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中国NEW PAGE、チャン・ツィイーらが立ち上げたベビー向けプレミアムスキンケアブランドが急成長

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中国の化粧品市場が低迷するなか、乳幼児向けスキンケア市場が堅調だ。同カテゴリーで伸びている中国ブランドを紹介するほか、急成長しているブランドのひとつで、ハリウッドでも活躍する中国人俳優チャン・ツィイー(章子怡)氏らが立ち上げた「NEW PAGE」を取り上げ、同ブランドの特徴や戦略を解説する。


内資、外資の競合も多く、成長中のベビースキンケア市場

中国の長引く景気低迷で化粧品市場が振るわないなか、乳幼児向けのベビースキンケア市場が盛り上がりをみせている。中国の調査会社「Moojing Market Intelligence(魔境洞察)」のレポートによると、ベビーローションなどを含む乳幼児用パーソナルケア用品の2023年のオンライン市場は、前年比3.7%増の131億9,000万元(約2,673億円)と堅調だった。

中国においてベビーケアカテゴリーのスキンケア分野は競合も多い。市場シェアをみると、ベビー用品全般を扱う日本メーカーの「ピジョン」が5.3%で4位、ジョンソン・エンド・ジョンソンから分離・独立したKenvueの「アビーノ(Aveeno)」が4.3%の5位と海外ブランドもランクインしているが、上位3ブランドはすべて中国ブランドだ。「Dexter(戴可思)」が7.4%で1位、LVMH系投資会社Lキャタルトン(L Catterton)が出資している「Hi!papa(海亀爸爸)」が7.2%の2位、「松達」が5.3%で3位である。

トップを走るDexterは、2017年創業の無錫戴可思が製造販売している。現地の報道によると、同ブランドは2014年からベビーケア製品の研究開発を開始。創業者の張暁軍CEOは、新生児に湿疹ができて悩んでいる母親が多いことに気がつき、こうした悩みの解決をめざしてブランドを立ち上げたという。

成分研究の結果、キク科の植物キンセンカが敏感肌に効果があり、湿疹にも有効であることを発見し、キンセンカを配合したフェイスクリームを2017年に発売した。この製品がヒットし、2021年には年間のGMV(流通取引総額)が7億元(約141億円)を突破。2022年には10億元(約202億円)に到達した。

一方、Hi!papaは、広州好肌肤科技が2019年にローンチ。同ブランドは、他社があまり参入していなかった幼児向け日焼け止めでポジションを確立した。報道によると、2021年にアリババグループ(阿里巴巴集団)のECプラットフォーム「Tmall(天猫)」で販売を開始し、2023年には売上が10億元(約202億円)を突破。また、同年12月にLキャタルトンがシリーズA+に単独出資している。

幼児用日焼け止めクリームで存在感を示すHi!papa
出典:Hi!papa公式サイト

医師と化粧品開発のプロが開発した乳幼児向けブランドNEW PAGE

こうした新興ブランドに加え、JALA(伽藍)傘下のスキンケアブランド「CHANDO(自然堂)」が2017年に「imine(己出)」を、Bloomage Biotechnology(華熙生物)が2019年に「BLOOMCARE(潤熙禾)」をローンチするなど、乳幼児用スキンケア市場には、すでに大手の参入も進んでおり、競争は激しい。そうしたなかで急成長しているのが中国のトップ俳優チャン・ツィイー氏らが立ち上げたベビースキンケアブランド「NEW PAGE(一頁)」だ。

2022年5月にTmallで販売を開始すると、4カ月後には1カ月の売上が10万元(約202万円)を超え、中国メディアによると、ローンチから7カ月で累計売上は2,500万元(約5億500万円)超に達したという。

同ブランドはスキンケアブランド「KANS(韓束)」などを展開する大手化粧品メーカー「CHICMAX(上美股份)」の傘下として展開しているが、マーケティングにおいてはそのことにはあまり触れられていない。NEW PAGEはチャン氏と育児の専門家の崔玉涛氏、科学者の黄虎博士によって立ち上げられたブランドであることが強調され、チャン氏をを前面に押し出すブランディングだ。

出典:NEW PAGE weibo公式アカウント

チャン氏は、PR動画にも積極的に出演している。NEW PAGEの設立に関わったのは、自身も母であり、乳児の敏感肌トラブルに関心をもっていたからだと明かし、中国全土の乳幼児を持つ母親に対し強い影響力のあるKOL(キー・オピニオン・リーダー)のひとりとなった。

ほかの2人もNEW PAGEにおいて重要な役割を担っている。CHICMAXのWebサイトよると、崔氏は小児科医として37年の臨床経験を有し、幼児の肌トラブルや治療・ケアについての専門家だ。一方、黄氏の前職はP&G本体のチーフ・サイエンティストで、28年間にわたり、スキンケア製品の原料のイノベーションや開発に携わったという。

