見出し画像

アグラワル教授の提言。企業に求められるAI人材育成の3つのポイント

◆ English version: Prof. Ajay Agrawal: 3 steps for fostering AI talent
New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

製造、流通、マーケティング、顧客サポート。あらゆるところに人工知能(AI)が使用され、競争環境が激変している。その中にあってAIを戦略に活かし、実装していくための人材不足を危惧する声はどこへ行っても聞かれる。経済の観点からAIがもたらす未来を研究するトロント大学ロットマン経営大学院のアジェイ・アグラワル教授が、今、企業はどうAI人材を生み出していくべきなのか、3つのステップを語る。

アグラワル教授は、AIの経済学の第一人者で、ほかの著者2名と執筆した『予測マシンの世紀〜AIが駆動する新たな経済』は、経営者やマネジメント層だけでなく、新人から中間管理職まであらゆるビジネスパーソンに向けて、ビジネスにおけるAIの重要性やそのインパクトのメカニズムについて、丁寧に解説しながら、AIにまつわる様々な疑問に答えてくれる。『WIRED』創刊編集長のケヴィン・ケリー氏やGoogleチーフ・エコノミストのハル・ヴァリアン氏、元米国務長官のローレンス・サマーズ氏やロバート・ルービン氏など、世界トップクラスの頭脳がこの本を絶賛していることからも、いかに実践的で示唆に満ちているのかがうかがえる。2019年3月、アグラワル教授が来日した際にその後の話を聞くことができた。

画像1

『予測マシンの世紀 AIが駆動する
新たな経済』
早川書房刊

アグラワル教授がここまで深く企業とAIについての知見を持っているのは、彼がスタートアップを支援するAIビジネス創出プログラム「創造的破壊ラボ(Creative Destruction Lab, CDL)」創設者でもあるからだ。2012年にスタートし、2017年には3年連続で世界でもっとも多くAI関連のスタートアップ企業が参加するプログラムに発展、総額総計2,300億円の株式価値を生み出している。

そもそも、カナダ・トロントには、ディープラーニングの研究で有名なトロント大学をはじめとするアカデミア、大企業のAI研究所、AIスタートアップが数多くあり、Googleの研究員でトロント大学のジェフ・ヒルトン教授をはじめ、FacebookのAI研究所のリーダーであるヤン・ルカン氏、イーロン・マスク氏の創設したオープンAIの共同創設者のイリヤ・サツケバー氏、AppleのAI研究を統括するルスラン・サラクートディノフ氏など、AI研究のトップ人材を多数輩出している。

画像2

トロント大学ロットマン経営大学院
アジェイ・アグラワル教授
(画像:本人提供)

『予測マシンの世紀』で明かされたAIのよる5つの影響

さて、AI人材をどう育成すべきかという議論の前に、『予測マシンの世紀』でアグラワル教授らが書いている、企業や組織に対してAIが及ぼす影響について少し理解を深めておこう。この本を通しての一番大事なメッセージはタイトルにもある通り「AIは予測マシンである」ということだ。そしてその予測がもたらす「影響」にはピラミッド型の5つの段階がある。

画像3

『予測マシンの世紀』より
(画像:早川書房提供)

本書では、この5段階が丁寧に解説されている。まず、ピラミッドの一番下でベースとなる「予測」では、機械学習によって予測がどのように改善されるのか。優れた予測に必要なデータを自身が持っているかどうかを確認する方法が説明されている。

ここから先は

2,566字

このマガジンを購読すると、バックナンバー記事を制限なくご覧いただくことができます。

BeautyTech.jpは最新1カ月の記事は無料、それ以前の記事は全文閲覧が有料です。「バックナンバー読み放題プラン」をご利用ください。

このマガジンを購読すると、バックナンバー記事を制限なくご覧いただくことができます。

「バックナンバー読み放題プラン」の法人・企業様向けプランです。社内限定で転用・共有していただけます。