見出し画像

花王やPerfect Corp.のデジタル識者たちが考えるリアル店舗の意義、消費者との絆

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

コロナのパンデミックはビューティ商材に対する消費者行動に大きな変化をもたらした。“ニューノーマル”な生活を送りはじめた消費者に、今後どのようにアプローチしていくべきか、企業やブランドは悩み、模索している。2020年6月24日に開催されたオンラインセミナー「Beauty Tech Forum vol.4」での意見交換から、答えを見いだすためのヒントを探る。

ARとAIを活用したソリューションサービスをグローバルで展開するPerfect Corp. とBeautyTech.jpが共催するウェビナー「Beauty Tech Forum vol.4 」。「これからの消費者に対するアプローチ」をテーマに、ゲストスピーカーとして、花王株式会社 マーケティング創発部門コンシューマーリレーション開発部 部長の鈴木愛子氏を迎えて開催された。約1時間のセッションは、視聴参加の申込み時に企業やブランドから寄せられた質問に、鈴木氏や、ホスト役を務めるPerfect Corp.代表取締役社長の磯崎順信氏、BeautyTech.jp編集長の矢野貴久子の3名が回答する形で進められた。

図1

バーチャル技術はリアルを補完する役割

ECでの売上が伸長する一方で、営業を再開した店舗への客足は思うようには戻っていない。感染防止策として衛生面や安全面に配慮し、化粧品のテスターやタッチアップなどのサービスを取りやめたのに加え、対面接客にも制約があり、小売の現場は不自由を強いられている。ARバーチャルメイクアップなど非接触型販促ツールの導入に踏み切る企業も増えるなか、「テスターはこのままなくなるのか?バーチャルでどこまで購買意欲をそそることができるのか?」と不安を抱く化粧品ブランドも少なくない。

磯崎氏は、それに答え、自社のYouCamメイクなどのバーチャルカラーシミュレーターは「テスターやサンプルに取って代わるものではない」と断言する。「リアルorデジタルと二項対立的に考えるのは違うと思う。デジタルはリアルのリプレースにはなりえない。どちらも顧客接点であり、それぞれのエンゲージメントがある」とし、ARバーチャルの技術は、ネットのクチコミなどと同じく、きっかけづくり、認知度アップ、ターゲットの絞り込みという、ユーザーが購入するまでのジャーニー上に存在するもので、あくまで商品選びと購買意欲をあと押しする方法の1つだとする。

あわせて、オンライン上のさまざまな情報を総合的に判断し、実物を試さずに買うことができる人はもちろんいるが、それを妥協と感じたり、抵抗を覚える人もかなりの割合で存在していると指摘する。

画像5

パーフェクト バーチャルカラーシミュレーター
提供:Perfect Corp.

鈴木氏は「店舗でのテスターの役割は何で、顧客に何をもたらしていたのか」という顧客側の心理に立って、今一度考えてみることをすすめる。仮に商品そのもの、たとえばボトルの見た目や手触り、持った重みとか、中身のテクスチャー、色や質感を体感するなどの実体験とリスクを天秤にかけて、リスクが大きいと感じたら、顧客はテスター使用や店舗に訪れるのを避けることにもなるだろう。

「リアルでしか提供できない価値、顧客が感じていた価値とは何だったのか?という根っこの部分を取り出して再整理してみることが大事な気がする」と鈴木氏。そして、その根っこはオンラインで補えないのか?と一歩踏み込んで発想することで、ポストコロナの顧客の気持ちに沿った購買体験がつくれるのではないかと示唆する。

図1

オンラインとオフラインを自在に行き来するOMOが持つ可能性

同じく顧客視点から「デジタルかリアルかをあまり意識しないでショッピングができるというOMO(Online Merges Offline)体験を創造することが、現状ではベストだと思う」と回答したのが矢野である。店舗に行って、店頭に設置されたバーチャルメイクツールで色味を試したり、AI肌診断を受けたりして商品を選び、QRコードを読み込んでオンライン決済、希望に応じて自宅への配送もできるなど、非接触を保ちつつ満足のいくショッピングの実現を目指すものだ。

画像6

バーチャルメイクツール使用イメージ
提供:Perfect Corp.

