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コーセー、@cosme TOKYO、そして和田さん。 が語る、オンライン接客と顧客との共創

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DXにより大きく変わりつつある販売の現場。そのフロントに立つ美容部員の接客の質を高めるオンライン活用とはどういうものか。メゾンコーセーと@cosme TOKYO、2つのストアで進む販売スタッフを後押しする改革と、オンラインBAが変える顧客体験についてのディスカッションをレポートする。

2020年9月15日〜17日、東京ビッグサイトを会場に、19回目となる美容・ウエルネス関連商材のトレードショー「ダイエット&ビューティーフェア」が開催された。昨年に引き続き、BeautyTech.jp共催によるセミナーイベント「ビューティテックシンポジウム」も行われ、美容クリエイターの和田さん。株式会社コーセー デジタルマーケティング戦略部 安藤麻衣子氏、@cosme TOKYO 館長 伊藤奈津美氏ら3名の登壇者のトークセッションから、withコロナの時代における美容部員(BA)の働き方と、BAをテコにして現在進行するオンラインとオフラインの顧客体験をより豊かにするための施策について考える。

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オンラインBAの育成プロジェクト

実店舗での接客にさまざまな制約がしかれるなか、BAが培った知識や経験、能力を活かして活躍するにはどうすればいいのか。それを命題に「オンラインBAプロジェクト」を立ち上げたのは、元美容部員でユーチューバー、インフルエンサーとしても活躍する美容クリエイターの和田さん。だ。

新型コロナウイルス感染症による自粛休業が続いていた5月、休職や失職を余儀なくされた現役BAを対象にプロジェクトへの参加者10名を募集した。YouTube等でチュートリアル動画などの発信をする和田さん。の知見をもとにした研修を行い、オンラインでも質の高いカウンセリングができるBAを育成しようという試みだ。同時に、BAがスキルアップをすることで活動の幅を広げ、雇用や仕事の選択肢を増やす意図もあった。

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美容クリエイター 和田さん。

店舗の休業により顧客はBAのカウンセリングが受けられる機会が激減し、BA側は仕事を失う危機にあるなか、オンラインを活用した非接触型対面サービスは双方にとってメリットが大きいと考えたのが始まりだと和田さん。は語る。そして「実際、参加BAの方は全員カウンセリング力がとても高く、オンラインで対話する際のコツやデジタルツールの活用の仕方を伝授するだけで、実店舗に引けをとらないサービスが提供できるようになった」と振り返り、美容部員としてのキャリアを活かすオンラインBAの可能性を高く評価する。

6月には、和田さん。とともにプロジェクトに参加したBAが登壇するYouTube Liveを配信したほか、応募予約をした250名の顧客に対してZoomを介した40分の1対1でのカウンセリングセッションを開催。普段使っているコスメを手元に用意してもらい、日々のケアについて具体的にアドバイスしたり、日頃の悩みに答えたりする内容で、参加料金はBAへの報酬にあてられた。

店頭スタッフの投稿を起点にする販売

「メゾンコーセーが掲げるのは、Find your own beauty。一人ひとりの美しさを見つけてもらうための提案をすることだ」。コンセプトについてそう語るのは、コーセーグループのオフィシャルオンラインサイトと連携した、ブランド横断型のコンセプトストア「メゾンコーセー(Maison KOSÉ)」を担当する安藤氏だ。

「これまでは、今季の流行のスタイルはこれというように、それぞれのブランドが考えた美の定義を提示して発信していく姿勢が主だったが、メゾンコーセーでは、店舗を訪れることで、一人ひとり異なる自分自身の美を発見してもらうことを目指している」とする安藤氏。

そのため、同ストアには、セルフで試せるネイルプリンターや、鏡の前に立つだけで顔を撮影し肌状態を分析・数値化して表示するスマートミラー、3Dスキャン技術を用いて顔の各部位の形にぴったり合うシートマスクを作成する機器、コーセーが展開するさまざまなブランドのアイテムを自由に使ってバーチャルメイクができるシミュレーターなど、能動的な体験型ショッピングを楽しむ仕掛けを用意した。

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メゾンコーセー(東京・銀座)

一方で、店舗に足を運ぶことをためらう顧客も少なくない状況で、オンラインでのコミュニケーションも強化していることを明かす。コーセーでは、株式会社バニッシュ・スタンダードが提供するSTAFF STARTという仕組みを導入し、店頭に立つビューティコンサルタント(BC)が自身のメイク画像やアイテムの紹介画像をオフィシャルオンラインサイト上に投稿する取り組みをスタートした。掲載されたBCそれぞれの年齢や肌質、肌色(ブルーベース、イエローベース)などの情報をもとに、サイトを訪れた顧客は自分に近いBCの投稿を参考にした商品選びができる。

BC側には、自身の投稿のPV数やコンバージョン率、売上ランキングなどが伝えられ、成果が具体的な数字として可視化されるので、モチベーションの向上につながる。また、今後はマネジメント側が人事評価をする際や、BCのキャリアアップのための教育をする助けにもなると安藤氏は話す。

