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仏Mirakl、誰もが「マーケットプレイス」をつくれるSaaSとして日本でもビジネス展開へ

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2022年5月、マーケットプレイスのバックエンド技術を提供するフランスのスタートアップ「Mirakl(ミラクル)」が日本法人を設立した。メーカーやブランドが自社ECサイトにおいてマーケットプレイス、つまり他社も含めた複数ブランドを扱うオンラインセレクトショップを簡単に構築できるMiraklの技術は、美容分野でもロレアルやDouglas(ダグラス)が利用している。日本法人Mirakl株式会社 代表取締役社長の佐藤恭平氏に話を聞いた。

世界で400のオンラインマーケットプレイスがMiraklを利用

2022年5月、マーケットプレイス構築の技術を擁するフランス発のテックカンパニー Mirakl(ミラクル)は、ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社と提携し、日本法人Mirakl株式会社を立ち上げた。

Miraklは、EC運営企業に対し、サードパーティの出店企業・ブランド(サプライヤー)が登録するMiraklのマーケットプレイスプラットフォームとその運用・管理を担うSaaS(サービスとしてのソフトウェア)を提供する。簡単にいえば、どんな企業でも複数ブランドの商品を扱うマーケットプレイスを、大がかりな構築を伴わずにオープンできるプラットフォームだ。

Miraklを採用することで、運営企業は自社商品のほかにサードパーティが提供する自社の世界観や顧客にあった商品をオンラインショップに揃えられ、それらを含む在庫管理や商品発送が一元管理でき、ShopifyやSalesforceなど既存のECアプリとのAPI連携も可能だ。いうなれば、アマゾンや国内でいえば楽天市場に代表される、多数の出店企業を一カ所に集合させたマーケットプレイスというビジネスモデルを「誰でも立ち上げることができる」ツールだ。

Mirakl株式会社 代表取締役社長 佐藤恭平氏は「大手から中小まで企業規模にかかわらず、自社に適したサイズと内容のマーケットプレイスを簡単かつスピーディに構築し、手間をかけずに運用できる。Miraklはマーケットプレイスを民主化するサービスだと考えている」とする。

運営企業にとっては、大量の在庫を持たずとも自社が意図する豊富な品揃えが実現できる。一方で、サプライヤーも、集客力のあるマーケットプレイスに商品を卸すメリットがあり、またユーザーは、単独ブランドだけでなく、リアル店舗でいえばセレクトショップの感覚でショッピングができる。その意味で佐藤氏はMiraklを、「3者にメリットがある“三方良し”の仕組み」であると話し、「Miraklの共同創業者兼共同CEOであるエイドリアン・ヌッセンバウム(Adrien Nussenbaum)によると、緩やかな三角形の弊社のロゴにもその意味が込められている」と明かす。

Mirakl株式会社 代表取締役社長 佐藤恭平氏
プロフィール/1998年SAPジャパン入社後、eコマース事業の立ち上げに従事。ボストン・コンサルティング・グループ戦略コンサルタント、日本マイクロソフト業務執行役員を歴任後、SAP再入社、VP・インテリジェントスぺンド・ビジネスネットワーク事業本部長に就任。2022年Mirakl株式会社に入社、代表取締役社長に就任

Miraklはすでに、グローバルで400弱のマーケットプレイスに導入されており、Miraklを利用したマーケットプレイスの流通総額(GMV)は43億ドル(約5,200億円)に上る。導入企業は他業種にわたるが、小売ではスーパーマーケットの仏カルフールや、米百貨店メイシーズなどがある。

統一された世界観で15万SKUのビューティ商材をEC展開するDouglas

では実際に、マーケットプレイスの裏側でMiraklがどのような役割を果たしているのか、佐藤氏は導入企業のDouglas(ダグラス)を例に説明する。

化粧品専門小売大手のDouglasは独デュッセルドルフを本拠地に、ヨーロッパに2,000を超える化粧品専門店を展開する。あわせて同社はビューティオンラインショップを開設しており、化粧品を中心に約15万SKUの商品を販売している。DouglasではこのECサイトにおいて、化粧品などコアの商材は自社で在庫を持って販売する一方で、サイトのカタログにMiraklのプラットフォームを介してサプライヤーの商品をあわせて掲載し、さまざまなカテゴリーをカバーする商品構成の拡張を図っている。

