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ドイツG-Beautyが米国で脚光、クリーンかつ高機能で次のビッグトレンドになるか

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Kビューティに続く、コスメの世界的トレンドを牽引する国はどこだろうか? ナチュラル志向が強まる米国の消費者の間でにわかに熱を帯びているのが、ドイツ発のドクター系スキンケアブランドだ。すなわち、G(ジャーマン)ビューティの台頭である。

Augustinus BaderDr. Barbara SturmRoyal Fernヴェレダ(Weleda)そして Dr.ハウシュカ(Dr. Haushka)。いずれも製品開発に医師が深く関与しているドイツ発のスキンケアブランドで、この1、2年の間に、じわじわと米国での注目度を上げてきている。

たとえば、Dr. Barbara SturmはInstagramで20万人を超えるフォロワーを持ち、今年5月には米国での初店舗をニューヨークにオープン。8月にはセフォラでの販売もはじまった。

一方、2018年2月のローンチからフォロワー4万人を獲得しているAugustinus Baderは、2種類の「クリーム」のみという商品ラインナップで業績を伸ばし、初年度の売上げは600万ドル(約6.4億円)を超えた。同社は、ラグジュアリービューティプロダクツ専門の米ECサイトViolet Greyとパートナーシップを結んでおり、3つめの商品を7月に発売開始。販路を広げていく計画だ。

また、1921年創業、オーガニック化粧品のパイオニアであるスイス–ジャーマンブランドのヴェレダは、一時期低迷していたものの、ここにきてインターナショナルでの売上げを回復し、2018年には米国市場において2桁の成長率を記録した。

今、なぜ、こうしたドイツブランドが支持されてきたのか。そこには、2つのキーワードが隠されている。天然原料を用い、かつ透明性の高い「クリーン」な製品であるとともに、科学的裏付けにもとづき、アンチエイジングなど結果を出せる「ハイパフォーマンス」を発揮するところだ。

古くからのハーブ療法の伝統を受け継ぐ老舗ブランド

その信頼性を、米国のラグジュアリー系化粧品ECサイト Violet Greyの創業者のカッサンドラ・グレイ(Cassandra Grey)氏はニューヨークタイムズ紙の取材に答えて「私たちの顧客は、“メイド・イン・ジャーマニー”の表示を、トマトに貼られたオーガニック認証シールと同じにみている」と表現している。

つまり、ドイツ製であることは、北米よりも厳しいヨーロッパの化粧品の安全基準をクリアしているだけでなく、原料や製造過程を開示して有害な物質を含まないことを明確にした製品とのイメージを消費者はいだいているとする。実際、国家レベルでも、ドイツ政府は1990年代という早い段階からバイオガスなど再生可能エネルギーの割合を増やしていく政策をとり、有機農法を奨励するなど、サステナブルな環境づくりへの取り組みが手厚い

ヴェレダ ベストセラーセレクション
出典:Weleda公式サイト

ヴェレダの創業者ルドルフ・シュタイナーはアントロポゾフィー(人智学)を信奉し、地球と動植物の生きるリズムの調和を考え、天体の動きを反映したカレンダーをもとに作物を生産するバイオダイナミック農法のもととなる哲学を提唱した人物だ。同社では現在も、製品に使用する植物原料は、化学的に合成された肥料や農薬を避けるだけでなく、微生物の力だけで害虫をコントロールするなど、土づくりからはじまる自社農園で、バイオダイナミック農法により栽培している。オーガニックコスメとアントロポゾフィー医療の医薬品メーカーに成長した今も、創業以来の「人と自然の調和」というモットーは変わらない。

シュタイナーの影響を受けた薬学者・化学者であるルドルフ・ハウシュカ博士が1935年に創設した、自然原料を使用する医薬品メーカーWALA社。その化粧品部門として1967年スタートしたDr.ハウシュカも、一貫したホリスティックなコンセプトのもと原料づくりから自社で手がける。

4.5ヘクタールの農園には約150種類の植物を育てるハーブ園を持ち、メイクアップラインを含むすべての製品には自然由来原料のみを使用。ひとつひとつの成分のみならず、その組み合わせから生まれるハーモニーを重視し、生命のリズムに着目して、保存料を用いずに長期間品質を保ち続ける独自の植物エキス抽出技術「リズム製法」を打ち立てている。

こうした揺るぎない信念に従い、原料とその品質にこだわり、長年培ってきた真の意味でナチュラルな製法が、世界的なクリーンビューティ志向の流れにそって、今再び脚光を浴びているといえるかもしれない。天然成分を使用した化粧品を好む消費者が増えたことで、アポセカリーの伝統を持つヨーロッパのブランドに目が向いたというのもあるだろう。90年以上のロングセラー製品であるヴェレダの「スキンフード」はマルチに使える集中保湿クリームとして“再発見”され、ジュリア・ロバーツが愛用し、リアーナがマニキュアの前に指に塗っているとの報道もあるほどだ。

自然の力をサイエンスで引き出すコンセプト

こういったいわば伝統的ブランドに対して、カルトな人気を博す新興のGビューティブランドは、天然由来の原料が持つ自然の力を活かし引き出すために、サイエンス、テクノロジーを積極的に取り入れているのが特徴だ。

販売方法はいずれも自社ECがメインのD2Cで、北米とヨーロッパ全域での展開を見据えて、ブランドの思想や独自の開発技術、創業者ドクターのバックグラウンドなどを丁寧に紹介する、充実したコンテンツの英語サイトにオンラインショップが併設されている。メディアに取り上げられて知名度が上がりはじめると、取り扱う商品を厳しく選別するキュレーション型のECサイトや、ラグジュアリー製品専門のセレクトショップへの卸しを開始するケースも多い。