矢野はまた、自粛期間中に日用品や生活必需品はオンラインで注文することに慣れた消費者にとって、わざわざ店舗に足を運んでこそ得られるリアルな感動には、特別な付加価値がつくとみている。

たとえば、シャネルが2019年、ニューヨークにオープンしたコスメトライアルショップ「Atelier Beauté CHANEL(アトリエ ボーテ シャネル)」は、手荷物は全てロッカーに預け、スマートフォン1つを手に店内を見て回るスタイルだ。自分のペースで気になった製品を次々とトライアルでき、商品説明はスマートフォンからチェックし、お気に入りに入れたり、もちろんカートに入れて同店で購入もできる。公式サイトの香りのページにアクセスし、インタラクティブなオンラインガイダンスを受けながら、自分にぴったりの香水を見つけ出すゲーム感覚のパフュームホールも設けられている。

図1

顧客が求めているものを理解し絆を深めることが重要

「人々の外出する機会が減るなか、どのような取り組みをすれば業績を伸ばせるのか」、「商品単価や顧客単価の低いブランドが生き残るための方策を知りたい」という、切実な質問もあった。

鈴木氏は「ロイヤルカスタマーが多いブランドは、(業績が)伸びるチャンスがより大きいと思う。不安なときは新しいもののハードルが上がり、自分の定番に戻りがちな傾向があるからだ。また、単価が安いことは変えられない事実なので、ネガティブにとらえず、コスパが良くてリーズナブルな選択肢であると消費者に理解してもらえる発信をする手もあるだろう。いずれにしろ、顧客が自分たちのブランドの何を求めて、商品を買ってくれているのかを、改めてきちんと考えるのが重要なのではないか」と語る。つまり、自社の強みを洗いだし、それを顧客とのコミュニケーションに反映させて、絆を強めること、信頼関係を築くことが最も大切と考える。

矢野もまた、「どれだけ顧客に寄り添ってくれるのかを消費者はみている」として、コロナ禍の前から顧客との対話を大切にしているブランドが伸びている実感があると話す。顧客に耳を傾けるということは、顧客の要望を吸い上げることを意味する。そこには、顧客を喜ばせたり、新しい発見へと導く仕掛けを生み出すヒントが詰まっているのだ。

リアルありきのデジタルエンゲージメント

リアルでは物理的な距離を保つことが求められているからこそ、デジタルでのエンゲージメントが重要になるとする磯崎氏だが、「それはデジタルで全て完結させるためのエンゲージメントではなく、リアルありきのエンゲージメント」であるべきだと強調する。

その背景には、日本ではSNSのクチコミやECサイトを入念にチェックし、豊富な商品知識を持つ人が増えているにも関わらず、いまだに消費者の9割が化粧品を店舗で買っている現実があるからだ。店頭での体験だけを重視するのではなく、店舗に来る前からオンラインでのエンゲージメントを高めておくことで、来店したときの体験をさらに良い内容にできるはずだとする。

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の重要性が、美容業界のみならず、さまざまな分野のさまざまなレベルで叫ばれているが、DXそのものが目的であってはならない。DXにより、どのような体験を提供できるかということが問われているのだ。ポストコロナの新しい生活様式のなかで、「リアルでは実行が難しい部分を、デジタルでどう伴走していくかという視点で考えてみるのがいいのでは」と矢野は語り、各種バーチャルツールやオンラインカウンセリング、ライブ動画コマースなどの可能性を示す。

図1

ライブコマース イメージ
Have a nice day Photo via shutterstock

リアル店舗からECへの移行が一気に加速することに懸念を持つブランドもいる。だが、つまるところは、顧客をコントロールできないのだから、顧客が自身の行動動線上で、好きなときに好きな場所で買えるように、ブランド側が複数の接点を用意しておくことが大事だと鈴木氏は結論づける。

磯崎氏も、数字のうえでは、たとえ化粧品の購買全体に占めるEC率が現在の倍になったとしても、なおも8割以上が店頭で購入するとして、ユーザーのチョイスの幅を広げ買いやすい環境を整えるのが必要とする。ただし一方で、気が向いたときや、何かのついでに店に行って買うという、明確な目的を持たない買い物客がマスとして存在する。「であるなら」と磯崎氏は続ける。「リテールはどうやって“気を向けてもらうか”というコミュニケーションを考えるべきだろう」。

月1回ペースで開催される「Beauty Tech Forum」には、毎回、美容業界の企業のCEOら業界のエキスパートや、ユニークな新事業形態を提案する先駆者たちがゲストスピーカーとして登壇。ビューティ関連企業が“今まさに知りたい”と考えている事象や課題をテーマに、幅広い知見をシェアする目的でディスカッションを行なっている。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top Image: NordWood Themes via Unsplash


ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
17
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

BeautyTech.jp記事
BeautyTech.jp記事
  • 523本

BeautyTech.jpのすべての日本語コンテンツはこちらからご覧いただけます