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ユニリーバなども活用する HR向けAIサービス、採用プロセスを劇的に効率化

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何万単位の採用エントリーを受け付けるグローバル企業が、そのプロセスの効率化にAIソリューションを使い、その後のチームビルディングやリテンションなどにもAI技術が使われるようになってきている。HRクラウドサービスが普及しデータが蓄積され、AI活用が現実的になっているからだ。世界各国、そして日本の動向を俯瞰しながら、その先端ソリューションの現在地を探っていきたい。

代表的なものとしては、ユニリーバも導入している米企業・HireVueの予測分析機能「HireVue Assessments」があげられる。これは、「HireVue」を用いた録画もしくはオンラインで取得された面接動画を分析し、入社後の活躍可能性を予測するAIデジタル面接プラットフォームだ。

これは産業・組織心理学ら専門家によって開発されたもので、収集するデータポイントは、口の動きやイントネーションなど約25000箇所にものぼり、解析されるデータには非言語データも含まれる。日本で面接に人工知能が採用され始めたのは、2017年を前後した時期だったが、当時、人工知能に詳しい学界関係者のひとりは次のように話していた。

「人間は体温や発汗、声紋、姿勢など、『書いていること』や『言っていること』以外にも、多くの情報を発信している。AIが面接の現場でそれら非言語情報を元に採用を判断するということも、技術的には不可能ではなくなってきた。日本では、人事は人間の目利きの領域という認識が強く、面接は人間が担当することがしばらくは続くだろうが、AIも今後、人材を見極める領域に進出してくるだろう」

出典:HireVueを解説した動画(Business Insiderの公式チャンネルより)

ユニリーバでは、このHireVue Assessmentsを導入し、応募者の中から同社で活躍が期待できそうな候補者への絞り込みなど、それまで経験値に頼ってきた業務に劇的な業務効率化がみられたという。わずか1年で100万ポンド(約1億4,600万円)のコスト削減になったとHireVueのサイトに紹介されている

また、こういった非言語データを解析するソリューションが増えていることは、その推測が正しかったことの証明となる。なおHireVue Assessmentsは、日本語版もリリースされている。

人に代わるAIリクルーターの登場

一方、ロシア企業・Staforyが提供している「Vera」はさらに近未来的だ。Veraは「AIバーチャルリクルーター」とも呼ばれている。企業が採用情報をプラットフォームに登録すると、Veraがインターネット上に公開されている求職者のデータを捜索。自動で条件に合う候補者に連絡し、採用情報について説明する。

出典: Robot Vera / AIバーチャルリクルーター・Vera

その後、候補者は採用条件の詳細を受け取り、条件が合えばVeraの動画面接を受けるという流れである。Vera は、面接採用のためにWikipedia、16万冊の関連書籍、140万件の面接データ、また音声会話のために130億の構文やスピーチを学習。英語、ロシア語、アラビア語など68言語をサポート済みである。Veraを提供するStaforyの狙いは、「雇用プロセスの自動化」だ。同社側の説明によれば、最終面談までの時間を従来平均の3分の1まで短縮することに成功しているという。

面接・採用以外のHR業務でもAI技術で効率化へ

人工知能は、面接以外のHR業務向けービスにも続々と取り入れられている。すでにポピュラーとなったものに、「離職回避(リテンション)」がある。

クラウド型人事・労務分析ツールを開発する日本企業のフレイドは、社員の退職確率をはじき出すAIを開発。根拠となるデータは遅刻、残業、早退など。的中率は2017年の段階で90%に達していた。フィリピン企業・Sprout Solutionsも、現地ビジネス習慣にローカライズした離職予測ツール「Sprout Insight」を提供開始している。

その他にも、従業員の社内規定、休暇規則、福利厚生などの質問に答えるチャットボット「Service Desk」(米Talla社)は、AIチャットボットでチームワーク調査をおこない、改善点、学習すべき内容、推奨するツールキットなどを含んだレポートを作成してくれるチームビルディング支援ツール「Coachbot」(英saberr社)、人材の適切な配置、プロフィール分析を行う「Internal Workforce Optimization」(印EdGE Networks社)などのサービスが登場している。

