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キノコ由来の化粧品原料が欧米で注目、その背景にあるクリーンビューティの流れ

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オーガニックやエシカルな製品を求める消費者需要の世界的な高まりを受け、アジアでは馴染みの深いスノーマッシュルーム(シロキクラゲ)やレイシの抽出液を配合した化粧品が欧米で登場し、注目を集めている。その背景と、キノコ由来の原料やそれを配合した化粧品の現状を探る。

パワフルな植物由来成分として注目されるキノコ

アジアでは古くから食用はもとより、漢方薬としても利用されていたキノコだが、欧米でキノコの肌への効果に関する基礎研究やスキンケア製品への応用が急速に進められており(※)、COSMETICS BUSINESSAllureGlamourなどの美容系メディアでも、キノコ抽出液が「今もっとも話題のスキンケア成分」として紹介されている。

現在、地球上のキノコ類の数は推定で15万種といわれるが、同定されているのは、そのうちの10%(約1万5,000種)のみだ。かつ、化粧品の原料に用いられているのはわずか数種類だというデータ(※)もある。日本では、1980年代に日本メナード化粧品株式会社がレイシキノコを採用した(※)のを皮切りに、主にアンチエイジングスキンケア製品に使用されてきた歴史がある。化粧品成分データベース検索でも、シイタケエキス、マイタケ子実体エキス、ホウロクタケから抽出したダエダリアエキスなど、キノコ由来の化粧品成分が多数存在するのがわかる。

そのなかでもとくに化粧品原料として欧米で認知度を上げているキノコが、抗炎症作用と鎮静作用を持つスノーマッシュルームとレイシだ。

スノーマッシュルームには、タンパク質、リン脂質、ß-グルコシド、マンノース、キシロース、グルクロン酸など、肌の保湿を助ける物質が含まれており、ヒアルロン酸に代わる保湿成分として注目されている。

「成分についての知識を深めることが、よい化粧品選びにつながる(better knowledge powers better decisions)」をコンセプトに、主成分が製品名となった商品を組みあわせて一人ひとりにあったスキンケアレシピを提案する英国発ブランド「The Inkey List」の共同創業者マーク・カリー(Mark Curry)氏は、英国の業界メディアに、スノーマッシュルームエキスを配合した「Snow Mushroom Moisturiser(£9.99/約1,309円)」が12分に1本の頻度で売れていると明かし、人々の関心の高さを裏付ける。

そして、この人気が続くかどうかは「どれだけ多くのブランドがスノーマッシュルームを成分として製品に取り入れるか、また、消費者に気軽に手にとってもらえるようにできるかにかかっている。ただ、これだけはいえる重要なポイントは(スノーマッシュルームは)本当に”効果がある”ということだ」と話す

一方、レイシエキスを主成分としたスキンケアラインを展開しているのが、エスティ ローダーグループの「オリジンズ」だ。10年以上前に、代替医療の専門家であるアンドリュー・ワイル(Andrew Weil)博士と共同で、レイシエキスがもつ肌の鎮静効果を全面に出した敏感肌向けのヴィーガンコスメ「メガ マッシュルーム コレクション」を発表。同シリーズは、米国だけでなくアジア市場でもロングセラーアイテムとなっている。

同社グローバル製品開発担当エグゼクティブディレクターのリズ・スター(Lizz Starr)氏は、ヨーロッパ市場での消費者の反応について、「マッシュルームは地味な素材ゆえ、その効能がまだあまり知られていない。確かな抗炎症作用のある植物由来成分であることをしっかりと伝えることに注力している」と話す。オリジンズは現在、美白効果のあるマッシュルーム(詳細は未発表)を配合した処方にも取り組んでおり、近々、公式に研究結果を発表する予定だという。

中国では「中医美容」として専門カテゴリーも

数年前からオーガニックブームが起きている中国では、漢方を使った天然植物由来の化粧品やサプリメント市場の盛り上がりを反映して、ECサイト「天猫(Tmall)」や「京東(JD.com)」などには、キノコを使ったスキンケア専用ページが設けられている。漢方をはじめとした生薬を利用した化粧品は「中医美容」というジャンルに分類され、一般企業で開発・商品化がされているほか、政府系の研究機関(四川省中医薬科学院)では、漢方薬からアンチエイジエキスの抽出実験なども行われているという。

アリババ(tmall)キノコ

Tmallのキノコ原料の
スキンケアページ

最近では、高級漢方として古くから滋養強壮や美容の効能があると伝えられてきた子囊菌類のキノコの一種である「冬虫夏草」を配合した化粧品が人気だ。冬虫夏草には、アミノ酸、糖類、ミネラル、核酸、コルジセピン、コルジセプス酸、ビタミンB1やB12、ビタミンCなどの成分が含まれており、血管を拡張し血流を改善することで、新陳代謝が向上し、アンチエイジング効果が期待できるという。

深圳优迪化粧品有限公司と北京同仁堂护肤研究所が共同で開発した「笑影冬虫夏草」は、冬虫夏草の美白効果やそばかす、ニキビなどの改善、肌の引き締め、たるみ改善などのアンチエイジ効果を全面に出した商品アピールを行なっており、ECサイトでも人気ブランドのひとつになっている。

笑影「冬虫夏草」

笑影冬虫夏草シリーズ
出典:中国ECサイト「benbang

一方、韓国では、機能性化粧品、自然派、ヴィーガンといった文脈で、冬虫夏草やハナビラタケ、カバノアナタケといったキノコから抽出した成分を配合した化粧品が複数登場しており、海外展開を意識したシンプル&スタイリッシュなパッケージデザインで中国発のブランドとの差別化を図っている。

栄養成分として医療分野でも注目

化粧品成分としてだけでなく、シイタケには免疫調節作用や抗酸化作用、抗炎症などさまざまな作用が期待できることが近年の研究でわかってきており、サプリメントなど栄養補助食品の素材としても注目されている。

小林製薬は、シイタケの菌糸体のもつ免疫力回復効果に着目し、医療機関との臨床研究を2000年頃から続けている。シイタケ菌糸体とは、私たちがふだん食べているシイタケの笠の部分(子実体)の母体となる糸状のもので、βグルカン、αグルカン、シリンガ酸、バニリン酸、アラビノキシランといった有用成分が多数含まれており、免疫力低下の原因のひとつとされる免疫抑制細胞(Treg細胞など)を抑え、免疫力を正常に回復させる作用があることが発見された。

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シイタケ菌糸体
出典:小林製薬株式会社

小林製薬株式会社 中央研究所 松井保公氏は、「人体での効果はまだ確かめられていないが、シイタケ菌糸体には、花粉症などの炎症をおさえる作用が期待されており、現在研究が進められている。シイタケ菌糸体のもつ抗酸化、抗炎症、抗菌作用などを考えると、今後、薬用化粧品成分として応用できる可能性は十分にありうる」と語る。

先日の記事で紹介した中国の製薬会社が開発する漢方コスメのなかにも、スノーマッシュルームやレイシがキー成分として配合されており、肌や環境に優しい天然成分を志向する若い世代に支持されている。クリーンビューティの高まりとともに、キノコ由来成分の研究も進みそうだ。

(※)参考文献:Mushroom Cosmetics: The Present and Future

Text: 小野梨奈(Lina Ono)
取材協力: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Andrew Ridley on Unsplash

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