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データとアイディアで日本の香りカルチャーを大きく変える新興4ブランドの取組み

◆ English version: The Scent of Success: 4 new brands that are changing Japan’s fragrance culture
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日本のフレグランス市場は約300億円と、フランスの10分の1とされるが、スタートアップ企業が消費者の潜在ニーズをとらえて成長中だ。パーソナライゼーションやギフト用途、市販のフレグランスを小分け販売など、さまざまな切り口でフレグランスの概念を変え、企業向けソリューション提供にまで市場を広げつつある。日本の香りカルチャーをじわりと、だが確実に変えていこうとしている主要プレイヤー4社の取り組みを紹介する。

先駆けのアロマミストがとらえた潜在市場

好きな香りを嗅ぐことで気分がリフレッシュしたり、癒しを感じることは、多くの人にとって経験があるだろう。近年、そんな消費者ニーズの増加をくみとり、いち早くAIを活用した香りビジネスに取り組んだのが株式会社コードミーだ。

2017年4月設立のコードミーは、パーソナライズした機能性アロマミストを毎月届けるサブスクリプションサービスCODE Meee ONE(コードミー ワン)を月額1,800円(税込)で展開する。

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コードミー ワンのアロマミスト
画像提供:株式会社コードミー

このアロマミストが、日本人と香りの関係性を変えつつあるといっても過言ではない。提供されるポケットサイズのアロマミストは、国産の天然精油を使用し、ユーザーのストレス課題などに応じてパーソナライズされたものが届く仕組みだ。独自のアルゴリズムはIBMとの連携で開発されている。

仕事の合間などに気分転換するために使われることを想定しており、香りの持続は比較的短く、使う人だけが感じられる香り立ちが特徴だ。そのため、いわゆる香水とはジャンルが異なり、「いままで香水があまり好きでなかったユーザーが使っている」と代表取締役CEOの太田賢司氏はいう。

「香水は人からどう思われたいかという要素が強いが、コードミー ワンは自分の周囲50cm以内に香る自分のためのもので、(ストレス解消や集中力を高めるなど)ある種のヘルスケアとなりうるプロダクトの位置づけだ」(太田氏)。

性別や年齢、最も意識するストレス課題と、どのような状況で使いたいかなどの質問にWeb上で答えることで、その人に合った香りの処方が3つ提案される。ユーザーはそこからひとつを選んでカートに入れる。ストレス課題は「睡眠不足」「対人関係」「肉体的疲労」「二日酔い」「花粉症」「禁煙」「その他」から選択し、各ストレスを和らげる処方が組まれる。 Twitterと連携すると、AIがツイートを分析して、さらに最適化された香りとなる追加オプション(無料)もある。

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コードミー ワンのWeb診断UIイメージ
画像提供:株式会社コードミー

このアロマミストを起点に、こうした香りの選び方がギフトにもなりえる、と贈りたい相手にギフトコードをメールで送る香りのギフトサービス「CODE Meee for Gift(コードミー フォー ギフト)」にも取り組んだ(2018年5月にサービス開始し、現在一時休止中)。

また、企業向けには、脳波と感性科学にもとづいて、コンディションを最大化するソリューションとしての香りを提供している。この「ソリューション・フレグランス」については、導入した休憩室で休むことで、「休憩後の職場に戻る際の仕事に対するモチベーションが上がった」という声が、定量的な結果とともに届いているという。2019年11月からは電通サイエンスジャムとの連携で脳波測定による実証実験も開始した。

そのほか、ブランディング目的で、その企業ごとのオリジナルの香りをプロデュースし、受付スペースや名刺に賦香することで「人事の採用コストが下がった」という評価もあるという。

香りが企業の生産性やブランディングに寄与するという定量データを武器に、福利厚生サービスとしてのリクエストも多く寄せられている。こういった好感触をもとに、米国や中国からも引き合いがあり、グローバル展開ももくろんでいる。

アジア人向けのオーダーメイドの香水

オーダーメイドの香水をWeb完結で作れるサービスが、2019年8月に開始したヤマネコ株式会社のBespoke Scent Society(ビスポークセントソサイエティ) だ。

同社CEOの山根大輝氏は、新卒入社で楽天株式会社のECコンサルタント、その後アクセンチュア株式会社で当時最年少マネジャーを経たのち、香り好きが高じ3年ほど独立調香師に弟子入りして調香を学んだという経歴の持ち主だ。コンサルティングやテクノロジーのバックグラウンドを組み合わせ、Web完結でパーソナライズされた香水を提供できるビスポークセントソサイエティの仕組みを構築した。

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出典:ビスポークセントソサイエティ
公式サイト

ビスポークセントソサイエティの香水はすべてジェンダーレスで、ほのかに香る調香が特徴だ。「香りに限らず、私たちアジア人は、周囲との調和を大切にする。セックスアピールとして自分を際立たせるような欧米的な香水の使い方がこれまで受け入れられなかったことが、日本のフレグランス市場が広がらなかった原因の一つではないかと考えている」と山根氏は話す。

Web上での質問はアルファベットで自分の名前を入力するところからはじまる。「朝と夜、どちらの時間帯に身にまといたい?」といった具体的な用途に関する問い、平熱の体温など体質や生活習慣、そして「あなたにとって香りとは?」「いまのあなたがちょっぴり憧れているのはどんな人?」といった問いもある。13の質問に答えていくと、おすすめの香りの処方、その香りが周りに与える印象、付け方(さりげなく香らせるための使い方、シーン、プッシュ回数)が具体的に提案される。価格は8mlのトラベルサイズが3,980円(税別)、50mlは1万9,800円(税別)で、注文から約1ヶ月で届く。メールで贈れるEギフトカードもある。

