎日通い放題プランは利便性も高い。

なぜ、MEZONでは「毎日」にこだわるのか。その理由は、鈴木氏自身がヘアケアのために高い頻度でサロンに通うことで気持ちにうまれたポジティブな変化と、顧客のサロン通いを習慣化させることで、サロン業界全体に新しいビジネス機会を創出できるはずだという信念にある。

女性の自信を生み出す「髪が整っている」という満足感

鈴木氏は、サイバーエージェントグループ出身だ。前職で大事なプレゼンを控えていた同氏は、その日ヘアスタイルが整っていないことが気がかりで、クライアント訪問前に美容室へと駆け込んだ。髪の状態が見違えるように良くなった鈴木氏のその日のプレゼンは上々だった。その後も、大事なプレゼン前には必ず美容室に寄るようになり、当時は「月に5回は美容室に行っていた」という。するとプレゼンの通過率がどんどんと高まっていき、「髪の毛がキレイだということが、自信につながっている」(鈴木氏)と確信。この体験をもっと多くの女性に伝えたいと、MEZONにつながるビジネスモデルを思い描きはじめた。

当初はシャンプー・ブロー専門店を立ち上げることも考えたが、自身が同じ店舗にばかり通っていたことに不便さを感じていたのもあり、行きたいときに、近くにあるクオリティの高い店舗が利用できればいいのではないかと発想を転換。アイディア構想から2年後の2017年、厳選したサロンだけをネットワークするというビジネスモデルで起業した。

MEZONの提携サロン一例

提携を希望する店舗には、鈴木氏自らがいわゆる覆面調査員として出向き、シャンプー、ブロー、髪の毛を巻く技術など細かくチェック。クオリティが高いと判断したサロンだけに営業をかけている。2018年10月現在、MEZONで利用できるサロンは都内で53店舗あるが、これを年内に100店舗、2019年3月までに300店舗へと拡大する計画だ。現在は東京のみだが、ゆくゆくは地方都市にも広げていきたいという。

鈴木氏によると、一般的なサロンでのシャンプー・ブローの平均単価は3,500〜4,000円。しかし、MEZONでは、「平日通い放題21,800円」で提供する。平日とはいえ、この金額だけをみるとサロン側の負担が大きいように感じるが、実際にはMEZONの「サロンを毎日通える場所へ」という理念に共感する声が多く、営業のための美容室訪問のアポ取りからの成約につながる率は驚くほど高い。

接客回数が増える=顧客の悩みを把握することにつながる

また、店舗獲得にも戦略がある。MEZONは多店舗ネットワークを前提とした定額制サービスなので、サロン同士で競争が起きる場合があり、せっかくMEZONを通じて新規客が増えたとしても、他店舗に取られてしまう可能性も否定できない。そこでMEZONでは一つのエリアに対し、提携サロンを一定数に絞りこんでいる。

まずは、MEZONを通じていろいろなサロンを体験してもらい、それから、銀座だったらここ、表参道だったらここ、というようにエリアごとにお気に入りの一店舗を見つけてもらうことが鈴木氏の狙いだ。ユーザー側にしてみれば、仕事やプライベートの予定に合わせて、好きなときに好きな場所の「行きつけのサロン」が持てる。

今後についても、店舗の数を増やすよりも、クオリティが担保されたサロンだけを紹介することで、ユーザーはいつどこのサロンに行っても満足感が得られるようにするのを重視する。仮にユーザーからの低評価が続いたり、Jocyの定点調査によりクオリティが下がったりするようなことがあれば、店舗リストの入れ替えも検討していくという。

株式会社Jocy 代表取締役 鈴木みずほ氏

現在の提携サロンの状況はどうか。表参道のあるサロンでは2018年9月時点で、1日5〜6人の客がMEZONを通じて訪れているという。しかし、鈴木氏は、それは決して満足できる数字ではなく、通い放題プランの浸透も含め、1日の顧客数をさらに伸ばしていきたいと話す。通う頻度が多くなればそれだけ髪の状態がよくなったことを実感されやすく、サロン通いを習慣化するサイクルができやすいからだと鈴木氏は強調する。

サービスを利用してサロンへの来店回数が増えると、当然顧客とのタッチポイントが増える。タッチポイントが増えれば顧客の悩みを把握しやすくなることから、カットやパーマ、カラーといった通常メニューへの引き上げも容易になる。また、なかなか指名客を獲得しにくい新人スタイリストにとっても、シャンプー・ブローの技術で満足してもらえれば、次の来店時にはカットなどの指名につながるケースもあるだろう。実際、MEZON経由で訪れた新規顧客が通常メニュー顧客に引き上がる割合も増えてきているという。

もう一つ、鈴木氏が「サロンを毎日通える場所」にしたいと考えるのは、「顧客とのタッチポイント増=新たなビジネスモデルも喚起できる」からだ。たとえば、毎日来てくれるのであれば「その日の髪型に合わせた洋服のレンタルサービスをスタートしよう」といったように、新しいビジネスを始める土壌ができる。つまりサロン=ヘア関連サービスの場所から、美容やファッションなどの関連サービスをトータルで提供できる場所となり、サロンのアイディア次第で無限のビジネスチャンスを生み出す可能性があるわけだ。

独自の認定制度を通して、品質の可視化に取り組む

今後、鈴木氏は、このサイクルの定着化のために、「MEZONクオリティ」というランク制度を構築するという。

「MEZONクオリティとは独自の認定制度のことで、基準をクリアし認定されたサロンに仮想バッジを付与する。バッジはアプリ内で見られるため、ユーザーはひと目でクオリティの高さを確認できる」。ランク制度については、ユーザーのレビュー(非公開)や満足度をMEZONの基準に合わせて数値化。それを評価とし、アプリ上で公開する。

MEZONが目指すのは、あくまでプラットフォーマーとして、サロン業界全体の底上げを図っていく立ち位置だ。そのため、「当社が示したいのは、サロンの新しい経営の形。もし他のサロンが独自に『定額制サービス』を始めたとしても構わない、むしろ歓迎だ」と、サロン業界全体がそこに新たなビジネスチャンスを見出し、旧来の商習慣を覆す前向きな変革が起きるなら、どんどん参入してほしいという。

現在同社のターゲットは、20〜40歳代の女性が中心。外資系金融に勤める女性をターゲットにした広告では、CVR(コンバージョンレート)が2倍という結果が出ていることから、年収高めで可処分所得の高い層への受けがよいと考えられる。そのため、親和性が高そうな他分野の定期購入サービスやスポーツジム、またMEZONの利用シーンが分かりやすいデートアプリなどとの提携を進め、ユーザーを拡大していく予定だ。その先には海外展開、特にアジア市場を見据えている。まずは、日本での成功のために、アプリも順次リニューアルを行う予定だ。

現状の予約方法はネット、電話、LINEの3つ。また、位置情報を活用して「今いる場所から一番近いサロンを検索」するサービスなど、顧客の利便性を徹底的に追求していくとする。日本の女性たちの日常に、「ちょっと美容室行ってくる」ことが増えたとき、サロンビジネスも新しい局面に入っていくはずだ。

Text: 公文紫都(Shidu Kumon)
Top image: Guilherme Petri via unsplash

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