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ヘルスケアアプリFiNCは、AIと「ゆるさ」で女性の気持ちと向き合う

(※2018年7月24日 食事解析サービスについての追記あり) 

◆ English version: FiNC, Japan’s No.1 Healthcare App
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AI(人工知能)活用のパーソナルヘルスケアアプリFiNCは、女性からの支持が厚く、ユーザーの9割が女性だ。一般的に継続が難しいと言われるダイエット領域において、ニュースアプリ並の継続利用率を誇るとFiNCが自信を覗かせる理由には、試行錯誤の末にたどり着いた「ゆるく見守る」×「トータルサポート」という2つの秘策があった。

女性が苦手な数値データは極力減らす

予防ヘルスケア×AIテクノロジーに特化したヘルステックベンチャーのFiNCが躍進を続けている。2017年3月にリリースしたAI活用のパーソナルヘルスケアアプリFiNCは、リリース後およそ5ヶ月でApp Storeの「ヘルスケア」カテゴリで1位を獲得。開始から一年強で、累計200万ダウンロードを突破した。2018年7月現在も、1位常連アプリとして堅調にダウンロード数を伸ばしている。

同社は2012年創業。もともとスポーツジムのパーソナルトレーナーだった創業者の溝口勇児氏が、大半のユーザーがジムに通っても半年で辞めてしまう現状を理解していたことから、オンラインで「継続しやすい」ダイエットサポートビジネスを開始。2017年3月には、パーソナルトレーナーAIを内蔵した無料アプリFiNCの提供を始め、ローンチから1年で200万ダウンロードを突破した。

アプリの提供に合わせて2017年1月、企業や個人投資家から合計20億円の資金調達を実施。調達資金は以前から力を入れてきたAI領域へのさらなる投資や、FiNCアプリの開発・マーケティング費用に充当し、同年3月にアプリをリリースした。

アプリのコンセプトは、 “キレイになれる キレイが続く”。パーソナルトレーナーAIによる「フィンクちゃん」が、アプリダウンロード時に得たユーザーのダイエットに対する悩みや目標、日々の睡眠や食事、歩数、体重、生理周期などのログから個人に最適化されたヘルシーレシピや、フィットネスプログラム(動画コンテンツ)を、チャットボット形式で教えてくれる。

利用開始前にさまざまなプロフィールを登録。英語にも対応する

また、歩数や体重の投稿といったアクションを行うとそれらがポイントとして蓄積され、ある程度貯まると同社が運営するECモールで、ヘルスケア・ビューティー関連商品購入時に利用できる。アプリ自体は無料だが、月額960円(税込)を払うといつでも専門家へ相談できるオプションや、フィットネスやヨガスタジオ、レジャーなど様々な優待サービスを何度でも利用できるプランもある。

国内だけでもヘルスケアアプリはたくさん存在するが、フィットネスリテラシーが高い人向けであったり、生理の記録に特化していたりと、ニーズのはっきりしたユーザーをターゲットに作られている。その一方でFiNCは漠然と「キレイになりたい、ダイエットしたい」と、女性なら誰でも抱えているだろう思いに対し、トータルでサポートするアプリとして開発されている。

そのため、「直接的な競合はいない」(CPO プラットフォーム事業部 事業部長 兼 プロダクト本部プロダクトディベロップメント部 犬飼敏貴氏)。つまりターゲットは、女性全般。ダイエットから妊活まで女性が抱えるいろいろな悩みを、ひとつのアプリでサポートしていくのが狙いだ。

FiNCが狙うのは、ステージ0〜2の『健康への関心が少ない層』だ。

全ユーザーの9割は女性で、20〜40代の女性が多いことから、サービスには「可愛らしさ」を意識する。パーソナルトレーナーAIの「フィンクちゃん」の動きや言動が、いかに「可愛い」と思ってもらえるかなども大事な要素のひとつだ。

フィンクちゃんとのコミュニケーション例。
リアルな友人のような距離感が特徴だ。

また、継続率を最重要KPIとして掲げるFiNCにとって、「これなら私でも続けられる」と思ってもらえるかどうかが大事なポイントとなる。そこは、すべてのログの収集・管理がアプリひとつで完結する“ラクさ“に加え、「情報を出しすぎない」ことで対応している。

「以前は、アプリ内のマイページに数字をいっぱい並べていたが、数字が苦手という女性も多い。それだけで、難しそう、自分が求めているものとは違うと、瞬間的に苦手意識を引き出していることに気づいた」(犬飼氏)。

伝える情報は限りなく減らし、シンプルなUIをめざしているが、その一方でヘルスケアは伝えるべき情報が多いのも事実。「いかにシンプルながら、しっかりと情報を提供していけるか。その加減でいつも葛藤している」と犬飼氏は現在の課題を挙げる。

楽しみながら使える「ゆるさ」が継続率を上げる

「続けてもらうためには強制力を持って、ユーザーを追い込む方法もある」と、犬飼氏は言う。しかし日頃から自分の意思で熱心にトレーニングしている女性でもない限り、強制は逆効果になるだけだろう。それよりも、いかにラクに、楽しく続けられるか。ダイエットや美容は、継続があって初めて効果が見込めることを多くの女性は理解している。が、日々仕事や子育てに追われる忙しい現代女性にとって、コツコツと継続するのは難しい。

女性をメインユーザーに据える同社は、継続率向上のために「追い込み」の真逆をいく。いかにゆるく見守りながら、女性ユーザーに楽しく続けてもらうかだ。前述したポイント付与に加え、コミュニティ作り、日々の頑張りが可視化されるようなグラフの工夫、自分と近いユーザーと歩数を競うといった、無理なく続けたくなる仕掛けを考え、実行している。

