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インド市場で存在感を示すイニスフリーなどのK-Beauty、進出サポート企業の存在も

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インド市場は韓国の化粧品関連企業にとって、“ポストチャイナ”の筆頭だ。北米や日本、東南アジアなどと並び、輸出の多角化を進めるうえで重要な戦略地点であり、2021年時点でインド市場における韓国コスメのシェアは13%となっている。韓国ブランドが積極的にインドでの展開を進められる背景を探る。


インドにおける海外化粧品の輸入額、韓国は第3位

2023年にインドの人口は14億2,863万人に達し、中国の人口14億2,567万人を上回った。少子高齢化が進む中国よりも出生率が高く、かつ人口における平均年齢は28.2歳と中国のそれよりも10歳若い(2023年時点)。ポテンシャルの高いこの市場を、韓国の美容業界は“ポスト中国市場”ととらえ、インドへの進出が活発になっている。

大韓化粧品協会が公表しているリサーチ結果によれば、2022年に約263億ドル(約3兆9,805億円)規模だったインドビューティ&パーソナルケア市場は2028年までに年平均6.45%成長し、約380億ドル(約5兆7,513億円)規模まで拡大することが予想されている。

そのなかで、韓国コスメのシェアは徐々に広がっている。韓国の国営貿易投資振興機関KOTRAの調査によれば、インド国内における海外化粧品の輸入額トップ10のうち、韓国は中国、英国に続き3位だ。ちなみに4位以降ベルギー、米国、フランスと続き、日本は圏外となっている。韓国コスメのなかでも、スキンケア製品が好調で、インド市場におけるシェアは2017年の5.7%から、2021年には13.06%まで増加。輸出額も2017年の467万6,000ドル(約7億700万円)から2021年は2,448万1,000ドル(約37億500万円)と5倍以上成長したことがレポートされている

インドにおける韓国コスメの順調な販売拡大傾向を背景に、インド国内のリテーラーも韓国コスメを積極的に商品ポートフォリオに取り入れ始めている。インド最大の化粧品流通プラットフォーム Nykaaではすでに多数の韓国製品が販売されており、財閥企業Reliance Retailのビューティー専門EC Tiraは、2024年以内に125の韓国製品を発売することを目標に掲げている。

インド最大のビューティーEC Nykaaの韓国コスメページ
出典:Nykaa

そのほかにも、韓国製品だけを販売するQuenchや、Oceglow など韓国企業とのコラボ製品だけを扱うOswal Synergiesなど、さまざまなインド国内プレイヤーが登場し、韓国コスメのインド市場開拓を促進している。

イニスフリーやTHE FACE SHOPなどがインドで人気の韓国ブランド

こうしたインドでの韓国コスメ人気を受けて、韓国ブランドも大手から新興まで進出に意欲的だ。前出のKOTRAによれば、インド市場では、アモーレパシフィックのイニスフリー、LG生活健康のTHE FACE SHOP、TONYMOLYなどのスキンケアブランドがとくに人気を集めているという。

アモーレパシフィックの完全子会社であるイニスフリーは、韓国化粧品企業としては初めて100%の海外直接投資(外国資本での現地法人設立)の承認を受けインドに進出している。天然成分に関心が高い大学生や若い会社員をメインターゲットとし、BB/CCクリーム、クッションファンデ、メイクアップ、マスクパックなどの製品でインド市場にアプローチする。2023年にはムンバイに新たに2つの店舗をオープンし、インド国内で年間580万ドル(約8億7,700万円)の売上を上げているとされる。

インド・ムンバイのイニスフリー店舗
出典:INNISFREE IndiaのFacebookページ

THE FACE SHOPが主に取り扱うのはマスクパックで、製品バリエーションや価格競争力で人気を集めている。インドではまず、NykaaやAmazonにブランドとして出店し、その後オフラインで商品を展開する手法をとってきた。TONYMOLYもマスクパックで人気を集めており、Nykaaに出店後、他のECサイトに販売網を拡大する形で認知を獲得している。

インドでは大気汚染が深刻化しており、ながら美容ができるマスクパックなどを活用した、効率の良いスキンケアに対する消費者の関心が高まっているという。またSNSを活発に使用している若年層を中心に、天然由来成分などを使用した高品質なスキンケア商品を好む傾向が高まっているとされ、イニスフリー、THE FACE SHOP、TONYMOLYなどのスキンケア商品やマスクパックが人気を獲得している背景には、こうしたインド社会の実態が大きく反映している。

イニスフリーの好調を受け、アモーレパシフィックはほかのブランドもインドでの展開を推進している。2023年8月にはTiraとパートナーシップを締結する一方、同11月にはムンバイで開催されたNykaaのビューティイベント「Nykaaland」に参加。広報ブースを設け、イニスフリー 、Sulwhasoo、ラネージュ、エチュード などのブランドを積極的に紹介したことが韓国メディアによって報じられた。

