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ジールスの「接客DX」、チャットボットによる「おもてなしの精神」でLTV向上へ

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新型コロナウイルス感染症流行の長期化に伴い、実店舗にかわりオンライン上で行う接客の重要性が高まっている。美容業界におけるオンライン接客の取り組みに関して、これからどのようなことが求められるのか。LINE向けチャットボットツールの提供から、店舗を持つ企業の接客デジタル化までを手掛けるZeals(ジールス)と、同社のチャットボットを導入したLINEアカウントを展開するオルビスに話を聞いた。

導入社数は350社超、チャットボットのサービスで存在感

2014年に創業の株式会社Zeals(以下ジールス)は、カスタマーサポート向けに使われることが多かったチャットボットを販促用にアレンジしたチャットコマース「ジールス」を中心に展開し、成長を遂げてきた。

チャットコマース「ジールス」は、主にLINE上でチャットボットとユーザーの双方向のやりとりを通じ商品を訴求できるソリューションである。従来の広告のランディングページの施策と比較して、購買率を5倍に伸ばした事例もあるといい、オンライン向けの販促ツールとして高いポテンシャルがうかがえる。導入先は人材、教育、保険、小売りなど幅広く、取引社数は350社を超え、エンドユーザー数は延べ300万人におよぶ(2021年1月現在)。

美容業界ではバルクオムやオルビスなど50社以上が導入してきた。特にダイレクトマーケティング(通販やD2Cなどの)スキンケアブランドのオンライン上での接客チャットボットに対して深い知見を持つ。

「ORBISスキンケアチェック」のコミュニケーションを支援

協業先のひとつであるオルビスでは、2013年から運用しているLINE公式アカウントとは別に、2020年1月にチャットコマース 「ジールス」を導入したアカウント「ORBISスキンケアチェック」をローンチした。

目玉コンテンツは肌診断で、ユーザーが肌質や肌悩みなどの質問に選択式で回答すると、質問が次々に分岐し、最終的にユーザーの肌タイプとその肌タイプにあった商品を提案する。

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「ORBISスキンケアチェック」のUI
画像提供:Zeals

肌診断のほかにもユーザー属性に合わせ、定期的にプッシュ通知を行う。テーマは「美肌の裏技」や「リフトマッサージ」など、アイテムの使用方法や肌悩みに応える内容で、「どんな肌悩みがあるのか?」「何の商品が気になるのか?」などユーザーのアクションを引き出す質問を盛り込んだシナリオを用意しているという。

「実店舗で良い接客体験を得ていたお客様に、コロナ禍においても同じ体験を提供したい」と話すのは同アカウントの担当者であるオルビス株式会社 CXデザイン部 AD-リテンション戦略グループ 松本秀平氏だ。その言葉どおり、カウンターでの接客により近い形のコミュニケーションがLINE上で体験できるよう工夫されている。

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オルビス株式会社 CXデザイン部
AD-リテンション戦略グループ
松本秀平氏
画像提供:オルビス

これにより「ORBISスキンケアチェック」のコンバージョン数はローンチした初月(2020年1月)に比べ、2020年12月は760%と右肩上がりで成長している。またオルビスのほかのメディアとの比較でも、CVR(コンバージョンレート)は2倍弱、転換率(友だち登録の後、アカウントを通じユーザーが最初の買い物を行い、その後、さらに別の商品の購買にもつながった割合)は1.5倍強を記録している。

この好調を支えるのが、立ち上げ時の担当者であるオルビス株式会社 CXデザイン部 AD-リテンション戦略グループ 照井真規子氏が、ジールスの担当者と構築したコミュニケーションロジックだ。

「膨大なコミュニケーションツリーは、ひとりではとても作れなかった。結果として、回答パターン(全分岐数)は約150、最終診断結果は22パターン、プッシュ配信メッセージは14本というシナリオとなった。チャットボットでも、ユーザーの潜在的な悩みを聞き出せたり、自分に合う商品がわからないというユーザーに寄り添うアテンドが実装できている」(照井氏)

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オルビス株式会社 CXデザイン部
AD-リテンション戦略グループ
照井真規子氏
画像提供:オルビス

現在「ORBISスキンケアチェック」の運営は、松本氏とジールスのオルビス担当コミュニケーションデザイナーが中心となり行っている。月1回の定例会で、直近1カ月に配信したプッシュ通知のクリック率や完答率(用意した質問に最後まで回答してくれたユーザーの割合)など、ユーザーの動きの定量的な報告と助言をジールス側から受けて、質問の順番を変えたり、新しく項目を追加するなどの調整をしている。

「(データ的に見ても)コミュニケーションを増やせばいいものでもない。今後も協業により、顧客を飽きさせない、質の高いコミュニケーションをしていきたい」(松本氏)

ジールスが掲げる「接客DX」とは?