出典:Royal Fern 公式サイト

ミュンヘンがベースの皮膚科医ティム・ゴリュケ(Timm Golueke)博士が、2015年に立ち上げたスキンケアラインRoyal Fernの根幹を担う原料は、太古の時代から地球に生息している植物シダである。下生えとして森の貯水をする働きを持ち、紫外線にも強い常緑種シダの生命力に着目したゴリュケ博士はチームとともに研究を進め、光反応を活性化する物質を突き止め、シダ抽出成分を主体とする複合体Royal Fern Complexの開発に成功。ゴリュケ博士自身が「ドイツの自然科学力とウェルネスが結びついて」誕生したとするRoyal Fern Complexは、高いアンチエイジング効果が認められて特許を取得している。

同博士はまた、クリニックで多くの患者の診察にあたってきた経験から、人々がスキンケアに求めているのは、確かな効果であり、同時にノントキシック(無毒)であることだと規定する。ドイツ製スキンケアが信頼を勝ち得ているのも、使用する原料が明快に記されたわかりやすくシンプルなパッケージとともに、そこにうたわれる製品の効能は科学的に実証されたものである事実、その2点に由来するというのだ。

同じく「ネイチャーとサイエンスの出会い」をスローガンに掲げるのは、Dr. Barbara Sturmである。美容液からボディケア、大人からキッズやベイビーまでをカバーする幅広い製品ラインナップを支える鍵となる原料は、ナデシコ科の植物パースリンで、グルタチオン、天然の抗酸化システム、オメガ3を多く含んでいる。同ブランドの公式サイトによると、強いヒーリング効果を持つハーブとして古くから用いられてきたが、近年では忘れられた存在だったのを、現代の科学技術で検証し、染色体の端にあり細胞の老化に関わるテロメアを伸ばして、細胞そのものを若返らせる要因にパースリンが作用することが究明された。

「スキンケアが広告イメージではなく、実際の効果によって評価される時代になったのを歓迎する」と創業者のバーバラ・スターム博士は語り、あわせて、自身のスキンケアに対する哲学は「(モノは)なければないほどいい(less is more)」であり、だから本当にベストなものだけを使うのだと明かす。このポリシーはミニマルなパッケージデザインから、欠かすことができない原料だけを厳選したフォーミュラなど、ブランドのすべてに反映されている。

そして、2018年、多くの美容エキスパートがこぞって高く評価し、センセーションを巻き起こしたのが、Augustinus Baderである。こちらも創業者のドクターの名を冠したブランドで、アウグスティヌス・ベーダー教授は、幹細胞研究とバイオメディカル分野の権威として知られる。スキンケアの開発を目指す数年にわたる研究を経て、皮膚に存在する天然アミノ酸やビタミン類、そのほかの分子有機化合物の働きをブーストするTrigger Factor Complexとして、独自成分TFC8を創出した。TFC8は皮膚内に有効成分を届ける機能をもち、身体システム内の幹細胞を刺激し自己修復機能を活性化させることで細胞の若返りを促進。老化のサインや加齢によるダメージを軽減する。

優れているのはそのスピードで、TFC8を配合した「The Cream」を実際に使用したユーザーは7日から14日で変化を実感するという。Augustinus Baderの公式サイトには、肌のターンオーバーの周期27日間、The Creamによるケアを続けた被験者たちの肌の状態を追った克明な記録ドキュメンタリー(英語)がエビデンスとして公開されている

Augustinus Baderは2019年2月にエスティ ローダー出身の新チーフエグゼクティブを迎え、The Cream、The Rich Creamに続く新商品「The Body Cream」の販売を先ごろ開始した。これにより、2019年の同ブランドの売上げは2,400万ドル(約25億円)に達するとの予測もある

Gビューティ拡大には中間価格帯へのアプローチが鍵

では、このままGビューティが存在感を増し、北米市場はもとより、グローバルなトレンドとして世を席巻していくのか。だが、ことはそう単純にはいかないようだ。

World’s Top Exports によれば、2018年、ドイツは化粧品とパーソナルケア製品の輸出額を前年比21%増の38億ドルに伸ばし、トップのフランス、米国、シンガポール、韓国、日本に次ぐ、6番目につけている。その意味ではのびしろはまだまだある。

ただし、若い世代受けするキュートなパッケージデザインとドラッグストアで気軽に購入できる価格、そして、クッションファンデのような新しい視点からのユニークな製品づくりで、世界的にブームを起こしたKビューティに匹敵するヒットとなるには、中間価格帯やプチプラ市場に数多くのドイツブランドが参入することが大前提だ。

しかし、前述した現在のGビューティの注目株は、ほとんどが高価格帯に属するラグジュアリー製品の位置付けで、Augustinus BaderのThe Creamは50mlで265ドル(約2万8,000円)、新登場のThe Body Creamでも170mlで165ドル(約1万7,000円)だ。Dr. Barbara Sturmも同等サイズの製品は75ドル〜310ドル(約7,900円〜3万3,000円)となっている。

とはいえ、常に“次の新しいもの”を探している消費者にとって、高品質の天然原料、製造過程がみえるトレーサビリティの高さ、皮膚科学、テクノロジーを駆使した研究開発、効果の実証主義など、Gビューティには魅力的なキーワードが満ちている。高機能性を下げずに、より広範囲なマーケットにアプローチすることができたなら、世界規模のブレイクは大いにあり得る。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Daria Nepriakhina via Unsplash

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