新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

セフォラ VS ウルタ&Credo Beauty連合が牽引する米国クリーンビューティトレンド

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

2027年にグローバルで54.5億ドル(約5,772億円)に達すると予想されているクリーンビューティ市場。米国では、セフォラやウルタ・ビューティなどの大手チェーンと、クリーンビューティ特化型のCredo Beautyなどのリテーラーがそれぞれの基準を定め、市場を牽引している。化粧品専門小売店視点から、米国のクリーンビューティの今を追った。

近年、欧米を中心に美容業界を席巻する感があるクリーンビューティのトレンドは、コロナ禍でますます加速している。米国調査会社のNPDグループは、新型コロナウイルスの影響で2020年のプレステージブランドの売上が14%減となるのに対し、Tata HarperVintner’s DaughterBiossancePacificaJuice BeautyTatchaDrunk Elephantなどのプレステージ・クリーンビューティブランドの売上は11%増加すると見込んでいる。その要因を、同社 副社長兼美容業界アドバイザーでもあるラリッサ・ジェンセン(Larissa Jensen)氏は、「クリーンビューティ・カテゴリーはEコマースの普及率が比較的高いこと、そして人々の関心が健康と安全に向いているためだ」と指摘している。

米国サンフランシスコと東京に拠点をもち、日米異文化・越境ビジネスにおけるデザインのコンサルティングを行うbtrax, Inc マーケティングプロジェクトマネージャー 勝間田靖子氏もこうした状況を「新しい生活スタイルに順応せざるを得ないなかで、精神的な疲弊を感じている人が多く、ウェルビーイングやウェルネスへの関心が高まっている」と分析する。

実際、オンデマンドのメンタルヘルスケアを提供するGingerの調査によると、労働者の7割近くが、パンデミックにより、これまでのキャリアのなかで最もストレスを感じているとしており、抗うつ剤や抗不安剤などの処方も増えているという。「身体だけでなく、精神的な充足を求めてライフスタイルを見直し、暮らしを快適にする製品やパーソナルケア用品にお金をかける人が増えている。また、ナチュラル志向の高まりによって、スキンケアも安全性や環境への負担を考慮したクリーンビューティを選ぶ人たちが増えているのではないか」(勝間田氏)

ウルタはCredo Beautyと提携し信頼性を担保

実は米国では、ナチュラルやクリーン化粧品の明確な定義や使用成分の基準が制定されていない。EUでは、1,300種類以上の成分が有害とみなされ使用が禁止されているのに対し、米国では、FDAによって30種類の成分が禁止されているだけだ。そのため、ブランドや小売業者がそれぞれの基準をもとに“クリーン”を名のっており、それが消費者の混乱を招く原因になっている。

こうした問題に、大手美容小売業としていち早く取り組んだのがセフォラだ。2018年5月に、保存料や化学合成物質など、使用を認めない成分をリスト化した独自のクリーンビューティ基準を制定し、準拠する商品には「Clean at Sephora」マークを与え、クリーンビューティブランドを明確化して取り扱いを強化している。専門家のなかには、「Clean at Sephora」の基準の甘さを指摘する声もあるが、2019年時点で、68ブランド、約3,000のクリーンビューティ製品を販売している。

スクリーンショット 2020-08-22 2.14.53

Sephora.comにある
「Clean at Sephora」コーナー
出典:Sephora.com

その流れに追随するのがウルタ・ビューティだ。2019年5月に店舗のバス&ボディセクションに「ウェルネス」コーナーを設け、2020年3月にはプロバイオティックスキンケアブランドTULA、ボストン発クリーンビューティ小売業者Follainの自社ブランドの取り扱いを一部の店舗とECで開始。さらに6月には、カリフォルニア発クリーンビューティ小売業者Credo Beauty(クレド・ビューティ)との提携を発表し、Credo Beautyが取り扱うクリーンブランド 8つの製品をウルタ・ビューティの100店舗とECで販売することを発表した。

ウルタ・ビューティとCredo Beautyの提携について、CB Insightのインテリジェンスアソシエイト ケニア・ワトソン(Kenya Watson)氏などの専門家は、「ウルタ・ビューティが、独自のクリーンラベルを開発するのではなく、Credo Beautyのようなクリーンビューティのスタンダードをいち早く確立し、消費者からの信頼を得ている企業と戦略的な連携を目指すのは、賢いやり方だ」と評価している。

Credo Beautyが業界関係者にも一目置かれている理由のひとつが、使用禁止成分に関してより厳格な基準「Credo Clean Standard™」を定めている点にある。安全性、持続可能性、社会倫理性、そして供給源の4つの観点から、使用しないほうがよい2,700種類以上の成分を「The Dirty List™」として公開し、新しいデータや技術革新に沿って常にアップデートしている。Credo Beautyが取り扱う商品は、すべてこの基準をクリアしていることを保証する、いわばお墨付きの製品となっているのだ。

画像2

Credo Clean Standard™
出典:Credo Beauty

Credo Beautyは提携による全国展開で新しい層を開拓

Credo Beautyは、米国セフォラの元幹部である故シャシ・バトラ(Shashi Batra)氏と、現COOのアニー・ジャクソン(Annie Jackson)氏によって2014年に創業されたクリーンビューティに特化した小売業者だ。「美容業界をより良くし、すべての人にクリーンビューティを」をミッションに、スキンケア、カラーメイク、ボディ、フレグランス、ヘアケアと幅広いジャンルで135以上の美容ブランドを取り扱い、急成長を遂げている。売上の一部は、ガン治療などで入院中の患者にメイクやスキンケアサービスを提供する非営利パートナー「Lipstick Angels」に寄付される。

