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越境ECの概念を根底からくつがえす、 「ネットインバウンド市場」を創出するジグザグ

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海外ユーザーに商品を売るという意味で、現地法人設立や、越境ECの苦労をやすやすと飛び越えてしまう、あるいは、併用することで海外向けのマーケティング戦略の明確な指標ともなるサービスがある。「ネットインバウンド」もしくは「購入代行2.0」ともいうべき斬新な考え方だ。クロスボーダー・データという新しいデータ価値とともに、世界を席巻する可能性を秘めている。

化粧品やファッション、また百貨店やドラッグストアなど、消費者向け製品を製造・販売する美容業界関係者にとって、海外販路を確保するために、現地法人設立や越境ECといかに向き合うかがビジネス上の大きな課題のひとつとなって久しい。山積する課題のなかで、まったく新しい発想でひとつの解をもたらしているのが、株式会社ジグザグだ。

既存の購入代行・輸入代行をシステム化し、日本語ECサイトのグローバル化をしかける。商品を海外ユーザーに販売したい企業側の負担は、自社のECサイトにJavaScriptのタグを1行設置するだけでいい。購入や国境を軽々とまたぐための新たなEC施策の可能性がここにはある。

日本のECサイトが逃している「ネットインバウンド市場」は約3,000億円

商品を本格的に海外展開するとなると、現地におけるマーケティング費用、パッケージの言語対応などを含むローカライズ費用、現地スタッフの人件費、在庫管理費用など、さまざまなコストやリスクが発生する。商品が売れる自信があっても、それらコストやリスクまで考慮した際に、難しい経営判断を迫られている経営者や販売担当者もきっと多いはずだ。

仲里一義CEO率いるジグザグでは、2015年より、日本語で運営されているECサイトを外国人が利用しやすいようにするソリューションを提供している。越境ECとの提携や多言語化などのコストをかけずとも、各企業がすでにもっているリソースだけで海外の売り上げ割合を高められる施策やサービスである。仲里氏は、インターネット広告代理のオプトなどIT業界で研鑽を積み、2010年には越境EC支援と海外転送サービスを展開するgroowbits代表取締役に就任。その後、2015年に独立してジグザグを立ち上げた。 

株式会社ジグザグ 代表取締役 CEO
仲里一義氏

「日本に訪れる外国人旅行客の数は右肩上がりに伸びているが、それと同じ現象が日本語のECサイト上にも起きていると、イメージすると分かりやすいだろう」と仲里氏は説明する。

純日本語のサイトでも、一定数の規模のサイトであれば海外からのアクセスは平均2~8%ほどあり、その内訳は50~80ヶ国程度という。しかし、リアル店舗と異なり、海外ユーザーがいざ日本語のECサイトで買い物しようと思うと、言語、決済、物流などの壁が立ちはだかっている。言い換えれば、ショッピングの世界には、ネットであっても厳然たる国境が存在している。海外の顧客が日本のECサイトで買いたいのに買えない、もしくは日本のショップが自社のECサイトに訪れた外国人に売りたいのに売れない、こうした機会損失の市場規模は、同社の試算によると約3,000億円にのぼるという。

Photo By ジグザグHP

ジグザグのビジネスモデルは「購入代行2.0」だ

ジグザグのサービスの中身を詳しく見ていく前に、そのビジネスモデルをまず定義しておく必要がある。ジグザグは、海外で販売ルートを確保するなど、何かしらの越境ECサービスを提供しているわけではない。サービス自体は古くからある海外ユーザー向けの「購入代行」や「輸入代行」にあたるが、特筆すべきはその機能をモジュール化し、日本企業の既存の日本語ECサイトに簡易に組み込めるようにしていることだ。

