2021年、中国化粧品分野のニューリテール、OMO型店舗の進化と増加が止まらない
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2021年、中国化粧品分野のニューリテール、OMO型店舗の進化と増加が止まらない

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中国では近年、化粧品小売店チェーンの数が増えているが、パンデミック後もその勢いは衰えず、次々と新しい実店舗がオープンしている。なかでも最近ではテクノロジー導入により、OMO化した「ニューリテール」店舗も次々登場し、美容部員をおかずに完全無人化した店舗も出てきている。

美容・健康産業特区にオープンした「美谷美購新零售店」

ニューリテール(新小売)という言葉は、OMO(Online Merges with Offline)型の店舗運営を指し、2018年頃にアリババの生鮮食品スーパーの「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」登場とともに誕生した。いまでも中国メディアでは頻繁に使われており、美容分野でも2020年後半あたりからニューリテール店舗が急に増えだしている。

その筆頭格が、2020年11月、上海市奉賢区の美容・健康産業特区「東方美谷(The Oriental Beauty Valley)」にあるショッピングモールMEIGU MEIGOU PLAZA(美谷美購広場)にオープンした「美谷美購新零售店(ニューリテールショップ)」だ。

国有企業の東方美谷企業集団が運営する産業特区東方美谷は2015年に設立され、化粧品や食品メーカーの研究拠点などが集積。資生堂も2020年に入居し、研究開発拠点を設けている。美谷美購新零售店は、その東方美谷企業集団による直営の化粧品専門小売店だ。

同店ではさまざまなテクノロジーを導入し、店舗の自動化を実現している。完全な無人店ではないが、セルフレジがあり、QRコードスキャナーのついたタッチパネルで会計を済ませることができる。住所を入力して商品を自宅まで配送してもらうことも可能だ。

店内には、当然のように肌診断機が設置されている。皮脂、水分、敏感度、色素分解度、毛穴清潔度などの指標から肌の状態を解析し、改善方法を提案して適した商品のレコメンドまで提示される。バーチャルメイクができるスマートミラーもあり、口紅やアイシャドー、マスカラ、カラーコンタクトレンズ、ファンデーションなどの購入前シミュレーションができる。

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美谷美購のニューリテールショップ
出典:美谷美購公式サイト

口紅に関しては、原料や香料、色を選んで自分好みのものをその場でつくることもできる。中国の人気ブランド「Mariedalgar(瑪麗黛佳)」が開発した口紅製造機が設置されており、ロボットアームがわずか6分でカスタマイズした口紅を製作する。

また、同店では香水は専用マシンを通じてお試しができる。タッチパネルから商品を選択し、備え付けのムエットの先端を専用マシンに差し込むと、そこに香水が塗布される仕組みだ。試供品についても、店員が渡すのではなく、自動販売機のような機械を操作しセルフで受け取る仕組みだ。

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自分好みの口紅が作れる製造ロボット
出典:大众点评公式サイト

また、同店は中国の新興ブランドから海外の有名ブランドまでさまざまなブランドを取り扱っているが、すべての製品のトレーサビリティ(生産管理過程、ロット番号、輸送経路など)を確保しているとうたう。東方美谷企業集団傘下の上海博複信息科技が開発したプラットフォームにIoTやモバイルテクノロジーを組み合わせ、QRコードや無線自動識別(RFID)タグによって生産から物流までを管理しトラッキングを可能にしているのだ。

オンラインでの販売も行っており、自社オリジナルのECアプリのほか、WeChatのミニプログラムでは通常のECに加え、越境ECも運営している。日本ブランドでは資生堂や傘下のクレ・ド・ポー ボーテ、ドクターシーラボ、HABA(ハーバー)などを扱っている。

美谷美購の公式サイトによれば、ニューリテールショップは上海市内の南京東路と虹橋空港にも店舗がある。中国メディアによると、東方美谷企業集団は上海市にほど近い江蘇省の常熟市鑫洲房地産開発と2021年4月に戦略的提携を締結。12月までには同市内に出店し、また今後、同市に開発が予定されるスマートシティに東方美容の研究拠点をおくことも検討しているという。

コストコモデルを取り入れた倉庫型店舗「嘻選」

以前の記事でも、美容部員を置かないことを特徴とした化粧品店として「ONLY WRITE(独写)」を紹介したが、2020年後半から1年ほどの間に美容部員がいない店舗が増えている。合肥泉佰電子商務が2020年12月に安徽省合肥市に開業した「嘻選(シーシュアン)」もそうした店舗だ。

同店はスキンケアに特化したチェーン店で、コストコのようなインダストリアルな倉庫を思わせる店舗内には、頑丈な棚に商品が大量に積まれている。格安販売を売りとしており、売り場を倉庫と兼ねることで物流コストを削減。また、商品をブランドから直接仕入れて中間コストを省き、手頃な価格を実現している。

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まるで倉庫のような「嘻選」の店舗
出典:嘻選のWeChat公式アカウント

完全会員制で、入り口のゲートに会員カードをタッチしないと店内には入れない。年会費は199元(約3,380円)で、本人以外に2人まで一緒に入店することができる。また、1回のみ入店可能な9.9元(約170円)の体験カードも用意されている。

