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TikTokをどう使いこなすか。美容から食品まで日本・中国のプロモーション最新事例

◆ English version: Can TikTok win over beauty brands in Japan and China?
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2018年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた中国発の短編動画アプリ「TikTok」は一過性のブームにとどまらず、若者を中心に定着した感がある。企業にとってもデジタルマーケティングの選択肢の1つとして無視できない存在になっており、ビデオリサーチインタラクティブの調査によると、2018年度上半期(4月~9月)のスマートフォン広告の推定インプレッション数においてTikTokは2位となった。ただし、TikTokにおける露出手法はバナー広告や純広告だけでない。今回は、広告以外のプロモーション事例を紹介するとともに、美容業界が活用するうえでの課題について考えてみたい。

インプレスがLINEリサーチと行なった調査によると、若い女性ほどTikTokを利用している割合は高く、中学1年生女子では53%が利用しているという。ユーザーに若い女性が多いことから、TikTokは美容やファッションとの親和性が高いと指摘する専門家も多い。しかし、化粧品メーカーの動向を見てみると、事例はまだそれほど多くない。主要メーカー・ブランドを調査したところ、アカウントを確認できたのは以下の8ブランド。日本ブランドは4つだけだった(2019年4月末時点)。

パンテーンのハッシュタグチャレンジ累計視聴回数が1.3億超

どのブランドも投稿数はまだ少なく、様子見の部分もあるようだが、ある程度の実績を出している事例もある。例えば、メイベリンニューヨークはTikTok用にプロモーション動画を制作。アーティスト・長谷川澪奈が歌う「まつげ彼氏」に合わせて、60万人以上のフォロワーを抱えるモデルでTikToker(TikTokのインフルエンサー)の莉子(リコリコ)が振り付けをして商品をPRする動画を投稿したところ、約4.8万のハート(いいね)がついた。同曲を使用した一般ユーザーの投稿も増え、「#まつげ彼氏」の累計視聴回数は1,000万を超えた。

また、イミュが展開する化粧品ブランド「OPERA(オペラ)」も、オリジナルソングにTikTokerの中町綾とふてこを起用した「リップ早替えチャレンジ!」と謳ったプロモーション動画を投稿。約1.7万のハートがつき、こちらも一般ユーザーが後追い投稿が続いた。結果、「#オペラデュエット」の累計視聴回数は1,000万を超えた。

TikTokにはより効果的なプロモーションツールとして、「ハッシュタグチャレンジ」がある。これはユーザーが与えられたお題に挑戦する企画で、企業による利用が広まっている。よくあるのは、商品イメージに合わせた歌と振り付けを企業が用意し、ユーザーがその歌に合わせて口パクをしながら振り付けを真似たりアレンジしたりして投稿するパターンだ。インフルエンサーやタレントが呼び水として挑戦することでチャレンジは拡散され、投稿も増えていく。

たとえば、カネボウ化粧品が展開する日焼け止めブランド「ALLIE(アリィー)」をプロモーションするハッシュタグチャレンジ「#今日はこれでアリィー」は、YouTubeなどSNSで活動するクリエイターのあさぎーにょが歌う「マシュマロほっぺになりたい~」の歌詞に合わせて、ユーザーがほっぺを指で押したりして“あざと可愛い”を表現するというチャレンジ企画だ。ポップなメロディと可愛らしい振り付けが話題となり、約8万人が投稿。累計視聴回数は7,000万を超えている。

ヘアケアブランド「パンテーン」を展開するP&Gも昨年11月、ハッシュタグチャレンジを利用して「パンテーン ミセラーダンス選手権」を開催した。シンガーソングライターのコレサワが“さらさら髪”をテーマに歌った歌に合わせ、モデルでタレントの谷まりあがダンスを披露。ユーザーからそれを手本にした投稿を募集し、優勝者の動画がパンテーン公式Twitterで発表されるというチャレンジ企画だ。キャンペーンは2週間だけだったが、その後も投稿は増え続け、「#ミセラーダンス」の累計視聴回数は1.3億を超えるまでに膨らんだ。

