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アルタ・ビューティ、リテールメディアやイノベーション投資で米国消費の鈍化や競争激化に対応へ

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総売上が100億ドルを超え、業績好調な米ビューティリテールUlta Beauty(アルタ)。その伸びを支えるのが、会員数4,300万人超のロイヤリティプログラムと、オムニチャネルでの顧客体験向上のためのイノベーションに対する積極的な投資だ。米国の個人消費の減速という逆風がありつつも、オン/オフライン全方面での成長戦略を展開するアルタの現在地をみていく。


パンデミック後業績好調のアルタも、米国の個人消費鈍化に直面

米最大手の美容小売チェーンのアルタ・ビューティ(Ulta Beauty、以下アルタ)は、2022年度(2023年1月28日締め)決算で売上高が前年度比18.3%増の102億ドル(約1兆5,732億円)に達し、初めて100億ドルを突破したと報告した。同社は2021年10月、投資家向けのオンライン会議で2022年度から2024年度までの3カ年の業績目標として売上高の5~7%成長(2019年度を基準とするCAGR)を示しており、それを大きく上回る好業績だった。しかし、詳細は後述するが、3カ年の最終年度を迎えた2024年現在、米国の個人消費は同社の予測を超えるスピードで減速しているという現実もある。

ここでは、アルタがパンデミックの影響から急回復し大きな成長を遂げたその背景と、個人消費が落ち込みつつある米国でどのように成長路線を維持するのかをレポートする。

アルタは2020年こそ新型コロナウイルスのパンデミックの影響で減収減益と低迷したが、2021年度には売上高、希薄化後EPS(潜在株式調整後1株あたりの純利益)ともに2019年度の実績を大きく上回るレベルに回復した。これにはさまざまな要因があるが、アルタに限らず美容関連企業に広く共通することとして、美容やスキンケア、パーソナルケア製品への消費者ニーズがパンデミック中も衰えなかったことが、まずひとつだ。そして、製品やトレンド情報がTikTokなどソーシャルメディアを中心に拡散されたこと、またAIやARを駆使したオンラインツールやサービスで製品を「試用」できるイノベーションが身近になったことなどから、本来店舗が担ってきた役割がオンラインに分散され、パンデミック下での行動制限の影響が最小限に抑えられたことが大きい。

アルタの直近2023年度第4四半期(2024年2月3日締め)決算は、売上高が前年同期比10.2%増の35億5,000万ドル(約5,476億円)、希薄化後EPSが21%増の8.08ドル(約1,250円)と、いずれも市場予測を上回った。カテゴリー別売上高で最大はカラーコスメの39%(前年同期は40%)で、これにスキンケアが18%(同16%)、ヘアケア商品とスタイリングツールが18%(同20%)、香水とバス関連が19%(同18%)、スパなどのサービスが3%(同3%)と続いた。

2023年度通年では売上高が前年比9.8%増の112億1,000万ドル(約1兆7,290億円)、希薄化後EPSが同8.4%増の26.03ドル(約4,010円)と、これも事前のアナリスト予想を超えた。また、全米50州の店舗数は12カ月で30店舗増の1,385店舗だった。前出のように売上高は2022年度に初めて100億ドルの大台にのっており、アルタは前年に続く増収の主な理由として「美容分野全般の回復」「小売価格の上昇」「新ブランドと製品イノベーションの影響」「新型コロナに関連した行動制限の緩和」などを挙げている。

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