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Petite’n Prettyなどアルファ世代が夢中になるコスメブランドとその背景を探る

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Instagramと同じ年に誕生した世代が、Z世代に続くアルファ世代である。ミレニアルズを両親に持つ彼らは、呼吸をするようにソーシャルメディアを使いこなし、コスメ情報にアクセスする年齢も早い。美容業界のコアな消費者層となる日も決して遠くない彼らが認めるブランドとは? 米国事情から探る。

炎上騒動も度々の過激な「メイク男子」インフルエンサーから、10代そこそこの小学生インフルエンサーまで、コスメ好きのアルファ世代が憧れフォローするのは、SNSを活動の中心にすえるネットのスターたちだ。チュートリアル動画から大人顔負けのメイクアップ技術を身につける一方で、環境や人権に対して配慮する親世代をみているため、若くして社会意識が高いのも特徴で、ただ可愛いだけのブランドや製品には安易に流れない。化粧が低年齢化する米国でのキッズコスメの展開には、アルファ世代への理解が欠かせない。まずは、この世代の概要から押さえておこう。

注目の新世代「ジェネレーション・アルファ」(アルファ世代)とは、Z世代(1995〜2010年生まれ)の次の、2010〜2025年に生まれた世代を指し、2019年現在、最年長が9歳である。そして、彼らの親の中心世代は、ミレニアル世代(1980〜1994年生まれ)だ。

2010年といえばInstagramとiPad誕生の年でもある。自らもテックに親しんできたミレニアル世代は、自身の子どもであるアルファ・キッズのテクノロジーの知識はすでに、自分たちよりも高いと考えており、彼らの知識がさらに向上し、テクノロジーを使いこなすようになることに重きをおいている。ある統計によると、米国のミレニアル世代の親の87%がテクノロジーは子供の将来に役に立つと考え、84%が、子どもが利用しているという理由でInstagramやFacebookをダウンロードしている。そして、60%以上がSNS上での子どもの動向をチェックしており、これは世界平均の49%をはるかに超えている。 

アルファキッズ市場に注目する理由

米国には2,200万人以上のミレニアル世代の両親がおり、毎日9,000人のアルファ・ベビーが生まれている。米フォーブス誌の記事によると、世界規模では毎週250万人のアルファ・ベビーが生まれており、2014年7月の時点で、米国だけで2,100万人近くの4歳未満の子どもがいることになる。最初のアルファが40歳となる2050年には、この世代の人口は3,500万人に達するとの予測もある。世界中すべてのアルファが生まれたあかつきには、ほぼ20億人になるともいわれ、巨大市場を形成することになる。

そのため、米国では、「アルファ・キッズの親=ミレニアル世代」に共鳴することが企業の戦略的成長に不可欠であり、彼らのもたらす影響や嗜好を理解できていないがために、年間売上高が減少している企業も多数あるようだ。米国内ではミレニアル世代は8,300万人以上の消費者で構成され、年間2,000億ドルの購買力を持ち、生涯に10兆ドルを費やすといわれている。労働力供給の最大世代として、自動車、健康、食品、飲料関連を含むほとんど全ての産業に影響力を持っているのだ。

現在多くの研究者がミレニアル世代の重要性を定量化しているが、まだ数が少ないせいもあり、アルファ世代の影響力について調べた研究は今のところほとんどいない。アルファ世代のインパクトは未知数ではあるものの、「ミレニアル世代の親の支出行動」にアルファ・キッズたちが大きく関わっているのは確かである。

アルファ・キッズコスメが注目される背景
 
アルファ世代は生まれた時からテックフレンドリーであり、また、オーガニックやエコ、ナチュラルに関心の高い両親から、多様性の尊重やSNSの活用、そして製品の安全性やサステナビリティ、エシカルの重要性を日々学んでいると考えられる。もはやアルファ世代にとって、物質主義で大量生産・大量消費の「消費大国アメリカ」という印象はないかもしれない。サステナビリティな社会の実現というスローガンを掲げ、努力をしている姿が彼らにとって日常の風景なのだ。そのうちレジ袋やプラスチックのストローの存在自体を知らない子どもも出てくるだろう。