海外ユーザーとっては、従来の「購入代行」「輸入代行」のように欲しい商品リストを入力する手間も時間も不要だ。EC運営者も海外用のサイトを構築したり、海外のモールとデータ連携する必要もなく、あくまで、「既存の日本語ECサイトを海外ユーザーが直感的に使えるようにする」。そのうえで「注文受付、海外決済、国際配送、カスタマーサポートまで行う」のはジグザグ側で、ここにサービスの焦点を定めている。しかも、日本側のEC運営者はコストをほとんど負担せずにすむ。そのビジネスモデルには前例がなく、あえていうなら「購入代行2.0」という表現が一番しっくりくるかもしれない。

「弊社が提供している『WorldShopping BIZ チェックアウト』(以下、「チェックアウト」)というサービスは、EC運営者がJavaScriptタグを一行埋め込むだけで、最短で翌日から利用を開始することができ、かつ一度導入するとあとは何もしなくてよい」(仲里氏)。

「WorldShopping BIZ チェックアウト」の説明動画

ユーザー側からみた使い勝手は次のようになる。

「チェックアウト」を導入したECサイトには、海外ユーザーのアクセス元やブラウザ設定によって英語、中国語(繁体字・簡体字)のナビゲーションがポップアップする。海外ユーザーは、そのナビゲーション機能を使い、普段と同じように商品をカートに入れ、住所を記入し、クレジットカードやAlipay、銀聯、PayPalを利用して決済をすませる。その後、ジグザグがバックエンドで購入や配送(事務手続き含む)を行い、海外ユーザーの元に届けるという仕組みとなっている。

日本語サイトで海外ユーザーが買い物をする際の壁がどれだけ高いかを仲里氏はこう説明する。

「まず言語面においては、海外ユーザーは商品説明というよりも、日本語サイトの全角・カナ入力フォームや会員登録ページでつまずく。例えば、昭和と平成も区別できず、『お母さんの旧姓は?』というようなパスワードに関する質問の意味を理解して日本語で答えなければならないからだ。一方、決済のシーンでは、クレジットカード払いのほかにも、代引きやコンビニ決済など選択フォームがあり、複雑に感じてしまう。日本の決済システムは非常に優れているが、外国人にとっては難解だ」

そもそも海外の住所を入れられないケースもあり、加えて、海外発送する際には日本の商品の種類や素材を英語に翻訳して、インボイスなど通関書類を作成する必要もある。同社の「チェックアウト」はそれらを解決するためのウェブ上のインターフェースおよび実務作業をパッケージで提供している。

「購入代行」により導入企業にとってコスト負担が低い

ジグザグのサービスを「購入代行をシステム化したもの」、すなわち購入代行2.0と前述した理由はそこにある。EC運営者側には、いくら商品が売れても初期費用3万円、年間2万円以外のコストはかからない。理由は、ジグザグが購入代行の慣例通り、購入者側からサービス料という形で手数料を徴収してマネタイズするからだ。海外ユーザーの立場からすれば、わざわざ代行業者や知人に頼む手間が省ける便利なサービスといえよう。なお、ジグザグではインターフェース面でチェックアウトよりアップグレードされた「WorldShopping BIZ スタンダード」というサービスも提供している。

「正確な統計は存在しないが、報道などによれば、中国人留学生が個人輸入する商品の市場規模は約2兆円という話もある。今後もTikTokなど情報やカルチャーを配信するサービスが人気を集めていけば、海外で日本の商品の露出や認知はどんどん増えるはずだ。問題は、どうすれば買ってもらえるか。売り手が対応さえすれば、日本語ECサイトの売り上げは格段にあがっていくはずだ」(仲里氏)。

2016年7月〜2018年12月までの
ジグザグの売上推移

美容業界の変革を促すクロスボーダー・データビジネス

ジグザグのサービスはすでに200以上のECサイトが利用している。なかでも、ファッション系ECサイトの導入が目立つ。たとえば、ピーチ・ジョンでは、ランジェリーと一緒にバストやヒップ用のコスメも売れているという。美容業界では、美容機器メーカーも採用している。現地法人を設置するなど海外展開を本格的に図っている企業が、同社のシステムをあわせて導入する理由は、日本語のサイトを見にくる海外の顧客も積極的に拾いたいからだ。

