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5回目FaBパリ。DIYやフードコスメD2Cの活況、あるべき資金調達についての議論

◆ English version: The 5th FaB Paris Meet Up — thriving D2Cs dealing in DIY and food cosmetics
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美容とファッション業界の起業家と投資家のコミュニティ「FaB (Fashion and BeautyTech)」 パリ支部の5回目のミートアップが、COVID-19拡大に伴う行動制限などが始まる直前の2月27日、インキュベーターのPathfinderで開催され、起業家、投資家など約70 名が集った。今回も、DIY関連EC、フードコスメ、アフリカ系インフルエンサーによるD2Cブランドなど、多彩なスタートアップが登壇。加えて、米国をベースにビジネスを展開するFaBアフリカ支部のオーガナイザー、急成長を遂げているドイツ起業家をゲストスピーカーに招くなど、フランスの起業家に刺激を与える新しい試みもみられた。

②登壇者

DIY専門のB2Cマーケットプレイス

パネル1では、さまざまなバックグラウンドを持つ3名の女性起業家が未来を見据えてスタートしたビジネスが紹介された。

③パネル1

パネル1の登壇者とモデレーター

ビジネススクールを卒業後、家業であるコニャック製造の拡販に携わっていたエロディ・アブカシス(Elodie Abecassis)氏は、若い世代の消費行動が変わり始めていることを察知し、2019年9月に消費者向けのDIY専門ECサイト、I-make.comを創業。化粧品、ファッション、ホームデコレーションなど幅広い分野のDIYに関する原材料や道具を販売している。

「若い世代は、商品がどこでどのように作られているかを把握したいと考えている。このいわゆる“透明性”の追求を突き詰めていくと、既製品を購入するのではなく、自分で原材料の品質を見極め、自ら作るという行動に至る」とみている。2019年のフランスの統計では、5人に1人が化粧品もしくは洗剤を手作りしていることから、アブカシス氏は化粧品のDIY市場拡大に期待をよせる。

化粧品の場合、どんな成分が自分の肌に合うかの判断がつきにくいという課題があるが、同ECでは各分野のエキスパートのライターに依頼し、チュートリアル(現在は画像と文字で説明)やニュースレターを充実させるなどWebコンテンツに投資しながら、最適なアドバイスを提供し、顧客ロイヤリティを高めていく方針だ。

超フレッシュなフードコスメ

一方、「今後の化粧品は“フレッシュさ”がキーワードになっていく」と予見するのは、昨秋ローンチしたD2CクリーンコスメFreedge Beautyの共同創業者ローレンス・ケゼイ(Laurence Caisey)氏だ。ケゼイ氏はロレアルの開発部門に23年間勤務したのち、P&Gなど大手企業での経験を持つ2名とともに、開発期間2年を経て、採れたての野菜やフルーツで作る100%ナチュラル、ウルトラ・フレッシュなスキンケア製品を作り上げた。

着色料、香料、アレルギー誘発物質は一切使用しない処方で、製造して2日後にユーザーのもとに届くよう配送する。通常の化粧品は未開封であれば3年間品質保証がつくのが一般的だが、Freedge Beautyは新鮮な野菜と同じで使用期限が短い。そのため、冷蔵庫に入れずに洗面所で2週間置いておける品質で、内容量もその間に使い切れる量としている。また、使用済のボトルは、洗浄して再使用し、循環型社会を推進する。

原材料は80%が地場の素材で、季節によって商品に配合する野菜やフルーツは変わるという。効果はもとより、心身ともに健やかな状態「ビアンネートル(Bien-être)」の提供を目指すフードコスメだ。

迅速に顧客ニーズに応えるインフルエンサーマーケティング

「ビューティにスタンダードはない。自身の美を自由に表現すべき」という信念のもと、メイクアップブランドDjulicious cosmeticsを創業したのは、M・A・CやMake up Foreverでメイクアップアーティストの経験を積んだアフリカ系女性のインフルエンサー、ジュリー・ベルジオ(Julie Beljio)氏だ。個性を引き立たせるヴィヴィッドな色合いやグリッターが豊富に揃う。

発色の良いアイメイクパレット

同氏はもともとインフルエンサーとしてYoutubeで化粧品を紹介していたが、6年前に起業して以来、自社ブランド製品を主に使用しながらチュートリアル動画を配信している。その一風変わったキャラクターが好評で、Youtubeの登録人数は16.4万人を超える。

