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変わっていく視点、変えていく視点 第2回前編<WOW> “異質” が混ざり合うことの意味【川島蓉子連載・NNを考える会】

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ifs未来研究所 所長 川島蓉子さんによる、イノベーティブな仕事をされている各界の方々にお話をうかがい、これからのビジネスに必要とされる「視点」を探る連載です。今回は、ビジュアルデザインスタジオWOW クリエイティブディレクター 於保浩介さんです。

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第2回は、ビジュアルデザインスタジオ「WOW」のクリエイティブディレクターである於保浩介さんに登場いただきます。同氏は、多摩美術大学グラフィックデザイン科で学び、大手広告代理店を経て「WOW」に参画。広告を中心とした映像全般のプランニングやクリエイティブディレクションを手がけています。

東京、仙台、ロンドン、サンフランシスコに拠点を置き、デジタルの先端を駆使した実験的な試みや、建築物や空間を使った大胆な表現に挑んでいて、「次は何をやるのだろう」とワクワクさせてくれるのです。

於保さんとのそもそもの出会いはミラノサローネでした。2011年、キヤノンが発表した「NEOREAL WONDER」の映像表現を「WOW」が手がけた際、お話をうかがったのです。四季に象徴される“時の移ろい”を土台にしながら、TOKYOの風景を織り交ぜた立体的な映像は、いわゆるフジヤマゲイシャ的なステレオタイプの日本ではない。かといって、アニメやストリートファッション的な世界でもない。古さと新しさ、過去と今、自然と人工など、相対するものが混じり合った“情報”を発信し続けるTOKYOのありよう、これを見事に伝えていると感じたのです。

一方で「WOW」は、日本の地方に根づいている文化やモノ作りを応援するプロジェクトも担っています。以前にうかがったのは、「aikuchi」というプロジェクト。「日本が誇る美術品にグローバルな視点を加え、新しい佇まいをもたらすことはできないか」という意図から、マーク・ニューソンに依頼して日本刀を作ったのです。伝統的な姿かたちを活かしながら、普遍的造形を追究したマーク・ニューソンのデザインが、高度な技によって鍛え上げられている――とびっきり創造的な仕事とは、国やエリアを超えて人の心を動かすのだと感心したのを覚えています。

もっとお話を聞きたいと、久しぶりに渋谷の公園通りを上がったオフィスを訪ねました。

開口一番、於保さんは「キャンプ場を自分たちで作る『WOWマウンテンジムプロジェクト』というものをやっているんです」と嬉しそうに語ってくれました。

「WOW」がやっている先鋭的でクリエイティブな活動と、八ヶ岳のキャンプ場作りとが結びつかず、「どういうこと? なぜ?」と矢継ぎ早に突っ込んでしまいました。そこで聞いた経緯がまたおもしろい。もともとキャンプ好きだった於保さんは、「多くのキャンプ場は都会的なルールでしばられて、キャンプ本来の良さが体験できないと感じていました。一方で仕事に忙殺される中、『自分の場を作らないといけない』という漠然とした思いを抱いてもいた。その2つが“キャンプ場作り”ということで結びついた」のです。

3年ほど前、八ヶ岳の麓の林を1500坪手に入れ、木を伐採して更地を作るところから始め、水回りやトイレ、電気といった設備を整えたそう。写真を見せてもらうと、於保さんはじめ、社員の方がチェーンソーを使って、木を切り倒しているシーンが次々と――これはなかなかできる体験ではないと、少し羨ましくなりました。

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プロの友人の助けを得たといいますが、過酷な自然と向き合い、生身の身体と勘所を働かせる。「火の熱さや風の涼やかさ、闇夜のしじまといったことは、人がもともと、当たり前のように心身で触れ、感覚でとらえていたもの。その大切さを僕も社員も実感しようと考えたのです。その意味でこれは、野生をとりもどすプロジェクトと言っても過言ではありません」。

そこで得られるのは、都会に身を置いて利便性と効率を求め、頭脳ばかりを働かせる仕事では味わえないもの――今は一週間のうち3日くらいを八ヶ岳で過ごしているそうですが、リモートワークも含めて4日くらいまで増やしたいといいます。デジタルが暮らしに入り込んでくればくるほど、自分の持っている身体性と感覚を実感することが大事という話を聞いて、「自分の場所を作らないといけない」という最初の言葉が腑に落ちました。

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一方、似たような話を耳にしたことが何度かあると思いました。土地付きの空き家を手に入れ、週末は少しずつ改修しながら過ごしているとか、定期的に休みをとって行ったことがない地を一人旅するとか――自然と距離が近いところで、少しの不便さを引き受けながら、身体や心を解き放ち、“リアル”を感じる時間や空間を大切にしているというのです。

それはなぜなのかと考えてみたところ、人が本来持っている「感」や「勘」を意識することが肝要ということではないかと思ったのです。於保さんが「野生」と言葉にしたように、人の「感」や「勘」を働かせることで、おもしろいことや楽しいことが生まれてくる。そして「感」や「勘」を鍛えるには、自然とのかかわりや身体性を意識することが大切と敏感なクリエイターは感じ、実行に移しているのだと腑に落ちたのです。

ただこれは、クリエイターでなくても同様のこと。日々の仕事を創造的におもしろくしたい。そう思っている人は、自然や野生を身近に感じてみる、身体を動かして意識してみるといいのでは――私も早速、実践してみようと思いました。

 大自然ということで言えば、「WOW」が昨年手がけたプロジェクトの中で、北海道阿寒湖における「ロストカムイ」もユニークなものでした。これは、アイヌの人々が継承してきた歌や踊りなどの伝統文化を、国内外から同地を訪れる多くの人に知ってもらうことを意図したプロジェクトです。デジタルを駆使した最先端の試みと伝統文化がどういうかたちで結実したのか。後編では、於保さんがそこでどんな表現に取り組み、どんな反応を得たのかを聞いてみたいと思います。

「変わっていく視点、変えていく視点」 第1回はこちら

Text: 川島蓉子(Yoko Kawashima)
Top Image: AIKUCHIプロジェクトより
画像提供: WOW

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