チャン・ツィイー氏が自ら広告塔となって立ち上げた「NEW PAGE」
出典:CHICMAX公式サイト

医学の知見をもつ崔氏と科学の知見をもつ黄氏とが共同で研究開発して立ち上げられた同ブランドは、その処方も彼らの見地に基づき、製品に配合されている皮膚バリアを強くする働きのある成分「Omega-Pro」は特許を取得している。現地メディアによると、Omega-Proは卵黄油、日本産の水解卵殻膜、米国産のチアシードから抽出され、四層の皮膚バリアに作用するという。

またこのブランドでは、同社の基準で健康上のリスクが疑われる4,000以上の成分を一切使用していないとうたう。製品ラインナップはフェイスクリーム、エッセンスローション、保湿乳液、ボディウォッシュ、シャンプーなどを揃えている。

NEW PAGEは中国における高価格帯ブランドに位置づけられ、たとえば「Baby Moisturizing Body Lotion(一頁嬰童高保湿乳身体乳)」は79元(約1,600円)、「Baby Balancing Cream(一頁蛋黄油面霜)」89元(約1,800円)という価格設定になっている。対象となるユーザーは0〜12歳で、その親である「90后(1990年以降生まれ)」や「95后」をターゲットとしている。

ワトソンズやベビー用品専門店などオフラインチャネルも重視

「ダブルイレブン(双11)」に次ぐインターネット上でのセールイベントである2024年の「618」でもNEW PAGEは好調だった。売上は前年同期比420%増で、なかでも、売れ筋商品のフェイスクリーム Baby Balancing Creamは18万個以上が売れたという。

出典:NEW PAGE weibo公式アカウント

とくに本家中国版TikTok「Douyin(抖音)」での伸びが顕著で前年同期比408%増。乳幼児用品カテゴリーで2位だった。また、210万家庭が同ブランドの製品を使用しているという。

Baby Balancing Creamは累計80万個以上が売れている(2024年8月6日現在)。価格は一般的な中国ブランドの同様の製品の約2倍だが、ユーザーからは「赤ちゃんに湿疹や小さなブツブツができて、ほかのブランドの製品を使ってもよくならなかったのに、このクリームを数回使っただけで治った」「2回目の購入。赤ちゃんの頬の赤みがようやく治った」など、効果が実感できると評価する声が多い。

618で18万個以上売れたBaby Balancing Cream
出典:NEW PAGE Weibo公式アカウント

このようなNEW PAGEの好調ぶりは、チャン氏が参画している影響もさることながら、効能を消費者である親たちが実際に感じ、そのクチコミが拡散していることも大きな要因とみられる。

あわせてNEW PAGEは、オフラインも重視している。中国のリサーチ会社iResearch(艾瑞諮詢)によると、乳幼児用品の販売チャネルは年々オンラインの比率が高まっているが、それでも2022年時点で65.4%がオフラインだった。同ブランドは、中国で4,000店舗以上を展開するドラッグストア「ワトソンズ(屈臣氏)」のほか、500超の直営店舗を展開する乳幼児用品専門店チェーン「babemax(愛嬰室)」の約100店舗で販売されている。報道によると、将来的にはbabemaxの直営店全店舗で扱うという。

病院やクリニックでも販売しており、2023年11月には北京崔玉涛診療所内に「体験館」を開設した。また最近では、1,200店舗を展開する乳幼児用品専門店チェーンの中国最大手「kidswant(孩子王)」との戦略提携を締結した。

両者は提携により、カテゴリーとターゲット層を広げていく計画だ。NEW PAGEは今後、6〜12歳と12〜18歳をターゲットとした製品ラインナップも揃えたいとしている。

中国大手乳幼児用品チェーンとの提携を2024年7月に発表
出典:NEW PAGE weibo公式アカウント

中国で増える乳幼児の敏感肌、スキンケアのさらなる需要も

中国におけるベビースキンケア市場の活況は、中国で乳幼児の敏感肌の率が上昇傾向にあることも背景にある。中国婦幼保健協会のレポートによると、敏感性皮膚炎に関する大規模調査で算出された罹患率は、1998年に0.7%だったのが、2002年には3.1%、2014年には12.9%と、大きく上昇している。

全国に関しての最近のデータは公表されていないが、地域別では2021年のデータがある。とりわけ上昇率が高かったのは内陸部を指す中部で、2002年に2.8%だったのが、2014年には15.3%、2021年には39%にまで上っている。

子どもの敏感肌に悩む親が増えていることに加え、中国でも少子化が進み、子どもに対する消費額が増えている。今後、乳幼児用スキンケア用品の需要がさらに拡大するとともに、より安全性や機能性を追求した高価格帯ブランドが増えそうだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: NEW PAGE weibo公式アカウント