「ファッションブランド・ビューティ進出」「米国TikTokマーケティング」がキーワード【海外トレンド 2024年1月- 2月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、本格的な化粧品ラインを立ち上げるグローバルファッションブランドの戦略と、TikTokの影響力が強まる米国でのTikTok Shopを活用したマーケティング事情についてレポートする。
A.P.C.やZaraなどファッションブランドがビューティ領域に進出
★注目ポイント
高級ファッションブランドが化粧品事業に進出する事例はかなり以前からあるが、最近はグローバル展開する大手アパレルが本格的に美容領域に参入を始めている。その背景には、ただ単に商品を手に入れるのではなく、ブランドのストーリーや世界観を共有することでショッピング体験の価値を高めたいと考える若い世代の消費者の存在がある。
シャネル、ディオール、サンローラン、ジバンシイなどをみればわかるように、ラグジュアリーファッションブランドが、香水や化粧品ラインを展開し、ビューティ領域に進出するのは、ある意味伝統的な戦略で決して目新しいことではない。ただし最近では、高級ファッションの主要プレイヤー以外の中堅やマスブランドが、ビューティラインを立ち上げる例が現れてきた。
そこには、パーソナルケア製品を導入することで、顧客の生活のさまざまなシーンにブランドの世界観を浸透させることによるエンゲージメントの強化の目的がある。同時に、ブランドの価格帯と商品の選択の幅を広げ、若くて影響力のあるZ世代というメインターゲットの支持をさらに高め、囲い込むことを狙った動きともみられる。
A.P.C. SELF-CARE
2024年1月、フランスのファッションレーベルA.P.C.(アー・ペー・セー)はブランド初のボディケアライン「A.P.C. SELF-CARE」を発売。これにより、女性と男性ファッション、ルームスプレーやキャンドルなどのホームウェア製品に加え、化粧品カテゴリーが追加された。
A.P.C. SELF-CAREには、同ブランドの創設者ジャン・トゥイトゥ(Jean Touitou)氏の故郷チュニジアの家庭料理にも使われ、A.P.C.のクリエイションの重要な要素とされるオレンジブロッサムの香りを採用した6アイテム(ボディローション、ハンドソープ、シャワージェル、リップクリーム、ハンドクリーム、オーデコロン)で構成されている。いずれもミニマムなボトルデザインとし、天然由来成分を98%以上配合している。
ローンチにあたり、トゥイトゥ氏は「ファッションも化粧品業界においても、過剰でも不足でもないバランスを取ることはとても難しい。(その意味で)この6つの製品は最高の出来栄えになった。みんなの気分が良くなり、自分を慈しみ、素晴らしい一日を過ごすことをサポートする設計とした」と語っている。
Zara Hair
グローバルで展開するハイストリートファッションブランドZaraは、2023年11月末、ヘアスタイリストのグィド・パラオ(Guido Palau)氏と共同で開発した新しいライン「Zara Hair」を立ち上げ、ヘア製品市場に参入した。
このラインの第一弾商品は、ゴールドジェルとグリッタースプレーのヘアメイクアイテムに、ヘアスタイリング用のボビーピンやコームなどのヘアアクセサリーを組み合わせた限定キット「GLITTER IN GOLD」で、ホリデーシーズンにあわせて髪にキラキラしたパーティムードを与えるコレクションとした。パラオ氏は今後もZaraとパートナーを組み、継続的に商品を展開していく予定で、2024年春により幅広いヘア製品をフィーチャーした「EVERYDAY BASICS」ラインがリリースされる予定だ。
Zaraのヘアケア市場への参入は、プレミアムヘアケア製品に対する消費者の関心の高まりを受けてのことだという。消費者がより高級なヘアケアオプションにアップグレードする傾向を示しているなか、伝統的なヘアケアアイテムではなく、ゴールドのラメ入りスプレーやジェルといったヘアメイク製品から始めるというZaraの選択は、ファッションを基軸とするブランドアイデンティティとも一致する。
Zaraは2021年に、アイシャドウパレット、口紅、チーク、リキッドライナー、ハイライターで構成されたビューティラインを発表している。ファッションウィークのランウェイの舞台裏を支えることでも知られる著名メイクアップアーティストのダイアン・ケンダル(Diane Kendal)氏と開発した、クルエルティフリーで、スタイリッシュな詰め替え可能な容器を採用したこのコレクションは、品質の高さ、手頃な価格、持続可能性への配慮から美容のエキスパートからも高く評価されている。
STELLA Alter-Care Supplement
また、2024年1月、ステラ マッカートニーのスキンケアライン「STELLA」からは、インナーケアアイテムとして「Alter-Care Supplement」が発売された。
これは100%天然由来成分によるヴィーガンサプリメントで、グルテンや遺伝子組み替え作物は使用せず、コラーゲンの破壊と老化を防ぐ植物型セラミド(フィトセラミド)で特許取得済みの活性物質セラモシドを配合している。同時に、天然由来の抗酸化物質としてビタミンE、微量藻類由来のオメガ3、オメガ6、月見草油のオメガ9がブレンドされ、肌の潤いやバリア機能を体の内側から守るとする。
ステラ・マッカートニー氏は「内側から肌に栄養を与えることの重要性に焦点を当てたサプリメントを作りたかった」として、このユニークなフォーミュラを作成するために、フランスに拠点を置くニュートリコスメティクスのパイオニアであるLouvagny Lab と協力したことを明かしている。
ファッションデザイナーとして、ラグジュアリーを損なうことなく、倫理的に調達されたリサイクル可能な素材を利用するなど、責任ある商品生産に努めてきたマッカートニー氏の哲学は、美容製品においても反映されており、2022年に立ち上げられたスキンケアラインは、クレンジング、美容液、クリームの3品でスタート。「高級スキンケアの代用品=Alter-Care」として、高級スキンケアと同等の、あるいはそれ以上のパフォーマンスを示すとうたうサプリメントが加わったことでコンプリートしたとされる。
Sporty & Rich Beauty
ライフスタイルとアクティブウェアのSporty & Richは、「ブランドが提唱するライフスタイルを導くための、ウエルネスにフォーカスする原則」の延長線上にあたるものとして、2023年9月、シンプルで衛生的でヘルシーな生活へのコミットメントを示す5つのスキンケア製品で構成されたビューティコレクションを発表した。ブランド創設者のエミリー・オーバーグ(Emily Oberg)氏は、自己免疫疾患を患った自身の経験から、穏やかでありながら有効性を兼ね備え、かつ健やかな製品設計を追求したという。ジェンダーフリーで全ての肌タイプが使用できる。
代表的なアイテムは、ビタミンEとオメガ脂肪酸を配合したシルキーでなめらかな「nourishing(栄養) body oil」や、果物や植物抽出物のマルチビタミンカクテルを豊富に含み、肌への水分補給や抗酸化機能を備えた「multi-vitamin face mist」で、加えて「softening milk cleanser」「replenishing(補給) hand cream」「lip balm」をラインナップしている。
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