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【VivaTech 2024 ②】LVMH が志向する人間×デジタルによる顧客体験のグレードアップ

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2024年5月22日〜25日、仏パリで開催された欧州最大のテックイベント「Viva Technology 2024」を現地取材したレポートの第2回は、ラグジュアリー業界をリードするLVMHグループの展示スペースにスポットをあてる。今回発表されたのは、生成AIをはじめとするテクノロジー活用でリアルな人間の介在をバックアップし、顧客体験を次の次元へと高めるさまざまな事例だ。


進化する顧客体験、中国アリババとの提携強化も発表

2024年もViva Technology(以下、VivaTech)会場の中央部に設営された600平方メートルの広さのLVMHパビリオンは「Dream Garden」と名づけられ、傘下のメゾン13ブランドが、これまでに取得・蓄積したデータや生成AIを活用した接客ツールやラグジュアリーな顧客体験、ブランドの卓越性を効果的に伝えるためのテクノロジーなどを発表した。また、例年通り、LVMHイノベーションアワードのファイナリストとなった18のスタートアップと、過去の受賞企業10社が出展し、有望な起業家とその事業の露出を高めてエンパワメントするLVMHの姿勢を示した。

さらに、会期中にはLVMHグループと中国アリババとの提携強化が発表された。LVMHはすでに約30ブランドがアリババのラグジュアリーブランド販売プラットフォーム「Tモール・ラグジュアリー・パビリオン」に出店しており、3D製品ディスプレイ、バーチャルフィッティング、ライブコマースといったサービスを提供しているが、アリババ・クラウドとそのAI技術の活用によって、中国でのさまざまな販売チャネルを統合しシームレスなエンゲージメントと購買ができるようオムニチャネル・ビジネスの成長を加速し、Tモールにおける顧客体験を強化するとした。

リアルとデジタルを組み合わせたより包括的な顧客体験の提案

LVMHのビューティブランドでは、前回レポートしたロレアルの展示と同様に、生成AIを活用したビジュアルイメージの制作工程や、各メゾンの魅力を伝えて感動を引き起こす特別な顧客体験を創出するイノベーション事例が紹介された。

ディオール:データとAIで、ビジネス効率の向上や顧客体験を強化

クリスチャン・ディオールのフレグランスにおいては、画像生成AIツール「 Midjourney」を活用したビジュアルイメージの制作工程が具体的な画像とともに説明された。まず、創りたいビジュアルイメージのキーワード(プロンプト)をMidjourneyに入力すると、4つのイメージが生成される。そのイメージに着想を得たディオールのデザイナーがフォトショップで光や影の調節などリタッチ(修正)を施し、ビジュアルを完成させる流れだ。

担当者によると、AIを用いた画像生成のメリットはクリエイティビティが広がることで、たとえば製品が宙に浮く設定など物理的に撮影のセッティングが難しいアイディアでもアプリケーション上で可能となる点だという。また、機材の準備や照明の調整が必要ないため、スタジオ撮影よりも迅速かつフレキシブルで、費用は10分の1に削減できるとする。生成AIを活用した初のディオール フレグランスのビジュアルイメージは、2024年9月に消費者向けキャンペーンなどに使用される予定だという。

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