見出し画像

IT大国・エストニアの強者はサウナの10分間で起業する!【美容圏外】

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

“スーパーIT先進国”というイメージがすっかり定着した感のあるエストニア。共産主義時代を経て、あらゆる手続きがネットでできるこの国では、スタートアップ企業の登記すらサウナに入った10分間でできてしまう。IT大国に生まれ変わった北欧の小さな国が今、世界から注目される理由をひもといてみた。

いまでこそEU(欧州連合)にもNATO(北大西洋条約機構)にも加盟しているエストニアだが、30年ほど前まではソビエト連邦を構成する15の共和国のひとつだった。1991年の独立にあたっての悲願は、二度とロシアの支配を受けないこと(エストニアは11世紀以降、ロシアから5回も侵略を受けている)。そして、新政府は仮に再びロシアに占領されても機能する強力な行政システムを作り上げると決意した。

国家の生き残りをかけた「IT化」

そこで出てきたのが、政府のソフトウエア化というアイデアだ。庁舎や書類といったハードウエアが破壊され、物理空間におけるエストニアが消滅しても、データさえ残っていれば仮想空間では国家として存続できる。

つまりテクノロジーによる国の活性化だのコスト削減だの、そういうナマっちょろい話ではなく、電子化は国家の生き残りをかけた施策だったのだ。簡単に言えば、教室で隣の席にジャイアンが座っていたら、それは何とかしなきゃしょうがないよね、という状況を想像してもらえばいい。だからこそ、国民が一丸となって真剣に取り組んだ。

日本でシステムの電子化を実装しようとすると、プライヴァシー保護の問題が必ず議論されることになる。しかし、秘密警察による監視が当たり前だったソ連時代を経験しているエストニアでは感覚がだいぶ違うらしい。

image: Ruslan Valeev via Unsplash

話を戻すと、エストニアの新しい国家戦略に有利に働いたのは皮肉にもソ連時代の遺産だった。首都タリンには1960年に「サイバネティクス・インスティテュート」なる機関が設立され、かなり早い段階からコンピュータの設計や生産が行われていた。またエンジニア養成を目的とした理系科目重視の教育のおかげで人材も豊富だった。

こうした基盤の上に築かれたのが、結婚と離婚と不動産登記以外はすべてオンラインでできるという電子行政システムだ。もちろん会社の立ち上げもあっという間にできる。

エストニアのカップル、サウナで起業する

さて、ここで少し趣向を変えて、サウナの中からサウナのスタートアップを立ち上げたエストニアのカップルを紹介しよう。

海を挟んでお向かいのフィンランドと同じように、エストニアにもサウナ文化がある。特に南部ヴォローマ(Võrumaa)地方のスモークサウナは有名で、2014年にユネスコの無形文化遺産に指定された。木造の小屋にストーブを置いて、熱した石に水をかけて蒸気を発生させるスタイルで、煙突がないので内部は燻製のような独特の香りがするそうだ。

しかし、こうした昔ながらのサウナは田舎にしかない。地方にまで足を運ぶことはほとんどない外国人観光客にもサウナ文化を広めたいと思ったアンニとアダムのカップルは、タリンに伝統的なサウナをオープンすることにした。

思い立ったが吉日で、2人はアイデアを思いついたときに入っていた田舎のサウナの中で「スタートアップを立ち上げて」しまった。冗談のような話だが、気温はちょうど40度弱で、MacBookとテザリング(エストニアは田舎の森でも4Gの電波が入る)に使ったiPhoneがオーバーヒートする前に、10分ほどで会社の登記を終えることができたという。アダムによれば、会社の立ち上げよりサウナを温める方がよっぽど大変で難しかったという(薪の炎だけで室内を40度まで温めるのに4時間もかかった)。

エストニア人であるアンニとアダムほどはスムーズにはいかないが、かの有名な「e-residency(電子居住権)」を取得すれば、外国人でもかなり簡単にエストニアに会社を設立できる。e-residencyはあくまでも「電子」の世界のものなので、取得したからといってエストニアに住めるわけではないし、法人開設など具体的な目的がなければ、持っていてもそれほど大きな意味はないだろう。ただ申請料はたった100ユーロだし(加えて決済システムの利用料1.99ユーロがかかる)、未来を感じるために取得してみるのも面白いかもしれない。

私も、やってみた

ちなみに筆者も試しにやってみたのだが、本当に驚くほど簡単だった。申請手続きそのものは氏名や連絡先などの個人情報とクレジットカード情報を入力するだけで、5分もあればできてしまう。申請理由を英語で書く必要があるが、とりあえず「エストニアの電子政府システムに興味を持ったから」としておいた。

ほかに証明写真のデータをアップロードする必要もあるが、筆者の場合はパスポートを申請した際に撮った写真をスキャンして保存していたので、それを流用した。犯罪歴は一応ないので、ふてぶてしくも6年も昔の(しかもPhotoshopでレタッチまでしている)写真を使ったことが問題視されない限り、おそらく居住権を取得できるはずだ。

晴れて申請が許可されれば、ICチップの入った電子IDカードとカードリーダーをもらいに行く。このカードは各種オンライン手続きをするときの本人認証に使われる。受け取りができるのは世界40カ所強のエストニア大使館(もしくは領事館)で、日本なら東京のエストニア大使館になる。なお、申請許可率は98%で、却下された場合でも申請料の100ユーロは返ってこない。

最後に、アンニとアダムのサウナは今冬にオープンを予定する。世界遺産にもなっているタリンの旧市街は、15世紀から続くクリスマスマーケットでも有名だ。今年の冬休みは伝統と最先端に同時に触れられるエストニアを選んではどうだろう。その前に、e-residencyに登録するのをお忘れなく。あなたも私も電子市民だ。

Text: オカチヒロ


ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
13
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp