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GoopやRitualなどクリーン&エシカルブランドが勢揃いした2回目のFaB LA

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世界的に高まるクリーンビューティ志向は、ヘルシーとエシカルを重んじる米国西海岸においては、とりわけ顕著だ。FaB LAのミートアップでのディスカッションで紹介された、カリフォルニア拠点のスタートアップのリアルなビジネスの取り組みから、市場の現状と次の一歩を考える。

美容とファッション業界に、テクノロジーで新しい価値を創造する起業家と投資家のコミュニティ「FaB (Fashion and BeautyTech) 」 のロサンゼルス支部ミートアップが9月17日、屋上から海の見えるサンタモニカの会場で開催された。2回目となる今回は定員を超える60人余りのファッション、美容、テクノロジー系スタートアップや投資家が参加。ワインを片手に華やかで意欲的な交流会となった。

パネル討論は、「D2Cのファンドレイジング」と「クリーンビューティ&サステナブルファッション」の2部構成で行われ、資金調達の成功の秘訣や、ブランドのDNAを伝えるストーリーの重要性、消費者が期待する“クリーン”とは何かについて、登壇者の体験にもとづいて率直に語られた。

美容・ファッション業界のトレンドセッターが集合

FaB の前身は、元ランコムCEOの投資家オディール・ロウジョル(Odile Roujol)氏が、2017年4月にサンフランシスコで発足させた「BeautyTechSF」だ。昨年よりファッション業界も対象に含む「FaB」として活動の場を広げ、現在はニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、ロンドン、東京、ソウル、上海を含む世界12カ所の支部で起業家や投資家など2,500人以上が参加するまでに成長した。今回のLAミートアップは、ファッション&エンターテイメント業界のタレントマーケットプレイス「LÜK」の共同創業者兼CEOのザック・パーカー(Zack Parker)FaB LA支部長がオーガナイザーを務めた。

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左からオディール・ロウジョル氏と
ザック・パーカー氏

ファンドレイジング成功の鍵はブランド・ストーリー

「D2Cのファンドレイジング」をテーマにしたパネル1には、LAやサンタモニカに拠点を持つスタートアップと投資家の4名が登壇した。

サンタモニカが地元の「Tradesy」は、高級ファッションブランド品を扱う女性による女性のためのCtoCマーケットプレイスで、創業者兼CEOのトレーシー・ディナンジオ(Tracy DiNunzio)氏は、2009年の起業までビジネス経験はなく、もともとはアーティストである。自宅の台所でスタートアップを興し、Tradesyを10年で世界最大規模の高級女性ブランドのフリマサイトへと成長させた。

カテリーナ・シュナイダー(Katerina Schneider)氏は、女性向けのクリーンなマルチビタミンサプリメントのサブスクリプションサービス「Ritual」の創業者兼CEOだ。シュナイダー氏はシリコンバレーの投資業界で働いていたが、妊娠4ヶ月の時に、安全性が担保された原料だけを使った、女性のためのサプリメントが世の中には存在しないことに気づき、自ら作り出そうと起業した。商品は女性一般用と妊婦用の2種類で、価格はそれぞれ月30ドルと35ドル。2015年の創業以来、すでに100万本を売上げている。

Goop」は、2008年9月に女優のグウィネス・パルトローが創立。100万人以上のサブスクライバーをもつ、クリーンビューティ&ウェルネスの啓蒙をうたうライフスタイルブランドである。最高財務責任者(CFO)を務めるエリカ・ムーア(Erica Moore)氏は、2016年にGoopへ移る前は、家具とインテリアのECサイト「One Kings Lane」で7年間にわたり財務を担当しており、豊富なファンドレイジング経験を持つ。

Kaktus Capital」の投資パートナーであるデボラ・ベントン(Deborah Benton)氏は、美容・ファッション・ウェルネス業界を中心とした13企業をポートフォリオにもつアーリーステージの投資家で、複数企業の取締役(ボードメンバー)も務める。若い女性向けファッションリテール「Nasty Gal」社長やオンライン・ファッション(靴)・サブスクリプションサービス「ShoeDazzle」の最高執行責任者(COO)の経験もある。

モデレーターは、地元の投資企業及びテック系ベンチャー企業をよく知るSilicon Valley Bank VPのサラ・ペルーソ(Sarah Peluso)氏が務め、参加者の起業家が最も知りたい「スタートアップが投資を得るために必要な要素は何か?」との質問をパネル全員に投げかけた。

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左から、トレーシー・ディナンジオ氏、
カテリーナ・シュナイダー氏、
エリカ・ムーア氏、デボラ・ベントン氏、
そして、サラ・ペルーソ氏

ベントン氏は、起業して間もない段階では後のステージとは違い、投資するかの判断において財務情報以上に重要なのは、創業者のストーリー、ポジショニング、市場への付加価値などブランドの可能性をみていくことだと投資家の立場から回答。

