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セフォラの新店ラ・デファンス店が提供するパーソナライズドかつ多彩な顧客体験

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セフォラが、フランス・パリ西部近郊に887平方メートルの大型ブティック、ラ・デファンス店を2019年5月にオープンした。プレスリリースによれば「新しいサービス、顧客体験など最新のイノベーションを集結させた新世代のフラッグシップ店」とある。同店にみる、セフォラが進める最先端の顧客体験をレポートする。

ラ・デファンス店は、旗艦店のシャンゼリゼ店に続きフランスで2番目の広さを誇り、160ブランドを取り揃え、100名の販売員を雇用しているという。ロケーションはパリの凱旋門からメトロで10分ほどの都市開発地域、デファンス地区の大型ショッピングモール「Les Quatre Temps」の地上階だ。この地区は凱旋門の延長線上に位置するモニュメント「新凱旋門」がそびえ立つほか、金融、保険、エネルギー企業など大手企業の高層オフィスビルが立ち並ぶエリアとして知られる。

ショッピングモールは365日営業で映画館も併設しており、平日は高所得者層のビジネスマン、週末はミレニアル世代や家族連れなど、幅広い客層を見込める都市型ストアだ。

店内音楽も選べる、顧客参加型の検索スクリーン

まず、この店舗が取り入れたのは、ブランドやサービスの検索ができる壁設置型デジタルスクリーンのBeauty Wallだ。スクリーンに店内地図が表示され、顧客が探しているブランドやサービスがどこにあるかが一目でわかる。また、画面上でセルフィーを撮ったり、ジュークボックスのように、店内で流れる音楽をリクエストして、顧客が自分が選んだ曲を聴きながら買い物ができるようにもしている。

DiorとコラボレートしたFrangrance Wall 

さらに、この店舗では、Diorとのコラボレートで、今までにない香水のマッチング体験もスタートした。こちらはFragrance Wallと名付けられ、タブレット上でいくつかの質問に答えると、壁にディスプレイされたDiorの香水のうち、好みに合うであろう香水が2つ点灯し、テーブルに置かれたテスターで、実際に香りを試すことができる。壁にかかっているため、周りの客からも見える公開型の顧客体験だ。ゲーム感覚で楽しめる仕掛けといえる。

「Google Nest Hub」を使ったチュートリアル体験

また、2019年5月のViva Technologyで発表されたスマートホームディスプレイ「Google Nest Hub」を使ったメイクアップのチュートリアルが、フランスで初めて期間限定(5月28日から3週間)で導入された。

すべて音声で指示を出すので、メイクの手を止めて画面をタッチする必要がない。「Google Nest Hub」をもっていなくても、スマートフォンで「Google アシスタント」アプリをインストールすれば、外出先でも気軽に利用できる。

ステップを簡単に説明すると、まず、「完璧なファンデーションの仕方」、「スモーキーな目元」、「簡単なメイク直し方法」など、6種類のメニューからひとつを選ぶ。すると、そのメイクアップに必要な化粧品や道具のリストが表示される。手持ちのコスメや道具を使用することもできるが、セフォラが勧める商品もディスプレイ上で参照でき、そのままネット購入ができる。

次に、メイクの手順がステップごとに説明される。小型ディスプレイに登場するセフォラのメイクアップアーティストやモデルの女性のメイクをお手本に、鏡を見ながらメイクをしていく。メイク完成後、もう一度、そのルックを実現するためのおすすめ商品を参照でき、シームレスな購入を促すものだ。

自宅でもできる気軽な体験だが、店舗でトライすれば、販売員が顧客にぴったりのアイテムを提案してくれるので、より満足度の高い仕上がりとなる。

いつでも自由に利用できるメイクアップのバーチャル体験

セフォラは2017年からiPadやスマートミラーを使ったAR体験を提案するコーナー、Beauty Hubの設置を開始している。地方都市(ナント、ヴァル・デュロップ)からスタートし、パリでは2018年1月にサン・ラザール店で初めて導入されたが、このラ・デファンス店でも、Beauty Hubが利用できる。LVMHのInnovation Awardsのファイナリストに選ばれたVoir.incのAR技術を使用したiPadが置かれており、誰でも自由にバーチャルメイクアップ体験ができる。

あわせてBeauty Hubには複数のミラーや椅子が用意され、テスターを試したり、ビューティアドバイザーの助言を得ることもできる。リアルとバーチャル両方の体験を提供するスペースだ。

自由にメイクアップを試せる
Beauty Hubコーナー

VoirのARは、独自のフェイストラッキングシステムにより、目、口、眉、肌の動きを正確に捉え、より自然なバーチャル体験を実現する。アイシャドー、ファンデーション、リップ、マスカラ、アイライナー、眉の6種を試すことができ、「ビフォア&アフター」ボタンを押せば、顔の左半分はもともとのメイク、右半分はバーチャルメイクを表示され、比較することもできる。

試しにアイシャドウの体験をしてみた。下記の動画のように、画面下に体験可能な色のリストが出る。好みの色味をタッチすると、即座に目の周りに色が乗る。同時に商品の写真、名称、基本情報が表示されるため、店舗でテスターを試したり、購入ができる。また、気に入ったルックを画面上のカメラマークを押して写真に撮れば、使用する商品の情報とともにメール送信ができ、自宅に戻ってからなど、あとからゆっくり検討することも可能だ。

このバーチャル体験は、リップなど単品で試すことも可能だが、続けてファンデーション、眉、マスカラなどを重ねていき、トータルコーディネーションもできる。さらに、「Look Book」というメニューでは、「魅力的な唇」「目元のナチュラルメイク」など、あらかじめ用意されたメイクをそのままトライもできる。