一方で、今年3月、米食品医薬品局(FDA)は米アクセサリー雑貨大手「クレアーズ」のブランドで販売されていた化粧品3種類にアスベスト(石綿)が含まれていたと発表し、消費者に使用中止を呼び掛けた。クレアーズはアルファ世代からティーンがメインの客層であり、この事件をきっかけに安全なキッズコスメがますます注目されるようになった。さらには、まだ自分で購買力がないアルファ・キッズにモノを買い与える立場のミレニアル両親にとっては、製品の原材料、安全性やブランドの背景、透明性ついて再考すべき機会となったのである。

高い安全性で親世代が支持するKlee Kids

Klee Kids」は、全米で展開する米テキサス発のナチュラル&ミネラルベースのコスメブランドで、ヘア&ボディケアからメイク、ネイル、おもちゃの化粧セットからフェイスペイントまで揃う幅広いラインアップが人気だ。「オーガニック、ミネラルベース、グルテンフリー、ウォーターベースなどの安全性を考慮した高品質のナチュラル成分のみを使用、パラベンや合成着色料などの有害物質は一切不使用、生産拠点は米国とカナダ、動物実験は行わない」という、親がキッズコスメを購入する際に懸念するポイントを徹底的にクリアにしたブランドコンセプトが特徴だ。

メインのターゲット層は、お化粧ごっこに興味をもちだす幼稚園児から小学生のアルファ・キッズのようだ。一般に市販されているおもちゃの化粧セット、パーティやハロウィンで子供が喜ぶフェイスペイントのほとんどには石油化学成分や合成染料が含まれており、幼い子供の肌にこんなケミカルなものをつけて安全なのか?と拒否反応を示す人も多かったため、親にとっても子供にとっても安心して使える製品といえる。

感度の高いアルファからティーンが本当に使っているコスメ

米国の20歳以下の年齢層は、アルファ世代のキッズ(5〜9歳)、Z世代のトゥイーン(9〜12歳)、ティーンエイジャー(13〜17歳)、レイト・ティーンエイジャー(18〜19歳)と細分化されている。

アルファ、Z両世代ともに、生まれた時からどっぷりオンラインが当たり前の生活に浸っている「デジタル・ネイティブ」であり、SNSはもはや彼らの人生の一部である。そして両者に共通するのはビューティに大きな関心を持っていることだ。彼らの情報入手先は当然、雑誌やTVではなく、SNSやYouTubeのチュートリアル動画に出ているインフルエンサーからメイク方法を学び、そのスタイルを真似る。
 
目下のところ、アルファ&Z世代が信頼し共感するビューティ界のインフルエンサーといえば、いわゆる「メイク男子」のユーチューバーである、現在20歳のジェームズ・チャールズ(James Charles)だ。色彩豊かで前衛的なメイクで注目をあび、物議をかもす言動や投稿によりメディア上で大炎上を繰り返しながらも、アルファ&Z世代から絶大なる人気を得ている。「ハイ、シスターズ!」のフレーズからはじまる、あけすけな喋りと個性的なキャラクターがウリの彼のYouTubeチャンネルの登録者数は1,610万人、インスタグラムのフォロワー数は1,590万人と驚異的な数字を誇る(2019年9月現在)。

NYの高校生だったジェームズは2015年にYouTubeチャンネルを開設、メイクテクニックのチュートリアル動画を流したところ、口コミでアルファ&Z世代から熱狂的なフォローを受けた。そして米大手コスメブランド「CoverGirl」が、当時17歳だった彼を史上初の男性広告塔として起用したことで、ジェンダーレスの時代がやってきた象徴として話題になった。

また今年のNYファッションウィークでは、土壇場でマーク・ジェイコブスのショーへの出演を決め、黒のチュールドレスをまとったジェームズ。その写真をInstagramに投稿したところ、240万ドルものメディア・インパクト・バリューを叩き出し、一躍NYファッションウィークのトップインフルエンサーとなった。彼の態度や行動には賛否両論あるものの、その人気は未だ衰えることを知らないようだ。

