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LG生活健康が韓国人気コスメブランド「hince」を電撃買収、事業再構築に向けた両社の狙い

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韓国化粧品大手LG生活健康が、日本でも人気の韓国コスメブランドhince(ヒンス)を運営するVIVAWAVEの買収を決定した。hinceは「ムード・ナラティブ」をコンセプトに徹底してこだわり抜いたクリエイティブが特徴で、韓国・日本を中心に世界各国の若い世代から支持を集めている。hinceが目指したブランドの在り方、両社がM&Aの合意に踏み切った背景について解説する。


LG生活健康が事業再構築をかけて実施したhince買収

LG生活健康が、hinceを運営するVIVAWAVEの買収を正式に発表したのは2023年9月26日だ。VIVAWAVEが設立されたのは2019年で、hinceは瞬く間に韓国と日本で高い人気を誇る新進気鋭のブランドとなり、このLG生活健康の決定は、韓国の国内メディアに驚きを持って報じられた。リリース前日の最終的な契約では、LG生活健康がVIVAWAVE株式全体のうち75%を保有することが決定。買収額は425億ウォン(約46億7,500万円)と発表されている。

hince日本公式サイトのトップページ
出典:hince日本公式サイト

LG生活健康がhinceを買収した狙いは大きく2つある。1つは自社メイクアップブランドポートフォリオの強化だ。後述するが、hinceは独自の世界観とコンセプトワークを駆使し、数々の人気カラーメイク商品を手がけてきた。LG生活健康は、hinceのブランド・製品だけでなく商品企画力をも取り込み、自社ブランド全体の育成に活用していきたいとしている。

もう1つの狙いは、MZ世代(ミレニアルとZ世代を両方さす韓国での表現)を中心とした顧客基盤の拡大だ。hinceは2022年11月末に東京・青山に旗艦店をオープンするなど、日本市場で着実に知名度と売上を伸ばしている。LG生活健康は、日本のMZ世代とも強いつながりを持つhinceをポートフォリオに加えることで、日本市場と長期的にエンゲージメントを図っていく計画だ。また韓国と日本で足元を固めたのち、ほかのアジア地域や北米市場への事業展開も積極的に検討するとしている。

東京・青山の旗艦店 hince AOYAMA
出典:VIVAWAVE Co.,Ltd.プレスリリース

LG生活健康はこれまで、韓国メディアから「メイクアップブランド」「MZ世代とのコミュニケーション」「海外市場の多角化」の3要素で、競合他社に出遅れていると指摘されてきた。たとえば、LG生活健康の主力ブランドである「The history of Whoo」や「su:m37º」「OHUI」などはいずれもスキンケアブランドであり、主要ターゲットはMZ世代より上の年齢層だ。

あわせて、LG生活健康は中国市場の売上比率が高く、それがリスクだと指摘もされてきた。同社はパンデミック以前には、中国市場での事業展開で好調を博し、ビューティ事業全体で80四半期連続黒字を記録する実績を残している。しかし、コロナ禍で打撃を受け、その後も中国市場の需要回復の動きは鈍く、2022年の年間営業利益は1兆ウォン(約1,100億円)を下回った。この営業利益1兆ウォン以下という数字は、2017年以降初めてのことだという。また、2023年第2四半期も中国市場における不振が影響し、ビューティ事業全体の売上は前年同期比−8.5%、営業利益も−24.9%となっている。LG生活健康にとって今回のhince買収は、ビューティ事業の弱点を克服しながら、大がかりな再構築・強化という文脈で理解することができるだろう。

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