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資生堂Optuneは先駆け、迫りくる5G時代に激変する美容業界を予測する

◆ English version: On 5G and how beauty lies in the IoT of the beholder
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2020年から日本でも本格的な普及が始まろうとしている「5G」。新たな通信規格は、生活やビジネス、また社会の在り方そのものを大きく変えていくと予測されている。では、美容業界に対して5Gはどのようなインパクトを持つのか。ネット黎明期から、デジタライゼーションやイノベーション関連のコンサルタントとして一線で活躍するD4DRの藤元健太郎氏にその未来像を聞いた。

5Gがもたらす社会の変化

コンサルティング企業・D4DR株式会社の代表取締役社長を務める藤元健太郎氏は、野村総合研究所に在職していた1994年からインターネットビジネスのコンサルタントとして活躍。2002年より同社代表に就任し、企業の事業&マーケティング戦略策定支援、調査などを担当しており、テクノロジー関連スタートアップも支援している。最近では、5G時代のリテールテックを題材にした講演会に登壇するなど、最新技術動向について精力的に活動を行っている。

今回、「5G時代に美容業界はどのように変化するか」という視点から、藤元氏は、美容関連のIoT機器の利便性の向上や、そこでしかできない体験を創出する実店舗の価値があがること、あわせて、新しいビジネス領域への進出や、生産現場の大幅な変革などを予測する。では、具体的に何が起こるのかの予想をみていこう。

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D4DR株式会社 代表取締役社長
藤元健太郎氏

5Gの基本概念と根本的変化

5G(第5世代移動通信システム)は一般的に、「超大容量」「超高速」「多数接続」「低遅延」などを特徴とする通信システムとして紹介されることが多い。少し専門的な解説は最後にするとして、5Gが普及すると人々の生活にどんな変化が起こるのか。

よくいわれる「動画やVRコンテンツがストレスなく視聴できる」などは、その表面的な変化にしかすぎない。大きなことでは、人の移動性(=モビリティ)が格段に高まるとされる。たとえば、移動する車の中でコンテンツを編集したり、モノをつくったりすることができるようになり、生産拠点という観念が変化していく。リモートワークやテレワークなど、働き方の多様性もより充実していくだろう。

自動車メーカー大手・トヨタは、「モビリティの考え方が変わる5G時代を見越して、新たなプロダクトやサービスを開発している」と藤元氏はいう。車を売るのではなく、車に乗っている人に向けてサービスを売るという「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」という考え方だ。

そのほかにも、ケーブルいらずで産業用ロボットを制御できるようになることで、工場の在り方がより効率化したり、クラウドやサーバ側にデータをすべて送り処理できるようになるため、消費者が使う端末(スマートフォンやPC)などがより安価かつシンプルになったりと、想像できる範囲内だけでも5Gがもたらす社会やビジネスへのインパクトは相当なものになると予想されている。

5Gがもたらす美容業界の未来図

美容業界も5G時代の変化の波を大きく受けると藤元氏は断言する。

「5G時代にまず考えられる変化としては、IoT系の美容家電がより普及していくだろう。現在、家庭用のIoT端末はほとんどWiFiやBluetoothを通じてネットに接続される。5Gの通信環境が整い、端末側にeSIM(次世代のSIM規格)などが内蔵されれば、各端末が個別にネットに接続しうる。つまり、IoT機器の利便性が良くなり、結果として消費者にも受け入れらやすくなる」

藤元氏は具体的な事例として、資生堂のIoTスキンケア「Optune」をあげる。現在、Optuneのサービス利用規約(サービス提供条件)には、「本サービスでお手入れを行うご自宅の場所に、無線LAN(Wi-Fi)環境が整備されており、通信が途切れずに本マシンの接続を保てる環境にあること」とされている。これが、「通信機能を内蔵した状態で売れるイメージ」になると藤元氏は言う。つまり、現在はIoTマシンをひとつずつ家の無線LANにつなぐ必要があるが、5G時代は個々がネットにつながっており、しかもそれが超高速だということだ。

