「TikTokトレンド・ハッシュタグ」「ホリデーポップアップストア」がキーワード【海外トレンド 2022年12月- 2023年1月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、2022年に欧米のTikTokのビューティカテゴリーを騒がせたトレンドワードを検証するほか、アフターパンデミック初のホリデーシーズンを彩ったポップアップイベントを紹介する。
セイレーンの眼差しからイルカ肌、ドーナツ爪まで、TikTokビューティトレンド
★注目ポイント
欧米とくに米国のビューティの世界においては、TikTokの影響力を抜きにトレンドは語れない。次々に現れては消える人気ハッシュタグだが、社会現象になるほどのバイラルもあり、ミレニアルやZ世代の消費者志向を理解するためにも、このプラットフォームで何が起きているのか、その潮流を押さえておきたい。
2022年12月に発表された米国版グーグルの、2022年に検索数が急増したトレンドキーワードリスト「Year in Search 2022」をみると、ビューティカテゴリーに関しては、TikTokの影響が多大であったことが判明した。なかでも、メイクアップやネイル分野の上位にあげられたグーグル検索ワードは、さまざまなインフルエンサーによる、バイラルしたTikTok動画ハッシュタグのオンパレードといってもいい。
2022トレンドキーワードのもとになった欧米発のTikTok投稿を振り返り、2023年の流行の萌芽を探る。
#01 Glazed Donut Nail
Glazed donut(グレイズドドーナツ)とは、シュガーシロップをかけたドーナツのことで、シロップが固まると表面にツヤのある半透明の膜ができる。ジャスティン・ビーバーの妻のヘイリー・ビーバーが2022年のメット・ガラ(メトロポリタン美術館で開催されるチャリティパーティイベント)で、このドーナツを思わせるうっすらと白濁したネイルをしているのが目撃された途端、ネイルサロンには同様のネイルを依頼する顧客が殺到したという。TikTokでも、「Glazed Donut Nail」を再現するチュートリアル動画が多数拡散した。同系統のネイルとしてChocolate Glazed Donut Nailもヒットした。
#02 Siren Eyes vs Doe Eyes
1940-50年代のハリウッド映画に登場するファムファタール(魔性の女)にインスパイアされた、シャープでセクシーな目元をつくるアイメイク「Siren Eyes(セイレーンアイズ)」が流行。セイレーンとはギリシャ神話に登場する船乗りを惑わす海の妖女のことだ。まもなく、それに対抗するように登場したのが、雌鹿を意味する英語の“Doe”を冠した「Doe Eyes(ドーアイズ)」だ。アイライナーで目尻を吊り上げるように描くSirenに対し、Doeは丸く大きな目を強調し無邪気で愛らしい小鹿の雰囲気にするのが特徴だ。興味深いのは、これらのアイメイクに挑戦するTikTokerのほとんどが、両方のメイクを試している点で、ほとんど正反対の効果を狙ったスタイルを同じ人物が装うことで、メイクアップによって実現する多様性や幅広い表現力などの可能性を浮かび上がらせた。
#03 Dolphin Skin
英国市場でプレステージ化粧品の売上向上に貢献したとされるのが、「Dolphin Skin(ドルフィンスキン)」トレンドだ。ベース、ポイントメイク、仕上げの3段階で光沢を生むメイクアイテムを重ねて肌を明るく見せ、イルカのようなしっとりツヤのあるなめらかな肌を演出するテクニックで、関連動画の再生数は280万回を超えたとされる。
#04 Skin Cycling
TikTokで1億8,000万ビューを誇る、「Skin Cycling(スキンサイクリング)」のハッシュタグ。皮膚科医で、スキンサイクリングメソッドの考案者であるホイットニー・ボーウィ(Whitney Bowe)博士によると、その目的は「夜に使用するスキンケア製品を循環させて結果を最大化し、同時に刺激は最小限に抑える」ことにあるという。1日目は角質ケアをし、2日目は炎症を抑えニキビの発生を抑制するとされるレチノイドを塗り、3日目と4日目は保湿・保水製品で肌を回復させることで、肌バリアを修復して、化粧品に配合された有効成分から最高の効果を引き出すとしている。
#05 Clean Girl Aesthetic
2022年の早い時期から主に米国のTikTokで、何千万もの「いいね!」や「ビュー」を獲得、今なお人気がすたれる気配がない話題の現象が「Clean Girl Aesthetic(クリーンガール美学)」だ。“クリーンな女子”というと、清潔感や行儀の良さといったイメージが浮かぶが、実際にはもっと複雑で、コンシーラーやハイライターやブラシを駆使して作り上げる“すっぴんに見せるミニマルなふりをしたメイク”から、バレッタできっちりまとめた髪型、白やベージュ、ナチュラルトーンで統一しデザイン家具を並べたスマートな自宅インテリアまで、さまざまな側面を網羅しているという。そのライフスタイルは「朝は早く起き、ヨガをしてから、自分で抹茶ラテを淹れ、肌はみずみずしく、つややかな髪には一筋の乱れもないような若い女性」と表現されることもある。
だが、Clean Girl Aestheticは、「そのルックやライフスタイルに到達するために、実は時間や手間やお金をかけているのを感じさせることなく、それでいて常に最高の自分をみせることを要求するもの」であり、“クリーン”という言葉が想起させる、フレッシュ、ナチュラル、エフォートレスとは正反対のものだとの指摘がある。
つまり、多くの人にとっては達成不可能なトレンドで、場合によっては害悪にすらなるとの懸念も最近では強まっている。というのも、肉体的に負担のかかる仕事をしている人や、子どもなどの世話をする人は、常時クリーンなルックを保つことは難しく、また、いわばClean Girl御用達の化粧品やファッションブランドはハイブランドで高価であり、階級主義にもつながりかねないからだ。しかも、こうした投稿の大部分に登場するのは“痩せた若い白人女性”で、オーバーサイズやカラード(有色人種)、年代が上の層はその概念にははいってこない。
Clean Girl Aestheticは、つやつやの髪と肌をした若い女性たちが、あたかもオフの日のモデルのようにふるまうだけで、一見無害にも思える。しかしそれは、スリムな白人で純真な少女のような外見を持つ人だけが評価され、そうした外見ではない人や有色人種、低賃金労働者など、一般社会を構成する大勢の人々を評価しないという、社会に根強い偏見を悪化させるとの批判も高まっている。
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