ローンチ5ヶ月でWeb診断の件数は5万件、会員数も2,000人を突破。その7割以上が女性だという。ミレニアル世代、次いでZ世代が多く、全くの香水ビギナーは2割ほど、香水は好きだが詳しくないライトユーザーが6割ほどだという。現在は「実際に香りを嗅いでみたい」という声に応えるべく、トランクショーというリアルイベントを阪急メンズ館で開催するのをはじめ、ユーザーとのリアルな接点を設けている。また、スコッチウイスキーの「シーバスリーガル」とのワークショップのコラボなど、様々な企業とのコラボイベントも行なっている。

今後も実際の体験の場を持ちつつ、Web上でも香りのイメージを共有するためにより良い方法を検討していくという。また、膨大なWebプロファイリングデータとユーザーの購買データをもとに、BtoB展開を視野に入れている。

ブランド香水を「使い切れる」サイズで提供

ブランド香水を、毎月使い切りサイズに小分けして届けるサブスクリプションサービスもある。2019年4月にスタートしたSCENTPICK株式会社のSCENTPICK(セントピック)は、月額1,680円(税・送料別)から、小分けのブランド香水(5ml×1~3本)を届けるサービスだ。

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出典:セントピック公式サイト

小分けボトルは、初回注文時に届く専用ケースに入れて持ち運べ、その日の気分やTPOに合わせて入れ替えできる。フルボトルの香水を買うと「使いきれない」「高価」というネックを解消することで、サービス開始から8ヶ月で会員数は1万人を超えた。

美容系Youtuber 関根りさ氏の
公式チャンネルで取り上げられた
ことでも話題に

数百種類のラインナップから好きな銘柄を自分で選ぶことができるが、4つのクイズへの回答でAIおすすめの香水を受け取ることもできる。ユーザー一人ひとりに合った香水を、好みだけなく、その人のライフスタイルやキャラクターからも導き出す独自アルゴリズムによって選定するため、香水について全く知識がなくても、自分に合う香りを見つけることができるという。

また、香水の分割販売を無許可で営む個人・法人が多いなか、化粧品製造販売業許可を取得し品質管理を徹底している点も強みといえる。

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セントピックの小分けボトルと専用ケース
出典:セントピック公式サイト

セントピック代表の川島匠氏は、現状、国内で香水が身だしなみとしての市民権を得られていないことは販路を広げるうえで大きな課題だと話す。「毎日入浴する習慣が古くからあり、水で洗い流すことを清潔観の基本とする日本では、自分だけが目立つことを避ける国民性と相まって、香水はマナー違反のイメージが強い。今後、様々な業態とのアライアンスを通じ、香水を使う機会を世の中に浸透させることで、『一吹きの香りがイニシャルとなり、理想の自分を演出できる』という秘密に気づく人を増やしていきたい」(川島氏)。

また、今後は大手ブランドだけでなくニッチフレグランスの取り扱いも増やしていきたいとする。日本のニッチパフューマー(調香師)の香水を取り扱うことで、日本人ならではの繊細な調香カルチャーや職人の発展を後押しできるプラットフォーム化も目指していきたいと意気込む。

アロマのギフト需要に特化したサービス

2019年4月16日にサービスを開始したスターティス株式会社のAROMAPRÉ(アロマプレ)は、アロマのギフトに特化したサービスだ。

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出典:アロマプレ公式サイト

贈り主はアロマカード(税込3,850円)を購入し、メッセージを書いて贈りたい相手にカードを渡す。贈られた相手は、同封のコードを使って、Web上で26種類のオイルを自分好みにブレンドすることができる。それ以外にも、「キッズアロマ」「更年期レシピ」など、専門家によるブレンドや、12星座別のブレンド、「今、気になる色は?」などのいくつかの質問に答えることで、おすすめのブレンドを提案してくれるチャートなどが用意されており、贈られた人はアロマの知識がなくても自分に似合う香りをみつけやすいのが特徴だ。

完成したオリジナルのアロマオイルは、アロマストーン付きで後日届けられるので、届いてすぐに楽しむことができる。現在は、公式サイトのほか、全国のコスメキッチンで販売している。

アロマプレのアロマカード

後日届くアロマストーン付きのオイル

サービス開始からこれまで約4,000件の注文があったという。2019 年 2 月にコスメキッチンで行った先行販売でも「『アロマをプレゼントしたいと思ったことがあるが好みがあるので諦めていた』という声が非常に多く聞かれ、ニーズにマッチしていると実感した」と担当者は話す。

今後はアロマカードのデザインのバリエーションをデザイナーとのコラボレーションなどで増やしたり、シソ、クロモジ、スギ、ヒノキなどの国産アロマの取り扱いも増やして海外展開も進めていきたいと考えている。

日本発の香りカルチャーのポテンシャル

各社でユーザーの香りの嗜好データの蓄積が進むことにより、BtoCでは今後さらにパーソナライズした香りの提案が可能になり、BtoBでもより課題解決に近いかたちで進化したサービスが展開されていくだろう。

今回取り上げた各社の取組みでは、国産精油の活用や、日本人調香師のニッチパフュームの取り扱いなど、国内産業との結びつきを重要視しつつ、日本ならではの新しい香りカルチャーの提案をしていることも興味深い。フレグランス文化が確立、成熟している国に向けても、こうしたアプローチで新しい市場を切り開く可能性は大いにありそうだ。

Text: 大塚 愛(Megumi Otsuka)
Top image: Africa Studio via shutterstock

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