パンテーンの「ミセラーダンス選手権」
(出典:TikTok

さらにヘアケアブランド「LUX(ラックス)ルミニーク」を展開するユニリーバも、ハッシュタグチャレンジ「#気分を変えるシャンプー」を実施。モデルの松本愛、人気TikTokerの山之内すず、山田麗華、ちなぴぴが音楽に合わせてダンスを披露。一般ユーザーも含めた累計視聴回数は、2,000万を超えている。

プロモーションはメンズ製品にも広がっている。ロート製薬は4月25日、メンズスキンケアブランド「OXY(オキシー)」のハッシュタグチャレンジ「#オキシーデヘンシン」を開始した。ARを活用して顔に汚れや汗を表示させ、それをオキシーで洗い流すというイメージのテンプレートを用意して動画を募集。抽選で選ばれたユーザーは、新宿駅のデジタルサイネージで放映される。お笑いコンビ・ミキも挑戦した同チャレンジの累計視聴回数は、初日だけで300万を超えたという。

ロート製薬の「オキシーデヘンシン」
(出典:TikTok

TikTokプロモーションに積極的な飲料・食品業界

紹介したように、美容業界の一部ではTikTokによるプロモーションが行われているが、より積極的に活用しているのが飲料・食品業界だ。以下に主なアカウントを挙げたが、当然ながら男女ともに見られるため、上位のフォロワー数は美容関連より多い傾向にある。

ハッシュタグチャレンジへの取り組みも積極的だ。サントリー食品インターナショナルは、「ペプシ Jコーラ」のキャンペーン企画としてハッシュタグチャレンジ「#わっしょいジャパン」を展開。演歌歌手の石川さゆりや声優の上坂すみれなどが出演する動画がCMにも使用されたことが話題となり、累計視聴回数は1.5億を超えた。

グリコは、同社が定める11月11日の「ポッキー&プリッツの日」に合わせ、ハッシュダグチャレンジ「#ポッキー何本分体操」を展開した。あさぎーにょが歌う曲に合わせてポッキーを食べる仕草をする動画を募集。選ばれた動画は渋谷の街頭ビジョンやポッキー公式Twitterで流されるというもので、累計視聴回数は8,000万を超えた。

グリコのハッシュタグチャレンジ
(出典:TikTok

「Qoo(クー)」を展開する日本コカ・コーラもハッシュタグチャレンジ「#みんなのまんなかQoo」を実施している。CMに起用されている人気グループ・TWICEの楽曲に合わせたダンス動画を募集し、優秀者はブランドサイトに掲載される同チャレンジ。開始から2週間足らずで、すでに累計視聴回数は6,500万を超えている。

こうしてみると、飲料・食品系のほうが美容系よりもTikTokをうまく活用していることがわかる。美容業界が活用しきれていない理由は、主に2つあるだろう。

1つめは、CMとの連動性だ。飲料・食品系はCMのイメージをそのままTikTokに展開することが多い。CMで使用されている曲はポップやクールなものが多く、ユーザーが振り付けをしやすいのだ。実際、飲料・食品系では、投稿した動画がCMに使用される可能性があると謳っているハッシュタグチャレンジも多い。ところが、美容系ではそうはいかない。事例で紹介したカネボウ化粧品のアリィーも、TikTokで使われている歌はCMの雰囲気とはかなり異なる。つまり、美容系ブランドがハッシュタグチャレンジを展開するためには、専用の曲やイメージを作り込んでいかなければならないのだ。

もう1つの理由は、美容分野はメーカー主導とは異なるハッシュタグチャレンジがすでに多数存在していることにある。たとえばブランドではなくTikTokのユーザーが設定したハッシュタグチャレンジ「#リップチャレンジ」は、唇の上下1箇所ずつにリップをつけ、手を使わずに唇だけでそれを伸ばしていくというチャレンジ企画だが、累計視聴回数は5,700万を超えている。競合する企画が多いだけに、美容分野でバズを起こすには、ユーザーのチャレンジ精神をくすぐる工夫が必要なのだ。