これに加え、GoopのCFOムーア氏は、クリーンビューティやウェルネスを広めていくことを理念とするブランドとして、信頼に足ると投資家を納得させるために、ブランドが持つ専門知識や強みを丁寧に説明し、そして、取り扱う製品には科学的根拠があることを示してきたと話す。このようにエビデンスを含めた情報開示は美容業界において大切な要素であるとする。

また、ほかの登壇者も、アーリーステージでは、この先どのように企業を成長させていくかという創業者のビジョンやリーダーシップ、自信に満ちたストーリーテリングが鍵になると語った。

これを受けて「創業者のパーソナルなストーリーは、消費者のほか、投資家との結びつきにも必要なのか」が議題になった。Ritualのシュナイダー氏は「創業者の自分ではなく、商品がブランドの顔になって欲しいと思っているが、皮肉なことに、アンケートなどの調査結果では、私自身のストーリーを知ることで、最もブランドとの結びつきが感じられたという結果が出ている」と苦笑いしながら明かす。消費者はブランドを作っている「人」により重きをおいて見ているという最近の傾向を裏付けるものだ。

シュナイダー氏はまた、創業資金を募るためのミーティングで、迷った挙句、投資家に妊娠4ヶ月だと伝えたところ「家族かビジネスか、どちらかを選べ」と言われて悔しい思いをしたことを打ち明ける。一方で、起業のきっかけとなった個人的なエピソードに共感して、向こうから声をかけてくれた投資家との素晴らしい出会いについても触れた。

また、ハリウッドスターのグィネス・パルトローがオーナーであるGoopは、パルトローの経歴や生き方のストーリーが消費者はもちろん、投資家との結びつきを深めるうえで機能しているのを認める。だが、単にセレブとセルフィが撮りたいという理由で面談を設定してきた投資家もいたため、ブランドの代表としてか、あるいは単に著名な個人に興味があるのか、そのあたりを見極める必要があるとアドバイスする。

他方、創業者のパーソナルな物語は自身のブランドに対する思い入れやビジネスへの情熱を映し出す鏡ともいえる。ブランドにとっては、その部分を理解して価値を共有できる投資家をみつけることが、長く付き合えるビジネスパートナーとの出会いにつながるのかもしれない。

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セッションの最後に、観客席から見守っていたロウジョル氏が「ファンドレイジングのベスト&ワースト体験について教えて欲しい」と声をあげた。Tradesyのディナンジオ氏が、誰からも投資がないことがクリスマスイブに判明し、そこからなんとか挽回するまでの奮闘の体験談を披露すると、会場を埋めた起業家のタマゴたちの心に響いたようで、会は打ち解けた雰囲気に包まれた。

何をもってクリーンブランドと呼ぶのか

2つ目のパネルは、「クリーンビューティ&サステナブルファッション」がテーマで、こちらも伸び盛りのスタートアップの創業者やマネージメントが登壇した。

キャット・チェン(Cat Chen)氏が2016年に創業した「Skylar」は、オリジナルの香水を提供するスタートアップである。現代的でナチュラルな6種類の香りはどれも有害な化学物質やアレルゲンを使用しておらず、低刺激(ハイポアレジック)でクルエルティフリーがコンセプトだ。D2Cからスタートしたが、今年からセフォラでも販売を開始。起業前にチェン氏は、急成長を遂げたナチュラル・ベビー&マタニティ用品ブランド「The Honest Company」の事業運営本部長としても活躍していた。

また、エリース・ローネン(Elise Loehnen)氏は、パネル1にCFOが登壇したGoop最高コンテンツ責任者(Chief Content Officer)で、マーケティング、出版業界でのキャリアを持つ。

そして、今回唯一の男性登壇者であるロマーン・ガイヤール(Romain Gaillard)氏は、オーガニックスキンケア、ナチュラルコスメ、5フリーネイルカラー、クリーンヘアケア、ウェルネスティーほか、安全なハウスアイテムなどを扱うグリーンビューティーブランド「The Detox Market」の創業者兼CEOである。ニューヨーク、カリフォルニア、トロントなどで店舗を構えるのに加え、ECでの販売や、毎月厳選したグリーンビューティーアイテムを届けるサブスクリプション・ボックスも展開している。

LAのベンチャーファンド「Plus Capital」のパートナー、アマンダ・グローブス(Amanda Groves)氏がモデレーターを務め、まずは最近のバズワードである「クリーン」の定義を探るところからセッションははじまった。

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左から、キャット・チェン氏、
エリース・ローネン氏、
ロマーン・ガイヤール氏、
そして、アマンダ・グローブス氏

