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#SephoraSquadは、セフォラのインフルエンサー「発掘と育成」戦略の最先端

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化粧品小売大手のセフォラが2019年2月、米国とカナダ市場を舞台に仕掛けたインフルエンサープログラム「#SephoraSquad」を立ち上げた 。広く一般のインスタグラマーに向けて、セフォラの公式インフルエンサー募集を呼びかけるもので、選考にあたっては「フォロワーの数は問わない」と明言。その背景には、顧客を巻き込みセフォラコミュニティのパワーを推進力にする、一貫したマーケティングプランがあった。

セフォラが立ち上げたSephoraSquadは、コンテスト形式のビューティインフルエンサープログラムである。ファイナリストに選ばれたインスタグラマーは、ブランドアンバサダーとして2019年末までの約1年間にわたりセフォラと契約を結び、商品のプロモーションや各種キャンペーン、イベントなどの宣伝活動を有償で行う。話題性のある商品や新商品が無料で提供されるほか、インフルエンサーとしてのスキルを磨く個別トレーニングが受けられたり、商品企画やコンテンツの共同制作にたずさわるチャンスなど、さまざまな特権が与えられる。

重要なのはフォロワー数よりフォロワーとの絆

このプログラムが一般的なインフルエンサー募集キャンペーンと異なるのは、インスタグラムのフォロワー数を全く問わない点だ。応募の条件は、美容とセフォラを愛する18歳以上のアメリカまたはカナダ在住者で、アクティブなインスタグラムアカウントを保有していることのみだ。セフォラのロイヤリティプログラムBeauty Insiderの会員である必要さえない。

SephoraSquadの専用サイトでは、「We value unique, unfiltered, sorry-not-sorry storytellers (独自性があり、正直で、媚びずに本音を話す人に我々は価値を見いだす)」と記され、良いと感じたことも、悪いと思ったことも率直に、公正な視点から意見を言う、そんなインフルエンサーを求めていることがわかる。

加えてユニークなのは、インスタグラマーは応募にあたり自分のフォロワーからの推薦が求められることだ。

応募者はフォロワーに推薦を呼びかけた
出典:@sarah_louwho アカウント

そのため、応募者は自分のインスタグラムで、SephoraSquadに応募したことを発表。そして、自分がビューティインフルエンサーにいかにふさわしいか、コンテンツのどこが魅力なのかなど、簡単な推薦文を投稿してくれるように、フォロワーたちに呼びかけた。

応募総数1万5,000件、推薦は24万件の大反響

これまでにもセフォラはインフルエンサーを活用したプロモーションを手掛けてきた。だが今回は、約1年にわたって契約が結べること、一般人を対象にした大規模プログラムということもあり、大手メディアがこぞってSephoraSquadに関する記事を配信し、話題づくりにも成功した。

その影響もあり、2月13日の募集開始から応募締め切りの3月6日まで、3週間で集まった応募総数はおよそ1万5,000件。推薦文については24万件が寄せられた。

Image:  Africa Studio via shutterstock

これだけの反響があったのは、推薦投稿という形でフォロワーも巻きこんだところが大きい。口コミ効果が倍増し一気に拡散されたのである。選考にあたって投稿の検証と分析のために、セフォラが導入したFohr社のマーケティングプラットフォームのデータによると、SephoraSquad募集に関するインスタグラムの投稿数は合計1万以上、ストーリーは7万以上にのぼった。

多種多様な24名のビューティインフルエンサー

このようにして、3月29日にSephoraSquadファイナリスト24名が発表された。同プログラムでは最初に「あらゆる人種、民族、地域、自己が認識する性別、性的志向が対象」と述べており、肌の色や年齢、文化的・社会的バックグラウンド、ファッションのタイプやライフスタイルなどさまざまな、実にバラエティに富んだメンバーが選出された。

例えば、@Stung_by_Samanthaは50代の女性。「年齢にしばられずファッションもメイクも楽しみたい」と、45歳でYouTubeチャネルを始め、Instagramでも年齢を重ねながら生き生きと輝くライフスタイルを紹介している。