それにはこんな理由もある。海外法人を立ち上げ、現地での販売を進めていくとしても、日本の旧作や新作も含めたすべての在庫を持っていくことは物理的に不可能だ。そうなると、海外では標準的な商品が売り出されるわけだが、海外の“賢い顧客”はそれでは満足できず、日本のサイトにやってきて本当に買いたい商品を探すというのだ。

「日本語のECサイトを海外顧客向けにもわかりやすくするメリットは、取りこぼした顧客を拾う以外にもある。たとえば、転売防止。転売する人たちは個人輸入で買ったものを、タオバオなど現地のECモールで販売する。雑に梱包されてブランドの毀損リスクが生じることもあれば、誰が購入したのかというマーケティングデータも取れない。現地法人の商品展開との兼ね合いの問題もあるかもしれないが、我々としては、転売が避けられない以上、ブランドやデータを守るためにも、積極的に日本語サイトを海外対応させていくことにはメリットがあると考えている」(仲里氏)。

購入代行2.0のようなサービスは、化粧品の海外展開にも資するはずと仲里氏はいう。その理由のひとつに、日本でいう薬機法のように各国ごと化粧品に対する法律がある。まとまった量の商品を海外現地展開するとなると、通関手続きや成分検査、ラベルのローカライズなどハードルが高くなる。購入代行モデルであれば、実際に使用する個人が購入するというだけでその敷居はぐっと下がる。日本語のECサイトに50~80ヶ国から顧客が訪れるとすれば、すべての国に販売拠点を設けたり、越境EC網を広げるのはよほどの大企業でないかぎり不可能だ。

「もちろん、海外のモールで直接販売するメリットもあるが、我々が手がけているサービスと併用してもらうことで、ビジネスや売上拡大のスピードが変わってくるはずだ」と仲里氏は話す。

現在、ジグザグは購入や決済、物流などを含む購入代行をリプレイス、もしくはプラットフォーム化する事業を進めているが、今後はクロスボーダー領域のデータビジネスにもサービスを拡大していきたいとする。

「もともとこのビジネスで起業したときに、グローバル、データ、ECプラットフォームなどのキーワードを念頭に置いていたが、グーグルやアマゾンにはなれないとも感じていた。しかし、この事業を展開する過程で、彼らが持っていないデータを我々が持つことができるということに気づいた。それは、国境や各ECサイトやモールの壁にさえぎられることがない、クロスボーダーなユーザーデータだ」(仲里氏)。

今後は、対応言語を増やすことで日本語ECと海外ユーザーの接点をさらに多くし、米国や欧州のECサイトを他国ユーザー向けに改善するなど現在のモデル拡大を図る一方で、クロスボーダー・データビジネスをブラッシュアップし、日本製品と海外需要のマッチング、季節や流行の違いによる国ごとの価格差・需要調整など、さまざまな可能性を追求していきたいと語る。

このデータは日本の化粧品メーカーにとっても海外市場開拓の戦略づくりに大きな助けとなるに違いない。

大手や競合の脅威にどう対応するか

ジグザグでは大手や競合がビジネスモデルを模倣する可能性についても考慮し対策を立てている。

「このサービスを海外ユーザーに快適に利用してもらうためには、ECサイトごとに適切なインターフェースを海外ユーザーの端末に自動的に表示することが必要となる。ジグザグではこのポイントに着目して特許出願中で、同じようなビジネスモデルの模倣を困難にしていると考えている。創業時からの特許出願件数は2件(うち1件は出願中、1件は特許取得済み)であるものの、事業の進捗に合わせて特許出願すべき発明はないか、定期的に検討を行う体制も築いている」(仲里氏)。

EC事業会社にとっては、安価なコストで日本語ECサイトがそのまま海外ユーザーが購入できるサイトになり、ジグザグにとっては、クロスボーダー・データが宝の山になる。警戒すべきは、このビジネスモデルの競合だけかもしれない。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: vectorfusionart via Shutterstock


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