「常にコミュニティの声に耳を傾けて商品開発をしており、使用法の問い合わせがあれば、すぐにFacebookやYoutubeでチュートリアル動画をシェア、平行してフィジカルなメイクレッスンを開催する」など、顧客ニーズに即座に対応するのが同氏の強みだ。今後も顧客が望む商品やキャンペーンを提案するなど、徹底したマーケティングでコミュニティに寄り添っていく。

パネル2では、資金調達の戦略やタイミングが異なるスタートアップが登壇し、いつ、どのように資金調達を図ったかに焦点があてられた。登壇者は①自己資金のみで経営、②成長の加速時に資金を調達、③起業直後に資金調達という3タイプに分かれる。

④パネル2-1

パネル2の登壇者とモデレーター

まずは、100%自己資金で経営しているアフリカ系縮毛専用のヘアケアブランドLes Secrets de Lolyを創業したケリー・マッソル(Kelly Massol)氏が自身の経験を詳細に語った。

アフリカにルーツに持つマッソル氏は、2005年にアフリカ系女性向けの美容イベントに参加し、彼らがいかに化粧品の内容成分に深い関心を持ち、自然由来の商品を求めているかを実感する。そこで、2009年に自宅のキッチンで自然成分のヘアケア商品を作り、Webサイトで販売を開始した。成長を加速するために、資金調達を試みたが、アフリカ系女性向け商品の潜在ニーズに耳を貸す投資家は10年前にはいなかったという。

そこで、それまでの売上をすべて生産につぎ込み、商品在庫を確保したうえで、自ら小売店を訪問し、「まずは店舗に置いて、売れるか試してください」と営業した。その結果、売上金額が商品ニーズを証明し、現在はフランスを中心に400店舗に配荷され、生産も工場に切り替わり、年商200万ユーロ(約2億4,000万円)にまで成長した。

「2年前に、アフリカ系女性向けの商品は必要ないと言っていた小売店のオーナーが、今となっては(商品を置きたいと)私に会いにきた」と語り、商品需要を自ら証明する大切さを強調した。また、「外部資金なしでの経営は、すべてのステージで自らの判断で事業を進められることがメリットだ」と述べた。

一方、成長加速のタイミングに資金調達に成功した、LAとNYをベースにするアフリカ系女性のヘアケアのコミュニティサイト&EコマースUn-ruly.comの共同創業者アントニア・オピア(Antonia Opiah)氏は、10年前は米国でもアフリカ系事業で投資を得ることはかなり難しかったと同調する。

Webコンテンツを充実させるために資金は必要だが、「投資はタダでもらえるお金ではないので、適切な成長ストーリー、安定した売上を描き、投資家へのリターンを意識した信憑性のあるビジネスプランを整える必要がある」と考える。同氏は自社ビジネスが軌道に乗り、投資家がブラックビューティ市場のスケールアップを確信できる条件が揃ったときに、資金調達を図ったという。

⑤パネル2-2

(中央)FaBアフリカのオーガナイザーに
就任したアントニア・オピア氏、
(右)ニコラ・コーエン氏、
(左)ケリー・マッソル氏

同じく、昨年、成長を加速するタイミングで継続的な資金調達をしたのは、D2Cのナチュラル下着ブランドBody&Clyde を創業したオリヴィア・ルヴェ(Olivia Louvet)氏だ。ディオール、バレンシアガなどのデザインやテキスタイル部門で働いた経験を持ち、ファストファッションや過剰消費に異を唱える、エシカルな下着ブランドとして同社を立ち上げた。

「初期は自己資金で何とかしていたが、専門性の高い人材を雇用し、デジタルコンテンツを充実させるべく、先見性のあるビジネスエンジェル(知識層によるスマート・マネー)を探した。一部の投資家は、近年のファッション業界の低迷から投資を控える傾向にあるが、クリーンビューティ化粧品や有機食品のように、ファッションもローカルでの生産、自然素材などサステイナブルなアプローチにより違いを出すことで、投資家の見方が変わってくる」と調達できた理由を述べた。

また、起業後、数ヶ月でGlobal Founders Capital,、AlvenAglaé Venturesといった大手VCから、600万ユーロ(約6億2,000万円)の投資を得たのは、昨夏ローンチした欧州におけるブランドと小売店をつなぐB2BマーケットプレイスAnkorstoreだ。

Ankorstoreの主な目的は、ブランドマッチングから決済、購入履歴の管理に至るまで、小売店への商品供給における一連の流れを助けることだ。魅力的な新規ブランドを探す中小規模の小売店は、同社のWebサイトを利用してブランドを検索し、容易にコンタクトができるうえ、大型注文の前に、少量の商品を仕入れてテストマーケティングすることも可能だ。ブランド側には販売ごとに15%の手数料が発生するものの、Ankorstoreが決済を仲介するため、未払いの心配がない。また、送料も同社負担というメリットもある。取り扱いカテゴリーは、化粧品、ファッション、食品、インテリアなど多岐に渡り、2019年12月の時点で1,000以上の小売店、300を超えるブランドが利用している。