Nykaalandの様子

韓国企業による韓国ブランドのためのインド進出サポートも

こうしたインドにおける韓国ブランド進出を語るうえで欠かせないのが、サポート体制を厚くもつ韓国企業で、現地でビューティプラットフォームを展開するMaccaronと、市場開拓をサポートするBtoB企業、Limeseの存在だ。

Maccaronは、インド国内で最多の韓国コスメを取り扱うリテーラーでもあり、運営するのはVelymonkeysという韓国企業だ。

Velymonkeysが運営するMaccaron
出典:Maccaron公式サイト

Velymonkeys は2019年7月にMaccaron をローンチ後、2021年1月にモバイルECアプリをリリース。現在、自社ECやインド現地のAmazonなどを通じて、流通、販売、マーケティングまで、韓国コスメブランドのインド進出を包括的に支援している。

Maccaronは350種類以上の韓国ブランドの商品約1万5,000点の購入ができる、インド国内最大のK-ビューティECであることに加えて、メイクの方法やスキンケアルーチンを共有できるコミュニティや、韓国のトレンドをいち早く体験できるサービスなどを運営するビューティプラットフォームという特徴もあわせ持つ。

現在、月間アクティブユーザー数は31万人で、売上も順調に増加。Velymonkeys の2022年の売上は44億ウォン(約4億8,400万円)を計上し、2021年度比で2.5倍の成長となった。2023年には6月の段階で61億ウォン(約6億7,100万円)の売上を達成しており、直近ではインド市場における有力なビューティプラットフォームへの成長を見込まれ資金調達(シリーズA)にも成功している。

一方、韓国コスメのBtoB市場開拓を目指し奮闘しているのがLimeseだ。

 LimeseのECプラットフォーム
出典:Limese公式サイト

Limeseはインド現地のデパート、ドラッグストア、中小規模小売事業者に韓国コスメを流通させる事業を展開しながら、自社ECでのオンライン販売に加え、ニューデリーでオフライン店舗を運営している。あわせて韓国ブランドがインド進出に際して必要となる通関実務、決済管理、ラストマイル配送、マーケティング、バイヤーマッチングなどをトータルで支援する。

Limeseはインドに拠点を置く数少ない韓国ビューティスタートアップのひとつで、韓国国内において高い注目度を誇る。インドに輸出される韓国コスメのうち約15%が同社を通じて流通しているとの統計もある。現在、インド国内20州にネットワークを拡大している同社は、現地オフライン流通事業者とのパートナー関係を継続して強化中だ。そして、今後は韓国ブランドだけではなく、海外ブランド全般のインド進出を幅広くサポートしていく方針も明らかにしている。

Limese 創業者兼CEO ハン・ドゥクチョン(deugcheon han)氏は韓国メディアの取材に対し、インド市場攻略の難しさについて「信頼できるバイヤーの選定および関係構築」「許認可など非関税障壁」「現地化されたマーケティング」「フルフィルメント」「売上管理」など5項目を挙げている

たとえば、インドで事業を展開するためには許認可が必要な事柄が多く、それらに伴う費用と時間的負担が想像以上に大きいとする。国の発展度合と比較して規制が多岐にわたるという意味だ。また広大な国土のなかで、中国と同様に言語や文化が異なる地域がそれぞれの生活を築いているため、地域ごとの特徴を理解したマーケティングを確立する必要もある。現地でブランド運営に携わる優秀なスタッフの雇用や、インフラ未整備な地域への配送費負担も大きい。総じて「進出コストが想定よりも高くつくのがインド市場の特徴」だとハン氏は指摘している。

日本企業にとってもそういったハードルを越えるのが難しかったともいえよう。資生堂は2023年に、グローバルで知名度の高いNARSをインドの有名百貨店のShoppers Stopの子会社と提携し初上陸させたが、さかのぼること2014年に中低価格帯ブランド「ZA」でインドに進出した際には、約1年半で販売を終了している。その撤退理由のひとつに、消費者との接点づくりの難航というマーケティング上の課題があったという。が、SNSの普及や女性のビジネス進出、美容意識の高まりなどで、こういったハードルが少しずつ解消されグローバルスタンダードに市場が近づいている。そのうえで、現地のパートナー企業との強固な協業関係を築くことが進出を成功させるための定石となりそうだ。

韓国ブランドにとっては、インドにトータルサポートを行う企業がすでに存在することが大きなアドバンテージだ。また他国と同様に、インドでも10~30代の女性を中心に韓流人気が浸透しており、韓国の文化的なバックグラウンドを武器にマーケティングや共感帯を形成できるという強みもある。インド国内のビューティ関連展示会に、KOTRAなどがブースを設けて進出の後押しもしている。今後は大手ブランドだけではなく、中堅・新興ブランドのインド進出も続くことが予想されている。

Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: THE FACE SHOP India 公式サイト

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