なかには、求人文書(広告やリリースなど)を補強してくれるAIサービス「Textio Hire」(米Textio社)なるものもある。同社サービスの強みは、積極的に職を求めている人、そうでない潜在層に対し、それぞれ訴求力を持つ文章を自動で作成できる点だ。日本でもこの手のサービスが普及すれば、求職用の文言作成に時間を割かれている中小経営者にとっては強い味方になるに違いない。

隠れた逸材をAIで見つけ出す、ソフトバンクの試み

Image: vectorfusionart via Shutterstock

日本でHR部門に人工知能を導入して話題となった企業には、ソフトバンクグループがある。同社は採用プロセスにAIを導入し、「プレエントリー」、「エントリーシート提出」、「履歴書情報登録・適性検査」、「面接」の4段階のうち、二番目のエントリーシートの評価に人工知能を活用した。書類から求職者の能力を計る際には、人工知能のなかでも「自然言語処理」と呼ばれる、人間の言葉を機械が理解するための技術が使われていた。なお評価基準や仕組みの細部は非公開とされたが、広報担当者によれば、ソフトバンクの企業価値に対応した選択項目および、それに対応する自己評価エピソードの解析にAIを用いるとのことだった。

このソフトバンクの「AI面接」が話題となったのは、2017年6月、大学の就活が解禁された時期だ。ソフトバンクの実用例は業務効率化という文脈も一部あったものの、本質的には「人材マッチングの強化」という側面が強かった。少子化が進み、人材側の売り手市場となっている就活戦線だが、企業は学歴など分かりやすい“指標”のみを参考にしていては人材獲得競争で勝つことができない。そのような傾向は中小企業ほど顕著だ。しかし、人工知能を使えば隠れた逸材を発掘できる可能性がある。

また適性検査などにおける対策・ヤマカンを無効化することで、ミスマッチ防止、また応募者の本質的な能力を見極められる。その後、自然言語処理だけでなく、さまざまな非言語データもマッチングの要素として取り入れられはじめられているという点については、前述したとおりである。

AI面接や採用は、求職者にもメリットあり

Image: Rawpixel.com via Shutterstock

ちなみに、「人工知能による採用」には抵抗を感じるデメリットもあるかもしれないが、求職者側にもメリットが大きいという点を強調しておきたい。

人工知能が発展していけば、学歴や職歴といった指標のみで評価されず、その人が持つ本来の能力が評価され、各企業との相性も明確になっていくからだ。コネ入社や社内政治による昇進など、人間の恣意的な判断に基づく採用・出世も減るかもしれない。加えて、企業が副業を解禁する時流のなか、ピンポイントで企業と人材を結び付け、両者の時間・作業効率や、利益を最大限に高めてくれる原動力にもなりうる。

想定しうる課題としては、アルゴリズムが偏向してしまう可能性が否めないという点だろう。「能力がある人物像」というのは、時代や社会的状況によって常に変化する。HR部門担当者やエンジニアとしては、アルゴリズムがはじき出す提案を鵜呑みにせず、常に人材とは何か、また人材を判断する上で必要な要素とは何かについて悩み続けていく必要がある。またAI産業に詳しい総研関係者からはこんな意見もあった。

「人工知能が、ある社員について海外や遠方に転勤させた方がいいという判断をしたとする。その時、人間は『人工知能が判断したから』といって、素直に受け入れることはおそらく難しいはずだ。結局、最終的に人材をモチベートするのは人間の能力ではないだろうか」。

この指摘は、面接や採用においても同じことが言える。現段階では、「人を見抜く力」や、ここで働きたいという「人を惹きつける力」は、人間の方にまだまだ分があるはずだ。人工知能にデータ分析など実務をまかせ、人間は仕事や人に対する愛や情熱、信頼などといった物差しをもって社員に向き合う。これからのHR部門には、そのような協業体制が必要となる。

さて、美容業界では販売の最前線で活躍するビューティアドバイザーの採用や育成にも、AIのみならずHRテックの活用が進められている。次の機会にいくつかの事例をもとに、現状と未来に向けての考察をすすめてみたい。

Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: This Is Me via Shutterstock

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