現在は、ニューヨークやサンフランシスコなど大都市の繁華街を中心に9店舗を展開しており、研修を受けたエステティシャンとメイクアップアーティストが店舗スタッフとして美容サービスを提供し、そのうち4店舗にはトリートメントルームも設置されている。Credo Beautyは、全米に1,254店舗を展開するウルタ・ビューティと提携することで、これまでアプローチできなかった層にクリーンビューティを届け、全米展開につなげていきたい考えだ。

画像3

Credo Beautyの店内
出典:WWD

パンデミックが、クリーンビューティ業界にとっては追い風になっていることは冒頭でも述べたが、Credo Beautyも、COVID-19の感染拡大に伴い、3月16日に全店舗を一時閉店することを決定し、素早くEC販売強化に舵を切った。従業員を解雇する企業も少なくないなかで、オムニチャネル化推進を図り、コロナ以前から導入していたオンライン接客ツール「HERO」を本格稼働。店舗で接客していたエステティシャンやメイクアップアーティストを含むすべての販売員を、リモート販売員へと移行させ、1対1のカウンセリングサービス「Credo Live」を開始した。

Credo Liveでは、シェードマッチングやクリーンスワップ(顧客が使用中の製品に代わるクリーンな代替品の提案)、肌ケアのアドバイスなどのサービスを提供しており、ユーザーはその場でECサイトに行き商品を購入することもできる。Credo Liveを利用したユーザーが購入に至る率は、利用しないユーザーの15倍という数値が出ているという。

クリーンビューティのダイバーシティ問題にも積極的

さらにCredo Beautyは、クリーンビューティ業界に限らずだが、長年課題だった「BIPOC(Black, Indigenous and People of Color/ 黒人、先住民、有色人種の人々)の顧客に十分な選択肢を与えていない」という問題に対して、取り組みを強化している。

2020年6月には、BIPOCに属する創業者のクリーンビューティブランドを対象にしたメンターシッププログラム「Credo for Change」を発表した。7月には、採用された13ブランドをWebサイト上で発表し、8月から年末までの5ヶ月にわたって、1対1のセッションやグループセッション、ネットワーキングなどの支援プログラムを行っていく。

そして同じく8月には、約2年の歳月をかけて開発したというオリジナルメイクアップブランド「Exa」を発表した。ピーチリーフ、カカオフルーツパウダー、マキベリー、ヒアルロン酸などの高機能スキンケア成分が配合されたクリーンファンデーションは、多様な肌色に対応する43色のインクルーシブなラインナップになっている。5万枚のファンデーションのサンプルカードを制作し、店頭やECサイトで配布するほか、ファンデーションの使い方のメイクレッスンをオンラインで開催している。

一般的に、クリーン原料を使って、少量ずつ多数のシェードを用意するのはコスト高だが、Credo Beautyにはすでに店舗とECがあり、流通のためのマーケティングコストを抑えることができる点がExaの強みであり、今後の展開に注目が集まっている。

クリーンビューティ競争の行方

これまで、クリーンビューティに関する独自の基準を設けてこなかったウルタ・ビューティだが、この秋、「Conscious Beauty at Ulta Beauty™」プログラムをローンチすることを7月に発表した。クリーンな原材料、クルエルティーフリー、ヴィーガン、サステナブル・パッケージ、ポジティブ・インパクトの5つの柱にもとづいてブランドを認定していくとしている。

このイニシアチブを推進するために、ウルタ・ビューティは、Conscious Beautyアドバイザリー協議会を設立。Credo Beauty COOのジャクソン氏や、テラサイクル創業者で、プラスチック容器を回収・再利用するプラットフォームLOOPのCEO兼共同創業者でもあるトム・ザッキー(Tom Szaky)氏などが評議会のメンバーになっている。

一方、セフォラは2020年7月に、クリーンビューティブランドBeautycounterの商品を10月までの期間限定で店舗とECで販売することを発表。8月には「Sephora Collection」初となる、クリーンメイクアップ製品を追加した。20色のファンデーション、リップムース、リップオイル、アイシャドウパレットからなるラインナップで、いずれも20ドル以下の価格で販売する。これにより、Sephora.comに掲載されている472製品のうち、25%がクリーンビューティ製品となった。

Sephora Collection北米のジェネラル・マネージャー ブルーク・バンワート(Brooke Banwart)氏は、「Sephora Collectionを完全にクリーンなブランドに変えることは我々の目的ではない。これまでオプションが少なかった手頃な価格帯のメイクアップ製品において選択肢を増やすことで、クリーンメイクアップは誰もがアクセスできるインクルーシブなコンセプトであることを示すものだ」と述べ、消費者の声に応えて開発されたことを強調する。なお、Sephora Collectionの売上高や成長率は非公開としている。

「Clean at Sephora」という独自基準を設け、それを満たすクリーンビューティブランドを育成しながら、自社でもクリーンビューティ商品を開発するセフォラ。これに対し、厳格なクリーンビューティ基準をもつCredo Beautyとパートナーシップを結びながらラインナップの充実を測るウルタ・ビューティ。2社のアプローチはそれぞれ異なるが、米国の化粧品小売大手2社の取組みによってクリーンビューティの潮流がさらに強まっていくことは確かである。

Text: 小野 梨奈(Lina Ono)
Top image: Fotaro1965 via shutterstock






ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
13
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

BeautyTech.jp記事
BeautyTech.jp記事
  • 553本

BeautyTech.jpのすべての日本語コンテンツはこちらからご覧いただけます