フランスのセフォラではラ・デファンス店のみのパレット作り体験

さらに、この店舗ではパリ発のブランド「by Terry」によるパウダーパレットのパーソナライゼーションの特別体験コーナーが3ヶ月限定(5月28日〜8月末)で設置されている。この体験はまず、シャンゼリゼ店で実施されたが、すでに終了。現在、フランスのセフォラではこの店舗だけの展開だ。

by Terryは、イヴ・サンローラン・ボーテにて15年間メイクアップデザイナーを務めたテリー・ドゥ・ガンズブール(Terry de Gunzburg)氏によって創立されたパリ発のコスメブランドで、パウダーはすべて自然由来の色素を使用している。

パウダーパレットのパーソナライゼーションは15分ほどで完成する。販売員のカウンセリングをもとに、46色のカラーバリエーションから、1〜3色のパウダーを選ぶ。パウダーは、アイメイク、ハイライト、ファンデーションと幅広く使えるので、用途に合わせて色を組み合わせる。既成品だと、あまり使用しない色が混ざっている場合もあるが、カスタマイズなら、本当に自分が必要な色を好きな配分で作ることができる。色が決まれば、原料の重さを測って、ケースに入れたパウダーを手動でプレス(圧縮)すれば、出来上がりだ。

次に紙製のパッケージカバーを10種類ほど用意されたなかから選ぶ。さらに、Gift Hubカウンターで、パレットのケースに好きな文字やイラストを無料で入れることもできる。


オリジナルなプレゼントを実現するGift Hubカウンター

もともとセフォラには購入した香水、パレット、口紅などに、レーザーで文字やイラストを入れる無料サービスがある。母親や友人へのプレゼントとして利用する人が多く、人気のパーソナルギフトサービスだ。by Terryもこのレーザー機械を使って、さらなるパーソナライゼーションを実現しているわけだ。

ちなみに、レーザー作業を待つベンチにはUSBの差込口が4つあり、スマートフォンの充電ができる。こういった細かな気配りも顧客視点でサービスを考えているセフォラならではだ。

ラッピングは、フランスで初めてセルフサービスを導入した。通常は販売員が丁寧に包装してくれるが、このサービスは急いでいる人向けで、複数の種類の包装紙、紙袋、リボン、シールを用意してあり、思い思いの包装が作れる。選択肢をできるだけ多く提供するという意味でのパーソナライズドな仕掛けがあるのだ。

こういったきめ細かな付加価値は、コスメブランドの自社ブティックや百貨店の化粧品カウンターではなかなか実現しにくく、セフォラの店舗に足を運び、購入につなげる施策の一環といえる。

2時間後に商品を受け取れるロッカーサービス「Click&Collect」

また、ラ・デファンス店では、商品の受け取りロッカーが入口近くに設置されており、ネット注文すると、2時間以内にロッカーの中に用意される仕組みだ。前述したように、この店舗はビジネスマンが多いオフィスエリアに位置する。フランスでは、女性はもちろん、男性も香水を多く消費するため、仕事帰りに立ち寄る顧客に向けたサービスだ。

LVMHグループブランドによる、特別コーナーが多数設置

そのほか、LVMHグループ傘下ブランドによる特別コーナーも設置されている。パリ発のMake Up For Everが、予約なしでプロのメイクアップアーティストのアドバイスを受けられるMake Up Barを置いているのをはじめ、25年の歴史を持つボストン発のコスメFreshはSkincare BarやLip Bar、Wrapping Barを、また、眉ケアのエキスパートとして約40年の歴史を持つサンフランシスコ発のベネフィット・コスメティックスは、完全予約制の眉のお手入れコーナー、Brow Barを設けている。

このBrow Barでは美容室のように担当者を指名でき、眉のカラーリング、脱毛、つけまつ毛などのメニューが15〜33ユーロで受けられる。パリ及びパリ近郊では、ベネフィットのフラッグシップ店のほか、セフォラ約50店でサービスが受けられ、人気を博しているようだ。

フランスでも存在感を高める韓国コスメ

また、店内には、ラネージュドクタージャルトなど複数のK-beautyを揃えた韓国コスメコーナーもある。セフォラは、2018年9月に韓国コスメの「ミミボックス」とコラボレーションした「Kaja Cosmetics」を発表。2019年4月には、満を持して、韓国にセフォラの初店舗をオープン予定だとリリースしたが、フランスにおいてもK-beautyの勢いを感じる。

1969年以来、商品を手にとって試す機会を積極的に提供しているセフォラは、現在はLVMHグループ傘下となり、34カ国、2,500店舗以上を展開している。早期からYouTubeのSephoraチャンネルでメイクアップのポイントを指南するハウツー動画を投稿したり、2019年2月には、ビューティインフルエンサープログラム「#SephoraSquad」を米国とカナダでスタート。また、5月にパリで開催されたViva Technology2019では、「Google Nest Hub」を使ったチュートリアル、ARメイク体験に加え、ARの仮想ブティック、シームレスな決済システムを披露するなど、新しい試みや顧客サービスを次々と発表している。

リアル店舗での丁寧な接客はセフォラの強みのひとつだ。独自のデジタル戦略により、オンラインの売り上げを高めるとともに、実店舗でしか味わえない新しい顧客体験を充実させることで、どれだけ顧客を楽しませ、満足度を高められるか。課題とチャンスはどこにあるか。この新コンセプトストアは、今後の展開を見極める試金石となるだろう。

※参考資料
今回取り上げたラ・デファンス店と、フランス最大の旗艦店であるシャンゼリゼ店、今回のラ・デファンス店に次ぐ広さのサンラザール店で可能な体験についての比較

Text&photo:谷 素子(Motoko Tani)

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