同店では国内外のブランドを扱っているが、商品選択の基準は「5年以上コンスタントに売れ続けている、あるいは、50万個以上の販売実績がある」ことと定めており、日本ブランドでは資生堂やfreeplus(フリープラス)、メンソレータム、ナチュリエなどを扱っている。

中国の消費者は、低価格の商品においては偽造品の混入を懸念する傾向が強いが、同店では購入後99日以内は理由なしでの返品が可能だ。もし偽造品だと判明した場合は、購入金額の5倍を補償するとしている。

WeChat公式アカウントによると、同店は江蘇省に隣接する安徽省を中心に現在7店舗を展開。報道によると、2021年末までに50店舗の出店を目指しているという。また、会員限定でミニプログラムでも販売も行っている。

地域密着型・緻密なデータ分析による店舗運営の「BEAUTY CHOICE」

ニューリテールを標榜する店舗はほかにもある。上海綿霖網絡科技が運営する「BEAUTY CHOICE」だ。前身となる「EAST WEST BEAUTY(東点西点)」を2018年にローンチさせ、2021年夏に屋号を変更した。現地メディアは、同社の張昊CEOはP&GのマーケティングディレクターやJALA(伽藍集団)の副総裁を務めていたと報じている。

同店は店舗から半径2〜3kmに住む消費者をターゲットとし、店舗をユーザーが集まる「コミュニティ」と捉えている。実際、SNSのグループチャットに参加しているユーザーによる購入が売上の35%以上を占めるという。

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「BEAUTY CHOICE」の店内の様子
出典:BEAUTY CHOICEの
WeChat公式アカウント

同店では、購入された商品データを緻密に分析し、運営に生かしている。中高価格帯を中心に4,000SKU以上の商品を扱っているが、そのうちの800〜1,000SKUは、地域のユーザーニーズに合わせて店舗ごとにラインナップを変えているという。2021年8月にはシリーズA+ラウンドで5,000万元(約8億5,000万円)を調達。その資金によって、SNSやライブ配信などを通じたユーザーとのインタラクティビティを強化する予定だ。

同店もWeChatのミニプログラムで販売をしている。日本ブランドでは資生堂やクレ・ド・ポー ボーテ、雪肌精、ナリス、キスミーなどを扱っている。

都市部の店舗では美容部員が減る傾向

中国商務部は2021年8月24日、歩行者モール(いわゆるショッピングストリート)の発展に関するガイドラインを発表し、パブリックコメントを募集したが、そのなかでスマート店舗や無人店舗を奨励する意向を示している。政府の大号令のもと、店舗の無人化は各業界でますます広がっていくことが予想される。

一方、無人店舗という意味では化粧品の自動販売機もある。日本では2021年、コロナ対策の観点もあり、資生堂のアネッサやメンズスキンケアブランドのバルクオムなど、大手が自動販売機を設置して話題になっているが、中国では2016年頃にはすでに化粧品の自販機が登場していた。

その後、商業施設や地下鉄駅構内などでの設置が広まったが、現在では中国の美容分野では自販機は下火になっている。現地の報道では、馬応龍薬業傘下のアイケアブランド「瞳活」は2019年に自販機での販売を開始し、武漢地下鉄4号線の18駅に設置しているが、今は事業の譲渡先を探しているという。美容商品の自販機が普及しなかった要因としては、ユーザーが購入前に商品の「体験ができない」点にあるとの分析がされており、試す必要のない既知の商品であれば、どこにいてもアクセスできるECで買うことを消費者は選んでいるとの見方がある。

自販機の利点は、目に留まった商品をその場で簡単に買えるところだが、化粧品は購入を決めるまでの思考時間が長く、あれこれ試して迷うところにも商品選びの楽しみがある。そのため自販機での購入には適さないと中国の消費者には判断されたといえよう。また飲料などに比較すると頻繁な購入にはいたらないという側面もあった。

中国での化粧品自販機の不振を考えると、非接触リテールとして、並べられた実物の商品を自分のペースで見て回り、試し、必要な情報はスタッフを介さずともデジタルで入手でき、そのまま購入や配送手続きに進める無人化店舗が、さらに増加していくことは想像に難くない。

中国の美容専門メディア「品観」によると、都市の規模が小さい三線・四線都市は美容部員の存在を重視しているが、大都市の一線・二線都市では、美容部員によるサービスを軽くする傾向にあるという。同メディアでは、都市部に住むユーザーの方が化粧品に対するリテラシーが高く、これに対して、社会慣習として今なお化粧品を使う頻度が少ない地方に住むユーザーは化粧品知識がそれほど豊富ではないため、美容部員による説明やアドバイスが欠かせないことが背景にあるとみている。

SNSを駆使する若い世代では、一般人でありながら美容部員以上の化粧品エキスパートが現れており、マイクロインフルエンサー、あるいはKOCとして商品の売上に大きな影響を与えている。彼らの思考やライフスタイルに沿ったサービスを提供するニューリテール店舗が都市部で主流となり、やがて地方へも拡大していきそうだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: ClassicVector via Shutterstock

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