そして、キム・カーダシアン(38) &ノース・ウエスト・カーダシアン(6)のような“マミー&ミー“の親子インフルエンサーが多いのもこの世代の特徴だ。また、LAのアルファ&Z世代は、ミレニアル世代のファンが多いことで知られるGlossierのショップを親子で一緒に訪れて、仲良くショッピングを楽しむ様子をSNSにアップする姿もよく見かける。LAという土地柄や「背伸びしたい」という年頃もあってか、子供っぽいキッズコスメよりも、カイリー・ジェンナーの「Kylie Cosmetics」など大人向けブランドを好む傾向もあるようだ。

キッズ専用ブランドとして人気のPetite’n Pretty

そんななか、キッズ・インフルエンサーを活用したマーケティングでアルファ&Z世代の支持を集めているのが、LA発のキッズコスメ「Petite’n Pretty」だ。2018年に発売開始、創業者は元Stila Cosmeticsでチーフプロダクト・ディベロップメント・オフィサーだったサマンサ・カトラー(Samantha Cutler)だ。

元祖お騒がせセレブのパリス・ヒルトンの叔母で米人気リアリティ番組のスター、カイル・リチャーズ(Kyle Richards)らが連なるLA最強セレブママ・ネットワークと強力なコネクションがあることで知られている。リチャーズの娘は、キッズ・インフルエンサーとして知られるポルティア・ウマンスキー(Portia Umansky)で、弱冠11歳の彼女はほかのキッズ・インフルエンサーとともに同ブランドのキャンペーンにも登場している。

Petite’n prettyは、4才から18才までのアルファ&Z世代である顧客たちを「若きクリエイター(young creatives)」と呼び、無料サンプルを配るなどして、彼らがInstagramにメイクアップ画像や商品画像を自発的に投稿することを促し、そこから販路の拡大・促進をしていく。また、ブランドアンバサダーに認定された「若きクリエイター」たちには、彼らの投稿によって商品が売れた場合、売上げの10%が支払われるというシステムも設けている

ウェブサイトではあわせて「すべての体型や人種、性別に向けた製品」という同ブランドの哲学や「(未来は)新しい世代が一番知っている。だから、私たちは耳を傾ける」というメッセージを掲げ、アルファ&Z世代のリアルな声を反映させる姿勢を明確にしており、多様性や透明性を大切にする同世代の価値観に訴えかけるメディア戦略をとる。

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Petite’n pretty公式サイトより

そしてLAを代表するキッズ・ビューティーインフルエンサーといえば、13歳のニコール・ラエノ(Nicole Laeno)だ。女優、ダンサーとしても活躍する彼女は、フォロワー数100万人のインスタ個人アカウントのほか、メイク専用アカウント「nicolelaenomakeup」を持つ。そこでは、前述のPetite’n Prettyから大人用の有名ブランド、ドラッグストアで買えるお手頃コスメまで幅広い製品を駆使した、13歳と思えない卓越したメイク技術を披露。地元LAを始め、等身大の姿に共感するアルファ&Z世代から支持を得ている。

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ニコール・ラエノのInstagramのメイク専用アカウント

アルファとZ世代が求めるのは、「自分たちは、他とは違う」ことを知ってもらうことだ。そして自身と同じ価値観を持つ人やブランドに興味を持ち、手の届かない有名人よりも、等身大の「リアルな」インフルエンサーを信頼して共感する。

そして多様性を大事にする世代ゆえ、人種や人権、LGBTなどの社会的テーマに関して信念をもって取り組むブランドを支持する傾向が強い。気に入ったブランドとはSNSで繋がり、また、自らリサーチして、製品の良し悪しからブランドの透明性までをも入念にチェックする。もし気に入らなければネット上で批判を展開し、市場を動かすこともできる世代なのだ。
 
ミレニアル世代を意識した従来の広告では彼らの心はキャッチできない。彼らは全く違う価値観を持つ世代であることをまず企業は認識し、「アルファ&Z世代向け」に特化したコンテンツ・マーケティング戦略を考える必要があるだろう。

Text: 藤野晶子(Akiko Fujino)
Top image: 2xSamara.com via Shutter stock

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