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美容ブランドも韓国のスターをグローバルアンバサダー起用、韓流マーケティングの変化

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近年、ファッション・美容のグローバルブランドが、韓国国内はもとより、アジア太平洋地域、またグローバルアンバサダーとして、韓流スターを起用するケースが増加している。一方、韓国の大手・新興ブランドによるK-POPスターを起用してグローバルに展開する従来の「韓流マーケティング」は、その様相を変え、中国を最重要市場とする韓国大手ブランドが中国のスターを起用してローカライズに力を注いでいる。各ブランドの動きから状況を分析する。

大ブレイク寸前のBTSを起用した韓国新興ブランド

2017年から2018年ごろ、韓国で力をつけてきた新興ブランドはいかに将来有望なK-POPスターを起用するかがカギとなる要素だった。良質なプチプラブランドとして知られるVT Cosmeticsや、ユニコーン級に成長したシートマスクブランドのMEDIHEALは、大ブレイク寸前のBTSを起用し成長にはずみをつけた。

このように韓国の化粧品ブランドが、海外市場向けのアプローチを行う際に、韓国ドラマや映画などのコンテンツ、またそこで人気を博したタレントを起用し、ともに知名度を高めていく、いわゆる「韓流マーケティング」は、2010年代初頭から韓国大手ブランドの売上や販路を拡大するための重要な施策だった。

それが近年では、欧米のグローバルブランドがアジアおよび世界市場攻略のために韓国人タレントを起用するケースが徐々に増えている。

変わりつつある「韓流マーケティング」、国外ブランドが韓国人スターを起用

まず日本での施策と同様に、欧米グローバルブランドが韓国国内向けのローカルアンバサダーとして、韓国人タレントを起用することは業界内では珍しいことではなくなった。

2019年から2020年にかけては、エスティ ローダーがアイドルグループ TWICEを広告モデルに起用。大規模なマーケティングを展開し話題となった。またクリニークは歌手のチョンハを、ランコムは歌手で女優のスジをモデルとして抜擢している。

そのほかにも、M・A・Cが女優のチョン・ユミとgugudanのメンバーのミナ、資生堂が女優ソ・ジヘ、NARSがモデルのチェ・ソラを国内マーケティングのためのブランドモデルとして起用した。男性の韓流スターがブランドの国内アンバサダーになるケースも目立ち始めている。今年、ジバンシイは、俳優のカン・ダニエルを公式モデルとして起用した。スキンケアブランドのビオテルムも、俳優のリュ・ジュンヨルをモデルに任命。ファンサイン会を開催するなどしてマーケティング展開をしている。

欧米ブランドがグローバルアンバサダーに韓国のスターを指名

そして興味深いのは、欧米グローバルブランドが、韓国国内のみならず、アジアもしくはグローバルアンバサダーとして韓国人もしくは韓国で活躍するタレントを起用する流れが生まれようとしている点だ。

2020年10月には、M・A・Cがガールズグループ BLACKPINKのリサ(出身国はタイ)をグローバルアンバサダーとして起用し、正式に契約を結んでいる。同ブランドにおいて、女性のK-POPアイドルがグローバルアンバサダーに就任するケースは初めてとなる。ブランド側としては、世界的に支持されるビューティー&トレンドアイコンとして、リサの影響力に大きく期待を寄せていると報じられている。またクリニークも4月に、ガールズグループ Red Velvetのアイリーンをアジア太平洋地域のブランドアンバサダーとして起用することを決めている。

Instagramで公開された
M・A・C × リサ

韓流アイドルをグローバルアンバサダーに登用することに、より積極的なのがファッション業界だ。2018年にはBIGBANGのメンバーG-DRAGONがシャネルのグローバルアンバサダーに就任し話題となったが、前出のBLACKPINKのリサは2020年にセリーヌやブルガリなどグローバルファッションブランドの世界戦略を支える“顔”として起用されている。

また同グループのメンバーのロゼはサンローラン、ジェニーはシャネルのグローバルアンバサダーにそれぞれ起用された。7月には香港のランドマークのセントラルビルディングにロゼをフューチャーした広告が張り出され話題となった。男性スターとしてはグッチがEXOのカイ、また直近では、オメガが「愛の不時着」で一躍大人気となった俳優のヒョンビンとグローバルアンバサダー契約を結び、またスイスの高級時計&ジュエリーブランドであるピアジェのアジアでのブランドの顔として女優のコン・ヒョジンが起用された。

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香港の街頭に張り出された
ロゼの大型広告

そのほかのファッションブランドも、韓国で人気が出そうなタレントたちの発掘にのりだしている。韓国での報道によれば、アディダスやナイキなどスポーツブランドや、ヴァレンティノ、モンクレールといったグローバルブランドが、韓国タレントへのアプローチを開始しているという。韓国でTWICEの「妹分」として話題のガールズグループ ITZY(イッジ)は、2019年2月のデビューからわずか3ヶ月でルイヴィトンのコレクションに招待された。こうした状況に伴い、韓国の芸能事務所の影響力も大きくなっているようだ。

韓国人スターを海外ブランドが相次いで指名する2つの理由

海外有名ブランドが韓国スターを相次いで起用する背景の要因とは何か。韓国芸能系メディア関係者は、大きく2つの観点から分析している。まず1つには、韓国スター自身のグローバル戦略の波及効果があげられる。

