「フレグランス市場のM&A」「セフォラスクワッド」がキーワード【海外トレンド 2023年6月-7月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、高級フレグランス市場における買収や投資の活況に加え、ますます注目のセフォラによるコンテンツクリエイターを対象にしたインキュベーションプログラム「セフォラスクワッド」についてレポートする。
ケリングやアドベント、高級フレグランス市場に積極投資
★注目ポイント
フレグランス市場の好調な伸びを受け、なかでもハイエンドの高級フレグランスセグメントを抱える企業グループが、有望ブランドのM&Aや投資により、ポートフォリオの拡大を図る動きが目立ってきている。その背景には、“心地良さ”に価値基準を置く消費者意識の変化や、復調が期待される中国市場やトラベルリテールに打って出たいという企業の思惑がある。
世界の香水市場規模は、2022年に458億5,000万ドル(約6兆4,011億円)と評価され、2023年の480億5,000万ドル(約6兆7,082億円)から、2030年までに692億5,000万ドル(約9兆6,679億円)に成長し、5.36%のCAGR(年平均成長率)を示すと予測されている。また、高級香水市場に絞った別の市場調査レポートでは、世界の高級香水市場は、2021年に111億2,000万ドル(約1兆5,524億円)規模に達し、2022年から2027年にかけて、市場は6.3%のCAGRで成長し、2027年には161億8,000万ドル(約2兆2,588億円)規模に達するとの予想もある。
パンデミック中の店舗やサロンの閉鎖は、世界中のビューティ関連製品の販売に影響を与えた。企業は原材料や労働力不足のために生産、販売、研究開発業務に支障をきたし、ビジネスに大きな影響が出た。しかし同時に、パンデミックは自宅で使用できる衛生的で安全なパーソナルケア製品を好む消費者意識を加速させるとともに、感情的な幸福のために、心地よい香りや美しいパッケージデザイン、そして、ポジティブなメッセージをもたらす製品を求める傾向が強まった。これが、パンデミック期においてもフレグランス市場が堅調で、今なお好調である理由のひとつとみられている。
成長するフレグランス市場を受け、積極的なM&Aでポートフォリオを拡大しようという動きが活発になっている。
●ケリングはクリードを買収
ボッテガ・ヴェネタやバレンシアガをはじめとする、ハイファッションブランドのオーナーであるケリングは、元エスティ ローダーのインターナショナル・シニアバイスプレジデントをCEOに招聘して2023年2月に新らたに創設した美容部門Kering Beauté(ケリング ボーテ)が、高級フレグランスメゾンの「クリード」を買収すると発表した。これは、ケリング ボーテにとって最初の買収となる。英経済紙フィナンシャル・タイムズによれば、買収額は38億ドル(約5,305億円)以上と推定されている。
クリードは1760年英国で創業し、ビクトリア女王から英国王室御用達に任命されるなど、世界各国の王室やセレブに愛されてきた。メンズ香水「アバントゥス」で知られ、近年ではハイエンドフレグランス市場で最大の独立系グローバルプレーヤーのひとつとされ、世界各国に36のブランドストアを持ち、1,400店舗のネットワークで取り扱われている。
ケリングはクリードの世界的な販売網を活用し、フレグランスカテゴリーにおけるフランチャイズの発展の基盤を構築する考えで、クリードのブランドイメージはそのままに、とくに中国とトラベルリテールでの展開を加速するとしている。
2023年6月には、クリードは中国人ヒップホップアーティストの李大奔(BENZO)氏とコラボし、クリードの象徴的なフレグランス「ミレジム アンペリアル」に敬意を表した「クリード」というタイトルの新曲が制作された。クリードは、この曲のカバーアートをデザインするために有名なデジタルアーティストのFrankNitty3000を起用。同曲は、中国の複数のミュージックプラットフォームでリリースされ、同年7月には、AppleやSpotifyなどの音楽アプリでもリリースされた。
また、同じくケリングが所有するアレキサンダー・マックイーンは、同ブランド初のホームフレグランス分野の製品として、アロマキャンドルのコレクションを立ち上げた。
このコレクションは、それぞれ異なる調香師が手がけた、ゴーストフラワー、ベイガンローズ、サベージブルームの3つの香りで構成され、同ファッションレーベルのランウェイでのテーマを反映する製品としている。キャンドルはミネラルと油を絞ったあとの菜種の残滓から作られ、金属製の蓋が付いた漆塗りの黒いガラス容器に詰めて成形されており、外箱はリサイクル可能な木箱としている。
●米投資会社アドベントはニッチな高級フレグランスブランドの株式取得
米国発のグローバルプライベートエクイティのアドベント・インターナショナルは、UAEのドバイに本社を置く、中近東エリアでの香水ブランドのコンサルティングエージェンシーでディストリビューターのSBGCと、SBGC傘下のフランスのニッチフレグランスブランド「Parfums de Marly(パルファン・ドゥ・マルリー)」と「「INITIO Parfums Privés(イニシオ・パルファン・プリベ)」の過半数の株式を取得した。
アドベントは声明のなかで、「魅力的でニッチな高級フレグランスセグメントは、グローバルフレグランス市場のなかで最も急速に成長している分野である」として、パルファン・ドゥ・マルリーとイニシオ・パルファン・プリベの世界的な拡大を加速させるとしている。
金融サービス分野のほかに、ヘルスケアや消費財、ビューティ分野での投資の経験も豊富なアドベントは、2021年に資生堂から、ローラ メルシエ、バクサム、ベアミネラルを買収している。
●米インターパルファムはロベルト・カヴァリとライセンス契約
ランバン、フェラガモ、ジミー チュウなどのブランドと契約し香水の製造販売を行う米インターパルファムは、イタリア・フィレンツェが本拠地の高級ファッションハウスであるロベルト・カヴァリとグローバルでのフレグランスライセンス契約を交わした。
これによりロベルト・カヴァリは、インターパルファムのイタリアンブランドハブの開発を担うインターパルファム・イタリアの管理のもと、豪華さと洗練をうたう「ロベルト・カヴァリ」と、現代的で都会的な「ジャスト・カヴァリ」の2つのラインでフレグランスを発売することになる。あわせて、2024年に同ブランドを拡張、2025年には女性向けの香水をつくるとの計画も明かされた。
また、契約締結にあたり、インターパルファムの会長兼CEOは「私たちは、フレグランスのポートフォリオを近代化し、向上させ、強力なグローバルブランドプレゼンスと堅牢なオムニチャネルリーチを構築し、可視性を強化し、棚スペースを改善する」と述べている。
●英CPL Aromasはスペイン企業を合併
英国のフレグランスハウスCPL Aromasは、香水のほか、ホームケアやパーソナルケア、芳香剤向けの香りを製造するスペイン企業Global Fragrances Labs(GFL)を買収し、バルセロナにあるGFLの事業を既存のCPL Aromasのスペイン事業と合併し、1つの部門を設立する意向を明らかにした。CPL AromasのCEOは「GFLは品質と顧客サービスで高い評価を得ており、CPLの強みと相まって、スペイン国内の顧客により包括的な体験が提供できる」と語っている。
1971年創業のCPL Aromasは、ハイエンドフレグランス製品やパーソナルケア製品、フレグランス濃縮液の製造を行う企業で、世界に22カ所の拠点を持ち、100を超える国や地域との取引がある。同社は2022年、香水組成メーカーChemaromeの子会社であるChemarome Brasilを買収することでブラジル市場に参入しており、今回の合併は同社の一連のグローバル拡大戦略の一環であるとみられている。
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