Douglasオンラインショップ

たとえば、DouglasのECサイトのヘルスケアページを開き、並んだ商品の1つをクリックし詳細ページに遷移すると、「DOUGLAS PARTNER(ダグラスパートナー)」というアイコンが付く製品がある(下図)。これが、Miraklプラットフォームを経由したサードパーティの商品である印だ。

「DOUGLAS PARTNER」というアイコンが付く製品がある

だが、ページ画面上においては、このアイコン以外は、商品画像の大きさや画質、情報の表示法や書体などがすべて統一されており、ショッピングをするユーザーはとくに違和感なくブラウジングや検索ができ、主力の化粧品とあわせて、一般用(OTC)医薬品や日用品などの“ついで買い”を誘発するデザインとしている。

佐藤氏は「写真の画素数や説明文のルールだけでなく、たとえばサイズをLと書くか、Largeと書くかなど細かい表記の仕方まで、Douglasの規定にのっとったAIによるオートマッピングが行える。これにより、ブランドの世界観を崩すことなく、より幅広い選択肢からユーザーにショッピングを楽しんでもらえるサイトがつくれる」と話す。

Douglasでは「ダグラスパートナー」の商品が売れた(受注した)瞬間に該当商品を在庫するドロップシップ方式をとっているが、Miraklでは、ユーザーからの注文後にサードパーティが発送を行う完全マーケットプレイス方式にも対応し、同時に運営企業のレギュレーションや品質基準に合わないサードパーティを取り除く仕組みも設けている。

「受注してから何日以内に発送するなど、契約時に交わした取り決めをサプライヤーが実行しているかは、基本的にシステムで追いかけている。運営企業がこうした販売業者の状況や売上実績などパフォーマンスをバックオフィスツールで監視することもできる。また、デリバリーが5回連続で遅れるなど、何か問題がある場合はアラート(警告)メールを発したのち、該当業社のビジネスを停止するといった一連の処置が自動化されている」(佐藤氏)

現在、Douglasは200のパートナー企業と連携してマーケットプレイスを運営。そのGMVは、過去2年間で倍増し12億ユーロ(約1,650億円)となり、新規顧客数も12%増加した。Douglasのマーケットプレイスはドイツ、ポーランド、オーストリア、オランダ、フランスの5カ国で展開されている

「どの販売業者のどの商品を選ぶか、どのようなマーケットプレイスを構築するのかは、あくまで運営企業が自社の戦略として決められる。我々はそのスムーズな運営を裏側でサポートするのが役割だ。その意味で、第三者の商品を入れても、自社のクオリティやブランドの世界観を維持しながらカタログを連携でき、運営企業自身がサイト全体の動きをモニターしながらビジネスを主導できる点をとくに評価いただいている」と佐藤氏は話す。

「当たり前のことだが、マーケットプレイスでは何が検索されて、何が実際に売れたのかが全部残るので、運営企業はこれに基づき売れ筋を理解し、自社で在庫しておくべき商品を見極めるなどの事業計画が立てられる。ビジネスのニーズに合わせて細かく手数料体系を設定できるほか、我々のプラットフォームでは商材によってコミッションレート(販売手数料の料率)を変動させることもできる。セールにあわせてコミッションを低く設定するなど、コミッションに連動するエンジンというところでも使いやすいと好評だ」(佐藤氏)

ロレアルのBtoBサイトやH&Mの二次流通サイトでも採用

ロレアルが北米で展開する美容室・ヘアスタイリスト向けのBtoBのECサイト「SalonCentric」もMiraklを採用している1社だ。ロレアルのシャンプーやコンディショナーなどのヘアケア製品に加え、美容室で必要とされるもの、たとえば、ハサミやブラシ、ヘアドライヤーからシャンプー台などの大きな機材まで、サードパーティの販売業者をパートナーにすることで、サロンで必要となるすべてのものをワンストップで購入ができるマーケットプレイスとしている。