ほかの産業と同様、韓国国内では芸能界内部の競争も熾烈だ。ここ数年では、メンバー選考やデビュー以前から、欧米やアジアなどグローバル市場を明確なターゲットに据えて、それを意識したタレントの育成を行う芸能事務所も少なくない。BTSやBLACKPINKがその最たる成功例であり、思惑どおり韓国国外でも勝ち得た大きな知名度は、起用するブランド側にとってもメリットが高いものになっている。BTSの衣装提供にはグッチやディオール、プラダ、マルニなどが、BLACKPINKもシャネルやセリーヌなどが名を連ねる。

2つめは、アジア市場攻略における韓流スターの「受け入れられやすさ」だ。グローバルブランドにとって、人口増加の推移的にも、所得水準的にも、アジアは今後の成長が最も期待できる重要な市場だ。そこでマーケティングを行うとなれば、どの国でも共通して認知されうるアイコンが必要になってくる。日本や中国をはじめ、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンなど東南アジア圏においても韓流コンテンツはすでに広く普及している。BTSやBLACKPINK ほどではなくとも、二番手、三番手タレントの知名度は十分に高く、ブランド側の狙いに当てはまる。こうして韓国芸能人の起用が増えていると分析されている。

2000年代初頭から韓国ドラマやK-POPは徐々に海外への輸出が始まり、世界的なブームを巻き起こすスターが次々と輩出されたことで、アジアはもとより、グローバルでも認識されうる「韓流カルチャー」に昇華した側面がある。とくに美容に関しては、K-ビューティに代表されるように、韓国はトレンドの発生地という位置づけも強い。コンテンツの担い手であり、韓国のイメージをそのまま映し出す韓国の芸能人はシンプルに費用対効果が高く、グローバルブランドとしても起用しやすいと考えられる。

一方で、韓国国外で誤解されがちなのが、韓流コンテンツや芸能人の“輸出”を、政府が予算をつけて後押ししているという風評だ。韓国政府が自国の文化を海外で奨励・普及するための予算はあるが、そのほとんどは「ハングル教育振興」(韓国シンクタンク関係者)のためのもので、そこには芸能事務所への補助という項目はない。現在の状況は、韓国芸能界というレッドオーシャンから抜け出すためにグローバル戦略に賭け、ファンを大事にし成功を手にした芸能人やタレントが、グローバルブランドの目的と一致し、広告塔として抜擢されているというのが正しい理解だろう。

数百万円の資金をもとに立ち上げられた韓国のインディーズ化粧品ブランドが、競争の激しい韓国にとどまらず、設立の当初から世界進出を狙い、急成長を遂げてユニコーン企業となったり、グローバルブランドに買収されるという、昨今の韓国化粧品ブランド事情とも共通するものだ。

韓国大手ブランドは「韓流マーケティング」の使い分けへ

数年前まで、韓国のコスメブランドは、自国のタレントや韓流コンテンツのイメージを武器に、中国をはじめとするアジア市場攻略に乗り出していた。しかし、完美日記など有力な中国発ブランドが登場して訴求力を高めてきたタイミングで、韓国ブランドであっても中国人タレントを起用し、より中国の消費者に親近感をもってもらうためのローカライズにシフトする構図がみえてきた。グローバルブランドが、アジアや世界市場攻略に向け韓国人タレントを起用するのとは対照的な動きといえる。

韓国のフェイシャルマスクパックを代表するブランドの1つであるJayjun Cosmeticは、中国を代表するスターのファン・ビンビンと2年間の専属モデル契約を締結した。同じくマスクパックブランドのPapa Recipeも、中国で人気のオーディション番組で話題となった男性アイドル、ヂャオ・ピンリンを起用している。SNP Cosmeticsは、Weiboで942万人のフォロワーを持つ人気俳優のホアン・ジンユーをモデルに起用、AHCは新ブランドのモデルとしてロケットガールズのメンバー、ヤン・チャオユエを選んだ。

韓国最大手アモーレパシフィックやLG生活健康も、中国現地における中国タレントの起用を徐々に増やしている。LG生活健康はsu:m37˚のイメージモデルとして女優&モデルのグーリー・ナーザーと契約。アモーレパシフィックは、Mise-en-sceneに、中国アイドルグループのNINE PERCENTの人気メンバー、チェン・リーノン(台湾人タレント、中国で活動)、雪花秀の中華圏モデルとしてアンジェラベイビーを起用している。


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アンジェラベイビーを起用した
雪花秀のポスター
(出典:アモーレパシフィック)

ただし、東南アジア地域においては、引き続き韓流コンテンツや韓国人タレントをアイコンとした、伝統的な「韓流マーケティング」を継続している。たとえば、2019年6月にタイで開催された「バンコク韓流博覧会」では、タイ現地で人気が高い女優のソン・ジヒョ、音楽グループ WINNERが広報大使として活動した。同時期には、Leaders Cosmeticsのモデルを務めていた人気俳優イ・スンギが、東南アジアなど外国人観光客を対象にした免税店イベントでサイン会を行っている。

またインドネシアで人気が高い韓国ブランドの1つに、アモーレパシフィックのETUDE HOUSEがあるが、こちらは、2NE1のサンダラ・パク、SHINee、俳優イ・ミンホなど、東南アジア各国で知名度が高いタレントをアンバサダーに起用している。

今後は、地域によって伝統的な韓流マーケティングとローカライズ戦略を使い分けて、より効率的な手法を選び取っていく流れが続くのではないか。欧米グローバルブランドと韓国大手ブランドが、どんなスターを起用して差別化をはかっていくのか。そのニュアンスの違いを読み取ることは、世界市場の動向を理解するうえで有用だろう。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Kathy Hutchins via shutterstock

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