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テンセントがプレミアアンチエイジングとの戦略提携、美容分野にも注力の最新動向

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2021年4月、プレミアアンチエイジングと中国テンセント(騰訊控股)の戦略提携が発表された。テンセントは、WeChatを強みにプラットフォーマーとしてもアリババグループ(阿里巴巴集団)としのぎを削り、新規事業や機能強化への投資を進めている。テンセントの動向のなかでも、美容業界にも関連する動きを紹介する。

プレミアアンチエイジングと戦略提携、同社はテンセントの持つリソースをフル活用へ

DUOなどのエイジングケアブランドを展開する日本の化粧品メーカー プレミアアンチエイジング株式会社は2021年4月に、中国人消費者のビッグデータを保有するテンセントと中国市場での売上拡大に向けた越境型ソーシャルEC合同プロジェクトを実現するため、戦略提携を締結したと発表した。プレミアアンチエイジング 代表取締役社長 CEO 松浦清氏、テンセントのクラウド事業部門であるテンセントクラウド・インターナショナルのポシュー・イェン(Poshu Yeung)シニアバイスプレジデント、東北アジア地区責任者の趙剣南氏が出席し、オンラインで調印式を行った。

松浦氏はプレスリリースで、「『DUO』『CANADEL』『sitrana』『immuno』や、今後の新ブランドの中国市場での販売に一層注力していく。テンセントという心強いパートナーと組むことは、大きな一歩と捉えている」とのコメントを発表した。一方、イェン氏も「今回の締結は、プレミアアンチエイジングが持つ日本での販売実績とブランド力、中国市場にかける熱量をかんがみて、提携するに至った。これまで当社がサポートしてきた成功事例に続く事例となることはもちろん、『新たな越境ソーシャルD2Cモデル』の確立に向けて積極的な取り組みを行っていく」と述べた。

これに先駆け、プレミアアンチエイジングは、2021年2月に中国現地法人「蓓安美(上海)化粧品」を設立。同3月にはTikTokの本家中国版「抖音(Douyin)」にDUOの越境EC旗艦店を出店したが、今回のテンセントとの戦略提携を大きな基盤とし、同社が重要戦略として掲げる中国での売上拡大を加速的に進め中国市場での新たな越境型ソーシャルD2Cモデルを実現させるとしている。

テンセントとの戦略提携の活動の第一歩は、2021年4月にテンセントグループ傘下の動画配信サービス「テンセントビデオ(騰訊視頻、WeTV)」が制作・配信を手掛ける中国のアイドルオーディション番組『創造営2021』でデビューを果たした、「INTO1(イントゥーワン)」のメンバーをブランドアンバサダーに起用したことに始まる。

『創造営2021』は、“国際的ボーイズグループを中国から輩出する”というテーマでスタートした番組で、全10話の総再生回数が50億回を突破するなど中国全土で大きな話題となっている。sitranaのスター商品である「シカリペア クリーム」のアジアアンバサダーとして起用されたのが、同番組のオンライン人気投票3位でデビューを果たしたINTO1の力丸(リキマル)だ。


中国の巨大セールイベントのひとつ、618商戦では、シカリペア クリームは15分で販売予定数を完売、同ブランドの限定ギフトボックスは販売からわずか1秒で完売するという人気ぶりだった。

また、2021年5月より、テンセントクラウドの「スマートリテールソリューションズ」を活用したスマート小売戦略を推進している。具体的には、以下の項目が挙げられている。

・プロモーション、広告
・WeChat(微信)ミニプログラム
・WeChat公式アカウント開設及び運営
・コンテンツEC(動画、ライブ配信)
・中国芸能人アンバサダー起用
・そのほか、テンセントクラウドが提供する各種サービス

このうちの公式アカウントとミニプログラムに関しては、すでにDUOが開設している。

図1

DUOのミニプログラム
出典:WechatのDUO公式アカウント

プレスリリースによると、プレミアアンチエイジングが活用するテンセントのソリューションの数は日本のブランドでは最多で、そのなかには日本ブランド初使用のソリューションも含まれるという。

詳細は明らかにされていないが、テンセント側のリリースによると、ビッグデータとクラウドテクノロジーの利活用による中国本土の消費者の習慣・嗜好の把握、適切なコンテンツを消費者にレコメンドするインタラクションプラットフォームの構築を通じたマーケティング活動の効率向上を目指すとしている。

DUOについてはアリババグループの「Tmall Global(天猫国際)」や「JD.com(京東集団)」にも出店しているが、売上を伸ばすためにはMAU(月間アクティブユーザー数)が12億を超えるWeChatの価値が高いと判断。WeChatはD2Cモデルとの親和性が強いことも好材料で、テンセントとの戦略提携に踏み切ったと思われる。

WeChatでは、「パーフェクトダイアリー(完美日記)」の例にもあるように目的別に複数の公式アカウントを開設することがブランドにとって戦略の1つとなっている。それによってユーザーが個別グループのように分散し、濃いコミュニティとして熱量を持ちやすく、ブランドはユーザーとより密な関係を築くことができるのだ。

テンセントはソーシャルECの拼多多に対抗、「小鵝拼拼」アプリをローンチ

そのほかの美容分野に関わるテンセントの動きをみていこう。2020年にWeChatのミニプログラムとして立ち上げた「シャオピンピン(小鵝拼拼)」を、単独アプリとして2021年5月にローンチ。低価格商品が中心のソーシャルECプラットフォームだが、ベンチマークはNY市場にも上場するECプラットフォームのトップ企業「ピンドウドウ(拼多多)」だ。シャオピンピンはSNSの機能も備え、WeChatの友達とつながることができる。