BCとしての経験は浅くても、SNSに慣れている若いスタッフが能力を発揮でき自信につながることもしばしばで、チームでナレッジシェアをして投稿の質を高めていくことも可能になったという。BCがオンラインに活躍の場を広げ、働き甲斐につなげていくだけでなく、withコロナ時代にあった働き方に変化させていくという意味で、和田さん。の試みにも相通ずるものがあることが示された。

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コーセー 安藤麻衣子氏

オンライン上にブランドを横断した顧客カルテを作成

2020年1月東京・原宿駅前にオープンした@cosme TOKYOは、コスメのテーマパークともいわれ、百貨店ブランドからプチプラまで600ブランド2万SKUの商品を取り揃える。「これだけバラエティのある商品を、販売スタッフである知識豊富なBAのサポートのもとに比較検討し、いろいろとお試しできるのが一番の特徴」であることから、自粛休業から再開後は、店舗内の安全・安心を担保しながら、いかに顧客に楽しんでもらえる接客をするかに注力していると、@cosme TOKYO 館長 Flagship store事業部副部長 伊藤氏は話す。

「カウンセリング席をはじめ、館内の消毒を徹底するとともに、タッチアップはデジタルシミュレーターや、顧客がセルフでできる方式を取り入れた」として、実物の商品を、見る、触る、体験するという実店舗ならではの価値を維持することに努めている。

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@cosme TOKYO(東京・原宿)

また、店に長時間滞在したくないという消費者の声もあり、@cosme TOKYOのブログやSNSアカウントの投稿から商品を予約し、店舗で受取り・会計ができる取り置きサービスも始めた。昼休みにスマートフォンアプリから注文して、会社帰りにピックアップするといった導線も生まれているという。

そして、顧客満足度に大きく貢献するのが、親会社であるアイスタイル独自システムの「共通カウンセリング台帳」だ。@cosme TOKYOのBAは1人1台配布されたiPadから、顧客がこれまでに@cosme STORE(実店舗)で何を買ったのか、購入ブランドの垣根を超えた購買履歴にアクセスができる(※)。

同時に、顧客の悩みや要望、その時々の肌状態などカウンセリングを通して聞き取った「顧客情報」や、提案した商品、実際に購入された商品、渡したサンプルなど「カウンセリング活動」を書き加えていくことで、随時アップデートするパーソナルな個人カルテをオンライン上に作成していける。BAは共通カウンセリング台帳を参考にすることで、顧客それぞれが「自分のことをよく理解しているVIPな対応」と感じる、パーソナルな接客の実現が期待できると伊藤氏は説明する。

(※)現在は@cosme TOKYOとニュウマン横浜店に導入。年内をめどに全店舗への導入を予定。

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@cosme TOKYO 伊藤奈津美氏

顧客といかに対峙するかが重要なポイントに

化粧品業界の販売のフロントラインに立つBAが、オンライン、実店舗を問わず、どのようにすればより充実した購買体験を提供できるかを考えることは、とりもなおさず、「ブランドや小売店は、顧客といかに対峙していくか」という重要なテーマにつながるものだ。

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2014年、買収によりコーセー傘下となった、果物などの天然由来成分が特徴の米国のD2Cブランド「tarte」。そのニューヨークオフィスでの勤務経験を持つ安藤氏は「tarteではインクルージョンということを、本当に大事にしていた。社会のトレンドだからではなく、必須の前提として多様性に配慮していた」と話す。広告クリエイティブなどでもさまざまなタイプのモデルを起用するのは当然で、顧客一人ひとりが持つ、肌トーンなど外見の違いと趣味嗜好といった内面の違いを尊重し、ブランドとして個々に向き合う姿勢の大切さを学んだと明かした。

これを受けて、モデレーターを務めたBeautyTech.jp編集長 矢野貴久子は「インクルージョンという言葉は包括性と訳されることが多いが、“誰も置き去りにしないこと”と考えるとわかりやすのではないか」と示唆する。ブランドが信じる価値観を一方的に唱えているだけでは、賛同しない人は離れていくだけだ。だが、ブランドの想いを消費者に問いかけ、顧客を巻き込んだ対話を通して、双方にとってより良いあり方を一緒に作り上げていくことができれば、ブランドと顧客の関係、ひいてはブランドの力を強固にすることにつながるのではないだろうか。

安藤氏は「顧客にとって何が良いのかを突き詰める」ことが必要だとして、顧客を主体に考える「民主化」を進めたいとする。「メゾンコーセーはテストマーケティングの場であり、実験場の意味合いを持っている。提供しているサービスはまだ発展途上の、いわば未完のもので、店舗を訪れた方に試してもらいフィードバックを受けることで完成に近づく」と、顧客との共創を強調する。

では、顧客が求めていること、顧客にとって良いこととは何なのか?

「答えはお客さまが持っている」和田さん。の一言に一同が大きくうなずいて、セッションは締めくくられた。ただし、その「答え」をどう引き出すのかは「宿題」であり、それぞれの企業の取り組みによって明らかにされてゆくものだ。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image &  画像提供: インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社

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