海外BeautyTechトレンド「メタバースFW」「セクシャルウエルネス」「脳科学×香りレコメンド」がキーワード【2022年3月- 4月】
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海外BeautyTechトレンド「メタバースFW」「セクシャルウエルネス」「脳科学×香りレコメンド」がキーワード【2022年3月- 4月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、エスティ ローダーなども参加した世界最大とされるメタバースファッションイベントと今後の方向性、米大手小売の参入や新しい専門ECも立ち上げられるセクシャルウエルネス分野の活況、ロレアルが発表した脳科学を応用した香水選びをサポートするデバイスを取り上げる。

エスティ ローダー、メタバースFWのオフィシャルパートナーに。初のNFTも発表

出典:Glossy

★注目ポイント
バーチャルプラットフォームを運営するDecentraland(ディセントラランド)は、デジタルスペースに新しい商機をいち早く見出しているファッション業界に向けて、世界初のメタバースファッションウィーク・イベントを開催した。早い段階で企業やブランドを囲い込み、ファッション&ビューティ分野のメタバースハブになろうという意図もうかがえる。

2022年3月24日〜27日の4日間、バーチャルプラットフォームのDecentralandを会場に、ビジターもスタッフもアバターとして参加する世界最大のメタバースファッションショー「Metaverse Fashion Week 2022(以下、MVFW)」が開催された。同イベントには、「エトロ」「トミー ヒルフィガー」「ドルチェ&ガッバーナ」をはじめ、60以上の企業やブランドが参加。日本からは「アンリアレイジ」やアソビシステムが出資するメタトーキョーが出展した。化粧品業界では、エスティ ローダーがオフィシャルパートナーを務めた。

それにあわせてエスティ ローダーは、ブランドを代表する美容液「アドバンス ナイト リペア」に着想を得たウェアラブルNFTを発表した。ユーザーはDecentraland上のエスティ ローダーのスペースで、アドバンス ナイト リペアのアイコンである「リトルブラウンボトル」のなかに入り、デジタルバッジまたは出席証明プロトコル(POAP)を解除することで、期間中のみ1万個限定で用意された、アバターに着せられる「アドバンス ナイト リペアの輝くオーラ」を表現したNFTを1点、無料で受け取ることができる

また、MVFWでは、バーチャルストアでウィンドーショッピングをしたり、ほかのストアに“テレポート”できたり、チャットでアバター同士の会話を楽しんだり、「ファッションアリーナ」で開催される多くのランウェイショーの見学も可能とした。このほか、トークショーや展示会、各種パーティも開かれた。

ドルチェ&ガッバーナの“キャットウォーク”モデルは猫アバター

MVFW終了後、Decentralandが発表したところによれば、10万8,000人のアバターが参加し、16万6,000個の無料ウェアラブルNFTが配布され、7,000点の商品が売れ、売上総額は7万7,000ドル(約970万円)となり、初の開催としては今後に期待が持てる数字となった。また、MVFWで発表したNFTファッションアイテムを専用サイトで販売するブランドもあった。

一方で、メタバースイベントとしてのさまざまな課題もみえてきた。ユーザーアクセスに関する複雑さや、ショーの途中でフリーズしたり接続が切れてしまうなど、プラットフォーム側の不具合によるハプニングが多発したこと、デジタルとフィジカルなスペースをつなぐ戦略がなく、面白みに欠けるスペースが少なくなかったなどの声があがっている。また、参加者からは、初期設定ではアバターの背格好などが一律のものしかなく、ファッションアイテムも魅力に乏しいため、もっとカスタマイズでき個性が出せるようにしてほしいとの要望も多かったという。

これに対して、Decentralandのメタバースプロデューサーのジョバンナ・カシミロ(Giovanna Casimiro)氏は、すでに発表したコレクションをデジタル化しただけで、ファッションイベントとして新鮮味を感じないケースや、クエストや探索できる要素や仕掛けのない、単なる展示ディスプレイでしかないショップもあったことを認め、「もっとゲーム性を高めて、その空間にいることでプレイヤー(参加者)がさまざまなリワードを受け取れるようにするのは、間違いなく我々が取り入れるべきことだ」と語った。