さらにジールスは、チャットボット事業から発展し、必要に応じてチャットボットから有人チャット、そして独自開発のツールを用いたビデオ接客システムへと切り替えが可能な「接客DX」のソリューション提供を2020年7月から開始した。

通販業界を中心に成果をあげてきた、チャットボットが接客しながら商品を販売する知見を、コロナ禍にあって苦境に立たされている実店舗を持つ企業の接客デジタル化支援につなげる狙いがある。同社が掲げる「接客DX」では、単にツールを提供するのではなく「オンラインにおける接客プロセス」をいかに作りあげるかという点に主眼を置いているという。

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チャットボット、有人チャット、
ビデオ通話を組み合わせた旅行業者HIS
との「接客DX」の取り組み概要

オンラインカウンセリングの裾野拡大に必要なこと

その「オンラインにおける接客プロセス」の視座は美容業界においても重要になるのではないか。そう語るのは株式会社Zeals取締役COO遠藤竜太氏だ。

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株式会社Zeals
取締役COO 遠藤竜太氏

「美容業界が取り組んでいるオンラインカウンセリングに対する顧客の満足度は高く、非対面という制約がありながらも一定のサービスが提供できている。その一方で、オンラインカウンセリングを受けているユーザー数はまだまだ少ない。これから実店舗に並ぶ規模にまでオンラインカウンセリングのユーザー数を増やすには、集客からオンラインカウンセリング利用までの一連のプロセスの整備が必要なのではないか」(遠藤氏)

そこで、オンラインカウンセリングへの導線として、同社が重視するのがLINEである。友達機能を使ってユーザーとつながり、プッシュ通知で美容の悩みや希望をチャットボットとの対話で引き出したうえで、必要に応じて、ビューティアドバイザーとの文字チャットやビデオ通話へとつなぐ体験を作るのが有効な施策になるとする。

顧客ロイヤリティ向上のためのオンライン接客を

さらに、オンラインでの接客やテクノロジーを上手く活用することで、各企業はブランドの商品販売後のアフターフォローをより充実させられるだろうと遠藤氏は語る。

これまで、デジタル領域の取り組みは、いかに商品を購入してもらうかという新規顧客獲得が重視され、リターゲティング広告などによって徹底的な効率化が図られてきた。その一方で、商品購入後のフォローを通じて継続購入を強化する余地はまだあるとみているのだ。

「他業界の場合、一度商品を購入した顧客のフォローを積極的にするのに対し、美容業界の場合はそこまでではない。追いかけ過ぎはよくないが、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客に対してのアプローチがもう少しあってもよいのではないか。そうした際に有効なのがLINEを使ったコミュニケーションで、適度な距離感でつながることができる。カウンターだけでなくLINEなどオンラインを活用して購入商品についての丁寧なアフターフォローをすることはLTV(ライフタイムバリュー)の向上にもつながるはずだ」(遠藤氏)

ITは手段。クライアントと同じ目線に経って目標達成を

先述した通り、ジールスは自社プロダクトの提供だけでなく、チャットボットや有人チャットのコミュニケーションロジックの設計から全面的にバックアップする体制を持つことが、競合他社との違いである。同社には、エンジニアに加え、クライアントに伴走するコミュニケーションデザイナーと呼ばれる専任スタッフが在籍しており、人数はそれぞれ50名ほどだ。

コミュニケーションデザイナーが担うのは、チャットボットや有人チャットのコミュニケーション設計で、社内向けのプロダクト管理画面を使って、会話のロジックツリーなどを組み立てる。エンジニアリングの知識がなくても、チャットボットの構築ができる点が同社の強みとなっている。

「プロダクト自体にこれまでのノウハウが落とし込まれているが、それとは別に、社内で共有されるさまざまなノウハウがある。美容系ブランドに関しては、クライアントが望む方向性とノウハウを織り交ぜながら最終的なアウトプットの形を決める」(遠藤氏)

プロダクトありきでなく、ブランドの要望にあわせてカスタマイズできるのも同社サービスの特長であり、料金体系は成果報酬型をとっている。他社サービスの場合は初期費用+月額課金方式が多いなかで、同社が成果報酬型をとることには理由がある。

「月額課金の場合、できるだけ工数を少なく回した方が、効率的に収益が出せるという発想になりがちだ。それでは本当に価値があるものを届けるのは難しい。効率化に走るのでなく、クライアントと同じ目線に立ち、目標達成にコミットするためにジールスではあえて自分達がリスクをとり成果報酬型にしている。我々は単にプロダクトを多くの企業に導入してもらえればよいと考えているのではない。クライアントと一緒に新しい時代の販促ソリューションをつくりたい」(遠藤氏)

接客に従事する人材にこそ「接客DX」を届けたい

今後、「接客」マーケットのDXを進めていくのに欠かせないのは、接客に従事する人に対するアプローチだと遠藤氏は考えている。

たとえば、美容部員などこれまで接客を中心に従事してきた人材の場合、パソコン操作になれていないケースも少なくない。そうした人材でもオンラインでの接客ができるようプロダクトのUIを工夫していきたいと遠藤氏は話す。

「管理画面のスマホ最適化を進めていく。今は、オンライン接客にあたっている人材はごく一部に限られるが、これから多くの人材がオンライン接客に従事することを考えると、教育システムの整備も不可欠になる。これはまだアイディアベースではあるが、相手の了承を得たうえで、美容部員にマイクを付けて顧客との会話データを取得し、それを顧客データベースに反映させるなどをしたい。こうした会話データをもとに次の接客アプローチを判断したり、チャットに最適なプッシュ通知を送ったりと、データが溜まっていけば、接客の標準化を図ることができる」(遠藤氏)

すでに蓄積している3億5,000万回を超える会話データに加え、音声データの取得が進めば、チャットボットのコミュニケーションの自動化や質の向上にも役立てられる。テクノロジーと人の特性を活かした、ハイブリッド型のよりよい「接客」へ。モノだけでなく、モノを通じた生活をより豊かにする体験の提供に向けた取り組みが進んでいる。

Text: 清水 美奈(Mina Shimizu)
Top image & 画像提供: 株式会社Zeals

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