ランコム「クラリフィック」、化粧水激戦区の日本でベスコス4冠までの戦略
ランコムの「クラリフィック デュアル エッセンス ローション」が2020年上半期ベストコスメ受賞4冠を達成という快挙を成し遂げた。外資系ブランドにとっては激戦の日本のスキンケア市場、ことに化粧水でベストコスメを受賞するのは異例ともいえる。その立役者となったのが、2020年6月まで日本ロレアル株式会社 ランコム事業部長(現 ロレアル社 イヴ・サンローラン・ボーテ アジア太平洋地域ジェネラルマネージャー)をつとめた都築誠也氏だ。2006年7月からランコムに着任した都築氏の戦略と積み上げた戦術を振り返る。
ランコムは、先進のサイエンスにもとづくイノベーションを武器に、世界130カ国で幅広い年代の女性から愛されるラグジュアリービューティブランドだ。ランコムは世界No.1のクィーン・オブ・コスメとして、「フレンチビューティ」をコンセプトに、市場のリーダーだけが可能な “王者のマーケティング” を世界共通で展開してきた。
ランコムからベストセラー&ロングセラー製品を生み出す戦略
あらゆる国のあらゆる世代に向けて、ブランドの価値を伝えていくその手法には、莫大な投資余力・圧倒的な知名度といった経営資源の質と量が求められる。しかし、日本には、独自の美容文化が発達してきた歴史があり、長年愛される、強い国産ブランドそしてプロダクトが多数存在する。はたして日本市場に限定したときにも、ランコムは市場のリーダーだといえるのだろうか。いや、チャレンジャーであるはずだ。
「チャレンジャーであるならば、チャレンジャーなりの戦い方をしなければならない。ターゲットにせよ、市場に投入する製品の選定にせよ、あらゆるファクターにおいて徹底的に集中することが重要だ。そのうえでトップをとりにいく」。この戦略を信じてやり抜くしかない、と判断した都築氏は、2013年から2015年にかけて、それまでのマーケティング戦略の大転換を図ることを決断した。
2020年6月まで日本ロレアル株式会社
ランコム事業部長を務めた都築誠也氏
全方位的なマーケティングを行っていたところから、集中型マーケティングへ移行するには、一時的な売上減、現場の試行錯誤など、さまざまな痛みがともなうのは必然だ。「やることを決める以上に、やらないことを決めるのが、重要かつ難しい。少なからず、移行期間にはブランドの勢いが落ちる。それでも未来は明るいと信じ、我慢して乗り越える胆力が必要だった」(都築氏)
日本の化粧品市場、とくにスキンケア分野の特徴として、名だたるベストセラー製品はほぼロングセラーでもあり、そのほとんどが日本ブランドであることが挙げられる。時間と試練を耐え抜いたものだけが、本物の名品だと認められる文化が根付いているのだ。
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