共同創業者のニコラ・コーエン(Nicolas Cohen)氏は、早期に投資家の心を掴めた要因を以下のように説明した。「米国の競合企業は創業して2年余りで約2.5億ドルを調達しており、現在その企業は10億ドル以上の市場価値がある実例をあげて、欧州にはまだこの分野におけるリーダー企業がいないことを投資家に示した。また、4人の共同創業者が 欧州のマーケットプレイス、ブランド、卸、小売を知り尽くす経験値の高い人材と優秀なCTOで構成され、投資家を納得させるだけの条件を備えていた」。

その4人の経歴はといえば、B2Cセカンドハンドのファッションを扱うVestiaire Collectiveの元CTO、 大手EコマースEtsyのフランス担当マネージャー、残る2名はハンドメイド品に特化したマーケップレイスA Little Marketの共同創業者(2014年にEtsyが買収)というそうそうたるものだ。このマーケットプレイスのプロフェッショナル集団は、まずは欧州のチャンピオンになるべくドイツ、スペインに進出し、将来的にはグローバル展開を目論む。

⑥会場の様子

会場に集まった起業家や投資家たち

最後に、欧州のD2Cで最も成長が早いといわれるスタートアップの1つで、ベルリン発のスキンケアブランドHelloBodyの創業者モニック・ホエル(Monique Hoell)氏をゲストに迎えて、起業の経緯やそこから学んだことなどがシェアされた。モデレーターを務めたのは仏シリアルアントレプレナーのマルク・メナセ(Marc Ménasé)氏だ。

2015年に創業したHelloBody は、個々の多様な美を尊重したミレニアル向けのクリーンビューティ系ブランドで、環境問題、女性の経済的自立など非営利のプロジェクトを支援するエシカル企業でもある。SNSを巧みに利用し、ベルリン、パリのほか、欧州数カ国、2018年にはD2Cの台頭が著しい米国にも進出しており、現在110万人の顧客を持ち、創業4年足らずで6,500万ユーロ(約78億円)の収益を生んでいる。

⑦ドイツ起業家

ベルリンからのモニック・ホエル氏(右)
とモデレーターのマルク・メナセ氏(左)

「HelloBodyの前に、パーソナルアシスタントのモバイルアプリケーションを共同創業したものの、成功しなかった。その要因は商品を作る前に市場やターゲットを十分に研究していなかったことだ」と打ち明け、ターゲットグループを明確にし、創業者や投資家を含む最良のチームを持つ大切さを学んだと語った。その後、2015年にHelloBodyを創業し、SNSを活用して成長しているが、モデレーターのメナセ氏は「5年前と現在のD2C市場やInstagramの活用状況は異なるため、タイミングがすべてともいえる」と言葉を添えた。

また、同氏が「Webサイトを見ると、HelloBodyは一見フランスのコスメブランドのように見え、ドイツ企業という印象を受けない」と指摘すると、「化粧品がフランスブランドのように見えることは、ビジネスに大きなインパクトを与えるため、実際のところ、商品作りやSNS戦略でフランス風の雰囲気が出るよう投資した」とホエル氏は率直に答えた。そんなアプローチがフランスのミレニアル世代にも響き、同社のフランスにおける売上金額はすでに1,000万ユーロ(約12億円)を超えている。

Instagramの発信内容は、
各国のターゲットに響くように
ローカライズしている

ドイツは英国と並び優れたスタートアップを輩出しており、資金調達額においても英国に続いて、フランスとしのぎを削る。フランスは大手化粧品ブランドや自然派コスメが多く、美容分野における知識の深さと眼識の高さが広く知られているが、メイド・イン・フランスらしさを出せば売れるわけでないのは言うまでもない。

投資家や消費者の心を動かす事業戦略や収益構造とは何か。講演終了後には、登壇者と直接話し、マイクを通しては語られなかった具体的な戦略や事業を好転させるためのアドバイスを得ようと、順番待ちをする参加スタートアッパーの姿も見られた。

美容とファッション業界のコミュニティであるFaBは世界15カ国に支部を持つ。パリ支部ではこのグローバルなネットワークを活用して、他国の起業家を招待し、仏起業家や投資家を鼓舞するなど、エコシステムの向上にも貢献している。

Text & photos : 谷 素子(Motoko Tani)

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