人気チャレンジは視聴回数が30億を超える本家中国の破壊力

美容業界がTikTokを活用しきれていないのは、本家中国でも同様で、プロモーション事例は限られている。そうしたなか、フォロワー数が多いのはPerfectDiary(完美日記・約4,100万)、ディオール(約3,600万)、資生堂(約200万)、エスティーローダー(約180万)、エチュードハウス(約170万)、メイベリンニューヨーク(約140万)だ。(※カッコ内はフォロワー数)

日本とは違い、フォロワー数が多いブランドは、ハッシュタグチャレンジを展開しない傾向にある。ディオールはプロモーション動画を投稿しているだけだが、それでもこれだけ多くのフォロワーがついているのは、そのブランド力とプロモーションに有名タレントを起用しているからだろう。

ただし、ハッシュタグチャレンジがはまるとそのインパクトは大きい。資生堂(中国)は、同社が展開する若年層向けスキンケア「WASO(ワソウ)」のイメージキャラクターに中国の大女優ファン・ビンビン(范冰冰)の弟ファン・チョンチョン(范丞丞)を起用している。WASOはメンズ向けではないが、中国では近年、女性用化粧品に男性タレントを起用するケースが増えている。

同社は、そのファン・チョンチョンが出演しているWASOの広告素材を使用して同ブランドをプロモーションする動画を募集し、優秀な作品を投稿した5人にファン・チョンチョンのサイン入り商品をプレゼントするハッシュタグチャレンジ「#范丞丞waso有范(WASOには范がいる)」を展開。その累計視聴回数は約4.6億に達した。WASOとは関係のない投稿も多いものの、ブランドを広める一定の効果はあるだろう。

資生堂(中国)の、ファン・チョンチョン
(范丞丞)を起用したプロモーション
(出典:TikTok

メイベリンニューヨークは、理想の眉の形を募集するハッシュタグチャレンジ「#你要的眉型都拿走(あなたがなりたい眉毛の形を持ち去る)」を展開している。ハートが多かった20名に商品のセットをプレゼントする同チャレンジの累計視聴回数は、なんと30億を超えている。ただ、中国ブランドは、ハッシュタグチャレンジは回りくどいのか、それには頼らず、影響力のあるTikTokerと直接提携するケースもある。日本製を売りとする「花印(HANAJIRUSHI)」は、洗顔クリームのプロモーションのために、6億人以上のフォロワーを抱える張凱穀Kevinと提携。彼女がプロモーション動画に出演した。

メイベリンニューヨークの
ハッシュタグチャレンジ
(出典:TikTok

中国のTikTokerは日本とは違い、いかに売れるかにフォーカスしている。張凱穀Kevinの投稿もほとんどが化粧品を紹介する動画で、それらを販売するページがリンクされている。中国では、TikTokerと提携することがいちばん手っ取り早いプロモーション法といえるのかもしれない。

米印で躓きも…求められるコンプライアンスの徹底

拡大を続けるTikTokだが、このままYouTube、Twitter、Instagramに並ぶプロモーションツールになるまで成長するのかについては不透明だ。海外での展開を見ると、ここにきてリスク要因が明るみになっているからだ。2月には、米国で13歳未満の児童の動画など個人情報を違法に利用したとして、運営会社の「ByteDance(字節跳動)」が570万ドル(約6.3億円)の罰金を科され、4月にはインドで不適切な動画が数多く配信されているとして最高裁判所から新規ダウンロード停止を求める決定を下された。 

その後の報道で、インドでのダウンロード停止は解除される見込みのようだが、TikTokは急速に拡大したため、各国で管理が追いついていないのは否定できない。TikTokでは企業だけでなく個人にも認証制度が設けられているが、Twitterなどと比べると審査はゆるい部分が散見される。たとえば菅義偉官房長官のアカウント「菅義偉【自由民主党所属】」が認証済みとして存在するが、投稿内容を見ると明らかに本人ではない(2019年4月末日現在)。TikTokが成長を維持できるか否かは、今後コンプライアンス(法令遵守)を徹底できるかどうかにかかっている。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: BigTunaOnline via shutterstock

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