また同じ観点から、リアルイベントにも力を入れる。2017年、外部企業と組み、「ごほうびウォーカー」というウェブサービスをリリースした。これはFiNCアプリで実際に計測した歩数と連動し、キャラクターと一緒に“バーチャル日本”を旅できるというもの。いわゆる徒歩ゲーだ。歩数に応じてクジが引けたり、目的地に着くと海外旅行が当たる抽選チケットが手に入ったりするなどのインセンティブを用意した。

「このサービスは、女性ユーザーからの反応がとても良かった。健康は堅苦しいというイメージがあるので、これからもゲーム要素は混ぜていきたい」(取締役CTO 南野充則氏)。

悩みに合わせた2万9,000以上の動画コンテンツを配信

FiNCには、動画コンテンツも豊富だ。フィットネスやレシピなど悩みに合わせた2万9,000以上の動画を用意しているという。「2017年は1日に50本程度の動画をアップしていた」(南野氏)といい、その多くは肩こり改善やお腹痩せといったソリューション動画だった。

「ひとしきり主な悩みに対するソリューション動画は作り切った。2018年は、明確なニーズやモチベーションを持っているユーザーにどれだけ最適なコンテンツを届けられるか、量より質を重視している」(同氏)。

ユーザーひとりひとりに合った方法を見つけられるかどうかは継続率を向上するうえで、大きなポイントになる。FiNCユーザーも、自分に対して効果が見込めるかどうかが動画を見る指標になっているという。

社内に設けた撮影スペース。自宅を想定した作りにしている。

また、以前は自分と似たような悩みを抱えていたアンバサダーがキレイになった、というビフォー・アフターが分かりやすいコンテンツも人気だ。ユーザーのモチベーションアップにつながりやすいからである。

社内のイベントスペース。クライアントやアンバサダーによるイベントを開くこともある。

スマホから無料で食事解析。パンの体積測定まで

現在アプリにおけるAIの活用領域はどんどん広げており、2017年11月には「姿勢分析機能」を追加した。FiNCでは同社が運営するパーソナルジムでも、姿勢矯正をトレーニングスタート時のルールとしている。歪んだままトレーニングすると、歪みが激しくなるという考えからだ。アプリではスマホを使い、現在の姿勢を確認・分析できる。

アプリ内で写真を2枚(正面/横)撮るだけで人工知能が姿勢分析を行ない、改善のためのアドバイスを受けられる。

2018年7月末からは、食事や飲み物の写真を撮るだけでAIが画像解析を行い、自動で食事のカロリー計算をしてくれる機能を追加する。

同社では、ユーザーが日々の食事を撮影し専門家に送りアドバイスをもらう「ダイエット家庭教師」を運営してきたことから、「他社に比べて多くの食事データを持っている」(南野氏)。

食事のログイメージ

豊富なデータ量やこれまでのディープラーニング等に関する研究が認められ、2018年、国から1億円程度の研究予算がついた。この資金をベースに、食事解析技術の改良に力を入れていく。

「従来の食事解析は、平面で『ここにパンがある』までしか分からなかったが、最先端の研究により、撮影するだけで『深度』まで測れるようになった。こうしたデータが溜まってくると、そのパンの体積を予測できるようになる」(南野氏)。

つまりパン一枚の体積を予測することで、より正確性の高いカロリー計算ができるというわけだ。スマホを通じた食事解析サービスは他にもあるが、多くは有料で、「無料は珍しい。ここにメリットを感じ、さらにユーザーは増えるのではないか」と南野氏は自信をみせる。

FiNCのカロリー計算は今まで、同社と提携する栄養士が目視で、「これはカレーだから、ヨーグルトだから」という具合に計算してきたが、今後はAIを活用することで、そうした人力作業を自動化していく。「自動化すればコストが下がり、より広い人にサービスを届けられるだろう」(南野氏)。

ヘルスケア大国、アメリカへ進出

国内のヘルステック分野のなかでもFiNCの取り組みは注目されており、2018年6月11日に経産省が発表したJ-Startup企業(※トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当が、日本のスタートアップ企業約10,000社の中から企業を推薦し、経産省が推薦内容を尊重しつつ企業をチェック)の1社として認定された実績を持つ。

国内で着実に成長を続けてきたFiNCが次なる目標として見据えるのは、海外だ。すでに米国法人を設立し、現地で2名のスタッフを採用。テストマーケティングを開始した。

左:犬飼敏貴CPO、右:南野取締役CTO

アメリカといえば、「ヘルスケア大国」としても知られる。すでにレッドオーシャンと化した市場に、後発、しかも日本発のサービスが入り込んでいける余地はあるのだろうか。

「世界で見ても、FiNCとど真ん中で同じ、パーソナルトレーナーAIが日々のヘルスケアをサポートするサービスを提供しているところはないだろう」(犬飼氏)と、ユニークなサービスゆえに勝機を見出しているようだ。

現在テストマーケティング中ということもありアメリカ独自の機能を開発・提供していくのか、本格始動の時期などの細かいことは今後明らかになるだろうが、フィットネス大国だからこそ、継続に悩む人々も多いはずだ。パーソナルトレーナーAIが人々のヘルスケアをサポートするという、従来にはないコンセプトが受け入れられる可能性は大きい。

Text: 公文紫都(Shidu Kumon)


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