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あつ森とGlossier、Twitch 実況中継などゲームの世界が美容でも新たなチャネルへ

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『あつ森』でのアイテム提供や、『Honor of Kings』にインスパイアしたメイク製品の発表、eスポーツチームへの支援、Twitchのゲーム実況主とのコラボまで、コロナ禍でますます拡大するゲーム人口を背景に、欧米のビューティブランドがゲームの世界にマーケティングの手を伸ばしている現状を探る。

『あつ森』コラボが続々、独自コスチューム提供も

コロナ下で在宅時間が増えるなか、ゲームのユーザー数、利用時間が増加傾向にある。それを反映するように、『あつまれ どうぶつの森』などのポピュラーなゲームタイトルとブランドがコラボレーションしたプロモーションや商品が目立つようになってきた。実際にどんなブランドがゲームとコラボレーションし、どのような成果が出ているのかをみていく。

ゲームとビューティブランドのコラボレーションのなかでもとくに目立っているのが、Nintendo Switchのタイトル『あつまれ どうぶつの森』(以下あつ森)での事例だ。たとえばGlossierは『あつ森』のアイテムとしてGlossierロゴのスウェットシャツを提供、Givenchy Beautyもメイクアップやブランドロゴのタトゥーを提供している。ほかにもNARSやNYX Professional Makeup、Tatchaなどが、アイテムや独自の「島」を作る形で『あつ森』上でのプロモーションを行っている。

これらのコラボの多くに関わっているのがグラフィックスデザイナー集団 NOOK STREET MARKETだ。NOOK STREET MARKETはもともと、ハイブランドの衣服をベースにデザイナーたちがデザインした『あつ森』コスチュームを公開する場だったが、注目が集まるにつれて企業コラボが次々と始まっていった。こうしたブランドとゲームのコラボを、インフルエンサーが介在して推進しているのが非常に今日的だ。

ブランドがゲーム内に独自コンテンツを提供する形のコラボレーションは、『あつ森』以外でもみられる。たとえばルイ・ヴィトンはPCゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』とのパートナーシップにおいて、独自デザインのスキン(コスチュームや髪型などのセット)を発表、ゲーム内で販売している。

ブランド自身がゲームを作るケースもある。たとえばバレンシアガは2021年秋コレクションのショーを『Afterworld: The Age of Tomorrow』と題するゲームの形で発表した。近未来に設定された空間の中にモデルが佇み、ユーザーは360度インタラクティブ動画のなかを進みながら新作コレクションを見ていくことができる。またグッチは公式アプリに「Gucci Arcade」というコーナーを設けた。1970〜80年代に流行したゲームからインスピレーションを得たもので、グッチ初のマスカラ 「L'Obscur Mascara」や香水の「Gucci Bloom」をフィーチャーしたゲームを提供している

ゲームコラボの商品企画やブランド独自ゲーム開発も

ゲーム業界とビューティのコラボはデジタルコンテンツにとどまらず、商品開発にも及んでいる。M・A・Cは2019年、中国テンセントのモバイルゲーム『Honor of Kings(王者栄耀)』をテーマにした口紅などの商品ラインを打ち出した。『Honor of Kings』は中国ユーザーが大半ながら、登録ユーザー2億人、1日あたりのアクティブユーザーも1億人といわれる人気タイトルであり、このコラボ商品は24時間で完売した。M・A・Cは2020年にも『Honor of Kings』コラボ第2弾を打ち出し、同様に完売している

最近では2021年1月、米国のZ世代からの熱烈な支持を集めるD2Cコスメブランド、ColourPopも『あつ森』をテーマとするメイクアップ商品ラインを発売した

また、既存ブランドが特定のゲームタイトルとコラボするだけでなく、ブランドそのものがゲームの世界観にインスパイアされたものも誕生している。Game Beautyは、2021年2月末時点でアイパレット(45ドル/約4,800円)のみの展開だが、パッケージから色の名前までがファンタジーRPGゲームの雰囲気やキーワードを反映しており、ゲーマー女子の心をくすぐる内容になっている。ブランド創業者は公式サイトのなかで、子どもの頃からさまざまなゲームをプレイするうちに、ゲームキャラクターのデザインやカラーリングに魅了され、自身のメイクアップにも反映させてきたと明かし、ゲーム好きとメイク好きが高じて、ブランド立ち上げに至ったとしている。

Twitch実況主がビューティインフルエンサーに

美容ブランドのパートナーシップは対ゲームタイトルだけでなく、対ゲームプレイヤーとの間にも広がっている。Benefit Cosmeticsは2020年1月、女性が多く所属するeスポーツチーム「Gen.G」と提携、女性ゲーマーにとってのメイクアップなどを語る動画シリーズを発表した

ゲーム実況動画やイベントなどで公の場に立つことの多い女性eスポーツプレイヤーたちは、ゲーマー女子の間でインフルエンサーとなっている。こうしたeスポーツプレイヤーが集っているのがゲーム実況プラットフォームのTwitchであり、そこでもいくつかのパートナーシップ事例が生まれつつある。

Instagramで200万フォロワーを持ちビューティインフルエンサーとして知られるミシェル・ファン(Michelle Phan)氏は、自身のメイクブランドEM Cosmeticsの新商品「Daydream Cushion」の発売に合わせ、Twitchで『リーグ・オブ・レジェンド』のプレイ実況を行った。約3時間半の実況中、EM CosmeticsのWebサイトにはその日のトラフィックの45%にあたるトラフィックがTwitch経由で流入し、Daydream Cushionの当日の販売個数は、従来の発売日販売個数平均の278%に達したという