中国の調査会社・前瞻作業研究院によると、ピンドウドウは中国のEC市場では流通取引総額(GMV)が第3位。格安であることが売りで、以前は偽造品の多さが問題になっていたが、いまでは資生堂も出店するなど、大手ブランドにとっても無視できない存在になっている。ただしシャオピンピンはローンチしたばかりというのもあり、まだグローバルブランドの出店は確認できない。

図1

テンセントが新たに立ち上げた
「シャオピンピン」アプリ
出典:シャオピンピンアプリ

注視しておきたいWeChatミニプログラムにおける4つの動向

また、ここで最近のWeChatミニプログラム関連のトピックスをまとめておきたい。より、ユーザーのショッピング体験を向上させる施策が相次いでいる。

◆RED(小紅書)にミニプログラムのバナーが表示可能に

SNS型EC「RED(小紅書)」で検索時に表示されるバナーからWeChatのミニプログラム店舗に飛べるようになった。REDでは、アカウントを開設していても、販売はしていないブランドが少なくないが、これにより、こうしたブランドの商品をミニプログラム経由で購入できるようになった。REDにとっては送客としてマネタイズにつながり、WeChatにとっても新たなマーケティングチャネルを手に入れたことになる。

まだ試験運用中のため、バナーが表示されるブランドは限られているが、REDはSNSとしての影響力が大きいだけに、今後、両者の提携がさらに深まる可能性がある。

図1

REDで資生堂を検索すると、
上部にミニプログラムへの
リンクとバナーが表示
出典:REDアプリ

◆ 個人が開設できるショッピングアカウント「購物号」を実装

2020年、動画アカウントが実装され、ユーザーがチャンネルを開設できるようになった。それに続き、今回ミニプログラム「トンシュンフイチュー(騰訊惠聚)」を通じてショッピングアカウントが実装された。

ユーザーはミニプログラム上で販売されている商品をシェアすることができ、友達はそれを通じて割引価格で購入することができる。ショッピングアカウントには、何人の友達がシェアしたかなど影響力を示す数値が表示されている。

◆ アリババ傘下のフーマが競合であるWeChatミニプログラムをリリース

アリババグループ傘下の生鮮スーパー「フーマ(盒馬鮮生)」のソーシャルコマースプラットフォーム「盒馬集市」のミニプログラムが2021年4月にリリースされた。また、同5月には同じアリババの本丸であるECプラットフォームのタオバオ(淘宝網)のミニプログラム「親友省銭購」をリリース。現在テスト運用中だ。

図1

アリババ系の「親友省銭購」が
Wechatミニプログラムに登場
出典:Wechat

アリババとテンセントは長年にわたって競合・敵対関係にあったため、これはエポックメイキングな提携として中国でも報道された。両者の関係は日本でいえば、ソフトバンクと楽天のようなもので、アリババのプラットフォームではテンセントのWeChatペイ(微信支付)は利用できず、逆にテンセントのプラットフォームではアリババのアリペイ(支付宝)が利用できないなど、これまで互いのエコシステムが交わることはなかった。フーマなどのミニプログラムの登場は、たとえるなら、楽天市場でヤフーPayPayによる決済が可能になるというイメージだ。

アリババにとっては、テンセント以外の競合であるJD.comやピンドウドウがWeChatを活用してユーザーを増やしていることもあり、アリババとしてもその恩恵にあずかりたいとの狙いがあると思われるが、両者は当局から締め付けを受けている者同士であり、連携したいとの思惑もありそうだ。また一方で、中国政府はメガITによるユーザーの囲い込みを警戒しており、ユーザーが主体的にプラットフォームを選択できるような環境を国民に提供したい意思がある。両者はそうした政府の方針に従ったとみることもできる。

さらには、アリババはグループ購入のミニプログラム「雲蛙采采」をリリースする予定との報道もある。同アカウントはすでにWeChat上に存在しているが、トップ画面が表示されず、開発途中とみられる。

◆ テンセントビデオが「Q站」を商標登録

中国版ニコニコ動画といわれる「bilibili(哔哩哔哩)」はZ世代を中心に非常に影響力の大きいプラットフォームに成長しているが、中国最大の動画プラットフォーム「テンセントビデオ」を運営するテンセントも、その実力を認めているようだ。

現地メディアによると、テンセントが「Q站」を商標登録したことがわかった。テンセントはWeChatをローンチする以前、インスタントチャット「QQ」を普及させることで成長してきた。Q站はその頭文字をとっているわけだが、bilibiliは中国で「B站」と呼ばれている。つまり、テンセントは「Q站」のネーミングでbilibiliに対抗するプラットフォームの立ち上げを検討中と憶測されている。

日本のニッチブランドにとってもテンセント活用の機会拡大へ

一連のテンセントの動きからは、ECのシェアを伸ばそうという強い思いが感じられる。テンセントはJD.comに出資しているものの、自前のWeChatではシェアを取れていないからだ。

美容関連商品はその足掛かりとなる。美容はソーシャルでのクチコミの影響力が大きく、WeChatとの親和性が極めて高いからだ。プレミアアンチエイジングとの戦略的提携は、テンセントが美容分野を注視している証左だろう。

テンセントは、ゲームやコンテンツ事業に関しては数々のプレイヤーと提携を結んでいるが、個別の美容ブランドとの提携は極めて珍しい。中国の美容ユーザーの間で根強い人気を持つ日本のニッチブランドにとっても、今後の展開の大きなヒントになりそうだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Stefano Zaccaria via Shutterstock

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