SalonCentricが立ち上げられた目的は、自社製品のみにこだわらず、ヘアサロンの利便性を考えてサードパーティの製品も販売することが、むしろ自社ブランドを高めていくという判断だ。商品の販売だけではなく、ヘアケアやスタイリングのトレンド情報の紹介や、スタイリストの技術向上のための動画や有料セミナーの開催といったコンテンツにも力を入れており、単なるショッピングサイトにとどまらず、コミュニティスペースとしての機能を充実させている。

ファッションブランド「H&M」などを展開するH&M へネス・アンド・マウリッツによるマーケットプレイス「AFOUND」もMiraklを導入している。これは、サーキュラーエコノミーをコンセプトに掲げるECサイトで、ファッション・ライフスタイルアイテムを中心に、返品された商品や店頭の不動在庫などを二次流通させる目的で立ち上げられた。

H&MやCOSなど自社ブランドだけではなく、アディダスやディーゼルの商品、グッチやプラダの香水なども販売されている。地球環境に配慮するサーキュラーエコノミーという共通した旗印のもと、ユーザーに喜ばれる商品を再編集するために、個々のブランドカラーは排し、1つのプラットフォーム上にフラットに商品を並べているところに、運営企業の世界観の反映が明らかだ。

AFOUND

また、佐藤氏によると、カナダの家電量販大手が、マッサージ機能付きチェアと並べて「座る」という用途で共通する一般的なチェアを販売業者からの提供を受けカタログに載せることで売上を伸ばした事例や、BtoBのケースとして、フォークリフトを取り扱うトヨタ マテリアルハンドリングが、北米の各州で販売や保守を担うディーラーをサードパーティの販売業者として一律にカタログに掲載し、顧客が必要に応じて近隣のディーラーに24時間コンタクトできるようにするとともに、ディーラーにはマージンが入り中抜きを防ぐシステムを構築した事例もある。

社員の1/5がカスタマーサクセススタッフ、顧客とともに成長を目指す

SaaSモデルのMiraklは、初期費用+月額サブスクリプション+成功報酬という料金体系をとる。成功報酬は、GMVが、たとえば何億円以上など一定額を超えると既定の料率で加算される。SaaSとして販売して終わりではなく、顧客である運営企業と同じ方向を向いて一緒にGMVを伸ばしていくことにつながり、約700名のMiraklスタッフの5分の1近くは「カスタマーサクセス」をサポートする部門の要員が占めているという。

「Miraklを導入している企業が、たとえばカテゴリーを拡大したいと考えた際に、弊社が持つデータを示し、それを参考に意思決定をしていただくこともできる」(佐藤氏)

その「データ」とは、蓄積されているマーケットプレイス上の取引データや、Miraklが提供する5万社以上のサプライヤーのネットワーク「Mirakl Connect」だ。運営企業がより良い販売業社を見つけるため、優秀なサプライヤーがリスティングされており、あるマーケットプレイスで評価が高い業者を他社の運営企業がリクルーティングした時は、そのサイト上にスムーズにカタログデータなどを導入するための仕組みも用意されているという。

ロレアルの事例にあるように、マーケットプレイスを通してぶれない世界観を提示することで、ユーザーからより深い共感を得られる。そのためには、自社の軸はどこか、事業を進めるにあたっての哲学は何かを、運営企業は今一度考えることが重要になる。そのうえで、どのようなサードパーティと組むべきかがみえてくる。こうした本質的なマーチャンダイジング活動を支える技術的なサポートを提供するのがMiraklといえるだろう。

「運営企業にも、出店する販売業社にも、利用者である一般消費者にもメリットがあるマーケットプレイス方式は、日本の社会に親和性があるビジネス形態だと思う。日本でもこのエコシステムを広げていくことに注力したい」(佐藤氏)

Text: 鹿野恵子(Kano Keiko), BeautyTech.jp編集部
Top image and photo: Mirakl株式会社

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