また、TwitchのライブストリーマーのSeum氏は、ゲーム実況中にHero Cosmeticsのニキビパッチを着用してプロモーションを行い、その広告費用対効果は150%に上ったという。これについてHero Cosmetics共同創業者のジュ・リュー(Ju Rhyu)氏は米DIGIDAYの取材で、「(Twitchの)リラックスしたフォーマットにより、ほかのプラットフォームでは実現しがたいオーセンティックな感覚を可能にしている」と話し、Seum氏がパッチを使用している姿が自然で、広告然としておらず、視聴者の共感と興味を呼んだと評価している。

ほかにも、e.l.f Cosmeticsは2020年11月、Twitchで女性としては2番目に多い250万フォロワーを持つライブストリーマー、Loserfruit(Kathleen Belsten)氏とのパートナーシップを発表している

Twitchはゲーム実況主をサブスクライブする仕組みや、投げ銭(ドネーション)を送る仕組みなどが整っており、ほかのプラットフォームに比べて、実況主がマネタイズしやすい環境となっている。こうしたライブストリーマーは顔出しで実況することが多く、彼らに化粧品を提供するなど美容との相性は良い。ゲームコミュニティ向けのビューティインフルエンサーとして起用する例が今後も増えそうだ。

ゲーマー=男性、というイメージは過去のもの

こうした盛り上がりの背景には、ゲーム市場全体の活性化とそれに伴うユーザー層の変化がある。まずゲームプレイヤー人口は、newzooによれば2015年には19億9,000万人と推定されていたが、その後、毎年徐々に増加しており、2023年には30億7,000万人になると予測されている。また短期的には、新型コロナウイルスにより在宅時間が増えた影響で、ゲームやゲーム関連コンテンツ利用率は過去最高レベルに達している

ゲーム人口拡大の要因としては、スマートフォンやタブレット、ゲーム専用機、パソコンなど、ライトユーザーからヘビーユーザーまで幅広い嗜好を満たすゲーム環境が整ってきたことがあるだろう。newzooでは、現在のゲームユーザーは、モバイル経由が25億人、PC経由が13億人、ゲーム専用機経由が8億人と推定している

増加するゲームユーザーのなかでも、とくにアジアでは女性ユーザーが存在感を増している。中国ではゲームユーザーの約半数が女性とされており、前出のM・A・Cと『Honor of Kings』のコラボレーションの成功もうなずける。Think with Googleによれば、インドネシアでもモバイルゲーマーの49%を女性が占めており、女性ゲーマー比率が18%と比較的低いインドでも、モバイルゲーマー自体は2年間で2倍以上に増加など、アジア全体で女性ゲーマーの増加が顕著だ。

また米国でもゲームユーザーの41%を女性が占めるなど、ゲームがごく一部の男性の娯楽だというイメージは過去のものになりつつある。とくにパズルや育成ゲームなど、女性ユーザー数が男性を上回るジャンルもある。スマートフォンやタブレットの普及によるライトユーザーの取り込みや、それに伴うゲームタイトルの充実によって、ゲームが本格的な「ゲーマー」だけのものではなくなり、より親しみやすく社会全体になじむ存在へと変化してきたといえるだろう。

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KOKTARD via Shutterstock

ゲームコラボの新鮮味が薄れるなか、企業には工夫が必要

2021年3月現在、新型コロナウイルスによるニューノーマル生活の収束はまだみえておらず、過去1年で多くの人にとって増加した在宅時間は当面維持されていくであろう。これはゲーム市場にとっては引き続き追い風となり、ブランドがゲームやその関連メディアを活用するには良いタイミングだといえる。

ただし、ゲーム関連のコラボレーションを考えるときには他の施策と同様に、自社ブランドの顧客層や世界観に合ったパートナーやコラボ内容を選ぶ必要がある。あわせて、2020年前半には、ゲーム内のアイテム提供程度のライトな施策でも話題性が高く、かなりの数のメディア掲載やSNSでの拡散効果があったが、その新鮮味は徐々に薄れつつある。『あつ森』のアイテム提供のような施策はすでにテンプレートとなっており取り入れやすく、今後も事例は積み重なっていくと考えられるが、一方で独自商品開発など、よりオリジナリティの高い事例に注目が移行する可能性もある。

また、現状を整理してみると、モバイルゲームのユーザー数が多いわりに、企業とのコラボ事例が少ないことに気づく。多くの事例がある『あつ森』の販売本数は3,100万本、Nintendo Switchの販売台数も全体で8,000万台ほどだが、モバイルゲームにはダウンロード数が1億件を超えるタイトルが40本以上ある

最近ではTwitchに政治家も登場して話題になった。米国のAOCことアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)下院議員が、投票呼びかけのためにPCとモバイル合計で5億ユーザーを擁するいわゆる人狼系ゲーム『Among Us』をTwitchで実況し、リアルタイムで43万人の視聴者を集めて話題になった。その後も、同ゲームで5時間にわたって実況中継を行い、コロナ禍で食料や住宅難で苦しむ人々への20万ドルの募金を集めた。同ゲームでは企業のコラボ事例はまだなく、活用を呼びかける意見もある。 

コラボまでいかなくても、広告出稿だけでもいまの時期なら検討の価値がありそうだ。実際にモバイルゲームのプレイ中に表示される広告は他の同系統ゲームの広告など似たようなものが無数にあり、ユーザーのアテンションが無駄になっているとも思える。美容ブランドにとっては、まだまだ活用チャンスのある枠という見方もできそうだ。

Text: 福田ミホ(Miho Fukuda)
Top image: Parilov via Shutterstock

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