あわせて、VRウェアラブルからもプラットフォームにアクセスできるようにすることをカシミロ氏は狙う。「今年の年末か来年の初めには、ヘッドセットを利用してVR体験ができる機能が搭載される可能性が高い。それによって異なる体験が生まれるだろう。また、フィジカルとデジタルの接点も増やしていきたい。ビデオプロジェクションやリアルタイムビデオマッピングのようなARは、それを簡単に実現することができる」(カシミロ氏)

次回のMVFWは2023年3月に開催が予定されている。

米セフォラやTargetなど、セクシャルウエルネス製品の販売を本格化

出典:Glossy

★注目ポイント
パンデミックでセルフケアの重要性にスポットがあてられたことをきっかけに、セクシャルウエルネスは、身体的健康やマインドウエルネスに並び、健やかなライフスタイルに欠かせない要素であり、タブーとして隠すものではないと考えるオープンな消費者が増えている。それに伴い、米国では、一般の化粧品ECや量販店など、身近な場所で気軽に堂々とセクシャルウエルネス製品が買える環境が整いつつある。

米国のセクシャルウエルネス市場は、2020年に58億ドル(約7,300億円)規模を記録し、2026年までに93億4,000万ドル(約1兆1,000億円)規模に成長するとされている。その背景には、若い世代を中心に多様性やジェンダーの平等などに価値を置く意識が高まり、女性のセクシャルウエルネス製品の購入率が急速に増えていることや、マーケティングにおいても性的な表現を薄めたジェンダーフリーのアプローチが進み、購入への抵抗が少なくなったことがある。

セクシャルウエルネスに特化した米国ブランドの「Cake」は、既存の投資家が主導するブリッジラウンドで250万ドル(約3億1,000万円)を調達し、シードファンディングの総額が830万ドル(約10億円)に達した。この資金は主に小売店への進出に使用されるという。Cakeはすでに2021年7月からウォルマートでの取り扱いが始まっており、3つの潤滑剤と1つのセックストイが販売されている。これに加えて、2022年4月より、全米1,000店舗以上のTargetで、セックストイ3種類と潤滑剤1種類の販売がスタートする。

2020年、5製品をリリースしてローンチしたCakeは現在、製品およびキット数を37に伸ばしている。同ブランドの創業者は、従来のいわゆる“アダルトショップ”での性具という取り扱われかたやユーザーに向けたメッセージに違和感を抱いていたと明かし、Cakeのブランディングと製品は「ジェンダーやセクシャリティには(個々人により異なる)ニュアンスがあり、流動的」との考え方をもとに、ゲイ、レズビアン、異性愛者のカップルと個人を含む、全ての人のためにデザインされているとする。

これに先駆ける2022年2月1日には、セフォラが自社ECサイトに「Intimate Care」セクションを新たに開設し、「maude」と「Dame」の2ブランドの製品を販売し、セクシャルウエルネス・カテゴリーに正式に参入した。

出典:米セフォラ公式サイト

バイブレーターのほか、マッサージキャンドル、バス用品、潤滑剤など30以上のアイテムを取り揃え、「セクシャルウエルネス、フェミニンハイジーン(女性の衛生)、ホルモンケアなどを網羅し、包括性とアクセシビリティを最優先に考えて選定した」とする。セフォラは新しいブランドの取り扱いをまずECで開始して、その後、実店舗でも展開する手法をしばしばとるが、maudeとDameに関してはまだ未定という。

