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マルチモーダルAIでロボットが飛躍的に進化、実験も自動化へ【美容業界における生成AIのインパクトを考える(5)】

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テキストや画像、動画の生成AI(Generative AI)は、日本政府のAI戦略会議で「産業革命やインターネット革命よりずっと大きなものになる」と分析されるほどの社会へのインパクトが想定されている。美容業界のビジネスパーソンとしてどのような展望を描けばよいのか、イノベーション・AI関連分野に知見をもつ識者に、「生成AIがもたらすインパクトとすぐそこにある近未来の社会」についての洞察を聞くインタビューをシリーズで掲載する。第5回はロボット×AI分野の権威である、早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 表現工学科 尾形哲也教授に話を聞いた。


生成AIは画像や言語を経て、マルチモーダルAIとしてロボットの動作にシフト

ChatGPTなど生成AI活用がビジネスにおいても積極的に語られているが、ロボティクス領域でも生成AIによって実用化に大きくはずみがつくといわれている。今回、日本でその最先端のケースを提示するのが、AI×ロボティクス研究の第一人者である早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 表現工学科 教授 尾形哲也氏だ。

尾形氏の専門は、認知発達ロボティクス研究だ。その定義は「ロボットや計算モデルによるシミュレーションを駆使して、人間の認知発達過程の構成論的な理解と、その理解にもとづく人間と共生するロボットの設計論の確立を目指した研究領域」だと科学技術振興機構 研究開発戦略センター(CRDS)が表明している。これは、発達心理学や神経科学、人工知能(AI)、ロボティクスなどの学問分野を融合させた、日本発の研究領域である。

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 表現工学科 教授 尾形哲也(おがた てつや)氏
プロフィール/2017年より日本ディープラーニング協会理事。2020年より早稲田大学次世代ロボット研究機構AIロボット研究所所長を務める。ディープラーニングに代表される神経回路モデルとロボットシステムを用いた、認知発達ロボティクス研究に従事。「2021年IEEE ICRA2021 Best Paper Award In Cognitive Science」「2023年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)」などを受賞

そのなかでも尾形氏が研究テーマとして長らく掲げてきたのは、「ロボットと神経回路(ニューラルネットワーク=深層学習)」だ。人間の脳内に存在するニューロン(神経細胞)の仕組みをコンピュータで再現し、それをロボットに取り込み、動きを制御する研究である。

これまでロボットの制御は人間がひとつひとつプログラムして指示を与えることで成立していた。たとえば、「Aという場所からBという場所まで、アームの角度をC度に曲げて物体を動かせ」というコマンドを出すなどだ。しかしその方法では、人間の指先のような細かく複雑な動きを伴う作業や、物体をAからBまで動かすといった一見簡単そうにみえる指示を理解して作業をこなすロボットを作り出すことはできない。なぜならば、一連の動きに関わる指示のすべてを逐一言語化しないとロボットは動作できず、全部を言語化することは物理的に不可能だからだ。

そこで尾形氏は、どのように動作するべきかというイメージをロボット自らが生み出し、反復的に学習していきながら、動きの精度を高めていくディープラーニングモデルを開発した。いわば「ロボットの動きを生成するAI」である。

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