Skylarのチェン氏が、クリーンとは、近年市場にあふれている「ナチュラル(自然派)」と混同されがちだが、ナチュラルが進化した「ニュー・ナチュラル」と呼ぶべき存在だと口火を切る。いずれも、クリーンビューティ市場の先駆者的存在で、その厳しい商品セレクションで有名なGoopとThe Detox Marketの両者も、「自然の成分=良いものだとは限らない、ナチュラル=クリーンではない」ことを強調したうえで、クリーンとは「有害なものを極力排したもの」だとの考えを述べた。

両ブランドとも、店舗で取り扱う商品をスクリーニングする際に参照する、極めて厳密な「有害アイテムリスト」を保有している。さらにGoopでは、成分はもちろん、クリーンであると認めるには、情報開示の透明性、サステナビリティ、フェアトレード、クルエルティフリーといった側面も重視しているとする。つまり、エシカルでなければ、クリーンとは呼べないというわけだ。また、ガイヤール氏は「害のあるものを取り除くのは簡単だが、それだけでは足りず、創業者の良いものを作りたいという情熱こそが、魅力的なクリーンプロダクトの要素として不可欠だ」と語った。

知識豊富な消費者に対しブランドは正直であるべき

オンラインやソーシャルメディアが普及した現在、消費者は多くの情報にアクセスでき、知識も豊富だ。そんな消費者は製品に関する情報をどれくらい求めているのか、また、クリーンなブランドとして彼らから信頼されるためには何が必要なのだろうか。

Goopのローネン氏は、消費者は食品と同じようにビューティプロダクトのラベルも丹念に読むようになっていると認める。だが、ほとんどの人が日々進化する大量の科学的情報を消化しきれないため、こうした情報を咀嚼して、分かりやすく端的に提示する、信頼できる情報源が求められていると考えている。Goopでは、信頼を得るために、たとえば「化学物質不使用(ケミカルフリー)」という表現は、厳密には全ての物質は化学物質なので正確ではないとして、どのような言葉を用いれば正しい情報を消費者に伝えられるかに最も気を使っているとする。

チェン氏は、消費者は、伝統的な有名ブランドを有名だからという理由では信用しなくなっているとして、たとえば、敏感肌でも刺激がないものや、頭痛を引き起こさないものなど、自らにぴったり合うものを求めて情報を収集し学んでいると話す。そして、この風潮は真摯にクリーンな製品を作っている者にとっては追い風だと来場者を力づける。そのうえで、消費者は自分以上に賢いと思って、商品情報に関して真実を記載するのはもちろん、消費者の細かい疑問に対しても、決して誤魔化さず、丁寧に調べて回答するといった正直な姿勢をもつべきだとした。

同時に、新興のクリーンブランドがビジネスとして成立するためには、短期間で消費者の信頼を勝ち得る必要がある。Skylarでは、商品をインフルエンサーに実際に使用してもらうことで信頼できる情報として拡散を図るとともに、クルエルティフリーなどの認証を取得するなど、これまでに行ってきた施策を参加者にシェアした。

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クリーンビューティの販売チャネルのあり方

あわせて「多くのクリーン・ビューティプロダクトのスタートアップが、The Detox Marketに売り込みにくるのはなぜか?」との質問がガイヤール氏に向けられた。これに対する彼の回答には、クリーンビューティ市場の現状が垣間見えるようだった。

ガイヤール氏が、自社にスタートアップが売り込みに来る理由として挙げたのは2つある。The Detox MarketやGoopが扱っていれば「消費者は我々のお墨付きがあると信頼する。だから、いわば“クリーン認証”ともいうべき印を求めてくる」のが1つ。そして、もう1つは有効な販売チャネルとしての役割を期待しているとする。

かつてビューティプロダクツを購入できる場所は、デパートや小売店などの実店舗だけだったが、インターネットによるBtoC時代がやってきた。それは、たくさんのスタートアップを生み出した。The Detox Market創業の2010年当時は、クリーンで、なおかつ機能効果が認められる製品が少なく、1カテゴリーに1プロダクトという状態だったが、現在は、全カテゴリーに商品が溢れている。そんな商品過多のクリーンビューティ市場で、商品を選りすぐり、消費者の目に届くところで的確に示すことができるリテーラーや、マルチブランドを扱うオンラインショップが必要だと、皆が気づいたのが今の段階だとガイヤール氏は見解を示す。その意味で、The Detox Marketは正しい方向性を持った販売チャネルだと捉えられているのだ。

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その後も観客からはいくつもの質問が飛び出し、クリーンビューティが今、いかに関心の高い、熱いトピックであるかを感じさせながら、ミートアップは幕を閉じた。

FaBミートアップは、ビューティ&ファッション業界のビジネストレンドをいちはやく感知できる集まりとして知られている。LAでは、クリーンビューティやウェルネス分野に投資家からの熱い視線が注がれていることを感じさせ、市場が成熟してきているのを改めて印象づけた。

Text: 東リカ(Rika Higashi)

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