また、@myfacestoryのKaliは、ニキビがあるありのままのすっぴん写真を投稿し、ニキビケアの方法を臆すことなく赤裸々に紹介しており、同じようにニキビに悩む女性たちの共感を集めている。

黒人女性の@_ohemaabonsuは、生まれ持った肌色をさらに引き立たせる、ビビッドでカラフルなアイメイクを好み、ハウツー動画をYouTubeやInstagramで紹介している。

さらには、LGBTの@flawlesskevinやドラァグクイーンの @lushiousmassacrなども24名のなかに選ばれている。

コミュニティを軸にするセフォラの狙い

さて、セフォラがこのインフルエンサープログラムで達成しようとしていることは何だろうか。

選考過程においてセフォラが重視したのは、フォロワーからの推薦というプロセスを通してみえてくる、インスタグラマーとフォロワーとのコミュニケーションだ。前述したように、今回セフォラはFohr社の最新テクノロジーを導入しており、応募者とフォロワーのアカウント情報やエンゲージメント率の算出にも役立てている。 こうした数値と同時に、実際の投稿ややりとりを追い、フォロワーへのリーチはもちろん、応募者がフォロワーとの間にどのくらい密な関係を築いているかをはかっていたのだろう。

Image: Kaspars Grinvalds via shutterstock

そこからみえてくるのは、セフォラ自身が販売をプッシュするのではなく、共感度の高いユーザー同士が気楽にコメントしあう場である“コミュニティ”を盛り上げることで、ユーザーが興味を持つ商品を売っていく、いわば「顧客同士のコミュニケーションによる顧客参加型のショッピング戦略 」である。しかも、セフォラのこのマーケティングのあり方は昨日今日にはじまったものではない。

たとえば2007年にスタートした、単なるポイントカードにとどまらず顧客のインサイトを理解するものとして位置づけられたロイヤリティプログラム。また、SNSの特性を分析し、顧客のニーズを知り、それに応える商品を提供するのを目的に、常に磨き上げられてきたセフォラの公式サイトは、現在、ライブチャットやグループコミュニティイベントなどの機能を持ち、ユーザーが互いにコミュニケーションをとることをサポートしている。

そして、SephoraSquadもまた、ユーザー同士の繋がりを促進するという役割を持ち、この一貫したマーケティング戦略の延長線上にあると思われる。セフォラのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務めるデボラ・イェ(Deborah Yeh)氏は、SephoraSquadについてのインタビュー のなかで、「SNS上での人々の動向は進化し続けており、それにあわせて我々はインフルエンサーとの関係を次のレベルにあげるべき時がきたと考えている。ビューティコミュニティの裾野を広げ、より多くの声と幅広いものの見方を我々のビジネスに反映させていく」と述べている。

Image: marinafrost via shutterstock

インキュベータとしての側面

セフォラはこれまで、あまり知られていない新興ブランドであっても、セフォラがいいと思ったものは店頭に並べ、さらにはどのように売り出すべきかまでアドバイスする、“発掘と育成”に力をいれてきた。セフォラでヒットし成長したブランドには、Urban DecayやTooFacedなどがある。また、女性起業家を支援するアクセラレータプログラム Sephora Accelerateも積極的に推進している

SephoraSquadにおいても、選出されたインフルエンサーのレベルアップを助けるプログラムが用意されている。100万人以上のフォロワーを持つメガインフルエンサーのNabela Noorをはじめとする、SephoraSquadローンチパートナー4名がメンターとなり、アカウントを拡大するためのテクニックやブランドとのコラボの進め方、フォロワーとのコミュニケーションスキルなど、具体的かつ有用な指導を個別に行うのだ。他のインフルエンサーと知り合うネットワーキングの機会も設けられる。また、Sephora Accelerateに選ばれたメンバーが参加する1週間のブートキャンプの一部プログラムにも参加できる。

単にフォロワー数が多いインスタグラマーを集めているのではないセフォラのインフルエンサープログラム、SephoraSquadはユーザーコミュニティを最重視するセフォラの姿勢を端的に示すものなのだ。


Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)、編集部
Top image: Rohappy via shutterstock

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