一方、フットケアのドクター・ショールなどを所有する消費財に特化したプライベートエクイティ(未公開株式投資会社)のYellow Wood Partnersは、パーソナルケア、ビューティ、セクシャルウエルネス機器のメーカーClioから複数のブランドを買収し、新しいセクシャルウエルネス・プラットフォーム「Beacon Wellness Brands」を立ち上げると発表した。買収したブランドには、Clioの主力ブランドで、米国量販店でナンバー1の売上のセックストイブランド「plusOne」も含まれており、新プラットフォームの運営はClioの創業者でCEOのジェイミー・リヴェンサル(Jamie Leventhal)氏が率いる。

Clioは2001年に美容器具を扱うメーカーとして創業し、セックストイの製造に参入。現在では売上総額1億ドル(約120億円)超の企業に成長し、2021年には1,000万個以上のセクシャルウエルネス機器を販売している。

仏ロレアル、脳科学を応用したパーソナライズ香水発見ツールを発表、YSL旗艦店に実装予定

出典:Glossy

★注目ポイント
消費者ニーズの多様化が加速するなかで、パーソナライズした顧客体験の提供の重要性が増している。なかでも、嗜好や感情に左右されやすく、かつ好みを言語化して伝えるのが難しいとされる「香り」選びを、AI×脳科学によりフィジカルなパーソナライズ体験に落とし込んだサービスが登場した。実店舗の起爆剤としても期待がかかる。

仏ロレアルグループは、米ニューロテクノロジー大手のEmotivと提携し、顧客の脳波を測定することで各自にあったフレグランスが見つけられる、コンサルテーションデバイスを開発した。

同デバイスはマルチセンサーを搭載したEEG(脳波記録)技術によるヘッドセットを通して、神経反応と香りの嗜好を結びつける仕組みで、顧客がフローラルや柑橘系などさまざまな香りの分類(ファミリー)を体験している間に、脳波の変化から日頃の行動パターンや好み、ストレスなどをAIが割り出すことで、顧客の感情にあった最適な香りを判断し提案する。

開発を主導したロレアルのテクノロジーインキュベーターの責任者は「私たちは常に、消費者に向けて革新的でパーソナライズされた体験の提供を目指している」として、「フレグランスを選ぶ脳の働きはとても複雑だが、今回、ニューロサイエンスを用いて正確な香りのアドバイスが受けられる店頭体験を実現した」と話す。

ロレアルが開発したフレグランス・コンサルテーションデバイス
出典:personal care insights

ヘッドセットをつけた顧客が体験する香りは、この装置のために独自に開発されたもので、14種類の「アコード」と呼ばれる香りのグループで構成され、YSLビューティの約45種類の香水のポートフォリオに対応している。どんな質感や素材、香りの種類が好きかなど8つの質問に対する顧客の回答をもとに4〜6種類のアコードが選ばれ、実際に嗅いでもらうことでデジタルパッドに表示される感情ニューロマップにもとづいて、YSLの香水のなかから最大4つの商品の提案がなされる。

このフレグランス・コンサルテーションデバイスは、2022年末から2023年にかけて、世界各地のYSLの旗艦店に随時導入されていく予定だ。

同様に、ユーザーの脳波の測定にもとづきパーソナライズした製品を制作するのが、韓国アモーレパシフィックが、ナノテクノロジーや情報技術の研究機関Imecと共同で開発した「Mined-liked Bathbot」だ。脳波計を組み込んだヘッドセットを装着することで、脳神経細胞の電気的活動をリアルタイムで分析し、ユーザーの感情状態を3つの指標から検出。それをもとに、14種類のオプションのなかから、ユーザーの気持ちにもっともあった色と香りのバスボムを選び、その場でロボットが作るスマートファクトリー型のサービスとしている。Mined-liked Bathbotはソウルとスウォン市にあるアモーレパシフィックの店舗に設置されている。

Mined-liked Bathbot
出典:Cosmetics Business

また、Mined-liked Bathbotの開発に携わったアモーレパシフィックの研究員は、これらの技術やサービスをシャンプーやボディソープに応用していくことや、脳科学を活用したアプリの開発、そして将来的には、クレンジングやメイクアップ分野の製品群にも発展させることも考えているとする。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Marek Piwnicki via Unsplash


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