「IoT美容家電が増えれば、それぞれのユーザーに関するデータ取得も飛躍的に増える。ずっとつながっているので、ユーザーとのコミュニケーションも容易になる。そうなると、美容メーカーはサービス業にも進出しやすくなるはずだ。Optuneがまさにそうだが『化粧品を売る』というビジネスモデルに留まらず、毎月カートリッジを送付したり、常にサービスを提供できる立場になる。よりパーソナライズされた、優良なサブスクリプションモデルも設計しやすくなるだろう」

自動車産業がMaaSにシフトしていくなら、美容業界は「BaaS(ビューティ・アズ・ア・サービス)」へと向かっていくわけである。藤元氏は、化粧品メーカーに「化粧品サービス企業」としての道が拓ける一方、たとえば、サロンやエステティックなど美容業界で隣接してきた業種がIoT美容機器などを取り入れることで、お互いにサービス業として競合となる可能性も指摘する。さらにヘルスケアや医療など、それまで美容とは別のビジネスとされてきた境界線も融解することで、総合的に「幸せを追求したい」という需要に応える「ウェルネスマネジメント」という領域で競合としてぶつかると予測する。

MVNO(格安SIMを提供する事業者)がさらに増えると予想される5G時代では、ウェルネスマネジメントに特化した携帯電話サービスも出てくるかもしれない。5Gは、こうしたビジネス領域の融解をもたらすテクノロジー的背景という位置づけだ。

図1

資料はD4DR提供

「オフライン店舗の在り方も変わるかもしれない。5G環境やIoT機器が充実すれば、最終調合を店舗で行う企業が現れるだろう。いわゆる『化粧品のマイクロ工場』の登場だ。同じ文脈で、添加物や保存料を使わない出来立ての“生化粧品”を店頭でつくり販売するサービスが生まれる可能性もある。これは、昨今の消費者のナチュラルやオーガニック指向ともマッチする。生化粧品やマイクロ工場など店舗の体験価値が豊かになれば、店舗への来客は増し、顧客との接点はさらに増えていく。LTV(ライフタイムバリュー)もあがるだろう。そうなると、ビューティー系の企業にとって、オフライン店舗の重要性がより増していくはずだ」

藤元氏はまた、高品質のVR・ARサイネージを使って、家では味わえないような体験を提供し体験価値を高めることができるなど、5G時代のオフライン店舗の重要性を強調する。加えて、マイクロ工場など新たな試みを行うためには、5Gの通信環境やIoTデバイスのノウハウが必須になるため、「美容に特化した関連ハードウェアパッケージも実は商機かもしれない」と付け加える。

もちろん、通信関連法や薬機法の規制、また業界内の利権などの絡みで、上記に予想したような変化がすぐに起こるかは未知数だ。それでも、「超高速」「多数接続」などの特徴を兼ね備えた5Gは、その劇的な変化をもたらす技術的源泉となりうる。通信環境の変化は、社会やビジネスを大きく変えてきた。藤元氏は、こういった世界が実現するのに「あと5年くらい」と予測している。その5年後の世界を考えているか否か。その岐路のひとつに差しかかった現在、美容業界でも発想の転換や新たな挑戦が求められている。

さらに高速な6Gの世界、
すでに実用化に向けて開発が進む

さて、最後に少し技術的な話に立ち入っておきたい。5Gのネットワーク構成には、NSA(Non Standalone)とSA(Standalone)のふたつのタイプがある。前者は、4Gネットワークに5G無線を付加したもので、LTEが5Gの動作を補助する。一方で、SAはLTEなしで動作するネットワークだ。なお、日本を含み、現在商用化が進んでいるのはNSAである。

5Gを理解する際には、世界の移動体通信システムの仕様を検討・作成する国際的な標準化プロジェクト「3GPP」についても触れておく必要がある。同プロジェクトの最初の3G規格は1999年の「R99」(リリース99)と呼ばれ、2000年代からはR4から新たに始まり、現在も段階的に拡充していっている。通信業界では、そのR15、R16、R17の規格を「5G」と呼んでいる。ちなみに、同じようなタイムスパンで計算すると、R22あたりで「6G」になるとの見通しだ。ちなみに、NTTは「6G」向けの通信技術を実用化に向けてすすめているという報道があった。中国ではすでに開発段階に入っているともいわれる。そのときには、「通信」をするという概念すらなくなっているかもしれない。

Text: 河鐘基(Jonngi HA)

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