花王のKirei肌AIは「印象」の可視化による製品開発とコミュニケーションのDX
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コンシューマー向けサービスおよびソリューションとして肌分析AIを開発するプレイヤーが増えるなか、花王が同分野における新たな成果をリリースした。情報が公開されたのは「Kirei肌AI」という名称の、開発環境の生産性を高めるための肌分析AIだ。肌の状態を正しく明示するのみならず、人間の感性を学び“印象”まで判断する点が大きな特徴とされる。その精度や活用事例、開発の背景や今後の展望まで、花王メイクアップ研究所 西野顕氏に話を聞いた。
肌から人が受け取る「印象」を目視評価から数値化する理由
Kirei肌AIの開発をリードする西野氏は、花王メイクアップ研究所(以下、研究所)第3研究室で研究開発に従事するかたわら、同社デジタルトランスフォーメーション推進センター(以下、DX推進センター)の業務を兼務する。研究所においては主に、ファンデーションや日焼け止めなど、製品を使用した際の肌の状態や使用感を判定する評価技術の開発を担当。また、メイクアップによる外観印象の変化などを対象に、心理学的な研究にも携わる。一方、DX推進センターではユーザーエクスペリエンス(UX)、カスタマーエクスペリエンス(CX)の設計なども担当し、開発現場の効率化や自動化だけでなく、顧客体験のデジタル化にも精通している。
花王がKirei肌AIを開発した理由は「研究開発の効率化や、より魅力的な商品を開発するためだ」と西野氏は説明する。一般的に「肌分析AI」といえば、コンシューマー向けのツールが想起されるが、Kirei肌AIは主に社内での利用を想定して開発されている。
「肌はわずかな色や質の違いだけで、魅力、健康さ、活発さ、若々しさなどの印象が変わる。我々のメイクアップ研究所はベースメイクを使って肌の見ためをコントロールする製品を開発しているため、肌から感じとれる印象を非常に大切にしてきた。ただ、肌の印象を機器で計測して数値化もしくは可視化することは容易ではない。弊社だけでなく大手各社も関連研究を行っているが、まだスタンダードな手法は確立されておらず、これまでは経験と訓練を積んだ人材による目視評価に頼らざるを得なかった。開発環境の一層の効率化を目指し、この状況を人工知能で解決できないかと考えたのが開発のきっかけだ」(西野氏)
肌の自然なツヤと、皮脂が浮いたテカリを正確に区別するKirei肌AI
まず顔全体を撮影した画像を小さな領域に分割し、約1,000枚の肌画像として取り出す。これを花王では「肌パッチ画像」と呼んでいる。Kirei肌AIには画像認識にたけたディープラーニングが使用されており、この肌パッチ画像をKirei肌AIに入力すると、評価したい肌の質感が肌パッチ1枚ごとに計算される。これをもとの顔画像の領域に戻すことで、数字やビジュアルデータとして出力できる。
「ディープラーニングで顔全体の画像を学習させた際、AIは何を判断の基準にしているか定かでないという課題があった。肌年齢を予測するとして、目や口、もしくは髪を判断の基準にして年齢を判断してしまうかもしれない。そこで、“肌”の印象評価に特化するのであれば、人間が肌を見る際にどう情報を処理しているのかを考え、AIに実装するため工夫を凝らした」(西野氏)
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